東方殺意書   作:sru307

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殺意リュウが大暴れしていく物語。
今回、今までと比べて短い話になっていますがどうぞ。


第7話「変化」

第7話「変化」

 

 

 

 霊夢たち一同が里にたどり着く少し前の事―――

 

 

―妖怪の山―

 

 

「ふう…急な事態のせいか、距離が長く感じちゃいました…」

 

 永遠亭から別れた文とはたてが自分たちのすみかである妖怪の山に戻っていた。

 

「じゃあ文、ここから競争ね。どちらが先に号外を作れるか、競いましょう?」

 

 いきなりはたては文に提案をしてきた。確かに殺意リュウのことは、どちらも新聞のネタとして持っているものである。ならば早く号外を完成させた者勝ちというわけだ。

 

「そうですね、それじゃこの号外が早くできた方が、明日の新聞の一面を飾る権利って事で!」

 

 文も了承して、競争が始まるかと思われたその時だった。はたてが、事態が一刻を争うものであったと分かるものを見てしまったのだ。

 

「!! あれ、天狗じゃない!?」

 はたてが指さしたのは、怪我をして倒れている天狗だった。

 

「あややや!? 思いっきり競争している場合じゃないようですね。ん? ま、まさか!?」

 文は知っていた。内出血の酷いあの外傷は―――

 

「とにかく話を聞くわよ!!」

 はたてと文は倒れている天狗の元へと急いだ。

 

「ちょっとあんた、何があったの!?」

 はたてが聞くと、天狗は痛みに耐えながら話した。

 

「変な…人間が…山の中に…」

 変な人間という言葉に、文が反応した。

 

「!! まさか!! 例のあいつじゃあないですか!? どこに行ったか、分かりますか?」

 

 文がそう聞くと、天狗は弱々しく妖怪の山奥へと続く道を指さした。

 

「山奥に…入っていきました…仲間の悲鳴が、時折ここからでも、聞こえる時が…」

 

 はたてと文はお礼も言わずに、すぐ山奥へと足を踏み入れていった。

 

 

 

 妖怪の山の頂上付近には、守矢神社という博麗神社の分社がある。そこまでに至る道の始まりが、山奥にあるが、すでにそこは天狗の負傷者で道の端が埋め尽くされていた。

 

「…!! 私たちがいない間にここまで…あいつの力は、それほどまでに…」

 

 負傷者の中に、見慣れた顔の者がいた。

 

「! 文にはたてじゃないですか! 一体今までどこに…」

 

 その天狗は文とはたてに気づくやいなやすぐに駆け寄ってきた。

 

「! 椛じゃないの! その包帯、やっぱりあんたも…」

 

 それは妖怪の山の番妖、犬走 椛だった。彼女の頭には包帯が巻かれており、何者かにやられたのが一目で分かった。

 

「はい…謎の侵入者にまんまとやられてしまいました…それほどまでに、侵入者が強くて…」

 

 椛は話しながら痛がる素振りを見せる。彼女も侵入者にやられてしまったようだ。

 

「侵入者の見た目は?」

「まるでグールのような見た目で、体に穴が空いていて、この世にいる者とは到底思えませんでした。体つきは見ればすぐに分かることですが、ものすごい腕力の持ち主です」

 

 椛の証言は、的確に殺意リュウの特徴をつかんでいた。それは、文とはたての顔をゆがめることにもなった。

 2人の顔がゆがんだのを見た椛は言った。

 

「まさか、2人には思い当たる節が?」

 

 2人は話しにくくなっていたが、はたてが口を開いた。こうしているうちにも、あいつが暴れていることを考えると、という感じだった。

 

「…信じられないかもしれないけど…」

 

 はたては今まで取材していたことを椛に話した。

 

「そうですか…既に博麗の巫女や、妖怪の賢者が異変として調査に出ているのですね」

 

 椛の表情には安堵が見られない。今この近くに、異変の元凶がいるので当然でもあるが。

 

 しかし次の瞬間。

 

 

 ガラガラガラ………

 

 

 どこか遠くで、何かが崩れた音がした。音の方向からして、間違いなく妖怪の山の中、それも山頂付近で起こっている。

 

「うっ…まだいるみたいですね、みんなが心配です…」

 

 それを聞いた文が決意を固めた。

 

 

