魔法薬を好きなように   作:烏鷺烏鷺

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第2話 なんていう悪辣な

俺こと、ジャック・ド・アミアンは、今、モンモランシーの部屋に入って、テーブルについている。すでに食事として用意されているのか、2人分のパンとワインが用意されていた。

学院長のオールド・オスマンからのたっての指示で、モンモランシーもしぶしぶながら、したがっていたわけだが。

兄から聞いていた話では、魔法学院の女子寮の部屋に男性を入れるのは、彼氏ぐらいだって話だったからな。

 

そして、モンモランシーの部屋に入ると香水の香りがちょっときつい。

なんでかと思い室内をみてみると、水の魔法薬を作るための用具がそろっている。それに栓をしたりしているのが、室内にもれてきている臭いを隠すために、香水を多く使っているのだろう。

部屋の中のテーブルの席についたところで、

 

「改めて確認したいのだけど、学院長からでた話の方向でかまわないのかな?」

 

「ええ。ある意味水竜を召喚するよりも、ましですから」

 

学院長からでた話というのは、ぶっちゃけ、モンモランシーが卒業するまで、使い魔としてこの魔法学院にとどまっていること、ってことなのだが、基本的な食住費はモンモランシ家持ちで、そのあとのことは、両者で話してくれということだった。

俺もモンモランシーの使い魔となってしまった以上は、モンモランシーと敵対する場所にはいけない。行った場合には、モンモランシーの目となり、耳となるってことだから無意識にスパイ……じゃなくて間諜をしていることになるかもしれないしなぁ。だから、モンモランシーがどこに嫁ぐかはっきりするまでは、まともな職につけないな。はぁ。

 

話していることといえば、使い魔のこととか、当面のことだが、

 

「目や、耳が同調できないって?」

 

「そうよ。なんでかしら」

 

「さてね」

 

ある意味ラッキーだが、まわりが真実として信じるかは別の問題だ。

 

「薬草や秘薬などは、とってこれるのかしら」

 

「俺自身でも薬草ぐらいならとれるが、俺の使い魔がカワウソなので、水の中の薬草なんかも集めてこれるぞ」

 

「あら、それはよかったわ」

 

って、薬草集めは決定か。

 

「主人を護るっていうのは大丈夫よね。確か魔法衛士隊の騎士見習いだったんでしょ?」

 

「まあ、護衛の訓練は受けているからな。ただし、連日襲われるような目にあうようだったら、それは別だぞ」

 

「えっ? なぜ?」

 

よくわかっていない人からならば、その疑問は、ごもっとも。

 

「俺はスクウェアの上、魔法衛士隊の訓練も受けてきているから、並の相手で1回限りというのなら特に問題ないが、回復力に問題があってね。精神力がほぼつきかけたら、それが回復するのに8日ほどかかるんだよ。毎日ちまちまこられたら、メイジの能力としては、毎日精神力を回復しきれるドットとたいした変わらない」

 

「そんな目にあうわけないでしょう」

 

「まあ、そういうことも考えておくのが、魔法衛士隊でならったことでね。ないにこしたことはないね」

 

「そうね。その他に特技ってあるのかしら?」

 

「そこに水魔法の実験設備があるだろう」

 

「ええ、それが何かしら?」

 

「俺も、水魔法で魔法薬の実験をしているので、一緒にできれば、効率が良いんじゃないのかなっと思ってさ」

 

「……興味はあるけれど、一緒の部屋に二人きりって、彼氏に誤解されたら困るわね」

 

「彼氏がいるのか。護衛というのも、部屋の前で行うのか?」

 

「そこまで気にしなくてもよいわよ。魔法学院から外出する時、護衛をしてもらうぐらいで」

 

「それはまた、普段は暇になりそうだな」

 

「そうそう。明日からの1週間は、授業に一緒に出てちょうだい」

 

「うん? なぜ?」

 

「使い魔をお披露目するのよ。その間は、近くにいてね」

 

「了解。その他の事項は?」

 

「特に今はないけれど、思いついたら伝えるわね。こちらからはそれぐらいだけど、貴方からは何かあるかしら?」

 

「これから、貴女の方はなんて呼べばよろしいのでしょうか。たとえば、ご主人様?」

 

「ご主人様ねぇ……魔法学院の雰囲気にあわないから、モンモランシ―でかまわないわよ。そのかわり、貴方のこともジャックと呼んであげる。ジャックといえば他にもいるから、二つ名を教えてちょうだい」

 

「俺の二つ名は『流水』です。モンモランシ―は?」

 

「『香水』よ。他になければ、もう、もどっていいわよ」

 

「俺も一緒に授業にでるんですよね。明朝はどうしたらよろしいですか?」

 

「そうね。『アルヴィーズの食堂』の入り口ぐらいでも待っていて。場所はその辺にいるメイドにでも聞けばわかるでしょう」

 

「わかりました。それでは、また明日よろしくお願いいたします」

 

「おやすみ」

 

「おやすみなさいませ」

 

俺は、来客用の部屋にもどったところで、魔法衛士隊からの手紙がきていることに気がついた。中身は『魔法衛士隊の騎士見習いの資格停止と、再申請する場合には再審査がある』との趣旨の内容だ。騎士見習いからはずされたのを、体裁よく書いたものだろう。

少々覚悟していたとはいえ、長年狙っていただけにぐっとくるものがある。

 

 

 

翌朝、来客用の部屋からでた俺は「メイドなんていないじゃないか」とつぶやきながら、学生寮の方へ歩いていくと、学生寮から移動していくのが同じ方向なので、そこが『アルヴィーズの食堂』なのだろうと思っていくとビンゴ。

