沢近さんの純愛ロード   作:akasuke

9 / 17
こちら久しぶりに投稿します。

私はこの作品含めて2つ二次創作を描いてますが、両方ともなるべく原作のキャラのイメージや雰囲気を壊さないように描きたいと思っています。

Q: 沢近さんがツンデレじゃないんですが(´・ω・`)

A: 初めから播磨くんが沢近さんに素直な愛(勘違い)しかぶつけてないので、ツンする機会がないだけです。何か切っ掛けがあればツンデレに進化します。


では、本編をどうぞ。


#09「漫画のようなハプニングが起きる彼と彼女」

 

 

 

「はぁ、まさか八雲くんが来ないとは……」

 

色々と準備してたのに、と花井は項垂れながらタメ息を吐いた。

 

 

電車で目的地に到着した天満たち一行は、宿泊する旅館で水着に着替え、早速海へと向かっていた。

 

花井としては塚本 八雲と旅行を行くということが目的の大部分を占めていた為、不在と聞いてからずっとショックを受けていた。

ただ、項垂れながらも荷物持ちを担当しているのは彼の根が真面目だからであろうか。

 

 

「あはは……」

 

今鳥の隣にいた奈良は花井に対して同情的な視線を向けていた。

好きな女の子が旅行に来ていなかったら確かにショックだろうなと思ったからである。

 

 

「おいおい、まだ言ってんのかよ」

 

一方、そんな花井の状態を見て、今鳥が呆れたような顔をしながら話し掛ける。

 

 

「しかしな、八雲くんが来ていると思って張り切っていたんだが……」

 

「来てないんだから仕方ねーべ……それよりも、あっち見てみな」

 

今鳥が指を差した先には、旅行の女子メンバーである天満、愛理、美琴、晶が海を眺めながら話している姿があった。

 

 

「む、彼女たちがどうかしたか?」

 

「どうかしたか、じゃねーよ! あんなに目の保養になるもんはねーだろ」

 

そう言う今鳥に、花井が今度は別の意味でタメ息を吐くのであった。

 

 

――でもまぁ、言いたい事は分からないでもない、かな。

 

今鳥は明け透けな物言いであったが、奈良としては頷かざるを得ない光景ではあったのだ。

 

 

「おー、いいじゃん」

 

「はぁ、ようやく海に着いたわね」

 

「天気も良いし、まさに海日和って感じだしね!」

 

嬉しそうに話す美琴や愛理、天満、晶たち。

彼女たちも海で泳ぐため、勿論水着の格好である。

容姿が良く、スタイルの良い美琴や愛理、晶はビキニということもあり、周囲の男たちの視線を独占していた。

 

 

――塚本の水着、可愛いな。

 

天満は他のメンバーと比べるとスタイルは劣るが、奈良からすれば好きな女の子の水着は何よりもドキドキするものであった。

 

 

「あ、天満。 日焼け止め持ってない?」

 

「持ってないよー」

 

「俺持ってるゾー」

 

各々が海や人に思い思いの感想を抱く中、日焼け止めを忘れたのか天満に借りようと思うも、持ってないと言われる愛理。

 

そして、今度は美琴と晶へと振り返り、同じ質問をする。

 

 

「持ってきてねーわ」

 

「愛理さん、私も今は持ってないわ……部屋にはあったと思うけど」

 

「それじゃあ部屋に取ってくるわ、ありがと」

 

旅館の部屋に置いた荷物にあると言われ、感謝を述べてから部屋に戻ろうとする愛理。

 

 

「おーい、俺は持ってるぜー」

 

塗るぞー、と付け足しながら今鳥は脳天気に部屋に戻ろうとする愛理に後ろから声を掛ける。

 

セクハラ的な言葉は今鳥としては挨拶なようなものである。

今鳥の言葉を聞き、彼へと視線を向ける愛理。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

だが、愛理は今鳥に特に何も言わずに部屋へと向かうのであった。

 

 

「い、今鳥くん、大丈夫?」

 

「…………なぁ、奈良」

 

愛理に無視され、ポツンと取り残された今鳥に奈良が心配して声を掛ける。

すると、今鳥が奈良の方に真剣な表情をしながら話し掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

「蔑んだ目で見られて少し興奮したんだけど、おかしいか?」

 

「おかしいんじゃないかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、その後のこと。

美琴が何か気付いて疑問を投げかける。

 

 

「そういえば、播磨は?」

 

「たしかまだ部屋だったと思う」

 

「まったく、集団行動が取れないやつだ」

 

そんなやり取りがあったとか、なかったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

#09「漫画のようなハプニングが起きる彼と彼女」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旅館「旅龍」。

本日、愛理たち全員が泊まる旅館である。

 

外観としては老朽化が進んでいる様に見えるが、案内された部屋は綺麗で且つ広々としていることもあり、割りかし好評であった。

 

 

「あ、クリームあった」

 

