東方殺意書   作:sru307

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第3話までがpixivにも投稿し終わったぶんなので連続投稿です。
更新ペースは月1を目指していますが、注意書きにもある通り基本不定期であることは同じなので、こればかりは許してください。

次なる死合いを求める者の新天地の物語。
攻撃手段が原作どおり再現されているか不安ですが、どうぞ。


第2話「いざ死合いへ」

第2話「いざ死合いへ」

 

 

 一方、殺意リュウは森を抜け、阿修羅閃空で霧の湖を水面スレスレに飛んでいた。彼の手は完全に妖怪や妖精の血まみれと化し、他人からは彼が殺人鬼に見えることと等しかった。

 

「やはり森には、満足に死合える者などいなかったか…」

 

 血のついた手とは裏腹に、彼の息は全く乱れておらず、弱者を見定める目も健在だ。手から滴り落ちる血が、点々と湖を赤く染めていく。まるで今までに殺した死体の数を数えるかのように…

 

 殺意リュウは強者を当てもなく探していた。飛んでいるうちに霧がだんだんと濃くなっていき、滴る血が見えなくなり始めたその時だった。

 

「! ……」

 

 濃い霧の間から、わずかに紅色の壁か何かが見えた。島か何かの上にある建物らしい。よく見えないため、思わず霧を手で払いのけようとした。しかしそんなことは無意味である。すぐに落ち着きを取り戻して目を凝らしてみる。間違いない。紅い壁の内側に、紅い館が建っている。

 

 殺意リュウは迷うことなくその方向へ向かった。だんだん館が近くなってくる。―――眼前になる前に動きが止まった。ある者に目が止まったからである。

 

 

―紅魔館・門前―

 

 

「Zzz…Zzz…Zzz…」

 

 目を付けられたのは紅魔館の門番、紅 美鈴だった。彼女は門番の意味がまったくない状態である居眠り状態に入っていた。近くに恐怖の存在がいることも知らずに―――

殺意リュウは美鈴をじっと遠目に見つめた。沈黙が流れる。沈黙はすぐに途絶えた。待っていられなかったのか、殺意リュウが両手からいかにも邪悪な気を練り上げて美鈴めがけて撃ったからだ。

 

「波動拳!!」  

「はっ!!?」

 

 美鈴は殺意リュウの声か、はたまたその存在に気付いたのか、目が覚めた。波動拳は美鈴の前の地面に勢いよく直撃し、爆風が巻き起こった。美鈴は素早く構えたため、少し吹っ飛ばされる程度で済んだ。

 

 美鈴は後転して受け身を取り、素早く立ち上がって状況を確認した。前方に殺意リュウが立っている。

 

(!? 人間!? いや、あの気のようなオーラと体は一体…)

 

 美鈴は殺意リュウの立ち姿に内心驚きながらも、門番の決まり文句のような言葉を口にした。

 

「お前は何者だ! 許可なくここは通さないぞ!」

 

 殺意リュウはその決まりに文句に対して決まり文句で返した。

 

「我が名はリュウ! 殺意の波動に目覚めし者!! ここにいると思しき強者を求めて来た!!」

 

 殺意リュウは美鈴の話を聞くだけ時間の無駄だと思っているらしく、それだけを済ませてさっさと先を急ごうとしている。

 

「!? 何のことを言っている! 私はお前のことを知らない! なら、お嬢様が知っているはずもないぞ!」

 

 美鈴はそれを許さないとばかりに構えて立ちふさがる。

 

「俺はただ死合うことを求めているだけだ。今まで『死合い』にふさわしくないことばかりしてきたからな…。どけ! お前との死合いは期待できない! 今すぐに消え失せろ!」

 

 殺意リュウは狼のように歯を食いしばり吠えるような顔つきで美鈴をにらんでいる。言った通りにしなければ、今にも飛びついて噛みついてきそうだ。

 

「言っていることが理解できませんが…引く気はないようですね。ならば、無理やりにでも引く気にすればいいだけ!」

 

 美鈴は決断した。この男をここで止める。命の鼓動を止めてでもここでやらなければ、この男は目の前からいなくならないと。

 

「邪魔をするか! ならば、二度と立ちふさがらぬよう、殺してやろう!」

 

 2人は戦いの構えをとる。どちらも隙のない、独特の構えだ。

 

「まずは小手調べ…彩符『彩雨』!」

 

 花びら型の弾幕を放つ。だが殺意リュウは一歩も動かなかった。

 

(!? 避けない!?)

