ツンデレの原点と勝手に思っています。
あらためて漫画を読み直していますが、ここまで続く勘違いものってあまりないですよね。
それでは、本編をどうぞ。
#04「気付かない彼、気付かない彼女」
「おまえ、変わったよな」
そういえば、と。
美琴は何かを思い出したかの様に愛理に言った。
昼休み。
各々が休み時間を満喫する中、天満や愛理、美琴、晶という仲良し面々は、クラスでご飯を食べていた。
その最中に、美琴が愛理に告げたのだ。
「ん、変わったって何が?」
美琴が話した内容に疑問が浮かび、何の話かと聞き返す愛理。
そんな彼女に、ニヤリと笑いながら疑問に答えた。
「ほら、最近は放課後に男と遊ばなくなったじゃんか」
「あーっ、それ、わたしも気になってたっ!」
美琴の言葉に、天満も興味があったのか頷きながら愛理を見ていた。
美琴の言う通り、普段は男から誘われたら気分次第ではあったが、遊びに行っていた。
しかし、ここ最近はパッタリと異性と遊びに行くのを止めたのだ。
実際、昨日の放課後に美琴は愛理が男からの誘いを断る姿を目撃していた。
「そ、そうだったかしら?」
「そうだろ? 前までは男を取っ替え引っ替えしてたじゃんか」
「ご、誤解を生むようなこと言わないでよっ」
美琴の発言に、慌てて愛理は否定の言葉を述べる。
確かに遊びに行っていたのは事実であったが、彼女としては誤解を生むような発言をして欲しくなかった。
チラリと、愛理は気付かれないように、とある場所に視線を向ける。
そこには、サングラスを掛けた男子生徒―播磨 拳児の姿があった。
――違うのよ、播磨くん。
心の中で播磨に否定の言葉を述べる愛理。
美琴は普段から声が大きい為、彼女が話した内容が播磨に聞こえているかもしれないと思った。
誤解しないで欲しい。
真剣に自身を想ってくれている彼にだけは、嫌な女だと思われたくなかった。
だからこそ。
愛理は普段より大きな声で、美琴に告げる。
「わたしは誰とも付き合ったことないわ!」
聞こえているだろうか。
内心で気になりながらも、視線は向けずに話し続ける。
「それに、もう好きじゃない男と二人っきりで遊ばないようにしたの! わかったっ!?」
「……お、おう」
何故か急に力強く、そして大声で話す愛理に美琴は若干引きながら頷く。
彼女に何かあったのだろうか、と疑問に思いながら。
――わかって、くれたかしら?
話し終えてから、再びバレないよう、こっそりと播磨に視線を向ける愛理。
サングラスで視線がどこに向いているか分かり辛い。
しかし、顔の向きなどから此方を見ていることに気付いた。
おそらく聞こえたのだろうと安堵する愛理。
しかし、その視線の先にいる、当の本人は。
――くそっ、相変わらずキュートだぜ、天満ちゃんは。
天満を見つめながらニヤけていた。
ちなみに、愛理の話は右から左へ聞き流していた。
播磨からすれば、全く興味のない話だったからである。
――それにしても、あのお嬢、邪魔だぜ。
愛理を見ながら苛々する播磨。
天満の笑顔を見て癒やされようと思っているのに、チラチラと愛理の顔が重なって見え辛いからだ。
しかも、現在愛理が座っている席は、本来は播磨の席である。
播磨が空腹感を抑える為に水を飲みに行って戻って来たら愛理が座っていたのだ。
天満のお喋りを邪魔するのは悪いかと思って少し待ったが、一向に立つ気配がない。
いい加減、席をどくように言うか、と。
播磨は愛理のもとに近付く。
それを察知した愛理は、緊張が高まるのを感じる。
――播磨くんが、私のとこに来ようとしている。
愛理は、緊張と同時に別の気持ちで胸が高まるのを感じた。
(間違えた)告白されて以降、実はまだ愛理は播磨と話していなかった。
返事を決められないことによる申し訳なさがあったのだ。
だが、その彼女の気持ちを察したのか、播磨は特に話し掛けて来なかったのだ。
愛理は、そんな播磨の様子に申し訳なさが残りつつも、同時に気遣いが嬉しくなった。
――だけど、やっぱり気になってるわよね。
私の告白の返事を、と。
愛理は、直接言葉で返事を待って欲しいと播磨に言えてないのだ。
やはり、言葉でちゃんと告げなければいけないと、愛理は思った。
近付いてきた播磨に、愛理から言葉を述べたのだ。
「ごめんなさい……待ってて、欲しいの」
なんて自分勝手なの、わたし。
自身で話した内容に、愛理は自嘲する。
だけど、あんなに想ってくれる貴方には分かって欲しいのだと。
この気持ちを察して欲しいと思いながら告げたのである。
そんな気持ちを理解してくれたのだろう。
「ちっ……わーった、わかったよ」
愛理が頭を上げると、そこには頭をかいている彼の姿が。
サングラスだが分かりにくいが、仕方ないな、という想いが動作で感じられた。
「待っててやるよ」
そのように愛理に話してから、播磨は教室を出て行くのであった。
ありがとう、と。
愛理は彼の大きい背中をみつめながら感謝するのであった。
「あんな申し訳なさそうに言われるとはな」
自分の席を座っていることに罪悪感があったのか。
あんなに申し訳なさそうに謝られると調子狂うな、と播磨は思った。
「仕方ねぇ、次の授業まで屋上にでも行ってるか」
だりぃな、と思いながら彼は屋上に向かうのであった。