沢近さんの純愛ロード   作:akasuke

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毎度のことですが、お久しぶりです。
スクランをたまに思い出していただけるように更新をまた再開します。

今回は播磨とは別視点になります。

それでは、本編をどうぞ。


#14「悲しむ彼、苦しむ彼女(後編)」

 

 

 

 

塚本 天満は、何事にも一直線である。

それは恋であったり、遊びであったり、その他諸々に対してもほとんど全てが真っ直ぐだ。

 

一直線過ぎて思い込みが激しいところもあるが、その真っ直ぐな気持ちや行動が周りの友人にも親しまれているのであろう。

 

妹である彼女――塚本 八雲は、そんな姉が大好きだった。

 

ただ、シスコンな八雲としても、姉に気を付けて欲しいと思うことは結構ある。

 

 

 

たとえば――

 

 

『ねぇ、姉さん』

 

『なーにー、八雲? しっかり夏休みを充実してるお姉ちゃんを見習いたいって?』

 

『あのね……、夏休みの宿題はやったの?』

 

『…………あっ』

 

真っ直ぐだけど抜け落ちてることが多いこと、など。

 

 

―――

 

 

 

――――――

 

 

 

―――――――――

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

というやり取りが姉妹間であり、顔が真っ青になった天満は慌てて友人達に電話をし、塚本宅で一緒に宿題をやることになったのである。

 

 

 

「――はい、姉さん」

 

「ありがとう、八雲!」

 

天満の部屋にいる友人へと飲み物を持って行きにキッチンへとやって来た天満に、八雲はあらかじめ準備していた飲み物と冷えたスイカを渡した。

 

 

「あ、スイカなんてあったんだね!」

 

「あの…今日、姉さん達が家で勉強会を開くって言ってたから」

 

「もーっ、八雲ってば偉い! 気配りさんっ!」

 

背伸びしながら頭を撫でてくる天満に、思わず笑顔が溢れる八雲。

 

嬉しくなりながらも、言いそびれたことがあった為、天満にその要件を話し始めた。

 

 

「そういえばね、エアコンの修理業者が今日来るんだ」

 

「あ、そーなんだ! ようやく直るんだね!」

 

待ってたんだよー、と天満は八雲の言葉に目を輝かせた。

 

実は、先日に塚本家のエアコンが動作不良を起こし始めたのだ。

しばらくは扇風機で我慢していたが、やはり真夏は扇風機の風では暑さを耐えるのが難しく、修理を依頼したのであった。

 

 

「姉さんの部屋の外側に室外機があるから、修理の音が少しはするかも」

 

「そのぐらい全然大丈夫っ! わいわい楽しく話してれば修理音なんて聴こえないって!」

 

――楽しく話してたら宿題できないんじゃ……。

 

任せて、と自身の胸をドンと叩く天満に、内心で別の意味で不安に思う八雲。

 

そんな彼女を余所に、先ほど渡していた飲み物とスイカがのるお盆を持ち二階へと行こうとする天満であったが、すぐ立ち止まり、キッチンからとあるモノを取る。

 

 

「やっぱりスイカと言ったら塩だよね!」

 

これがないと始まらないね、と八雲に言う天満であったが。

 

 

「姉さん」

 

「ん?」

 

「……それ、砂糖」

 

間違えやすい天満である。

八雲に指摘された彼女はそそくさと隣の塩をあらためて取り出してお盆に置いた。

 

あ、あはは、と恥ずかしそうに笑う天満に、八雲は一瞬言おうか悩んだ後、思い切って想いを口に出した。

 

 

「あのね、真っ直ぐな姉さんは大好きだけど……その、思い込んで勘違いしてることもあるから、気を付けてね」

 

八雲の指摘。

それは勿論いまの塩と砂糖を間違えたことも少しは含むが、本当に言いたいことは別のこと。

 

それは、以前に友人達と海水浴に行って帰ってきたときのこと。

 

 

『姉さんは――姉さんは、播磨さんが好きな人、知ってるの?』

 

播磨の告白を手伝う恋のキューピットと言った天満。

 

思わず、播磨の想い人が誰かを知ってるかを聞いたときに返ってきた言葉は――まったくの見当違い。

 

 

『播磨くんはねー、愛理ちゃんのことが好きなんだよ』

 

