東方殺意書   作:sru307

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 1週間かけておいてなんで短いんだよ、というツッコミはスルーでお願いします。今回短くしないとこの後が長くなっちゃうんですよ…



第16話「戦闘開始」

第16話「戦闘開始」

 

―魔法の森―

 

「ねえ魔理沙、本当にここに霊夢がいるの?」

 

 アリスが魔法の森上空を飛びながら聞く。彼女らは何の証言もなく、魔理沙が魔法の森にいると言ってここまで来ていたのだった。

 

「ああ。間違いない、ここに霊夢の雰囲気を感じるぜ…」

 

 魔理沙は感覚を研ぎ澄ましているらしく、静かに言った。情報がない今、頼れるのはこの長らく霊夢のそばにいたときに感じる空気だ。

 

「それにしても霊夢が殺意の波動に飲まれているのに、雰囲気で分かるのね、魔理沙は。霊夢と関係が深いのもうなずけるわ」

 

 うどんげが魔理沙の様子を見ながらそう言う。

 

「とにかく、降りてみませんか? 霊夢さんは今やリュウと同じ技を持っているのは分かり切っています。森の深いところからあのジャンピングアッパーが来てもおかしくありませんから…」

 

 殺意リュウが使う技を一番最前線で嫌と言うほど見せられた早苗らしい言葉が出た。ジャンピングアッパー、昇龍拳の威力は神奈子をノックアウトした実績がある。しかもあの勢いで飛んでくるのだから、とっさに回避するのも難しい。

 

「リュウの恐ろしい所はそこよね。弾幕を冷静に、しかも時に強引に突っ切り、接近戦に持ち込んでくる…私たちは格闘の心得なんてないから、なおさら厄介になる…」

 

 アリスが殺意リュウと戦うための策を考える。殺意リュウの動きを考える事は、普段では絶対に戦うことのない霊夢、つまりは殺意霊夢の行動を考えることにもつながるからだ。あの力強い殺意霊夢の様子をその目で見ているのだから、なおさら容易に想像できた。

 

「降りてみるか…」

 

 魔理沙は警戒しながら、少しずつ魔法の森へと高度を下げていき、中へと入っていった。アリス、早苗、うどんげもそれに続いていった。

 

 森の中に入ってみると、朝霊夢と一緒に探索したときと同じく、静かだった。これは魔法の森にいる妖精や妖怪達がどこかに行ったか、それとも…

 

「静かすぎますね…でも気を緩められないのがなんとももどかしいというか…」

 早苗がこの静けさの中でつぶやく。いいときなら癒やし、悪いときは恐怖を生んだりするこの静かさは、今では油断を誘うかのようだった。

 

「…でも異常な波長を感じないわ。この近辺には霊夢はいなさそうよ、魔理沙」

 うどんげが波長を探りながら周りを警戒する。魔理沙もそれは分かっていたようでこう答えた。

 

「ああ。ここからは歩いて探すしかないな」

 

 一同は森の深くへと足を踏み入れていった。

 

 魔法の森の奥深くは、幻想郷内でもその全てを知っている者はほとんどいない。いわば人類、いや生命未踏の地であり、生態系もその様子も謎のまま放置され続けてきた場所。魔理沙達一同は殺意霊夢を追って、いつの間にかそこにまで足を踏み入れていた。あれからしばらく歩いているが、あるのは訪れる静寂だけで特別変わったことがない。

 

「霊夢…なんだか、フラフラしているみたいだな。どんな所を歩いているんだ…?」

 

 霊夢の雰囲気を感じながら歩いてきた魔理沙はつぶやく。

 

「確かに、森の深くに入ってから蛇行しているような気がしますね」

 

 早苗も魔理沙に同意する。さらに歩みを進めて行くと―――

 

「…! この匂い…」

 

 魔理沙が嗅いだことのある匂いを感じ取る。その匂いとは―――

 

「…血の匂い…ま、まさか!?」

 

 うどんげの言葉に、一同の歩む足が早足になる。周りを素早く見渡していると、アリスがあるものを見つけてしまった。

 

