懐かしい、沢近可愛いというコメントが私にとって凄く励みになります。
テンション上がって、GW終わる前にもう一話書かなければと思った為、投稿します。
過去にこういう面白い漫画があったんだよって思い出して頂ければ本望です。
それでは、本編をどうぞ。
「ねぇ、天満」
とある日の帰り道。
愛理は一緒に帰っている友人の天満にひとつ質問をしようとしていた。
美琴や晶が居らず、天満と二人っきりのタイミングでないと聞けない話だったのだ。
「なーにー、愛理ちゃん?」
「その、いつだったか、播磨くんと天満が屋上に行った時があったじゃない?」
愛理が質問したかったのは、播磨が天満の下駄箱にラブレターを間違えて入れてしまった日のこと。
尚、播磨が天満に間違えてラブレターを入れたと思っているのは愛理の勘違いである。
「ん、んー……?」
「ほらっ、放課後よ! 放課後!」
明らかに何時の出来事かを忘れた様子を見せる天満に愛理は焦れ、追加で話を付ける。
「あー、あったよ!」
愛理の言葉で思い出したのか、頷きながら答える天満。
その脳天気な笑顔を見て、愛理は考える。
――天満はどのくらい知ってるのかしら。
播磨くんの想いを、と。
彼自身がラブレターを入れ間違えた事に気付いたのは屋上に天満が姿を現したときだろう、と愛理は推測している。
それでは、間違いに気付いた播磨が天満に何と言ったのだろうか。
――流石に、間違いだと気付いてもそのまま天満に告白は……ないわね。
間違えた相手に告白はしないだろう、と愛理は即時に推測の一つを候補から外した。
この考えは、本気で自分を想ってくれている彼を馬鹿にしていると思ったからである。
――素直に間違えたって天満に言った……それが一番合ってる気がする。
次に考えたのは、播磨が素直にラブレターを入れ間違えたと天満に白状したのでは、という予想。
この予想がほぼ正しいと愛理は確信している。
彼女は告白以降、それとなく播磨の普段の様子を見てきた。
その結果、彼は直情型であり、言うべきことは下手に隠さずに言うと思ったからだ。
だが、一つ疑問が残る。
――天満に…その、好きな相手が、わ、私って言ったのかしら。
内心でつぶやくだけでも恥ずかしく感じる愛理。
彼女が気になっていたのは、播磨が好きな相手について天満に話したのか否か。
播磨の好きな相手が私と知っているか、と天満に聞くのは流石に恥ずかしくて無理だと愛理は思った。
その為、愛理は天満に探りを入れることにした。
「あのね……ほら、あれって間違えだったじゃない?」
まずは、あの日の放課後についての事実確認。
ラブレターを入れ間違えたことの確認である。
「あぁ! そうだね、播磨くん間違えたみたいだねー」
うっかり屋さんだなぁ、播磨くんは、と脳天気に笑う天満の姿に愛理は確信した。
天満はラブレターの入れ間違えは知っているが、播磨の好きな相手が愛理とは知らないのだと。
――この子、知ってたら私を見てニヤニヤするだろうし。
天満の性格を知る愛理は、彼女が播磨から好きな相手を教えられていたら、播磨くんを応援したり、私を見てニヤニヤ笑うだろうと思った。
しかし、放課後の話をしても態度が変わらない天満を見て、好きな相手は知らないのだと分かったのである。
それならば、私がやることは釘を刺すだけだと、愛理は思った。
「分かってると思うけど、あの放課後のことは言わないで欲しいのよ」
彼の為にも、と。
愛理は天満に真剣な表情で話す。
播磨が学校の誰かを好きだという話は、不良である彼だからこそ、知られたら広まる可能性は高いと愛理は予想した。
彼が本気で想ってくれていて、こちらも真剣に返事をしたいからこそ、周りに変に邪魔をされたくなかったのだ。
真剣な表情の愛理を見て、天満も彼女が言いたいことを察した。
――そうだよね、播磨くんが学校辞めようとしてたこと、言わない方が良いよね。
あの日、自身の下駄箱に播磨の退学届けがあり、彼が学校を辞めようとしているのを知った天満。
自分が辞めないで欲しいと言ったことが理由であるかは分からない。
しかし、次の日も学校に通う播磨を見て、彼が辞めるのを止めたのだと理解した。
「もちろん、言わないよっ!」
無理にほじくり回す話ではないと分かったからこそ、天満は力強く頷いた。
「そう……安心したわ」
強く肯定する天満の様子に安堵する愛理。
これで変な詮索はされないだろうと安心したのであった。
「あれ、でも、何で愛理ちゃん知ってるの?」
「えっ! それは……そう、たまたまよ!」
「えー、ほんとにー?」
「な、なによ――」
「――」
ニヤニヤ笑う天満と慌てる愛理。
言い争いながら帰る二人であった。
#05「誘う彼、誘われる彼女」
「おい、あれ、播磨君だぜ」
「ああ、復学したんだってな」
とある日の学校。
通う生徒たちの噂の対象は、休んでいた播磨。
急に暫くの間休んでいた不良が、突然復学すれば興味持つのは仕方ないのかもしれない。
「噂じゃ、ヤーさんの抗争に巻き込まれて、ずっと姿をくらましてたってな」
「それでか……一段と凄みが増したぜ」
直接話したことがない周りの生徒の間では色々な推測や噂が飛び交う。
「俺らじゃ立ち入れねぇ世界から這い上がってきた、狼の風格だぜ……」
彼らは知らない。
いや、知る由もない。
播磨が休学中に、漫画を描いたり、占い師になっていたということを。
噂の対象――播磨 拳児は、ひとり思いに耽っていた。
――よく考えたら、俺……フラレてないよな。
先日、天満に告白しようとした播磨。
しかし、その告白は退学届とラブレターの中身を入れ間違えたことで失敗したのだ。
告白が失敗しただけで実際にフラレたりしてない。
その為、まだ可能性があると播磨は思った。
だからこそ、彼はひとつ決意する。
――よしっ、天満ちゃんにアピールしまくるぜっ!
