東方殺意書   作:sru307

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ほぼ守れていない週1ペースです。申し訳ございません。

ついに始まる殺意リュウvs博麗霊夢のお話。
この戦いが、事態をさらに変えていきます。


第8話「届かぬ救いの手」

第8話「届かぬ救いの手」

 

 

 

「ゆくぞ!!」

 殺意リュウは一直線に霊夢に突っ込んでいった。そばにいる文には目を合わせようともしない。

 

「おっと! いきなり私を無視とは失礼ですよ!」

 

 文がスピードの速い弾幕を展開する。しかしただ速いだけの弾幕は、殺意リュウにはガードさせるだけしかできない。

 

(やはり普通の弾幕じゃあ勝ち目はないですね…)

 

 そう思っていた文に対して殺意リュウは足を止め、文に言った。

 

「お前との死合いは期待できん」

「!?」

 

 どうやら殺意リュウは、文では自分の相手にならないと思っているようだ。あくまで狙いは霊夢ただ一人、さっきまで早苗、神奈子、諏訪子3人をまとめて相手していたときとはまるで態度が違う。明らかに霊夢を倒すことに執着している。

その狙われている霊夢は―――

 

「………」

 

 じっと殺意リュウを見たまま、動かない。力をためているのか、それとも様子を見ているのか、それは定かではないが、殺意リュウの目をしっかりと見続けている。

 殺意リュウが霊夢の様子を見て思った。

 

(来ないのか。ならばこちらから得意の間合いに持ち込んでやる!)

 

 殺意リュウが体を前に倒して霊夢に襲いかかる。

 

「結界『二重結界』!!」

「むっ!」

 

 左腕を霊夢めがけて振りかぶった殺意リュウだが、目の前に突然現れた結界にその腕をはじかれてしまった。

 

「はっ!!」

 左手に隠し持っていたお札を殺意リュウに投げつける。

 

「ぬおっ!」

 殺意リュウのガードは間に合わず、次々と被弾していった。しかし体が倒れる事はなく、霊夢との距離が離れるだけだった。

 

(…やっぱり簡単に倒れてくれる奴じゃないわね…)

 

 お札の弾幕が止む。殺意リュウは動きを止め、様子見の状態になった。

 

(不用意な飛び込みだったか…だが俺の波動拳ではあの結界を破壊するのは時間がかかり過ぎる。接近しなければ。どうする…)

 

 2人の膠着が続くかと思われたその時、殺意リュウの背後で文の声がした。

 

「私のことを甘く見た罰です! 疾風『風神少女』!!」

 

 疾風のごとき速い弾幕が放たれる。

 

「ちっ!」

 後ろをつかれた殺意リュウはバックジャンプして弾幕をかわした。霊夢との距離を離し、逆に文の方向に体を向けて距離を詰めた。標的は文に向いたようだ。

 

「どうやら殺されたいようだな! いいだろう、まずはお前からだ!!」

 

 殺意リュウが文へ猛然と体を前に向けてステップしてくる。

 

(来た…!)

 文は一気に空中へと得意のスピードで飛び立った。

 

(逃げたか…!)

 

 殺意リュウはいったん立ち止まって、空にいる文を見た。その上で、霊夢がいる後ろもちらっと見た。

 

(やっぱり本命の私に対して警戒は緩めないわね…文には悪いけど、犠牲になってでもこいつを倒させてもらうわ!)

 

 霊夢が次のスペルカードを宣言しようとした、その時だった。殺意リュウが動いたのだ。

 

「波動拳!!」

 

 殺意リュウが行なったのは波動拳だった。しかしこれまでの戦いで見せた波動拳とはまったく性質は違うものだった。その波動拳は、片手で真上に打ち出されたのだ。

 

「「!?」」

 

 真上に打ち出された波動拳は殺意リュウの頭の上ほどの高さで静止し、突然空中の文にめがけ飛んでいった。

 

「!? くっ!」

 文は横にそれてかわす。しかし、次の波動拳が飛んでくる。

 

「波動拳! 波動拳! 波動拳!」

 

 両手から次々と波動拳が放たれ、文と霊夢にも飛んでいく。

 

 

(!? 回転が上がっていって…!)

 

 

 霊夢は波動拳の嵐をかいくぐるように避けていく。しかし波動拳の弾速が速いため、気を抜いたら直撃してしまう。そのため、攻撃を考える事ができなくなってきた。

その様子は、遠目に観戦していた3人にとっても驚きの事だった。

 

「な、なんて人なんですか…」

「あいつは、今も成長しているってことかい…」

 

波動拳が霊夢と文に飛んでいく中、一発が3人の所に飛んできた。

 

「うおっ!?」

 神奈子は慌てて御柱を出して波動拳を止めたが、次々と波動拳が飛んできた。なんと、殺意リュウの波動拳の回転力が、5人まとめて休む間もなく攻撃できるほどまで上がってきたのだ。

 

「ひえええ!? これ、完全に私たちも標的になっているじゃあないですか!」

 

「こんな体があまり動かない時にっ…勘弁して欲しいね!」

 

 そうは言っても殺意リュウの回転力は衰えることを知らない。むしろ、まだまだ上げていきそうな感じにも見える。霊夢は波動拳の嵐を避けながら、その様子を見て思った。

 

(よく考えればこいつはスペルカードのことは知らない。だからこのままずっと待っていても時間切れで攻撃が止むことがない! そうなれば必然的にあいつが体力切れするまで待たなくちゃいけないことになる。でも彼にはそんな様子が見当たらない…! 私たちに接近をするよう強要しているんだわ!)