「! あれは…!」

 

 アリスは指さした。それは、紅魔館崩壊前にも大量にあった、妖怪の倒れた体だった。一同はそこへ急いでかけていく。

 魔理沙が体に触る。その体は息をしておらず、もう手遅れのようだ。そしてその死体の特徴として―――

 

「この内出血の数…何者かが強烈な力で殴ったんだわ」

 

 うどんげが死体を見てそう言う。そしてそれができるのは今現在4人だけ―――

 

「魔理沙、霊夢は近くにいるわ」

 

 アリスが確信を持って言う。魔理沙が雰囲気を察知しているのと、この静けさから殺意霊夢が妖怪・妖精を殺しているのだと想像できた。

 

「…血が続いてるな。追っていこうぜ」

 

 妖怪の死体から点々と、血が地面に落ちて一本の筋が見えるように続いている。迷いなく一同はその後を追っていく。それに伴って、血の様子も変わってきた。

 

「血が、まだ固まっていないわ…」

 

 うどんげが血を時折見ながら言う。この血は今さっき、地面に落ちたものだと教えてくれた。一同の気がさらに引き締まる。

 そしてついにその時が来た。風が辺りの木々をざわめかした瞬間、荒れた息使いが聞こえたのだ。

 

「はーっ、はーっ…」

 

 その声に聞き覚えがあったのは言うまでもない。

 

「!! 霊夢っ!!」

 

 魔理沙は声のした方向に一目散にかけだした。草木をかき分け、広い場所に出る。そこに―――

 

 いた。殺意霊夢だ。所々、服に穴が空いているが、その体は健在だ。魔理沙に対して背を向けている。そして―――

 

 白い袖が、赤く染まっていた。手は赤く血塗られており、その血が袖を赤く染めてしまったのだろう。

 

 殺意霊夢は魔理沙に気がつき、そちらに体を向けた。その間に、3人も魔理沙の元にたどり着く。

 

「…あんた達は…そう、あんた達も反抗するというのね、私に…」

 

 殺意霊夢は一同に対する静かな殺意を醸し出す。

 

「あの力を見せつけられておいて、まだ反抗するなんて…。あんた達はよほどあきらめの悪い奴らなんだって納得するわ…」

 

 殺意霊夢はそう言うと、体の殺意の波動を揺るがせた。そして言葉を続ける。

 

「最後の忠告だわ。大人しく私に殺されなさい。全ての生き物の平等のために!!」

 

 だがその忠告は一言で返された。

 

「「「「断る!!!」」」」

 

 一同は全員一致で断った。その言葉に理由なぞいらなかった。殺意霊夢はイラッとしたのか、顔をゆがめた。そして一同に手を見せた。

 

「この血を見なさい!! これは私の掲げる平等に従わなかった者の末路!! あんた達もこうなりたいというわけ!?」

 

 殺意霊夢は手の中に残っている血を見せる。その血は手からあふれ、血のたまり場を作り出す。だが魔理沙は怖じ気づかなかった。

 

「…見苦しいぜ、霊夢! お前がそんな、誰でも間違っているって分かる事を言っているのはな!!」

 

 魔理沙は構えた。

 

「霊夢さん…今回はお遊びでも何でもありません。あなたを私の全身全霊でもって倒させていただきます!!」

 

 早苗はお祓い棒を殺意霊夢に向ける。

 

「霊夢…あんたを倒して、平和な幻想郷を取り戻させてもらうわ!! 覚悟しなさい!」

 

 アリスは持っているありったけの人形を浮かばせる。

 

「あんたの言葉、全部前言撤回って事にしてあげるわ、霊夢!!」

 

 うどんげが銃の形に手を構える。

 

「来なさい! 結局あんた達に訪れるのは、平等なる死だけだって事、身にしみるほど分からせてやるわ!!」

 

 殺意霊夢も構え、戦いの火ぶたが切って落とされた。

 

―紅魔館跡地―

 

 一方、紅魔館一同は―――

 

「本当に戻ってくるんですか、フラン様は」

 美鈴がレミリアに聞く。

 

