沢近さんの純愛ロード   作:akasuke

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お久しぶりです。
しばらくスクラン二次を投稿しておらず、申し訳ありません。

皆様の感想、評価のおかげで此処まで書き切ることができました。
ありがとうございました。

それでは、本編をどうぞ。


#12「純愛ロードを歩み始める彼女」

 

「……なんてこった」

 

播磨は、自分の仕出かしてしまった事実について信じ切れないでいた。

いや、信じたくないと言った方が正しいであろうか。

 

 

 

 

『おいおい、とぼけんなよー。 雨が降ってたときに、沢近と播磨が路地裏に居たじゃねーか』

 

 

 

 

先程、美琴より告げられた言葉。

彼女の言葉が再び播磨の脳裏を過る。

 

そんな状況なんて身に覚えがない、と言えれば良かった。

しかし、播磨の中で彼女の話した状況について一つだけ当て嵌まる場面があった。

 

 

雨の中。

路地裏。

沢近。

手を握り合う。

 

 

 

 

『俺は…君のことが好きだったんだっ!』

 

 

 

 

『その…わたしは、急にそんなこと言われても……』

 

 

 

 

――夢オチじゃ、なかったのかよ……。

 

好きな女の子に告白しようとして、違う女の子に告白してしまう。

そんな、信じたくない、夢だと思いたい出来事。

誰にも言われないままであれば、あの路地裏での出来事は悪い夢だと思えた。

 

だが、美琴という第三者から伝えられてしまった。

あの間違えて告白したのが夢ではなく現実だったのだと認めざるを得ない。

 

 

――じゃあ、あのお嬢は、俺に告白されたと思っているのか……?

 

路地裏で相手を勘違いして告白してしまった後、播磨は逃げ出してしまった。

誤解を解いていないのだ。

 

本人からすれば誤告白であるが、愛理は間違って告白されたなど気付きようがない。

 

 

「だ、だがよ……お嬢はあれ以降、特に何も言ってきてねーよな?」

 

もし告白されたと愛理が勘違いしているのであれば、告白の返事をする筈だ。

しかし、播磨が必死に記憶を辿っても特に告白の返事をされた覚えがなかった。

それならば、愛理自身も間違えて告白したことを気付いてくれているのでは、と淡い期待を浮かべる播磨。

 

 

「そうだっ、きっとそうだぜ。 だってよ、その後にお嬢に好きだと思わせちまうことなんて――」

 

 

 

 

『きょ、今日の放課後……俺と映画にでも――』

 

 

 

 

『あの、その……い、いいわよ』

 

 

 

 

していない、と言おうとした播磨。

しかし、彼自身が天満を映画に誘おうとして間違えて愛理を誘ってしまったことを思い出す。

 

しかも映画の内容は恋愛映画であった。

 

 

――おい、まるで俺がお嬢にアタックしてるように見えるじゃねーか。

 

その事実だけで頭を抱えてしまう播磨。

 

だが、そもそも今の状況をどのように打破すればいいのか。

愛理に対してどう接すれば良いのか。

どう誤解を解けばいいのか。

 

考えることは山積みであったが、彼は一つ、知る必要がある重大なことに気付く。

 

 

「……ハッ! て、天満ちゃんは、このことを――」

 

知っているのだろうか、と。

播磨は天満がこの誤告白について知っているのか否かが気になった。

 

好きな女の子は天満だ。

播磨としては、別の女の子が好きだと誤解されたくないのだ。

 

播磨は天満の過去の行動について思い出す。

赤点を取り、補習を受けた日。

今日の海への旅行について天満から誘いを受けた時のこと。

 

 

『誰か分からないけど好きな女の子と一緒に海行けて良かったね』

 

 

――天満ちゃんは誰か分からないけど、って言ったぜ! てことは、知らねえ筈だ。

 

ぞっこんである天満の言葉を覚えていた播磨。

彼女の言葉から、沢近に間違えて告白したことを知らないのだと推測する。

そのことに少し安堵するも、事態は急を要すると思った。

 

 

「今は知らなくても、お嬢が天満ちゃんにそのことを言っちまったら……」

 

 

 

 

『播磨くんっ、私というものがありながら、愛理ちゃんに告白するなんて……この浮気もの! 変態さんっ!』

 

 

 

「ち、ちげーんだ、天満ちゃん! 誤解なんだっ、信じてくれ!」

 

