魔法薬を好きなように   作:烏鷺烏鷺

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第20話 ラグドリアン湖でのできごと

早朝に魔法学院をでて、ラグドリアン湖についたのは午後2時くらいだ。

ここまでは、サイトがのっている馬に惚れ薬で、でれているルイズがのっているので、そこを中心にして、先頭が俺で、後方にモンモランシーとギーシュがつづいている。本来なら、俺が使い魔としてモンモランシーの護衛にいるべきなのだろうが、今回はルイズの状態から、こういう配置になった。

 

ラグドリアン湖が見渡せる丘についたところで、まるで旅行気分でいるギーシュは、そのまま丘を駆け下りて湖のそばに行こうとしたが、湖の手前で馬が急停止して、ギーシュが転げ落ちて、湖でおぼれている。横ではモンモランシーが

 

「やっぱりつきあいを考えたほうがいいかしら」

 

「そうしたほうがいいな」

 

サイトが追い打ちをかけているが、俺としては本当におぼれてもらってからの方が助けやすいので、そのままにしておいた。モンモランシーがギーシュと付き合ってもらって、結婚までいってくれた方がいいなとも思ってはいたが、このギーシュの姿を見ていると、なんとなくモンモランシーやサイトに同調したくなる気分だ。

 

ギーシュは湖から文句を言いながら上がってきたところで、モンモランシーが

 

「水位があがっている」

 

と言って、湖に近寄って水に指を入れて、感覚を研ぎ澄ましているようだ。

そして困ったような顔をして

 

「水の精霊がどうやら怒っているようね」

 

俺はそれを聞いて、湖から1歩離れた。怒っている水の精霊に万が一触れてしまったら、精神がどうなることやらわからないからだ。水のメイジには有名な話だ。

 

サイトが水の精霊のことをモンモランシーに聞いているうちに、近くの農民が声をかけてきたので、モンモランシーが簡単な受け答えをしていた。情報としては2年ぐらい前から湖の水面があがってきたことと、ここの領主はこの状態を放置状態にしているとのことだ。

 

ハルケギニア随一の名勝と言われているのに、放置というのはこの状態をここの領主が対応できずに、しかも王宮にも届けていないのだろう。こういうのは、先延ばしにすると問題が大きくなるということを、ここの領主は理解していないらしい。ワルド元子爵が、トリステインを見捨てたのもわかるような気はする。

 

農民が愚痴をこぼして去って行った後に、モンモランシーから

 

「昨日の話の通り、ジャックの使い魔を貸しなさい」

 

「エヴァ、おいで」

 

おれはここまで連れてきて、そのあたりで遊ばしておいたカワウソの使い魔を呼んだ。

 

「エヴァ。モンモランシーはわかるよな。彼女がこれから、エヴァたちの古いともだちと話をしたいとのことだから、彼女の言う通りにするんだよ」

 

そう言うとわかったとばかりに、頭としっぽで返事をしてモンモランシーのところに行った。モンモランシーは

 

「エヴァにお願いしたいことがあるの。あなたたちの古いお友達と、連絡がとりたいの」

 

すでに用意してあった針を、指先に刺したところで、赤い血の玉ができたところで、その一滴の血の玉をエヴァにたらした。そして、治癒の魔法で指先の傷を治したところで、

 

「これで相手はわたしのことがわかるわ。覚えていればの話だけど。じゃあエヴァお願いね。偉い精霊、旧き水の精霊をみつけて、盟約の持ち主の一人が話をしたいと告げてちょうだい。わかったかしら?」

 

エヴァは頭としっぽで返事でわかったと合図をして、湖面の水の中にむかっていったが、少しくらいこちらを見ないのかと、少々ばかり、精神がおちこみかける。自分で使い魔にお願いしておきながら、まったく身勝手な話だが、嫉妬なのだろう。そこまで、自分が独占欲が強くはなかったはずだが、使い魔に関しては異なるらしい。使い魔と主人の間に特別な感情が独占するという説もあるのは知っているが、それは、主人によって影響度が異なるので、モンモランシーは、どう思っているのだろうかと、ふと思ったが、ギーシュとつきあおうか、そうでないかと言っていたところから、俺に対して嫉妬に相当する感情は多分ないのだろう。