「ええ。絶対よ。絶対に、フランはここに戻ってくる」

 レミリアは断言する。その中で、周りの警戒も怠らない。

 

「しかしこんな所にまた戻ってくるとはね。ここでリュウと戦っていたなんて、戦った本人なのにとても思えないわ」

 

 パチュリーが周りの瓦礫を見ながら言う。紅魔館は水浸しのまま、これまで放置されたままで、あの時と何ら変わりがなかった。

 

「足場が悪いですね…簡単に地面から崩れないとは思いますが…」

 

 咲夜が地面を気にする。紅魔館の瓦礫は足場を悪くしており、足を下ろしていられる場所は少なかった。

 

「ある程度瓦礫をどかしましょうか? この位なら、私の魔法でもどうにかできますから…」

 

 小悪魔が提案するが、レミリアが断る。

 

「駄目よ。この瓦礫の中に、まだ残っているかもしれない大切なものを捨てる訳にはいかないから」

 

 レミリアはもう紅魔館の修復も考えているようだ。それだけ元の生活、フランのいる生活に戻りたいという願望があった。

 

「レミィも変わってないわね、大切なものに執着する所」

 パチュリーが半分あきらめたような顔で言う。わずかに緊張が緩まった、その時だった。

 湖の水面が、風もないのに小さな波紋を起こしたのだ。

 それに気づいたレミリアが皆に警告する。

 

「! 来るわよ!」

 

 レミリアは波紋が起こった正面の方に顔を向けていた。そこに殺意フランが、本当にやってきたのだ。

 

「! あれは本物です!! まさか、お嬢様の言うとおりに…」

 

 美鈴が戦いの構えを取りながら言う。殺意フランは、紅魔館の面々に向けて一直線に低空すれすれを飛んで近づいてくる。そしていきなり手を前に突き出し、スペルカードを宣言した。

 

「禁弾『カタディオブトリック』!!」

 

 殺意フランはただ目の前の生き物を破壊するという衝動のみで動かされているようだ。

 

「もうやる気のようね…いくわよ、みんな!!」

 

 レミリアが大声を出した。

 

―命蓮寺―

 

 2つの戦いが始まる中、命蓮寺では里で阿求と再び別れた八雲紫一同が同盟を組んだ幽谷 響子、ナズーリン、雲居 一輪、村紗 水蜜、寅丸 星でなる命蓮寺組、宮古 芳香、霍 青娥、蘇我 屠自古、物部 布都でなる神霊廟組と合流した。そして、はたての念写で残る殺意リュウの居場所を特定しようと動いていた。

 

「みなさん、できました!」

 

 はたてが念写した紙を掲げる。一同はそれに集まった。念写して見えたのは―――

 

「! これがリュウなのか!?」

 

 ナズーリンが驚きの声を上げるが、それは命蓮寺で待っていた者全員同じ事だった。彼女らは、Oniの姿を見ていても、殺意リュウの姿は知らなかったからである。

 

「そんなことより、今リュウがいるのはどこなの?」

 

 青娥は皆を冷静にしようとなだめた。殺意リュウの居場所には、初めて殺意リュウを見る者達ではない、妖夢が気づいていた。

 

「ここって…まさか、白玉楼!?」

 

 紙に写る殺意リュウは、階段を上る姿で写し出されていた。その階段に妖夢は見覚えがあったのだ。

 

「後階段で考えられるのは、博麗神社か守矢神社のどちらかだけど…紫!」

 

 幽々子が紫に聞く。それはもちろん、境界の開けない場所だ。

 

「博麗神社…大丈夫、守矢神社…これも大丈夫…」

 

 紫は順番に調べていく。そして問題の白玉楼はというと―――

 

「白玉楼…開けないわ! 間違いない、リュウは今、白玉楼にいる!!」

 

 紫の声で聖が号令をかける。

 

「私たち命蓮寺、地霊殿の皆さんは太陽の畑を、神霊廟、紫さん達は白玉楼へ! 急ぎましょう!」

 

 幻想郷の運命は存続か滅亡の2つに定められた。果たして、どちらに傾くのか…?

 

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