沢近さんの純愛ロード   作:akasuke

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スクールランブルでの勘違いの原因は、主に播磨の誤爆などが理由です。

しかし、それだけではなく、自分の考えに自信があり過ぎるキャラクターが多いのも原因ではないでしょうか。


播磨「天満ちゃんは俺のことが好きだ。 間違いねぇ!」

天満「播磨くんは八雲の彼氏さんだもん!」

愛理「ヒゲは私のこと、好きなのよね……」

今鳥「美琴ちゃんはDカップだよ、間違いないね」

花井「八雲くーん!」


晶「(面白いから黙ってよう)」

※一人、意図的に黙っている人が居る模様。


それでは、本編をどうぞ。


#08「思いを馳せる彼女」

 

旅行当日。

海に行く面々は集合場所の駅に集まっていた。

 

そのうちの一人である美琴は、意外な人物を見掛け、目を丸くしていた。

 

 

「あれ、沢近? てっきり来ないかと思った」

 

彼女が視線を向ける先には、金髪の女の子―沢近 愛理が居心地が悪そうに立っていた。

 

美琴としては、愛理は旅行には来ないと思っていたのである。

 

美琴自身も旅行は乗り気ではなかった。

片想いだが好きな人も居るし、ナンパして来た男性にあまり良いイメージ抱いてなかったからだ。

だが、天満と晶に言われて諦めたのである。

 

しかし、愛理は美琴以上に乗り気ではなかった。

こりゃ行かなそうだな、と思うくらいに不機嫌な様子を隠していなかった。

 

その為、本当に意外だったのだ。

 

 

「あ、晶にどうしてもって言われたからよ」

 

美琴の視線を敏感に感じ取り、言い訳をする様に慌てた口調で話す愛理。

 

愛理の言葉に、美琴は視線の先を晶に変える。

 

 

――わ、分かってるわよね!

 

愛理もまた晶に視線を向けていた。

主には懇願の気持ちを載せて。

 

彼女自身、晶の言葉で海に行くことにした為、自分の行動があからさまだとは思っている。

思ってはいるが、正直には言わないで欲しい、と。

話を合わせて欲しいと晶に念じる。

 

 

――任せて。

 

そんな愛理の思いが通じたのか、晶は愛理に向かって親指を立てるジェスチャーを向けた。

完璧な意思疎通であった。

 

 

「愛理さんの言うとおりよ」

 

愛理の言葉に肯定した様子を見せる晶。

 

ここまでは、良かったのである。

ここまでは。

 

 

「だから美琴さん、愛理さんが誰か気になる男子が旅行に来るから変更しただなんて、邪推しないで」

 

「ちょっ、あき……あきらっ」

 

晶の言葉を聞き、美琴はこちらに向かってくる男子達を見ていく。

 

其処には、ナンパした男子ではなく、別の男子達が。

晶からは男子が怪我をしてメンバーが変わったとの連絡があったが、具体的には聞いていなかった。

 

視線の先には、幼馴染の花井、あとクラスメイトの奈良、今鳥、そして――

 

 

「あぁ……なるほど」

 

サングラスで頭にカチューシャを付ける男子。

誰であるかはスグに分かった。

そして、愛理が旅行をいくと変更した理由も。

 

納得した様子を見せ、美琴は視線を男子から晶や愛理の方向へと向ける。

 

 

「分かってるよ高野、私がそんな邪推するわけないだろ」

 

美琴の返答は愛理が望むものであった。

ニヤニヤと笑いながらこちらを見なければ、完璧であった。

 

 

「えー、みんな何の話をしてるのー?」

 

愛理たちの話が気になったのか、天満は彼女たちの話す場所に来て尋ねる。

天満は、美琴のニヤニヤした表情を見て、何か面白い話をしてると勘付いたのである。

 

 

「な、何でもないわよ…ほら、電車に乗る前に飲み物を先に買っておきましょ」

 

このままだと不味いと危機を察知し、天満を連れて一緒に購買へ向かう愛理。

 

 

「えー、何か楽しそうな話してそうだったのにー」

 