恋を知らない八雲であったが、それでも好きなひとに別のひとが好きだと勘違いされるのは悲しいと思った。

 

だからこそ、八雲は言うのだ。

 

天満自身が思い込んで勘違いしてることもあるから、しっかり気を付けて、ちゃんと知って欲しいのだ、と。

 

 

「うん……わかった」

 

八雲が真剣な顔で指摘した言葉に対し、天満も同じく真剣な顔で頷く。

しっかり八雲の想いを受け止めたぞ、という気持ちを込めて。

 

 

「今度からは気を付けるよ、八雲」

 

その言葉を残し、天満は二階へと上がっていった。

 

 

 

 

ただし。

 

 

――スイカに砂糖は、合わないもんね。

 

 

「……姉さん、そこじゃないよ」

 

八雲の言いたいことは伝わらなかったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

#14「悲しむ彼、苦しむ彼女(後編)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「晶がいないとやっぱり進まないわね」

 

「まあまあ、もうすぐ美琴ちゃんも来るし」

 

私たちおバカ二人組じゃお手上げだよね、と。

脳天気に笑う天満に、彼女――沢近 愛理は一緒にするなという意味もこめて教科書で軽く頭を叩いた。

 

 

塚本宅。

泣きながら電話してきた天満の懇願に負けて、愛理は友人の美琴や晶と同じく天満と一緒に勉強会を行うことになったのである。

 

勉強会というよりは、夏休みの宿題を片付ける会、と言った方が正しいのであるが。

ちなみに、美琴や晶は既に夏休みの宿題はほぼ片付いている。

 

 

「ふう……」

 

愛理も美琴や晶と違い、宿題は終わっていないので天満と状況は似ているのであるが、彼女は然程やる気が起きていなかった。

 

彼女には、宿題なんかよりも優先したいことがあったからである。

 

それは―――

 

 

 

 

――播磨くん、今は何してるのかしら?

 

自身を大切に想ってくれている男性であり。

そして、愛理が好意を抱いている人――播磨 拳児のことだ。

 

愛理は今だけでなく、ここ最近、具体的には天満たちと海水浴に行って帰宅してから、頭の片隅には常に彼への意識があった。

 

 

彼はいま何してるのだろう。

あの人は元気なのだろうか。風邪をひいていないか。

播磨くんは、自分と会えず、寂しがってくれているのだろうか。

 

 

彼は――

 

あの人は――

 

播磨くんは――

 

 

そうやって、何かしている時も少し彼のことを考えてしまっている自分がいた。

 

 

――これって恋愛脳ってやつなのかしら。

 

自身の状況を振り返り、愛理は何だか笑ってしまう。

天満や美琴、晶は違うが、同級生の恋愛脳な女の子たちを見ると、よくそこまで熱心になれるなぁと半ば見下した思いを昔は抱いていた。

 

しかし。

いまはそんな彼女たちと同じ立場にある。

 

いや、語弊がある。

似た立場ではあるかもしれないが、同じ立場ではない。

愛理はハッキリとそう思えた。

 

だって。

 

 

――播磨くんは、誰よりも熱く想いをぶつけてくれるもの。

 

 

 

『俺は…君が好きだったんだ!』

 

誰よりも、真っ直ぐで。

 

 

『きょ、今日の放課後……俺と映画にでも――』

 

誰よりも、純粋で。

 

 

『言い訳をするつもりはねぇ。 でも、信じてくれっ!』

 

誰よりも、想ってくれて。

 

 

他の人と一緒じゃない。

いや、他の人と一緒にしたくない。

 

そんな気持ちが、其処にはあった。

 

 

だからこそ、宿題よりも播磨のことを考えるのは仕方ない。

しかし、それなら天満の懇願を断り、播磨に会いに行けば良いのではないか。

会いたいという問いにはYESとすぐさま言える愛理ではあったが会わない事情があるのだ。

 

 

――なんで私、連絡先聞くの忘れるのよ……。

 

愛理にとって、連絡先を聞きそびれたのは痛恨のミスであった。

 

海水浴の時に帰り際にでも聞いておけば違う日々だったかもしれない。

そうは思っても、あの時には聞く余裕がなかったのだ。

 

 

――わたし、頬にキス…したのよね。

 

 

『言い訳をするつもりはねぇ。 でも、信じてくれっ!