天満たちが海にいる中、愛理は日焼け止めクリームを取ってくる為にひとり部屋へと戻っていた。

 

だが、彼女の目的はそれだけではなかった。

 

 

――播磨くん、何処に居るのかしら。

 

彼女が気になる男子について。

先程一緒にいたメンバーに播磨が居ないことに気付いた愛理は、部屋に戻る途中で播磨を探していた。

 

しかし、部屋に戻る間では播磨を見掛けることはなかった。

 

 

――せっかく、二人で話せると思ったんだけど。

 

皆で旅行に来ているということもあり、中々ふたりきりにはなれないだろうとは思っていた。

 

しかし、偶然ではあったが今ちょうどその機会が巡ってきたので愛理としては播磨に会いたかったが会えなかった。

思わずタメ息を吐く。

 

 

――そもそも、何で一緒に居ないのよ。

 

そして内心で播磨に文句を言う愛理。

 

もともと学校自体しばらく来なかった播磨。

単に不良だからと言うべきか、はたまた自由人と言うべきか。

集団行動はあまり得意ではないのだろうとは愛理も何となく理解していた。

 

しかし、今回の旅行はもう少し頑張って欲しいと思う愛理。

 

 

――わ、わたしの為に来たんでしょ。

 

不良である彼がこの旅行について来た理由は自分が居るからだろうと愛理は推測した。

いや、推測というよりは、ほぼ確実だとは思っていたのであるが。

 

自惚れが強いと思われるかもしれないが、それ以外に理由がないのだ。

 

そこまでして来てくれたのに、自分にも何も言わずに居なくなる彼に少しむくれる愛理。

そんな彼女であったが、ひとつ何かを思い出す。

 

 

「そういえば、男子部屋と繋がってるのよね」

 

愛理が視線を向けるのはフスマの先。

 

旅館に着いて部屋に入った際、美琴と天満が話していた内容を思い出したのだ。

 

 

『へぇ、隣の部屋とフスマで続いてるんだー』

 

『ゲ、マジかよ』

 

美琴が男子メンバーに覗くなよと注意をしていたのだ。

ということは、このフスマを開けるとすぐに男子部屋なのである。

 

 

――もしかして、まだ播磨くん、いるかしら……。

 

ずっと部屋にいるとは思えないが、戻る途中では出会えなかったのだ。

可能性はあると思った愛理は一応確認しようと思った。

 

だからこそ、男子部屋に続くフスマを開けて声を掛けた。

 

 

「播磨くん、いるの…か……しら……」

 

愛理は目の前の光景を見たことにより、言葉が途切れてしまう。

 

彼女が探していた人物はいたのだ。

それは、本来であれば喜ぶべきところであろう。

 

 

 

 

 

 

 

「フシュー」

 

全裸でなければ。

 

 

 

 

 

 

 

何故裸なのか、何故変な構えをしているのか。

聞きたいことは山のようにあったが、愛理は目の前の光景に頭が真っ白になってしまうのであった。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

播磨は自分の状況に対して途方に暮れていた。

だが、彼がそう思っても仕方ないかもしれない。

 

何せ、裸の男が女性を羽交い締めにしているのだ。

誰かに見られると通報されてしまう事態だ。

 

 

――な、何でこんなことになっちまったんだ。

 

彼はこの状況になってしまった原因を思い返す。

 

人はそれを現実逃避と呼ぶ。

 

 

『はっ! ほっ!』

 

彼は同じ部屋の男子が先に海へと向かった後、ひとり部屋に残っていた。

単純に自分のペースで海に行きたかったのもあったが、播磨にはやりたいことがあったのである。

 

 

『ふぅ、一回やってみたかった』

 

スチュアート大佐ごっこ。

播磨は裸になり、海パンを履く前に何となくやりたくなったのだ。

何故と言われると困る。本当に急にやりたくなってしまったのである。

 

どのみち皆が海に向かったので誰も暫く来ないだろう。

そういう油断があった。

 

そういう時ばかり、彼にはハプニングが起きる。

 

 

『播磨くん、いるの…か……しら……』

 

『フシュー…………あっ』

 

スチュアート大佐の構えを真似している最中にフスマを開けて愛理が入ってきてしまったのだ。

 

しかも真っ正面の位置である。

愛理からしてみれば、もろに見えてしまっている位置であったのだ。

 

 

『…………』

 

『…………』

 

播磨と愛理の両方とも頭が真っ白になっていた。

 

しかし、最初に我を取り戻したのは愛理。

思わず口を開けて叫んでしまいそうになるが、播磨はそれを察知し、思わず口を手で塞いだのである。

 

それだけであれば良かったのかもしれない。

口を塞ぐだけでは留まらず、思わず彼女の手を後ろに固めてしまったのだ。

 

それが途方に暮れる現在の状況である。

 

 

――固めてどーすんだ、俺?!