 

「死合いの場に小手調べも手加減もない!」

 

 殺意リュウは左腕と左足を盾のように構え、自身に当たる弾だけを見切って防御した。体が少し後ろに下がったが、まったく問題なく受け止めた。

 

「俺を倒すというのなら本気を出せ! 小手調べや手加減なぞただの小細工に過ぎん! 死合いの場では不要! さあ続けろ!!」

 

 殺意リュウは挑発的にも、挑戦的にも取れる言い方をした。美鈴の言葉に怒り狂ったのかもしれない。美鈴は少し気圧されたのか、沈黙した。しかし

 

「…あなたをますます通らせてはいけないようですね。ならば見せてあげましょう!幻想郷のルール『スペルカード戦』の弾幕地獄を!」

 

 殺意リュウは彼女の目が変わったことを見た。その瞬間、彼の体に纏う殺意の波動が揺らいだが、美鈴はそんなことを気に留めなかった。

 

「…ぬん!」 

(!? 炎!?)

 

 殺意リュウは両手から炎を纏った波動拳―――灼熱波動拳を美鈴めがけ発射した。紅魔館の門を背にして戦う美鈴は避けられなかった。たとえ門があるといえど、避けたら何かに引火して火事の元になりかねないからだ。

 

(こうなればこれで…!)

 美鈴は脚を大きく開脚し輪っかの弾幕を作り出した。前に進んだ弾幕は灼熱波動拳と相殺した。その相殺が確認された瞬間―――殺意リュウが相殺の反動を振り切って前に突っ込んできた。

 

「!? しまった…!!」

 

 美鈴は紅魔館の事を考えたが故に『相殺』という選択を選んだ。しかしそれが次の選択を遅らせる原因となったのだ。

 殺意リュウの左ストレートが、美鈴を襲う。美鈴は反射神経でガードする。

 

「ぬうりゃ!」

「ぐっ!?」

 

 美鈴の両腕に衝撃と痛みが走る。今まで感じたことのない力…

 

「くっ…はっ!」 

「むう…!」

 

 殺意リュウの腹に蹴りを入れる。殺意リュウは体を二つに折った体勢になり後ろに下がったため、どうにか距離を離すことができた。

 

「ふん…少しは骨のあるやつだな…」

 殺意リュウは吹っ飛びはしたものの、全くダメージを受けていないようだ。

 

(こいつに接近されたら殺される…! それだけ、こいつの殺意が肌に感じるし、素手なのに威力がそこらの妖怪の比じゃない! 一気に決めないと、弾幕を見切られて接近されてしまう!)

 

 彼に接近を許してはならない。美鈴は殺意リュウの一撃を受けた時、そう思った。とにかく、次の弾幕を使い、接近戦を避けなくては。

 

「彩符『彩光乱舞』!!」

 

 さらに密度の高い弾幕が殺意リュウ目がけ飛んでくる。しかし、先ほど取った距離がここで仇となるとは、美鈴も思わなかった。

 

 殺意リュウは全身の力を込め、大きく前へ移動した。なんと、その移動最中、美鈴の放った弾幕は全く当たらなかった。

 

 

「!!? あ、当たっていない!!?」

 

 

 確かに弾幕は殺意リュウの体に当たっている。だが弾は殺意リュウの体を通り抜け、何もない空間へと飛んでいた。

 

 

阿修羅閃空―――これはただ空中を移動するだけではない。移動しているときは弾も、どんな攻撃も幽霊のようにすり抜け、相手との距離を調節できる技―――

 

 

 美鈴は寝ているが故に殺意リュウがどうやって移動しているかを見ていなかった。これまでの経験で、『空を飛ぶ』という移動手段しか見てこなかった。それゆえに初めて見た技、阿修羅閃空に体が反応できなかった。

 殺意リュウはあっという間に美鈴の目の前に接近すると、左手で美鈴の顎を強烈に突き上げた。首の骨が折れそうなほどの一撃。美鈴の目線が突き上げられて上へ、その反動で下へと変わる。下に変わった瞬間、殺意リュウの大ぶりなかかと落としが背中に降ってきた。ゴッ、という鈍い音が美鈴の骨に響く。美鈴が口から血を吐いた。ここまででもかなり致命傷の状態だが殺意リュウは慈悲なく顔面に追撃を入れた。