 

彼が想いを何度もぶつけてくれて。

嬉しくて。

涙が溢れそうなくらい、嬉しくて。

だからこそ、彼の想いに応えたいと、行動で示したいと思ったのだ。

 

そして、愛理は播磨の頬にキスをした。

 

いま振り返っても後悔はない。

それは間違えない。

 

だが。

恥ずかし過ぎたのだ。

 

 

――わたし、父様以外の異性にはじめてキスしたわ。

 

口ではなく頬であったが。

それでも、父親以外の異性にはじめて口づけをしたのだ。

帰り際は恥ずかし過ぎて播磨の顔を見る余裕がなかった。

その為、連絡先を聞くなんてその場ではまったく記憶から抜け落ちていたのであった。

 

 

――なんというか、初めて尽くしね。

 

あんなに熱い想いをぶつけられたのも。

自身が異性に好意を寄せるのも。

男性に口づけをするのも。

男性の裸をみるの―――

 

 

――いや、というか私、あらためて何で口づけよりも早く異性の裸みてるのよっ! いや、あれは振り返っても変な状況過ぎて意味がわからなかったけど。

 

 

「え、愛理ちゃん、急にどうしたのっ!」

 

「な、なんでもないわよっ!」

 

思い出しそうになり、頭をぶんぶんと振り回し一旦は忘れようとした。

 

ただ、一度意識し出すと中々頭から離れず、頬が熱くなるのが止まらなかった。

そんな風に混乱していたからだろうか。

 

愛理は思わず天満に突拍子もないことを口に出してしまった。

 

 

「ねぇ、天満……」

 

「なになに、愛理ちゃん?」

 

「天満は……、男の人の身体見たことある?」

 

「えっ?」

 

天満は愛理の問いにキョトンとした表情で首を傾げる。

 

その表情をみて、愛理は自身が口に出した内容に慌てて言葉を継ぎ足す。

 

 

「あ、いやっ、違うの……いまのは…」

 

播磨の裸を思い出して口に出してしまったと言いづらく、上手い言い訳が出て来なかった。

 

 

――いや、なんてこと言ってるのよ私。 それに、そもそも一番そういうのに疎そうな天満に聞いても。

 

ないしか返答くるはずないじゃない、と内心で思った愛理であった。

しかし。

 

 

「あるよ」

 

男の人のカラダ、と。

返ってきた言葉に一瞬硬直してしまう愛理。

 

そんな愛理を不思議そうに見ながら、天満は愛理――ではなく、後ろのポスターに視線を向ける。

 

そこには、ついこの間に想い人である烏丸と一緒に観に行ったプロレス観戦の帰り際にもらった、上半身裸のプロレスラーのポスターがあった。

 

 

「別に普通なんじゃないの、それくらい?」

 

今どきテレビでもプロレス中継がたまに放送されるし、普通だろうと天満は思った。

 

 

一方、愛理は固まったままであった。

ただ、天満の言葉が頭を反芻する。

 

 

――え、天満がオトナの付き合い? それじゃあ、相手は。

 

「それって、つまり烏丸くん、と……?」

 

「やだ、なんでわかるの!」

 

そーなのよ、と答える天満に呆然とする愛理。

疎いと思っていた相手が想像以上に進んでいて驚き過ぎてしまったのだ。

 

 

――天満がわたしよりも経験豊富……いや、まさか、そんな。

 

しかし、天満が自分より経験が豊富とは信じたくない気持ちが少しあり、思わず更に聞き込んでしまう。

 

 

「あの…、口を塞がれたりとか」

 

「ジョノクチだよー」

 

――息出来ないようにするワザも観たプロレス戦で沢山やってたしね。

 

 

「羽交い締めにされたり、とか……?」

 

「あれわオオワザだよねー!」

 

――あれでケーオーされてたし。

 

うんうんと頷く天満。

その様子をみて明らかに自分より経験が豊富だと理解した愛理は妙な敗北感に打ちひしがれていた。

 

 

――べ、べつに播磨くんとはゆっくり関係を築きたいから、悔しくなんて。

 

少し悔しい愛理であった。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

――どうしたんだろ、愛理ちゃん?

