「星河さん、先輩、もうすぐでミス・ロマンの指定したポイントに到着します」
あれからミス・ロマンの指定したポイントに向けて俺たちは歩き続けた。
「しかし、見渡す限り炎だけって…なんだか寂しいね。生き物もいないし」
立香の言う通り、生き物の気配はなく、ここに来るまでに遭遇したのは襲ってくる骸骨だけだ。
「待って!今なにか聞こえなかった!?」
立香が急に止まって、あたりを見回しながらそう聞く。
静かに耳を澄ますと、なにか争っているような音が聞こえる。
「きっと生存者だ、急ごう!」
俺たちは音の聞こえる方へ駆けていく。
「あ、あれは所長!?」
俺たちが掛けて行った先ではカルデアの最高責任者、オルガマリー・アースミレイト・アニムスフィアが骸骨を相手に戦っていた。
「くっ…なんなのこいつら!?数が多すぎる!」
所長のいう通り骸骨の数は多く、一体を倒している間に骸骨はどこからともなく来て増えている。
「所長、助太刀します!」
「マシュ!?それに無事な人もいたの!?」
所長は戦闘の手を止めず、こちらを見て驚いている。
「詳しいことは後で話してもらうわよ!?」
「分かりました!マシュちゃん、頼んだよ!」
「はい!マシュ・キリエライト、戦闘を開始します!」
そう言うと同時にマシュさんは骸骨へと走り出し、次々と手にした盾でなぎ倒していく。
「あなたたちは後ろにいなさい!」
マシュさんが倒し損ねてしまった骸骨を所長が魔術を使って倒していく。
魔術に関しても素人に近い俺たちにできることはないので、言われた通り所長の後ろにいる。
マシュさんの身体能力が上がっているおかげか、骸骨たちは簡単に倒れてしまう。
そして数分後には骸骨たちを倒しきってしまった。
「戦闘、終了しました。お怪我はありませんか、所長、星河さん、先輩」
戦闘を終えたマシュさんがこちらへと戻って来る。
「マシュ、その姿は…デミ・サーヴァントね。今になって成功するなんて…まぁ、いいわ。まずはあなたたちのことよ」
マシュさんの方を見て何かを考えていた所長は、それを中断し俺たちの方を向く。
「あなたたち、どうやらサーヴァントのマスターになったようね」
「え、ええ。どうやらそのようで」
あまりそういった知識がないので、曖昧な返事になってしまう。
「マシュ、他に生き残りは?」
「いえ、私たち以外は確認できませんでした」
「そう…おそらく、コフィンに入ってなかった私たちだけがレイシフトに成功したのね」
「どうしてでしょうか?」
「コフィンにはレイシフトの成功率が95%を下回ったら電源が落ちるようになってるの。おそらくあの爆発のせいでコフィンに入ったチームはレイシフトしなかったのでしょう」
「なるほど…では、レイシフトするにはコフィンに入らなくても行えるということですか?」
「ええ。もっとも、成功率は下がりますが」
どうやら俺たちはその低い成功率を当てたようだ。もし失敗していたらと思うと怖いな。
「ごめんなさいね、あなたたちを巻き込んでしまって」
「え?し、所長?」
急に所長は俺たちに頭を下げてきた。
「あなたたちを危険に巻き込んでしまったのは私の責任です。私がもっと事前に安全確認を行っていれば、安全に先行のチームがレイシフトを行われていたはずです」
「所長…」
「ですが、今の私には戦う手段があまりにも少ないです。どうか、世界を救う為に私に、私たちカルデアに力を貸してもらえないかしら?」
所長…なんて男らしい…いや、この世界じゃ女らしいでいいのか?とにかく、俺たちのような下の者に頭を下げてくれるなんて。
「所長、頭を上げてください。こんな俺でよければ力を貸します」
「ええ、私も同じ気持ちです、所長」
「あなたたち…ありがとう」
所長は頭を上げて、俺たちの返答を嬉しく思ったのか、少し微笑んだような気がした。
「では、ここからは私の指示に従ってもらうけど、いいかしら?」
「俺はこういうの詳しくないし、構わないです」
「私も、それでいいです」
「ではまず、ベースキャンプの作成を行います。場所は魔力が収束している場所、霊脈のターミナルを探して、そこに作成します」
俺たちにも分かりやすく説明してくれる所長。この人、きっとめっちゃいい上司だ。
「そこでならカルデアとも連絡が取れるはずです、この町の場合だと…」
「このポイントです、所長。ちょうど所長の足元がレイポイントです」
「どうやらそのようね。マシュ、貴方の盾を地面に置いてくれる?宝具を触媒にして召喚サークルを設置するわ」
「了解しました。武器を手放すのは少し不安ですが、始めます」
マシュが盾を置くと盾から不可思議な模様が広がった。それは一種の魔法陣のようである。
「これは…カルデアにあった召喚実験場と同じ…」
『シーキュー、シーキュー。もしもーし!よし、通信が戻ったわ!』
どうやら似たものを見たことがあるマシュを含めた俺たち三人が驚いていると、急に声が聞こえ、どうやらミス・ロマンからの通信も回復したようだ。
「ロマニ?どうしてあなたが仕切っているの?レフはどうしたの?」
『所長、生きていたんですか!?あの爆発で!?』
「そういうのはいいから、早く報告!」
『は、はい!まず、レフですがあの爆発ですし、生存は絶望的です。残ったカルデア正規のスタッフは私を入れて20人に満たず、私より上の階級者はいません』
「マスター適性者たちはどうしたの?」
『全員危篤状態です。医療器具も足りないので、すぐに冷凍保存へと移行、死なせないことを最優先としました』
「そう…よくやったわ、ロマニ」
『それと、現在のカルデアは約八割の機能を失っています。なのでできることも限られてきますので、とりあえずレイシフトの修理、カルデアス、シバの現状維持に人員を割いています』
「そう。外部との通信が回復次第、補給の要請を」
『もちろん、そのように進めています』
「結構。よく、私が不在の中でそこまで進めてくれました」
…うん、この世界の女性って、俺の前世の男性たちより滅茶苦茶しっかりしてない?めっちゃ頼もしい…。
「ロマニ、私が戻るまでカルデアを任せます。私たちはこの特異点Fの調査を続けます」
『分かりました。健闘を祈ってます。こちらはレイシフトの修理を最優先で行います』
ミス・ロマンとの通信を終えた所長がこちらへと振り向く。
「これよりマシュ・キリエライト、加賀美星河、および藤丸立香、以上3名を探索員として特異点Fの調査を開始します」
「了解しました!」
「はい!」
「分かりました!」
「とはいえ、マシュを含めてあなたたちはまだ未熟でしょうから、ミッションはこの異常事態の原因、その発見にとどめます」
「発見だけですか?」
「ええ。原因の解析、排除はカルデア復興後、第二陣を送り込んでからとなります」
「でも解決は早い方が…」
「できればそうだけど、私は責任者として、あなたたちを無事に返す必要があるの。分かってちょうだい」
「…はい」
確かに俺たちはここに来るはずの正規スタッフとは違うからな。所長も無理はさせられないのだろう。
「では、探索を開始します。が、その前に戦力を補充します」
どうやら探索は、まだできなさそうである。