恋バナが大好きな少女、天満。

彼女に話を聞かせなかったのは正解である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

#08「思いを馳せる彼女」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なにっ、八雲くんは居ないのかっ!」

 

そんな馬鹿な、と。

電車の中、花井は愕然とした表情を浮かべる。

 

一応、八雲ではなく播磨になったと天満が伝えていたが、八雲との旅行に想いを馳せていた為に気付かなかったのだ。

 

 

「ぬっ、八雲くんの為に特製弁当を作ってきたのだが」

 

料理を作るのが上手い花井は、他のメンバーにも弁当を作りつつ、八雲には特製の二段弁当を用意していた。

 

 

――ということは、残りは。

 

一人ずつ作ってきた弁当を渡していたが、八雲が居らず、まだ弁当を渡していない相手に顔を向ける。

 

天満、美琴、愛理、晶、今鳥、奈良。

そして――播磨。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

花井と播磨。

両者の視線が合い、暫く無言の状態が続く。

 

そして、先に行動したのは花井であった。

八雲の為に作った弁当を開き、思いっきり口にかき入れる。

 

 

「なっ、俺にも寄越せよ!」

 

「八雲くんの為に作った愛情弁当を、誰が君に食べさせるか!」

 

自分の分の弁当を作るの忘れてたし、と花井は喋りながらも弁当のおかずを食べ続ける。

 

播磨と同様に運動神経が良いので、弁当を奪って来ようとする播磨の手を上手く躱す花井。

 

 

「他の人に渡した弁当を分けて貰ってくれたまえ」

 

花井の言葉に、なるほどと播磨は頷く。

そして、これは紛れもなく天満ちゃんと近付くチャンスだと思った。

 

天満ちゃんに弁当を分けて貰い、親睦を深めていこうと考えたのである。

 

播磨は天満ちゃんの席に近付こうとし、ひとつ重大なミスがあったことに気付く。

 

 

――いきなり、天満ちゃんじゃ怪しまれるか。

 

同性ではなく異性からいきなり弁当を貰おうとした場合、何か言われる可能性がある。

 

男子の弁当が食べ終わっているから、女子が食べている弁当を分けて貰う。女子の中では一番席が近かったから天満に頼む。

ナイスな案だぜ、と自分を褒める播磨。

 

男ならもう食べ終わってんだろ、と播磨は奈良と今鳥の方へ振り返る。

 

 

――美琴ちゃん、やっぱり服の上からでも良い眺めだわ。

 

――塚本、今日の私服も可愛いなー。

 

今鳥は美琴を、奈良は天満を見ていた為、弁当箱はまだ半分以上残っている状態であった。

 

 

「……アー、テガスベッター」

 

「ちょ、へぶっ!」

 

「まっ、ま……ぶはっ!」

 

よし、完璧だな、と。

わざと今鳥と奈良の顔に弁当をぶつけ、無理やり口に入れさせた播磨。

 

花井には他から貰えと言われたので男子からは貰えない。

播磨は自分にとって最良の状況を作り出せたと内心ガッツポーズを決める。

 

そして、播磨は覚悟を決めて天満の方に振り向き、言葉を伝える。

 

 

 

 

 

 

 

 

「つ、塚本……あのよ、べん――」

 

 

 

 

 

 

 

「プハー、美味かった! ん、どうしたの播磨くん?」

 

「な、なんでもねぇ」

 

疑問の表情を浮かべる天満に間違えたと言い、自分の席に戻る播磨。

 

途中までは完璧であった。

男子が食べ終わっていたなら女子にお願いする。

言い訳としても申し分なかった。

 

しかし、播磨の誤算だったのは――

 

 

――天満ちゃん、食べるの早すぎだぜ……。

 

天満が既に弁当を食べ終えていた、ということ。

プチトマトや米粒一つ残さずに天満は完食していたのである。

 

完全に播磨の案は潰れてしまうのであった。

 

 

――やべぇ、死ぬほどお腹すいた。

 

昨日、天満と旅行ということでテンションが高く、夕飯を食べ忘れていた播磨。

しかも、朝は集合時間ギリギリに起きた為、慌てて朝食も抜いてしまっていた。

 

 

――しまった、アイツらに無理やり食わしちまった。

 

