東方殺意書   作:sru307

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 改訂作業において、今まで一緒だったプロローグを分けて投稿しました。
 1000字以上にしましたが、無理矢理だったかなあ…


プロローグ「絶望の始まり」

プロローグ「絶望の始まり」

 

 

 

 ここは幻想郷。忘れられたものの楽園。

 

 人々の記憶から消失した人、物が行き着く、いわば天国の地。幻想郷の地は誰もが平等に、平和に暮らせる―――わけではない。人外の生物、いわば妖怪をも受け入れる世界。忘れられ、元には戻れない地。幻想郷に住むある賢者はこう言う。

 

 

『幻想郷はすべてを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ』

 

 

 残酷。これはその言葉が人々の考えに浮かんでくるまで幻想郷を追い込んだ、ある異変の物語―――

 

 

―魔法の森―

 

 

 始まりは秋の夜の魔法の森。日中は妖精や妖怪が普段通りの生活を行い、この時間帯になれば狩りの時間である。狩るのはもちろん、人間だ。しかし人間も馬鹿ではない。電気が通っていないここ幻想郷では、人里まで行かない限り夜にこの魔法の森に足を踏み入れる者はいない。故に妖怪や妖精は、日中に得た木の実などで食料をまかなっている。

 

 だが時折、ある賢者によって外の世界の人間が『神隠し』に遭うことがある。その神隠しの行き先はここ幻想郷、つまり、神隠しに遭った人間が魔法の森に入れば、知らぬ間にその人間は妖怪や妖精にとって豪華な食料と化す。そんな物騒な森なのだ。

 

 しかしこの異変は、神隠しなんて関係なかった。彼は、なぜ幻想入りしたのか、自分も、この異変に関わる者も知らなかったのだから。

 

 

「ううう…」

 

 

 彼は苦しんでいた。森の中で、仰向けになりながら。体が震えている。秋の夜の寒さではなく、体全体がきしむように痛んでいるのだ。

 

 

 それもそのはず、彼の腹には―――背中を貫通するように大きな穴が空いていたのだから。

 

 

 普通なら声すら発する事なく死を迎えるのがその体の定めだ。だが彼の体は動いていた。何を持って動いているのかは分からないが、とにかく生きて動いていた。痛みに満ちた体は、少しずつ力を取り戻していく。

 

 

「いったい…何を迷っていたのだ、俺は」

 

 

 彼は開き直ったかのように言った。体をゆっくりと起こす。先ほどまで痛がっていた様子が見られない。暗闇の中、彼の腹の穴が赤く燃え上がるようにわずかな明かりを醸し出す。目も赤く輝き出す。その赤は、完全に人間のものではなかった。決して人間が触れてはいけない、強大な力の何か。

 

 

「これだ。これが、俺に新たな力を与える…!」

 

 

 彼は立ち上がった。赤く、炎のように燃え上がる波動を腹に穴が開いた体にまとわせて。そして吠えるように、高らかに宣言するように大きく口を開けて言った。

 

 

 

「我が名はリュウ!殺意の波動に目覚めし者!!」

 

 

 

 これが、絶望の始まりだった―――

 

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