 

 波動拳の嵐はますます激しくなり、霊夢ですらも避けるのが難しくなってきた。二重結界があるおかげで直撃は防げるものの、こちらが弾幕を張れる隙がない。

 

(最初は的確に私や霊夢さんに向けて飛んでくるだけだったのに、いつの間にか行動を制限するまでになるとは…ただの腕力だけが強い相手だと見くびっていたようですね…)

 

 文はそう考えるうちに、自然と高度を下げていった。文自身はその事に気づいていなかった。その油断を殺意リュウは見逃さなかった。

 

(!! 来た!)

 殺意リュウは打ち続けていた波動拳を止め、文が真上にいる所まで文にも、霊夢にも悟られぬよう素早く動いた。そして足に力を思いっきり入れて大ジャンプした。

 

「!? しまっ……!」

 文は不意を突かれたため、なすすべがなかった。

 

「昇龍拳!!」

 

 昇龍拳は文の顔面にクリーンヒットした。しかしそれよりも衝撃的なのは、なんと殺意リュウが地上から約8メートルも助走なしでジャンプしていることだった。

 

「!! 文さん!」

(なんて高さなの…!!)

 

 文は墜落する飛行機のように力なく妖怪の山の麓へと落ちていった。あの様子からして、おそらく意識を失ってしまったのだろう。文は完全に戦線から離脱してしまった。

こうなれば、殺意リュウの標的はただ1人―――

 

「ようやくだ。貴様と死合い、俺が完全になる時が、ようやく来た!!」

 

 殺意リュウは霊夢に向き直った。その瞬間、殺意リュウの体に纏う殺意の波動が、紅魔館の時よりも荒々しく揺らいだ

(まずい…あの成長ぶりを見ていると、博麗の巫女でさえもこいつを倒せるかどうか…)

 

 そう思った神奈子が霊夢に向かって叫んだ。

 

「霊夢! お前はいったん逃げろ! お前でもこいつには勝てるかどうかが怪しい! 私たちが時間を稼ぐから―――」

 

 しかし霊夢はその言葉を途中で静止させた。

 

「ダメよ!」

 殺意リュウから目線をそらさずに言った。

 

「こいつは…負傷しているあんたたちが10秒も稼げる相手じゃない!」

 

 その言葉に殺意リュウはわずかに笑みを見せた。

 

 

「ふっ…まさしくその通りだ。さっきお前たちを波動拳で狙ったのは単なるおまけに過ぎないからな」

 

 

「!? あ、あの攻撃がおまけって…!」

 

 

 その言葉から分かるのはただ1つ。波動拳の嵐が守矢神社一行を巻き込んだのは、殺意リュウに余力があったからついで、ということだ。

 

「それにたとえお前たちが時間を稼げたとしても、俺はこいつをいくらでも追いかけてやる。俺が完全になるためにな!!」

 

 殺意リュウは堂々とした態度で、霊夢に対する殺意を見せた。

 

 その態度に霊夢は思わず息をのんだ。彼の恐ろしさは、博麗の巫女である彼女を怖じ気づかせるものでもあった。

 

(…! 怖じ気づいちゃダメ…私は博麗の巫女なんだから!)

 

 心の中で自分を奮い立たせる。しかしその心には、疑問が残っていた。

 

 

(それにしても、リュウを見ていると私の中に変な疑問がわく…そう、リュウがまるで異変の元凶じゃないような、そんな感じが…)

 

 

 霊夢の頭の中に浮かぶ疑問が、雑念となって霊夢の集中力を妨げる。しっかり殺意リュウを意識していても、その疑問がわき上がってくる。

 

「さあ、行くぞ!!」

 

 殺意リュウが一直線に霊夢との距離を詰める。腕の届く間合いに入り込むと素早く右フックをかましてきた。しかし霊夢はしゃがんでかわす。

 

「ぬん!」

 殺意リュウは続けて美鈴にも喰らわせた、大ぶりのかかと落としを放った。霊夢は後ろに飛び、それを避ける。

 

(文のように狙ってくるでしょうけど、空を飛ばないと攻撃できる隙が生まれないわね…)

 

 そう思った霊夢は、その思いの通り、素直に空へと飛び立った。

 

(またか…!)