奈良と今鳥には自身が無理やり食わしてしまったのだ。

ちらりと見ると、まだ花井は二段弁当の為、食べている途中であった。

 

 

――メガネに頼りたくねーが……背に腹はかえられねぇ。

 

他から分けて貰えと言われた。

しかし、あの真面目なメガネなら真剣に頼めば少しは貰えるだろうと思った。

 

恥だと感じたが、意識すると余計にお腹が空いてしまい、何でも良いから食べたいという欲求が湧いている播磨。

 

仕方ないと思いながら花井に頼もうとした、その時。

播磨の目の前に半分食べかけの弁当箱が差し出されていた。

 

彼は弁当を差し出す相手を見る為、視線を上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、わたしの分で良ければ……たべる?」

 

 

 

 

 

 

 

其処には、恥ずかしそうに差し出す愛理の姿が。

 

この時ばかりは天満以外を天使だと思えてしまった播磨であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

――もう、そんなに慌てて食べて。

 

ゆっくり食べれば良いのに、と。

一心不乱に弁当を食べる播磨を、愛理はニコニコと笑みを浮かべながら見つめていた。

 

花井から弁当を貰った後、播磨だけ弁当がないことに気付いた愛理。

しかし、同性も居るのにいきなり異性の自分が弁当を渡すのも変だろうかと思い、男子の方の様子を見ていた。

 

そして、花井の言葉と奈良や今鳥の弁当を確認した愛理は播磨に声を掛けたのだ。

 

その結果、播磨が嬉しそうに食べている現状である。

 

 

――ほんとに嬉しそうに食べてるわね。

 

サングラスを掛けている為、表情は分かり辛い播磨。

しかし、いまはサングラスで目元が隠れていても分かる位に嬉しそうな表情を浮かべているのだ。

 

この弁当は、愛理が作ったわけではない。

花井が作ったのだと、播磨も理解しているはず。

 

それなのに、何でここまで嬉しそうなのか。

疑問に思う愛理であったが、とあることに気付いた。

 

自分の食べかけの弁当。

喜んで食べている播磨くん。

そして、私のことを好きだということ。

 

現在の状況を整理した愛理は、分かってしまったのだ。

播磨が喜ぶ理由を。

 

 

――間接キス、よね。

 

認識した途端に、頬が熱くなるのを感じる愛理。

 

普段はその程度で気にしない彼女であったが、あそこまで喜ぶ播磨を見ると、妙に強い羞恥心に襲われてしまう。

 

 

――そうよね……わたしたち、手も繋いでないもんね。

 

お互いが好き合っている。

映画館に行くというだけであったがデートもした。

 

しかし、手も繋いだことがなければ、キスなんて以ての外。

それなのに、急に間接キス。

 

真剣に好きでいてくれて、不良の姿とは裏腹に純情な彼だからこそ、嬉しく感じてくれたのだ。

 

 

――は、恥ずかしい。

 

表情を隠すため、顔を電車の窓に向ける愛理。

そんな播磨をみて嬉しくもあったが、いまの自分の顔を誰にも見られたくなかった。

 

 

――泊まりよね、今回の旅行。

 

播磨だけでなく、他にもメンバーが居る。

だからこそ、二人きりになる機会は少ないかもしれない。

 

しかし、それでも何処かでゆっくり話したいなと思う愛理であった。

 

 

 

 

 

 

 

 




今更ながらに感想、評価ありがとうございます。
そして推薦もありがとうございます。

基本的に、感想や評価、推薦を入れてもらっても、その人自身に見返りがありません。
それなのに、付けてくださる読者さんには感謝以外に言うことは見当たりません。
本当にありがとうございます!

私自身が読み手のときに感想とか評価とか全然付けてなかったのは反省です(;´д`)

私以外の作者にも言えることですが、読者の感想や評価はあなたが思っている以上にもモチベーション上げる材料になってますよ!

「作者が物語を書き続けられるのは、俺の感想のおかげですわ(ドヤァ」
って思って貰って問題ないと思います∠( ゚д゚)/

読者にリポDくらいは渡したいと思うくらいに感謝しているakasukeでした。

では、また次回に!

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