脳内に浮かぶ妄想の天満の発言に顔を青くする播磨。

このままでは脳裏に浮かんだ状況になるに違いない。

すぐに行動に移るべきだと考えた。

 

次に行うべきことは、思ったよりもすんなりと思い付いた。

 

 

――もう、素直にお嬢に言うしかねえ……、謝る以外に選択肢なんてねーよな。

 

元はといえば、間違って告白した際にすぐに誤解を解かなかったのが原因である。

であれば、愛理にその真実を告げて謝ればいい。誤解を解けばいいのだ。

 

殴ったり蹴られたりしても謝り続けるしかねえ、と。

播磨は急いで愛理のもとへ向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

#12「純愛ロードを歩み始める彼女」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ふふ、わたし、何やってんだろ」

 

こんなところで一人になって、と。

愛理は自嘲的な笑みを浮かべ、ひとりつぶやく。

 

旅館「旅龍」。

天満や愛理たちが本日住む旅館の中央には大きな庭があり、

その場所に植えられている木の裏側に愛理は座り込んでいた。

 

彼女自身、意図して此処に座り込んでいる訳ではない。

気付いたら今の状況になっていたのだ。

 

 

 

 

『俺はなぁ! お前のことが……っ!』

 

 

 

 

播磨が天満に向かって話す姿、言葉。

 

それを目撃した途端、頭の中が真っ白になるように愛理は感じた。

それからは覚えておらず、ただただその場から離れたい一心で動いていたのである。

 

 

――あれは……。

 

愛理は、身体を縮こませ、俯いたまま考える。

播磨と天満の、先程の場面のことを。

 

向かい合い、天満を抱き寄せる播磨の姿。

そして、彼が天満に何かを言おうとしていた。

 

 

「……最低」

 

彼らのあの光景が何度も脳裏に浮かぶ。

その浮かぶ光景に対して、彼女は無意識につぶやく。

思わず、本音が出てしまったのだ。

 

 

「……ほんとに、最低」

 

いや、言葉にして何かを吐き出したかったのかもしれない。

言葉にすれば、今の気持ちも変わるような気がして。

だからこそ、愛理は心の中の今の気持ちを言葉にした。

 

 

 

 

「ほんとに最低よ…………()()()

 

 

 

 

愛理は、最低だと思った。

彼女は、嫌になった。

だけど、その気持ちの矛先は播磨ではなく、自分自身。

 

 

――わたし……、あれを見て、播磨くんが天満に告白してるように見えちゃった。

 

播磨と天満の二人きりの場面。

抱き寄せ、播磨が発した内容。

 

確かに、普通に考えると、あれは告白する場面に見えなくもない。

だけど、それはつまり、播磨の想いを信じ切れていないということだと愛理は思った。

 

 

 

 

『俺は…君のことが好きだったんだっ!』

 

 

 

 

「播磨くんの想いを、ちゃんと感じたはずなのに、ね」

 

愛理が思い出すのは、播磨との路地裏でのこと。

 

雨が降る、路地裏。

自身の手を握り締める播磨の大きい手。

そして、心が震えてくるような、熱い想いが伝わってくる告白。

 

今までの男子が告白してきたような薄っぺらなものではない。

本当に自身のことを心から好きでいてくれるのだと感じさせるものだった。

 

それを受け取ったはずなのに。

それを、真正面から感じたはずなのに。

 

 

「わたし…少しだけど、播磨くんのこと疑っちゃってる」

 

信じたいのに、信じ切れなくて。

 

愛理は自分に自信を持っていた。

だけど、そんな彼女が初めて自身のことが嫌いになった。

 

 

――私は……、わたし、は…………。

 

どうすれば良いか分からなくなった。

顔を俯かせ、泣きそうになる愛理。

 

そんな時のこと。

 

 

 

 

「あ、こんなとこに居たのかよー!」

 

 

 

 

――え、その声は、美琴!?