 

「霊符『退魔札乱舞』!!」

 お札の雨が、殺意リュウめがけ降り注ぐ。しかし殺意リュウは阿修羅閃空で素早く横にかわした。

 

(! あれが、美鈴が言っていた変な移動ね…確かにこの距離なら必中距離だった、でも当たっていない、あれは弾幕をすり抜けているとみて間違いなさそうね)

 

 殺意リュウが手を上に上げようとしている。再び波動拳の嵐を起こす気だ。

 

「波動拳!」

 

(やっぱりそうしてくるわね…ここはあえて地上に…)

 

 霊夢は突然殺意リュウめがけ急降下し、足蹴りを殺意リュウにかます。

 

「むっ!」

 殺意リュウは片腕を上げて、蹴りを防御する。霊夢はそこから追撃を入れようとするが―――

 

(!)

 さっき打った波動拳が、今になって霊夢に飛んできた。霊夢は殺意リュウから足を放して地上に降りてしまった。波動拳は結界が防いだものの、殺意リュウとの距離を縮めてしまった。

 

「うっ、しまった!」

 

 霊夢は素早く後ろに飛びながら弾幕を発射した。しかし殺意リュウは咲夜との死合いで見せた、一度だけ攻撃を受けてもひるまない謎の行動をして弾幕をはじいた。

 

「なっ!?」

「もらった!」

 

 霊夢はとうとう殺意リュウの接近を許してしまった。だが霊夢も無策ではない。接近戦になったとき、弾幕は余計に当たりやすい。その事を知っていた霊夢は思い切ってスペルカードを宣言した。

 

 

「ぬ!?」

「神霊『夢想封印』!!」

 

 

 大量のお札と七色の弾が組み合わさった弾幕が、殺意リュウに襲いかかる。

 

(この距離ならあの変な移動も、さっきの行為もできないはず…!)

 

 弾幕は次々と殺意リュウに直撃し、煙を巻き起こした。

 

「直撃した…間違いなく、直撃したよ!」

 諏訪子がやや興奮気味に言う。霊夢の勝利を確信しているのだろう。霊夢も弾幕が当たったことを確認した。

 

 

 そこまではよかった。だがその後だった。わずかに構えを解いた瞬間に、煙の中から右腕が霊夢の腹めがけ飛んできたのだ。

 

 

 ドゴン!!!

 

 

「がっ……はっ……!!」

 霊夢の体が「く」の字に折れ曲がった。

 

 

「!! そんな、あの弾幕の中、ひるまないで…!!」

 

 

 殺意リュウが煙の中から姿を表す。その体を見た神奈子は驚いた。

 

 

「!? あ、あれだけの数の弾を喰らったのに、傷一つついていないだと!?」

 

 

 そう、殺意リュウの体には、傷一つついていなかったのである。その代わりか何か、殺意の波動がより赤く燃え上がっているように見えた。

霊夢が膝をつく。その隙に殺意リュウは通常の波動拳の体勢に入る。しかしそれもいつもの波動拳ではなかった。

 

 

「おぉぉぉ……」

 

 

 殺意リュウは両手に力を入れた。すると片手に1つずつ、黒い波動拳が完成し、それを1つにまとめた。1つになった波動拳は殺意リュウの両手からあふれるほどの波動に満ちている。その波動拳にさらに力をこめ始める。

霊夢は体を動かそうとするが、先ほどの痛みが襲いかかって動けない。その間にも波動拳の力がたまっていく。

 

「ぐ…まずい…!!」

 

 守矢神社一行も動こうとするが、先ほどのダメージが大きすぎてまだ動けなかった。このままでは―――

 

 その時、里で霊夢からはぐれてしまった紫たちが、守矢神社を目でとらえていた。だがそれは、霊夢の危機を目の当たりにすることにもなった。

 

「!! 霊夢が!!」

 

 慧音がすぐに霊夢の危機を察した。だが霊夢と一同の距離はもう霊夢を救うことができないほど絶望的だった。

 

 

「消し飛べぇ!!!」

「避けろ!! 霊夢っ!!!」

 

 

 魔理沙が大声で霊夢に呼びかけるも、既に手遅れ、殺意リュウが霊夢めがけ力のこもった波動拳を発射した。

 

 

 その瞬間、霊夢は変なものが見えていた。

 殺意リュウの後ろに、何か逆立った髪をした、目をぎらりと輝かせる謎の生き物がいたのだ。黒いシルエットになっていて顔はよく分からない。だがその生き物は、殺意リュウを殺すような勢いで殺意リュウと同じ、波動拳の体勢をしていた。

 

 

(…!! まさか、この異変の元凶って―――)

 

 

 霊夢の考えは殺意リュウの波動拳が直撃したことで途絶えた。霊夢は無抵抗に喰らい、そのまま守矢神社に吹っ飛んだ。体が強く打ち付けられ、守矢神社の柱にヒビが入る。そのまま、脆くも守矢神社は倒壊し、霊夢はその下敷きになっていった。

 

 

「霊夢っ!!!」

「霊夢――――――!!!!!」

 

 

 紫と魔理沙の悲痛な叫びが、幻想郷の空に響き渡った。

 




 今回は急いでつくったため、誤字脱字、話のつじつまが合わない部分が多いかもしれません。
 ありましたらこれまで通りご指摘願います。
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