 

長年のケンカ人生で染み付いてしまった動きを行ってしまった。

完全に対応を間違えてしまったのである。

 

この時点で既に言い訳が難しい状況。

 

こんなことするつもりでなかったと説明しなければいけない。

しかし、それも難しいかもしれないと思った。

 

 

――こいつ、死ぬほど怒っていやがる……。

 

羽交い締めにされている愛理は特に暴れはしていなかった。

だが、それが嵐の前の静けさに過ぎないと理解せざるを得なかった。

 

 

――おい、やばいくらい全身真っ赤にしてキレてるぞ。

 

愛理の顔だけでない。

愛理の全身が目に見えて分かるほどに赤く染まっているのである。

 

長年のケンカ人生でキレた人間が顔を赤くするのを見てきた播磨だが、初めて見るくらいの赤さに恐怖を覚える。

思わず説得を諦めてしまいそうになるくらいは。

播磨は、途方に暮れていた。

 

 

 

一方、愛理は播磨以上に現在の状況に戸惑っていた。

もしくは混乱していた、と言った方が正しいだろうか。

 

目の前の光景に頭が真っ白になり、次には思わず叫びそうになり、気付いたときには播磨に羽交い締めにされていたのだ。

 

ただ播磨が勘違いしていたことがある。

それは怒りで全身を赤くさせていた訳ではないということである。

 

 

――な、なんなの、この状況。播磨くんに後ろから口を塞がれて抱き締められてる。そもそも何で裸だったの。あ、あれ、わたし男性の裸は小さい頃にお父様と一緒にお風呂に入って以来で……は、播磨くんの裸見ちゃったんだ。でも付き合ったら可笑しくはないのかしら。いや、まだ私たち付き合ったばかりで、手も繋いでなくて、そういうのは早いというか。あ、さっき電車で間接キスはしたのよね。それでも早いわよ! ま、まずはそういうのの前に間接じゃないキスを、ってそれじゃあ私がキスしたいみたいじゃない! だ、だけどそもそも播磨くんを我慢させてしまったのは私の所為なのかしら。男子って付き合ったらそういうことしたいって雑誌に書いてあったし、播磨くんも例外じゃないわよね。だけど、もうちょっとムードは欲しいというか。それに、いまは皆で旅行に来てるから誰か来る可能性があって、ほら、部屋に戻るって言っちゃったから遅いと美琴や天満たちが戻ってきて見られちゃうかもしれないし。はじめては私の家……はナカムラたちに見られちゃう。だったら播磨くんの家が良いというか。あれ、そういえば播磨くんは一人暮らしなのかしら、家族と一緒だと同じく難しいのかもって、じゃあ、ど、何処でするものなの…って違うでしょ、わたし!まだ、そもそも早いっていう話で、段階を踏んでからが良いし、もっとゆっくり進んでいきたいし。あれ、なんの話だったかしら、と、とりあえず播磨くんに言わないと、でも口が塞がれてて……というか、塞がれてる口を取ってもらったら何て言えば良いのかしら、我慢させてごめんなさいかしら、もしかしてワガママなのかしら、こういう彼氏の生理現象とか理解してあげないとダメなのかしら……読んでた女性誌にこんな状況書いてなかったし、そもそも予想もしてなかったし。あれ、なんで播磨くん最初から裸だったの――

 

 

色々な感情や気持ちが浮かび上がり、更に色々と考えてしまい、愛理は完全にパニックになっていた。

 

 

愛理と播磨の両方とも次にどうすれば良いか分からずにいた状況。

そんな状況に進展があった。

 

 

それが良いのか悪いのかは分からないが。

 

ガラガラ、と。

フスマが開いて別の人物が入って来たのである。

 

 

「…………」

 

それは同じく旅行メンバーの晶であった。

彼女は無言で部屋の播磨と愛理を見つめていた。

 

 

――お、終わった……。

 

裸の男が女性を羽交い締めにしている姿。

言い訳が難しい状況であった。

既に播磨はもう諦めの境地に入っていた。

 

だが、晶は部屋を見渡し、改めて播磨と愛理を見て、何か納得したのかひとり頷く。

そして、播磨と愛理に言葉を投げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「布団、敷いた方が良いわ」

 

 

 

 

 

 

先に戻ってるわ、と。

晶はフスマを閉めてひとり海に戻るのであった。

 

高野 晶。

冷静に状況を理解しても、面白ければ気付かない振りをする女性であった。

 




以前、感想や評価に対して後書きにて感謝を述べた際に
「お気に入りだけじゃダメなのかよぉ(ポチー」という一言評価を頂きました。

いや、お気に入りだけでも物凄く嬉しいです。
単純に書き忘れていただけです(笑)

それにしても、ツンデレ好きな方は行動もツンデレなのだと思いました。
ありがとうございます!

というか、これを見て買い直したとか、押入れの段ボールを開封したとか、嬉し過ぎますね。
私自身が過去の面白い漫画やゲームを思い出して欲しいということもあり、是非とも懐かしく感じてもらいたいものです。

また見ていただけたら幸いです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。