ただ、勘違いの状況を真面目に心情描写書くのは楽しいと思いました。
それでは、本編をどうぞ。
「…………ハッ」
気付いたら姉ヶ崎 妙の部屋にいた播磨。
――俺は、いつの間に戻ってたんだ……。
状況を確認する為、播磨は自分が何していたかを振り返る。
パチンコ、占い師、烏丸と天満。
そして――
「確か、天満ちゃんと間違えて告白を…っ」
彼は思い出した。
自分がやらかしてしまったことを。
最愛の女性である天満に告白しようとして、違う相手に告白してしまったのだ。
――名前は思い出せねぇけど……ありゃあ、天満ちゃんのダチ、だよな?
天満以外は全く興味がない播磨。
しかし、天満とよく一緒にいた友人の一人であるお嬢様であることは思い出した。
「なっ、てことは、これが天満ちゃんに知られちまったらっ」
最悪の状況を思い浮かべる播磨。
間違えて告白してしまった相手である愛理が、天満にそのことを話してしまうところを。
『そんなっ、私というものがありながら……サイテーだよ、播磨くん!』
自身に向かって涙を流しながら罵倒してくる天満の姿。
播磨は、それを想像し、顔が真っ青になる。
「ち、違うんだ天満ちゃん! 俺が好きなのは君なんだ!」
起こり得る、あまりに最悪の状況。
播磨は気絶しそうになる。
「クソッ、悪い夢を見ている気分だ……ん?」
つぶやいてから、一つ、とある疑問が出てきた。
――そういえば、俺はどうやって帰ってきたんだ?
自身が間違えて告白をした後。
その後に、どうやって帰ってきたのか。
播磨は自分の記憶から引っ張って来ようとしたが、全く思い出すことが出来なかった。
「こっ、これは……まさか」
改めて自分の現在の置かれている状況を確認する。
播磨が居るのは、家がない自分を善意で泊めてくれた、妙の部屋。
そして、部屋の借りているベッドの上で座っている自分。
彼はその状況を見て、一つの結論に至る。
「夢オチってやつだ!」
悪い夢を見ている気分。
帰ってきた記憶がないこと。
ベッドにいる自分。
播磨は最近見た漫画を思い出し、現在の自分の状況と合致していることに気付いたのだ。
――まったく、俺自身の才能が恐いぜ
各々の状況を紐付け、真実に至ったと感じた播磨は、自分の名推理に酔いしれていた。
「んー、どうしたのーハリオー?」
播磨が目を覚ましたことに気付いた妙は、はしゃいだ様子を見せる彼に問い掛ける。
外野からの声に、ふと我を取り戻した播磨。
そして、彼は一つの決意を妙に伝える。
「俺は……明日、好きな娘に告白してきます」
夢では間違えて違う相手に告白してしまったが、現実ではしっかり告白しようと決めた播磨。
しかし、一つ、彼は勘違いをしていた。
夢オチなんて都合の良い展開などなかったのである。
ちなみに、告白後の記憶がないのは、単純に播磨自身があまりのショックで忘れてるだけの話であった。
#02「忘れる彼、忘れられない彼女」
播磨が天満に告白を決意する一方。
愛理は自宅にてシャワーを浴びている最中であった。
「はぁ…………」
シャワーはお湯にせず、冷たいままに設定していた。
ずっと浴びていると風邪をひくかもしれない。
しかし、熱く感じる身体を冷ます為、彼女には必要であったのだ。
「播磨、くん」
思い出すのは、とあるクラスメイトの男子。
不良という野蛮な男子。あとは変なやつ。
愛理には、その程度の認識でしかなかった。
なかったはず、だったのだ。
『俺は…君が好きだったんだ!』
彼女の脳裏をよぎるのは、播磨からの告白。
あれから、何度も何度も。
繰り返しで彼の告白を愛理は思い出してしまった。
「なんで……」
彼女は自分がモテることを自覚している。
事実、色んな男子から何度もデートに誘われ、告白されているのだ。
告白など聞き慣れている。
そのはずなのに。
『俺は…君が好きだったんだ!』
何故、思い出すだけでこんなにも身体が熱くなってしまうのだろう。
愛理は自分自身が分からなかった。
しかし、あんなに熱い告白は初めてだと感じた。
今までされた告白と違い、播磨に告げられた言葉は、まさしく想いが乗っている気がしたのだ。
『やっと、やっと言うことが出来た――』
あの熱い想い。
強い力で握りしめてくる、大きな手。
そして、ようやく想いを告げることが出来たという、達成感を思わせる言葉。
全部が全部、愛理の心に直接的に伝わって来たのだ。
その告白に、彼女は何て返せば良いのか分からなかった。
了承も、否定も、あの場では出来なかった。
自分自身の気持ちにも、戸惑っていたのである。
『……うおぉぉぉぉぉぉ!』
だからこそ、告白をクラスメイトに見られた播磨が返事を聞かずに去っていくのは、正直ホッとしたのだ。
――仕方ないわよね
普通なら返事を聞かずに逃げるのは格好悪いのかもしれない。
しかし、あの熱い告白を誰か他の人に聞かれるのが恥ずかしいという気持ちは愛理も分かった。
愛理は告白を受ける側だったが、それでも他の人に聞かれるのはとても恥ずかしかったのだから。
だから、その場に居合わせた美琴や晶が告白自体は聞いていなかったのを知り、彼女は安堵した。
――それにしても。
「意外と、恥ずかしがり屋だったのね、播磨くん」
告白が聞かれて恥ずかしくて逃げ去る播磨。
不良として恐れられている彼のそんな姿に、ギャップを感じ、何だか可愛く思えてしまった。
何て返事すれば良いか。
今でもまだ決められてない。
しかし。
「明日、ちゃんとお話しないと」
最近休みがちな播磨が来るかは分からない。
しかし、告白の返事を聞く為に明日は学校に登校してくるかもしれない。
もし彼が来たら、とりあえずお話しようと。
いや、お話したいと愛理は思った。