「…はたて、今回はあんたに記事を譲るわ」

「えっ?」

 

 

 はたては文が言ったことに困惑した。さっきまで競争しようと言っていた文の態度が180度変わっているからだ。

 

「ほら、さっさと号外作りに行きなさい。私は、リュウの実際の写真、その強さを見てくるから!」

 

 はたては文がその態度を緩める気がないと判断し、一息ついてから話した。

 

「分かったわ! 文…死ぬんじゃないわよ!」

「もちろん!!」

 

 文は守矢神社へと急いだ。山頂からの音なら、守矢神社以外に殺意リュウがいる場所はありえないと判断したのだ。

 

 

 

―守矢神社―

 

 

 その守矢神社―――

 

「くうっ……!」

 

 守矢神社に祀られている山の神でもある八坂神奈子が、押されている。それも神奈子1人で戦っているのではない。

 

「こりゃ参ったね…こんな奴がいようとは…」

 

 こちらも守矢神社に祀られている祟り神、洩矢諏訪子と―――

 

「私たちの攻撃を全て避け、反撃してくる…こっちの使えるスペルカードは、もう残り少ないのに…」

 

 守矢神社の巫女であり、現人神でもある早苗の2人とともに戦っているのだ。その相手は―――

 

 

「どうした? それがお前たちの本気か?」

 

 

 たった1人で天狗たちに重傷を負わせ、妖怪の山を登ってきた殺意リュウであった。彼はここまでの天狗たちの戦いで確実に疲労があるはずなのに、平然と3人の弾幕を的確に阿修羅閃空で避け、次の弾幕が放たれる間に攻撃を加えるという、今までの豪快さとは打って変わって精密に、手堅く攻撃を加えていた。

 

「なんて奴だい…私の作る御柱を、ことごとく素手で破壊するなんて…」

 

 神奈子の攻撃の要、御柱は殺意リュウの攻撃で次々と折れてそこら中に転がっていた。

 

「そんな柱では俺を止められぬと何度も言っているだろう。それが死合いの場で分からぬと言うか、貴様は! やはり貴様は、神などではないな!!」

 

 殺意リュウは相変わらずの態度を貫いている。家族同然の存在を傷つける言葉に、早苗が反応した。

 

「神奈子様になんて態度を…」

 諏訪子がすぐに早苗を制止させる。

 

「落ち着きなよ、早苗。この勝負、判断を間違えたらすぐに負けが決まる」

 

 早苗は諏訪子の顔を見た。いつになく真剣な顔をしている。諏訪子は普段なら一大事も笑顔で言ったりするのだが、その様子が一切見られなかった。

 

(諏訪子様も焦っているんだ。こんな、得体の知れないリュウって人に)

 

 早苗は、諏訪子の顔から、そう判断した。

 

「さあ、そろそろ決着といくか!」

 

 殺意リュウが自ら前に出た。

 

「くっ…神符『水眼の如き美しき源泉』!!」

 

 雨のような縦横に広い弾幕が、殺意リュウに襲いかかる。

 

(これならあの変な移動をしても確実に被弾するはず!)

 

 だが神奈子の想いは儚く散った。殺意リュウは左腕を前に出し、次々と弾幕をその左腕ではじいていく。

 

「ぬん! ぬん! ぬん! ぬん!」

 

 弾幕の雨が途切れた瞬間、殺意リュウが神奈子めがけ前に出る。再び同じ弾幕が放たれるが、左腕でさばいていく。

 

「んなっ!? そ、そんなのありですか!? 弾幕を腕1本ではじくって…!」

 

 その状況に諏訪子が素早く反応した。弾幕と弾幕の間を自分で埋めようと試みる。

神奈子のそばに立ち、スペルカードを宣言した。

 

「源符『厭い川の翡翠』!!」

 

 殺意リュウの横に列となった弾幕を展開し、それを正面から崩して殺意リュウに飛ばしてゆく。

 

(これなら当たらなくとも前に出ることは…!)