 

認識が食い違っていることを理解していない天満は、愛理の落ち込んだ様子に首を傾げていた。

 

よく分からないが、妹に用意してもらったスイカでも食べて元気を出してもらおうと、愛理にスイカを渡そうと思った。

 

 

「愛理ちゃん、スイ――」

 

スイカでも食べて元気を出して、と。

愛理に伝えようと思った天満であったが、ひとつ、とあることを思い出したのだ。

 

 

――そういえば、播磨くんと愛理ちゃんって付き合ってるのかな?

 

愛理。そして、妹の八雲。

その二人を考えたときに先日、海水浴から戻ってきた時のことを思い出したのだ。

 

八雲に播磨の告白の練習を手伝った話をした時のこと。

播磨が好きなのは愛理だと言った際、違うと否定されたのだ。

 

 

違うよ。

姉さん、違うよ、と。

 

力強く否定されたのである。

 

そして、その後の八雲の言葉。

 

 

『だってっ、播磨さんが好きな人はっ―――』

 

次に続く言葉を八雲は直接言わなかったが。

それでも姉の天満には八雲が本当は言いたかった言葉がわかった。

 

播磨さんが好きな人は、――わたしなのに。

 

そう、聞こえた気がしたのだ。

 

 

――あぁ、そっか。

 

それを思い出した後、ようやく天満は先ほどキッチンでの八雲の発言を理解したのだ。

 

 

『あのね、真っ直ぐな姉さんは大好きだけど……その、思い込んで勘違いしてることもあるから、気を付けてね』

 

思い込んで、勘違いしている。

つまり、播磨が好きな人が愛理だと思い込んでいる。勘違いしているぞ。

 

それを伝えたかったのだ。

 

だけど、播磨が好きなのが八雲自身だと直接伝えるのは何だか恥ずかしかったのだろう。

 

 

――お姉ちゃんなのに、ごめんね。

 

天満は八雲の気持ちや伝えたい言葉をすぐに理解してあげられず、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 

自分が播磨が好きなのは愛理だと推理したときに美琴も同意していたが、彼女は恋愛経験が少なそうだから一緒に勘違いしていたのだと今わかった。

 

ただ、それでも。

それでも、念の為に。

 

自分の勘違いだと確信する為に、天満は愛理に確認しようと思った。

 

勘違いであったのならば、告白の練習をした後に愛理に告白をしていないだろう。

ましてや、付き合ってないだろう。

 

だからこそ。

天満は何気ない様子を作って、愛理に問いかけた。

 

 

 

 

愛理ちゃんは付き合ってるひとはいるの、と。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛理ちゃんは付き合ってるひとはいるの?」

 

落ち込んでいた愛理であったが、天満に呼ばれ、顔を上げると、質問を投げかけられた。

 

何で急に、と思ったが、天満の表情からして特に意味はなく、聞いてみただけなのだろうと思った。

 

その問いに愛理はすぐ返事を口に出そうとして、止めた。

 

 

――付き合ってるって、言っていいのかしら。

 

付き合ってください。

そういうやり取りをした訳ではないが、想いは伝え合っている。

その関係は恋人と言っても過言ではないだろう。

だから、播磨と恋人かどうかで悩んだわけじゃない。

 

ただ、天満に、友人に言おうかを悩んだのである。

 

別にここで素直にYESと答え、たとえ広まっても、熱い想いを伝えてくれた播磨なら許してくれるだろう。

 

 

――でも、しばらくは誰にも邪魔されたくない…かしら。

 

ふたりで邪魔されずに少しずつ想いをはぐんでいきたい。

口に出すのも、それを知られるのも死ぬほど恥ずかしいが、そう思った。

 

 

――天満はまわりに漏らしちゃいそうだし。

 

 

「いえ……、誰とも付き合ってないわ」

 

愛理は、天満にそう答えた。

 

それを聞いた天満は、愛理の顔を一緒真面目な顔で見つめた後、そっかぁと笑った。

何故だがほっとした表情であったが、別にいいかと気にしなかった。

 

 

「まぁ、話はおしまい! そろそろ勉強するわよ」

 

「うーん、そうだね。 あ、でもせっかくだからスイカ食べてからにしよーよ」

 