 

聞き覚えのある声に驚き、今のこんな自分の姿を見られたのだと慌てる愛理。

だが、そんな愛理の心配も、無駄に終わる。

 

 

「あ、美琴ちゃんだ! どーしたのー?」

 

「どーしたの、じゃねーよ。 居なくなったから探しに来たんだよ」

 

美琴の声に反応し、彼女に対して返答する声が聴こえた。

 

愛理が木の裏から声がした方向に視線を向けると、其処には美琴と天満の姿があった。

美琴が見つけたのは、愛理ではなく、天満であったのだ。

 

今の自分の姿を見られたくなかった為、ほっとする愛理。

そんな彼女を余所に、二人は会話を続ける。

 

 

「そうだったのー、ごめんね!」

 

「いや、別にいいけどよ……なにしてたんだ?」

 

塚本と播磨二人して気付いたら居なかったけどよ、と。

美琴の言葉に、愛理は胸がギュッと苦しくなるように感じた。

その質問は、愛理にとって聞きたくもあり、同時に聞きたくないものでもあった。

 

 

「んー……どうしようかなぁ、美琴ちゃんになら言ってもいいかなー」

 

「何だよ、勿体ぶりやがって」

 

悩むような素振りで話す天満であるが、明らかに言いたい様子を隠せていない。

そんな天満の様子が分かったからか、美琴は早く話せと急かす。

 

美琴の言葉に仕方ないなあ、と前口上を付け、ニヤニヤしながら天満は言葉を発した。

 

 

「実はねー、告白の練習をしてたんだよ!」

 

「はぁ!? 告白の練習だあー?」

 

――こ、こくはくの練習?

 

美琴の驚いた声が響き渡る。

 

愛理自身、口には出していないが、美琴と同様に天満の発言に驚いていた。

何で、どういうこと、と状況が把握できていない愛理を余所に、天満は楽しそうに経緯を話し始めた。

 

旅行前の補修の日、男子メンバーが不足した為、今鳥と花井を誘ったこと。

残りのメンバは八雲を連れてこようと思っていたこと。

しかし、教室に忘れ物を取りに行った際、好きな女の子と旅行に行けなくて悔しがっている播磨の姿を目撃したこと。

それを見た天満が今回の旅行に播磨も誘ったこと。

そして先程、好きな女の子に告白出来るように、告白の練習を行っていたこと。

 

美琴はその話を同じくニヤニヤしながら聞いていたが、疑問に思ったことを口にする。

 

 

「でもよ、播磨が誰が好きか分からないのに、私にペラペラ話したのか?」

 

「んー? 確かに補修の日は知らなかったけど、今は播磨くんの好きなひと分かっちゃったもんね」

 

ふふーん、とドヤ顔で話す天満に、美琴は自分の中で回答はあったものの、誰なのだと聞き返す。

その美琴の言葉に、天満は自分の確信を持った答えを述べる。

 

愛理ちゃんだよ、と。

 

 

「ほほー、どうしてそう思ったのかね、塚本くん」

 

「ほう、では答えてあげよう、周防くん。 それはね、海で泳ぎを教えるペア決めのクジを作ってるところで見ちゃったからだよ!」

 

奈良くんがクジを地面で書いているときに、播磨くんが何か指示をしているのをね、と。

天満は名探偵の推理と言わんばかりにキラキラした表情で話した。

 

天満は遠目で見ていた為、声は聞こえなかったが、播磨が何かを指示して奈良に書かせているのを目撃した。

ズルはいけないと一瞬思うものの、播磨が誰かを好きだと知っていた為、黙認したのだ。

 

 

「その結果、播磨くんの泳ぎのペアは愛理ちゃんだったわけよ」

 

「なるほどなー、分かっちゃいたけど、やっぱりそうだったか」

 

「え、分かってたってどういうこと!?」

 

「あ、塚本は知らなかったのか、デートのこととか」

 

「何それ、全然聞いて――――」

 

「実は、――だから――――」

 

「ええ、知らな――――」

 

「――――」

 

天満と美琴がまだ話し続けていたが、愛理はもう彼女らの話が耳に入っていなかった。

愛理は、彼女らに見つからないようにその場から離れ、探しに行く。

 

 

 

 

探すのは勿論――

 

 

 

 

 

「……播磨、くん」

 

 

 

 

 

――あなたに、会いたい。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

お互いがお互いを探していたのだ。

探し始めてから見つけるのに、そう時間は掛からなかった。

 

 

「播磨くん…………」

 

ただただ会いたいと思って探していた愛理。

実際に対面すると、何から話せばいいか、少し考えてしまった。

言いたいことは、沢山あるのだ。

 

 

ありがとう。

私と海に行きたいと思ってくれて。

不良で通してるあなたが同級生たちグループでの旅行に参加するの恥ずかしかったと思う。

それでも、凄く嬉しかった。

 

 