これからの学校生活。
休み時間や放課後に天満に沢山アプローチし、彼女を烏丸から奪い取ると決意した。
しかし。
「――というわけで、明日から夏休みだぞー!」
担任の谷の言葉に、机で崩れ落ちる播磨。
――ずっ……ずっとサボってて、知らなかった。
暫く休学していた為、すぐに夏休みに入ることに気付かなかった播磨。
早くも彼の計画が崩れるのであった。
だが、落ち込む播磨を他所に、時間はどんどん過ぎていく。
「おまえらー、通知表返すぞー」
「えー」
「渡さなくていいからー!」
教師である谷の言葉にブーイングが飛び交う。
あまり成績の良くない生徒からしてみれば、親に見せる通知表は要らないものなのである。
そして、その成績の良くない生徒の筆頭格にも勿論、成績表が渡される。
「あの……播磨、この間の手紙なんだが」
「うっせぇ、とっとと寄越せ」
谷が何かを言おうとするも無視し、自身の成績表を奪い取る播磨。
ちなみに、天満に渡そうとしていたラブレターは、退学届を渡すつもりであった担任の谷に渡されていたのである。
「ちっ、カメばっかりかよ」
自身の成績表を見て、舌打ちする播磨。
矢神高校の成績表の評価は数字や英字ではなく、動物の判子で評価される。
最高評価が龍で、最低評価が亀。
勉学が苦手な播磨の成績は悪かったのである。
「えっ、それじゃあ私と似てるんじゃない?」
「なっ! てん……塚本も!?」
だが、成績表を苦々しい表情で見ていた播磨のもとに、楽しげな様子で天満が近付いてきたのだ。
天満も播磨と同様、成績が良くない生徒の筆頭格である。
「お揃いだねー」
「お、おう、そうだな!」
天満の言葉に嬉しそうに頷く播磨。
カメ評価が多いのは良くないのだが、天満と話す口実が出来たことで、馬鹿で良かったと思ったのであった。
――ハッ、これはチャンスなんじゃ……。
学園生活でアプローチするつもりが、夏休みに入る事実を知って落ち込んでいた播磨。
たが、そんな彼に飛び込んできた絶好の機会。
播磨は天満に背を向け、自分のポケットにあったモノを取り出す。
――ここは、やるしかねえ!
その手にあるのは、映画のチケット。
従兄弟の刑部 絃子から貰ったものであった。
これから夏休みに入ってしまうからこそ、その前に一回誘わなければと思ったのだ。
「塚本……実は、お前に用があってな」
漢、播磨 拳児。
やってみせるぜと己を奮い立たせ、思いっきり振り返りながら言い放った。
「きょ、今日の放課後……俺と映画にでも――」
二つのチケットを差し出しながら播磨は誘った。
彼からの誘い、そしてチケットを差し出された相手は――
「あの、その……い、いいわよ」
自分の髪を弄りながら、恥ずかし気に頷く女性――沢近 愛理の姿が其処にはあった。
「…………えっ」
あれ、この感じ何処かで、と。
いまの状況に既視感を覚える播磨であった。
「か、烏丸くんは、成績どうだった?」
「カッパ」
播磨が本来渡す予定であった天満は、烏丸に話し掛けているのであった。
スクールランブルは誰が播磨と最終的に付き合うのか、ネット内で論争がありました。
派閥があり、それにニックネームを付けられていました。
旗派:沢近×播磨(二人が絡むたびに「フラグが立った!」と騒いでいたため)
おにぎり派:八雲×播磨(二人の出会いのときに八雲がおにぎりを渡したため)
お子様ランチ派:播磨×沢近&八雲(おにぎりに旗を立ててお子様ランチ)
王道派:播磨×天満(主人公同士のカップリングということで)
無論、わたしは旗派として応援してました。
ツンデレが今でも好きなので、この漫画への思い入れは強いです。
またハーメルンでスクランが増えてくれないかな、と祈るばかりです。
また見ていただければ幸いです。