 

「昇龍拳!!」

 

 ジャンピングアッパー、昇龍拳で美鈴の体は高く浮かび、門を超えて向こう側に墜落した。

 

「かはっ…!!」

 

 地面に叩きつけられ、さらに口から血が飛び出る。噴水のように出た血が顔にかかる。視界が、紅く染まる―――そのまま、美鈴は意識を失った。

 

 美鈴が動かないことを確認した殺意リュウは門を蹴飛ばした。門は蝶番から外れてハリボテのように美鈴の上に倒れた。美鈴はもう反応しない。と、その時、紅魔館の入口のドアが少し開いた。そこから何者かがこちらの様子をうかがっている。しかし次の瞬間、大声が響いた。

 

 

「き、きゃーーーーーーー!!!!」

 

 

 その悲鳴は紅魔館全体に、静寂な霧の湖に響いた。入口のドアはバタンと閉まり、カチャリと鍵がかかる音がした。

 

(やはりまだ弱者がうようよといるか…ならば)

 

 殺意リュウはためらいなく無言で波動拳を放ち、ドアを破壊した。そこから流れてくるのは外と同じ静寂だけである。殺意リュウはこれまたためらいなく中へと入っていった。

 

 

―紅魔館・廊下―

 

 

 今の時間帯は昼。しかし窓からの日差しは遮られ、中はろうそくの明かりが少しあるだけで暗い紅魔館の廊下を、殺意リュウは恐れることなくずんずんと進む。

 

「き、来ました! あいつです! あいつが、美鈴さんを…!」

 

 先ほど覗いていた者と同じらしき声が遠くでした。複数の気配を感じる。

 

「私があいつの相手をするから、あなたはお嬢様、パチュリー様に報告を。後できる限りの妖精メイドを動員してあいつを止めるわ!」

 

 別の少女の声が聞こえる。その次の瞬間。

 

「―――――!」

 

 殺意リュウの額めがけナイフが飛んできた。彼はナイフの角度を見切り、ナイフの柄をがっちりとつかんだ。

 

「なるほど、頭の悪い力任せの者ではないようね」

 

 いつの間にか、その少女以外の気配が消えていた。声の主以外の者は逃げ足が速いらしい。暗闇から、紅魔館のメイド長、十六夜咲夜が出てきた。

 

「…なるほど、なんともゾンビみたいな奴ね。かまわないわ。なんであろうと、お嬢様の館を傷つけようとする輩には容赦しない!!」

 

 咲夜の声を、殺意リュウは無言で受け流した。むしろ彼は、目で咲夜を判断していた―――

 

 こいつだ。

 

 こいつが、『強者』だ。彼の目がそう、彼の体に告げていた。

 

「…ようやくだ」

「!?」

 

 殺意リュウの表情が、わずかだが笑みに変わったように咲夜は見えた。

 

 

(!!? こいつ、笑っている…!?)

 

 

 咲夜は一瞬、今まで生きていた中で感じたことのない恐怖感を感じた。すぐにかぶりを振り、心を落ち着かせる。

 

「見つけたぞ強者!! さあ死合え!! 俺を満たせるのは、強者との死合いのみ!!」

 

 殺意リュウは再び構えた。殺意の波動が強く燃えさかる火のごとく揺らぐ。咲夜はその様子が誰もが不気味に思えるだろうと推測した。彼を追い出すだけでは不十分だ。彼を―――殺さなくては。

 

「…平和的解決はできなさそうですね。しかも、放っておいたら異変の元凶にもなりかねない!」

 

 咲夜はどこからか素早くナイフを取り出し、指に挟んでいつでも投擲できるように構えた。その目はつい先ほどよりも厳しかった。

 

 

 

 一方、紅魔館の地下では―――

 

「う~なんか騒がしいなあ~。お姉様たちが何かやっているのかな?」

 

 自分の部屋から出る者が、地上の騒動につられ起きていた。このとき、この者の目覚めが、幻想郷最悪の事態を招くことは誰も知るよしはない―――

 

 

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