 

 しかし殺意リュウにとってその考えはお見通しだったか、思いっきりジャンプした。そして体を回転させ、神奈子と諏訪子めがけ急降下した。

 

「竜巻旋風脚!!」

「ごはっ!?」

「ごぶっ!!」

 

 空中での回し蹴りは神奈子と諏訪子の顔面をとらえ、神社の中へと2人の体を吹き飛ばした。

 

「神奈子様!! 諏訪子様!!」

 

 早苗は思わず殺意リュウから気をそらしてしまった。地面に着地した殺意リュウはそれを逃さない。一気に早苗の目の前へと移動する。

 

「!! しまっ…!」

 

 不意を突かれた早苗は目をつぶり、両腕を上げて防御した。しかしそんな体ガラ空きのガードは、殺意リュウにとっては格好の的である。大きく踏み込み、早苗の腹ど真ん中に右の一撃をねじ込んだ。

 

「おりゃあ!!」

「がっ…!!」

 

 口から内臓をはき出しそうなほどの痛みが、早苗を襲う。早苗は悶絶し、膝を地面についた。その状態に殺意リュウは容赦なく早苗の肩に右手を打ち下ろした。骨の髄まで届くかのような痛みが、早苗の体をさらに襲った。

 

「あがっ…がああああ!!」

 痛みに耐えられなくなった早苗は、前のめりに倒れてしまった。立ち上がる事ができない。骨を折ったのではなく、痛すぎて立てないのだ。顔を上げる事もできない。前が見えない中、殺意リュウが言った。

 

 

「そこで見ているがいい。お前が尊敬しているあの2人が、俺の手で殺されていくのをな!」

 

 

 その声を聞いた早苗は、何が何でも立とうとした。なんとしても殺意リュウの企みを止めなくては、と。しかし無情にも、今の体はそれに答えてはくれなかった。

殺意リュウが歩いていく音が聞こえる。行き先はおそらく吹っ飛んだ神奈子と諏訪子のいる守矢神社の中だろう。早苗は心の中で2人に謝った。

 

 

(神奈子様…諏訪子様…ごめんなさい……)

 

 

 その時だった。

 

 

「霊符『夢想封印・散』!!」

 殺意リュウの上空から、無数のお札が飛んできた。

 

「むっ!?」

 不意を突かれた殺意リュウは阿修羅閃空する間がなかったため、ガードするしかなく、お札の雨にさらされていった。

 

「れ…霊夢…さん…」

 

 早苗はその姿が見れなくとも誰が助けに来てくれたか分かった。そう思ったとき、自分の体が誰かに引っ張られるのを感じた。

 

「早苗…ここはいったん離れるぞ…」

 

 引っ張ったのは、神社に吹っ飛ばされたはずの神奈子であった。

 

「!! 神奈子様!?」

「私もいるよ~」

 

 諏訪子の声もする。早苗の体が仰向けになると、神奈子と諏訪子が早苗の顔をのぞき込んだ。

 

「2人とも…どうやって…」

 早苗は2人の顔を見ながら言う。すると諏訪子が自分の背後を指さした。

 

「あの天狗の新聞記者に助けられたんだよ」

 

 そこには、殺意リュウと相対する文の姿があった。そばに霊夢もいる。殺意リュウが、弾幕を全てガードして2人を見つめている。

 

「やっと見つけたわよ…リュウ! あんたを倒して、この異変を終わらせてやるわ!!」

「残念ですが、今回は取材はなしです…全力で、あなたを倒させてもらいます!!」

 

 殺意リュウは2人の顔を見た。すると、殺意リュウは突然霊夢をにらみつけた。

 

「…貴様か…」

「!?」

 

 殺意リュウは霊夢を恨んでいるようだった。初対面のはずだが。

 

 

「…俺の脳裏に妙ないらだちを感じさせる奴というのは、貴様のことか!!」

 

 

 殺意リュウの体に纏う殺意の波動が燃えさかる炎のように揺らいだ。

 

「これが一つの試練ということか。お前が消えれば、俺は1つ完全に近づく!! さあ死合え!!」

 

 殺意リュウは左足をズンと地面に下ろして2人を威嚇した。その威嚇に2人はおびえなかったが、文が霊夢にそっと小声で言った。

 

「霊夢さん。手加減はしなくてよさそうですよ」

 その言葉に霊夢はこう小声で答えた。

 

 

「…分かっているわ」

 

 

 異変解決を本業とする博麗の巫女として、当然の答えが返ってきた。

 だが、文は霊夢の答え方がどこか不自然に感じた。

 

 

 その言葉が、躊躇しているかのような言い方だったからだ―――

 

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