 

そんなことをぼんやり考えているところで、モンモランシーがギーシュやサイトに水の精霊の涙のことを説明していたが、得意分野だからなのか、饒舌だ。その最中に水の精霊が現れたので、モンモランシーの横に移動して、念のための護衛としての位置をとる。怒ってる水の精霊に、スクウェアとはいえ水のメイジはかなわないから、水以外の系統でまもらないといけないことになる。最悪でも、モンモランシーを逃すことはできるだろう。

そこにエヴァが俺のところにもどってきた。モンモランシーのところにいかないところにほっとするが、そういう場面ではないだろうと

 

「エヴァよくやったな」

 

とほめてやる。

そのあとは、モンモランシーが水の精霊に水の精霊の涙と呼ばれている、水の精霊の一部をわけてもらおうとしたが、断られた。そこでサイトの熱弁で最近、水の精霊を襲撃する者の退治をすることになった。細かい情報などももらって水の精霊が姿を消したので、俺は水辺で戦闘を行う際のいつもの儀式を開始する。

 

「水辺にやどりし精霊の力よ。われは、汝の守護者となりて、杖となるゆえ、水の力をかしたまえ」

 

そういって、湖面にふれた。

 

「ジャック。何やっているの?」

 

質問はモンモランシーからだった。

 

「水辺での水メイジの負担が少ないのは、知られているだろう?」

 

「ええ、まあ」

 

「この儀式を行うことによって、俺自身が水の魔法を発揮するのに、水辺の力を借りているということを、はっきりと自覚できるんだよ」

 

「そうなの?」

 

「これは、自領での古文書にのっていたものだし、水メイジでも自覚できる者と自覚できない者がいるから、不安定な儀式だけど、自衛のためだけでもいいから、モンモランシーも試しにおこなってみたら?」

 

ケンカが嫌いだと言っていたモンモランシーなので、自衛という単語をつかってみた。

 

「そうね、ものは試しだけど、さっきの詠唱をもう一度教えてもらえるかしら」

 

「ああ、いいよ」

 

俺が先に言ったあとに、モンモランシーが続けて言う形でおこなってみると、モンモランシーが驚いたように

 

「なに、この感覚。直接触れていないなのに、まるでまわりの水が感じられるみたい」

 

「それが、トライアングル以上で感じられる水の感覚だと思うよ。水の感覚遮断はできるかな?」

 

「やりかたがわからないわよ」

 

「触診などに使うときに、触診を閉じるときと同じ要領なんだけど、どうかな?」

 

しばらく、集中していたモンモランシーだが「ふぅ」と息を漏らしたようなので、

 

「うまく、水の感覚遮断ができたみたいだね」

 

「そうね。これが、あなたたちの感じている世界なの?」

 

「多分ね。だけど、いつもその水の感覚にさらされていると、俺自身がまいってしまうから、俺の場合には、必要と思ったときにしか、水の感覚を感じようとしてはいないよ」

 

「あれがねぇ」

 

「まあ、モンモランシーの場合、慣れが必要そうだから、今日はもう水の感覚を開けない方がいいかもしれないね」

 

「そうさせてもらうわ」

 

モンモランシーは、水の感覚に優れているタイプなんだろうな。俺は、さっき水面をふれてみたが、水に触れただけでは、水の精霊が怒っているという感じがつかめなかったからな。水の感覚に鋭敏すぎるから、目の負傷が、自身の水の感覚の狂いになり、それがトラウマとして、精神的に病む原因となったのかもしれないな。まあ、今は直接関係はなかろうと、襲撃は夜中だというのとだいたいの方向はわかっているので、その近くで野営することにする。

 

夕食をとったあとに、ルイズをサイトに寝かせてもらってから、今晩の襲撃対策の話をする。

 

「水中に入ってくるのは、モンモランシーの言った通りに、風のメイジと火のメイジのコンビが、最低1組はいるだろうというところだ。それができるレベルのメイジが複数いるというのは考えづらいから、多くても2組だと思う。地上では、それに対して無駄な力を使わないように、幻獣などからの護衛として1人か2人ぐらいついてくるかもしれないから、多く見て、風のメイジが2人に、火のメイジが2人に、系統不明のメイジが2人の最大6人といったところだろう」