塩をかけると美味しいよ、と。

笑顔でスイカを渡してくる天満に苦笑いしながら受け取ろうとした。

 

 

 

その時。

 

 

下から、誰かの女の子の声が聞こえたのだ。

誰かを呼び止めようとする、悲しそうな声で。

 

 

 

 

 

――播磨さん、と。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

――ウソ。

 

 

――ウソ。

 

 

――ウソ。ウソよ。

 

 

 

愛理は、走っていた。

 

頭の中は混乱したまま。

ただただ、目的のひとに追い付きたくて。

 

自身の全ての力を振り絞って走っていた。

 

 

そんな。

まさか。

なんで。

 

 

頭の中ですら、ちゃんと言葉にならない。

 

それでも。

走らなきゃいけない。

追い付かなきゃいけない。

 

それだけを考えて、走り続ける。

 

 

 

――播磨さんっ!

 

その言葉が聞こえたとき。

胸が締め付けられるように感じた。

 

何故かを理解する前に、美琴が天満の家に着いて。

彼女から言葉が発せられて。

 

 

『おい、いま播磨が泣いて走っていったけど、何かあったのか?』

 

頭が真っ白になって。

 

ただ、漠然と追わなきゃって思って。

 

そして、走りながら、自分が追う理由がハッキリと理解し始める。

 

 

 

 

『いえ……、誰とも付き合ってないわ』

 

 

 

もし。

 

――違うの。

 

「―って!」

 

 

もし、彼が。

 

――誤解なの。

 

「待って!」

 

 

もし、好きでいてくれる彼が、聞いてしまったのなら。

 

 

 

 

 

「待って、播磨くんっ!」

 

 

 

呼びかけて。

手をかざしても、届かなくて。

 

 

 

 

――播磨、くん

 

 

 

走っても走っても遠くなる距離。

 

どうしようもなく、胸が苦しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「は、播磨さんっ!」

 

泣きながら走り去る播磨の姿をみて、八雲は胸が苦しくなるのを感じた。

 

向こうは八雲を知らないかもしれないが、八雲は播磨のことを色々な機会で知った。

 

彼がどんなひとなのかを。

そして、彼が誰を好きなのかを。

 

姉が誰を好きかを知るからこそ、どうすることも出来ずに板挟みのような状態になっていた。

 

だが、それでも。

好きなひとに誤解されるのは悲しいと思ったからこそ、姉に遠回しに伝えたりした。

 

そんな矢先に。何で。

 

八雲は途中から修理業者の一人が播磨だと気付いた。

だけど、何か言ってあげることもなく。

せめてオニギリでも握って渡そうと思った。

 

そして向かったら先ほどの状態だったのだ。

 

 

――なんだ新入りのやつ、二階の室外機の修理で何かあったのか?

 

播磨と一緒に来ていた修理業者の心の声。

それを聞いて、八雲は気付いた。

 

二階の室外機は姉の部屋のすぐ側であることに。

 

ということは、姉の部屋から何かを聞いてショックになったのだと。

 

 

「八雲! なんか播磨くんが泣いて――」

 

 

 

 

「――姉さん、ひとつ、教えて」

 

 

 

 

「や、やくも……?」

 

思わず天満の肩を掴んでしまう八雲。

その様子に天満が驚きの表情を見せるが、それどころじゃなかった。

 

 

「さっき、姉さんの部屋で烏丸さんのこと話した?」

 

「えっ…、う、うん。 言ったけど……」

 

――やっぱり。

 

理由は何となく分かっていたが、確信した。

八雲は気付いたのだ。

播磨が泣いていた理由を。

 

 

――姉さんが烏丸さんが好きって知ったんだ。

 

おそらく姉は友人たちと好きなひとの話をしたのだ。

その時に、姉が烏丸が好きだということを言ったのだと。

 

 

「播磨、さん……」

 

播磨の気持ちを考えて、さらに胸が苦しくなるのを感じた。

 

 




途中からイージーモード、ハードモードと付けるようにしましたが、これは誰にとってのハードモードでしょうね。

書きたい内容を書いたら凄いことになった気がしたけど、原作がスクランだと思うと、「あれ、まだ大丈夫かな?」とか思ったり。

ありがとうございました。
また、見て頂ければ幸いです。
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