ありがとう。

旅館の部屋で恥ずかしい事態になっちゃって互いに気まずかったと思うのに、クジを弄ってまで一緒にいたいと思ってくれて。

恥ずかしくて顔が見れなかったけど、私も一緒に居たかったから嬉しかった。

 

 

ごめんなさい。

あなたが天満に告白してると誤解してしまって。

信じきれなくて、ごめんなさい。

あなたは、もう告白したって、天満に照れ臭くて言えなかったのよね。

ただ、本気で告白の練習をしてたって後で知ったの。

本気で練習してくれてたの気付いて、泣きたくなるくらい嬉しかった。

 

 

感謝も謝罪も。

本当に、言いたいことは沢山あった。

 

そこで一瞬、何から言おうか愛理が悩んだ為、播磨が先に行動に出た。

その彼の行動を目にした愛理は、言いたかったことが一気に吹っ飛んだ。

 

 

――え……、な、なんで?

 

 

 

 

播磨が、その場で愛理に向かって土下座したからだ。

 

 

 

 

「すまねぇ……!」

 

「え…ちょ、どっ、どうしたの、播磨くん!」

 

愛理は播磨の行動に慌てて立たせようとするも、播磨は土下座のまま姿勢を変えない。

この行動の理由が分からず戸惑う愛理に、播磨は自分の想いを述べる。

 

 

「本当にすまねぇ、あの告白は誤解なんだ!」

 

「えっ…………?」

 

「いきなり何言ってんだと思うかもしれねぇ……、でも、本当なんだ」

 

「あの、播磨君?」

 

「言い訳をするつもりはねぇ。 でも、信じてくれっ!」

 

彼の声は震えており、声色から本気で申し訳ないと思っている気持ちが伝わる。

愛理は彼の言っていることが一瞬分からず戸惑うも、その後に彼の行動の意味に気付いた。

 

 

――わたしが播磨くんと天満が告白の練習をしているのを見ていたの、気付いたんだ……。

 

自身が立ち去るのを目撃していたのだ。

そして、告白していると誤解されたのだと播磨は気付き、慌てたのだろう。

 

本当に好きでいてくれる彼だからこそ、誤解を早く解かなければと思ったのだ。

 

その結果、播磨が行ったのが土下座だったのである。

きっと、言葉ではなく、行動で誠心誠意伝えようと思ってくれたのだ。

 

 

――ほんとに……バカなんだからっ。

 

彼は悪くないのに。

自分が本来は謝らないといけないのに。

 

彼ばかり、想いを伝えてくれる。

 

思わず泣きそうになるが、必死に堪える。

泣いた姿を見て、傷付いたように誤解させたくないから。

 

 

「播磨くん…顔を、上げて」

 

「…………あぁ」

 

――播磨くんみたいに、わたしも…言葉じゃなく、行動よね。

 

 

 

 

愛理は、顔を上げた播磨の頬にキスをした。

 

 

 

 

「な………ななななな」

 

「ふふ、これが答えよ」

 

壊れたロボットのように同じ言葉を発する播磨に、思わず笑ってしまう。

 

凄く恥ずかしかったが、行動で示す彼への、彼女なりの返答であった。

一応、混乱する播磨に補足として話を続ける。

 

 

「あのね、天満から聞いて、誤解だって知ってたわ」

 

「はっ? え、てん……、塚本から聞いたのか?」

 

「えぇ。 だからね、そのことは気にしなくて大丈夫よ」

 

本当は天満から直接聞いた訳ではなく立ち聞きであったが、そこは濁しておいた。

なんとなく、コソコソ聞いてたとは思われたくなかったからだ。

 

そうだったのか、と。

呆然とする播磨を見ながら、愛理は思う。

 

 

――もう誤解なんてしないわ。 播磨くんの想い、ちゃんと信じるから。

 

 

 

 

 

だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これからもよろしくね、播磨くんっ」

 

 

 

 

 

 

〜fin〜




これにて、沢近さんの純愛ロードは完結となります。
お読みいただき、ありがとうございました。






という形で、書けるように部分部分で打ち切りエンドとして終わらせられる箇所を決めていました(・∀・)
なんか、このまま終わっても違和感なさそーな気がしてきません?

アニメで例えると、ワンクールが終わった状態です。
『沢近さんの純愛ロード チュートリアル編(またの名をイージーモード)』てきな感じです。
とあるヒロインが加わると自動的にベリーハードになります←

ラブひなとかダカーポとかスクランとか、古いもんばかり書きたくなる私ですが、見ていただけると幸いです。
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