 

「メイジが6人って、どうするのよ」

 

「ラインが6人なら、どうってことはないよ」

 

「なに。その自信」

 

「戦闘時のラインとスクウェアには、それ以上の差があるってことさ。だけど、トライアングルが3人となると、相手の戦闘技術次第だけど、くるしいかもしれない」

 

「あくまで苦しいなのね」

 

「まあ、水辺だし、今日は水辺の儀式がきちんとできているからね」

 

そこで少しばかり考えて、

 

「サイトの戦闘能力が知りたいかな。他のメンバーはだいたい推測がつくから」

 

「えーと、戦闘能力って?」

 

「実践経験というのがいいかな」

 

「それなら、ギーシュが最初で、次にフーケまでは勝ったけれど、物取りの弓には身を隠す場所がなくて、タバサとキュルケに助けてもらった。そのあとはワルドに手合せで負けたのと、傭兵たちの襲撃では、身を隠すのに手いっぱいだったかな。そのあとワルドの風の偏在の『ライトニング・クラウド』で負けて……」

 

「ちょっと、まてぇー! 『ライトニング・クラウド』を受けて生きているのか?」

 

ライトニング・クラウドは、トライアングル・スペルでも上位にあるものだ。メイジならともかく、単なるメイジ殺しである平民では、ほぼ死んで当然っといってよい魔法だ。

 

サイトが、大剣を引き出しながら

 

「このデルフが、魔法を吸ってくれたから、腕のやけどだけですんだ」

 

「ようやっと、俺の出番が……」

 

「こいつ口が悪いから、しまっておくな」

 

「出番はこれだけかよ」

 

「インテリジェンス・ソードか。噂には聞いていたが初めてみるな。しかも魔法を吸うとはメイジの天敵だな」

 

「だろう。けど、今のようにしっかりしたのは、さっきの話の次なんだけど」

 

「悪かった。続きを話してくれ」

 

「ワルドとその風の偏在に、とある理由で対決することになったのだけど、そこでデルフがサビた状態から今のようにピカピカになって、魔法がきちんとすえるようになったんだ」

 

「続きを」

 

「最初は5対1だったんだけど、ルイズが1人を倒してくれたのと、俺が壁際で3人を相手にしていたから、なんとかなっていたんだけど、このままじゃ無理だと思ってかけにでたら、3人をたおせたんだけど、ワルド本人には逃げられた。それからは……」

 

ワルドというのは一緒にアルビオンにむかったワルド元隊長のことだろう。微妙にニュアンスをかえているみたいだが、ルイズの魔法の威力というのは、風の偏在を消し去れるのか。ルイズが惚れ薬でおかしくなければ、戦力に加えたいところだ。

 

ワルド隊長が風の偏在を4人だしたということは、本来なら、トライアングルまではさがっているが、3人の風の偏在しか対決させていないということは、サイトをなめていたのだろう。そうでなければ、1人に相手をさせて、トライアングル・スペルを3人で交互にだしていけば、通常なら、勝てるだろう。ここでそれを言って、サイトの士気をさげることはないと判断した。

そのあとの、話は亜人退治が中心だから、今回の水の精霊の襲撃者退治には、あまり関係なかろう。

 

「サイトにもう少し確認したいのだが、メイジとの夜間戦闘はあるか?」

 

「ああ。『ライトニング・クラウド』をくらった時ぐらいかな。今ならデルフがうけきってくれると思う」

 

サイトの考えは少々甘いようだが、剣士なら、相手の魔法がはっきりみえる方がよいだろう。

 

「サイトは、火のメイジを相手にしてくれ。しかも1人ずつ確実にな。それ以外は俺が受け持つ」

 

さて、まわりには話していなかったが、こちらはガリア方面だから、噂に聞く北花壇騎士団が相手の可能性もある。今日だけで戦闘が済むと良いのだがと、少々考えすぎかもしれないかな。

 

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