入り口で、モンモランシ―を待っていると生徒たちが、俺をみてクスクス笑いながら食堂にはいっていく。

「ああ、間抜けな貴族が、使い魔として召喚されたんだろうなぁ」と考えているんだろう。そう思うとちょっとばかりおちこんだ。

 

モンモランシーがきて「おはよう」と言ってきたので「おはようございます」とかえしたところ、そのまま通りすぎていくので、俺はあわててそのあとをついていく。彼女がある場所で「ジャックの座るのはここ」と言って椅子をさしたので、俺はそちらにつくが、モンモランシ―は俺に椅子をひかせようともせず、自分ですわっているので、まあ、使用人のかわりとは思ってはいないのだろう。

 

しかし、朝から豪勢な食事だったが、おしゃべりしながら食事がすすむ。その中で俺にも話はふられた。まあ、俺自身よりも魔法衛士隊のことが中心だ。あくまで俺って、騎士見習いだったからなぁ。騎士見習いの資格停止になったことをまだ、モンモランシ―に話せていないが。くそぉー。

 

 

 

魔法学院の教室へ移動したが、すでに教室には様々な使い魔をつれた生徒たちがいる。皆はあまり使い魔たちのことを気にしていないようだが、これだけの種類を同時にみられるのは、中々珍しいんだけどなぁ。中でも学校らしいと思ったのは、赤い髪の美少女に男子生徒がむらがっているところだ。場所がかわっても、このあたりはあまりかわらないらしいなぁ。まあ、俺の前世では、ここまで露骨にモテますオーラを出していた、女子生徒や学生もいなかったけど。

 

席はやはりモンモランシ―の横にすわることになって、授業は土系統の魔法から開始だ。先生は『赤土』のシュヴルーズとの自己紹介だった。しかし生徒が俺ともうひとりの平民を召喚したことで笑い声やおしゃべりがとまらなかったので、そのおしゃべりを止めた赤土を顔に張り付けた技量はたいしたものだ。魔法衛士隊隊員でもあそこまでの数を、コントロールできる者がどれだけいるのだろうか。俺でも土の系統を3つたすことはできるが、あそこまでの量とコントロールができる自信はない。まあ、本来の系統は水だから、そっちなら、にたようなことは可能だけどなぁ。

 

そんな授業で、初歩的な錬金の魔法の実技が始まった。昨日のヴァリエール家の生徒があてられた。そうすると、先ほど目についた赤い髪をした女子生徒が

 

「やめておいた方がいいと思いますけど……」

 

「どうしてですか?」

 

「危険です」

 

先生との一連の話で、そういえば昨日はコルベールも下がっていたよなと思い浮かべたが、ここで口にすることでもなかろう。

 

ヴァリエールというより、『ゼロ』のルイズとの方が、今となってはわかりやすいが、錬金の魔法で、皆が机の下にかくれたのがわかる。俺もつられて隠れたもんな。

 

わかりやすい爆発音がおこったあとでは、使い魔たちが暴れだした。昨日の使い魔召喚よりも距離は近いし、室内だから、爆発音も部屋のなかにこもるから、大きくきこえるものな。

 

立ち上がって錬金をかけた場所をみてみると、ブラウスが破れたり、スカートが避けていたりするが、顔についた煤をハンカチで落としている。鏡もみないでってことは、ある程度は自分でも予想していたのか。

その横では先生のシュヴルーズがのびている。うーん。爆発個所に近いルイズが気も失わずにたっているのに比べて、少々ながら離れていた先生が気絶するって、どこか頭でも打ったのか?

しかたがないので、モンモランシ―に「倒れている先生が気絶しているのが、気にかかるので見てくる」というと、気にしなくてもいいのにといった雰囲気ながら「いいわよ」と返答があった。

 

先生の方へ向かって水の流れを感じとるが、特に脳内で出血が発生しているわけでもないようだし、どこか頭の特定の場所を強打した感じも受けない。これは純粋に爆風の影響か?

命の危険性はなさそうだし、治癒の魔法をかけるほどのこともなかろう。気絶しているところから自然に目をさますのを待つのがよさそうだ。

それにしても、奇妙な現象としかいいようがないのだが、いざ、このルイズという娘と戦闘となった場合には、今のところ結果の予測がつかないために、嫌なところだ。悪辣な魔法だな。

 

しかし、あれだけの爆発音なのに、近くの教室からは、先生が見にもこないので、男子生徒が人を呼びに行ったようだ。モンモランシ―には

 

「このあとどうする?」

 

と聞いたら、

 

「後でくる先生のいう通りにするだけだわ。しかし、やっぱり『ゼロ』のルイズね。しかも、今度は先生まで気絶させるなんて」

 

先生を気絶させるようなことは初めてなのか。まあ、しかたがなかろうと思いつつ、爆発することがわかっていたら、もう少し気をつけろと思いたいが、先ほどの一連の会話で「教えるのは初めて」という言葉も流れていたっけ。

 

ここに呼ばれてきた先生は、ルイズとその使い魔である黒髪の少年に魔法を使わずにかたづけることと指示をだしていたが、魔法をつかったら、爆発することを知っているのだろう。どこの世界でも先生同士の連携は悪いようだな。

 

生徒たちには、中庭で待機とのことだったので、そのまま従うが、「危険」と指摘されていたにもかかわらず、錬金をした結果の部屋片づけか。普通なら清掃係りのメイドにでもさせるのではないかと少々不条理に思うが、新参者である俺が気にかけるものでもなかろう。モンモランシ―とともに中庭に向かったら、朝食時のメンバーのうち、同じ教室にいた者と話している中で俺もまざることになった。女子生徒の中に俺一人男がいるっていうのは、気分は悪くないが、話の中身が学園の話題とか、女性特有のおしゃべりで少々つかれるぜ。

 

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