―― 黒岩 頼介 ――
『大都会 PARTⅡ』
「何かというと三治、三治と! 貴様私とそいつとどっちを頼りにするんだ!?」
これから大変だという時にも一夏は痴話喧嘩を欠かさない。
最後の授業が終わると、オルコットは俺たちにせいぜい悪あがきなさいなと自信たっぷりに教室を出て行った。俺はひとまず今後のことを帰りがてら話し合おうという事で一夏と意見の一致をみたのだが、そこへ篠ノ之さんが一夏の剣の腕を見ると言い剣道場に連れて行こうとして断られたのだ。
それで先の発言になる。
「じゃあ一緒に来ないか? つきあいの古い篠ノ之さんなら、一夏の事を客観的によく知ってそうだし」
面倒くさいので、もう一夏の腕試し(というより一夏と過ごす時間か)も一緒に済ましてもらう事にした。
「うむぅ、ま、まあ仕方ないな音羽の頼みだしな!」
急に態度を豹変させた篠ノ之さんだが、もはやクラスの誰も驚かない。たった二日で篠ノ之さんが一夏を好きだが素直になれないのは当事者以外全員に広まっているようだ。
そこに本音、鷹月さん、谷本さんの三人が寄ってきた。
「ねーねー、これからどうするの?」
「オルコットさんってあれでもIS無しでライフルで2キロ先の標的の真ん中を撃ち抜くらしいよ? ほんとに大丈夫?」
「そうだよ、それに二人ともISに関して付け焼刃でしょ?」
正直どうしようもねえな。
「まぁ、夜は織斑先生が一夏をISで鍛えてくれるし。それまではオルコットのISと戦術の研究、それに篠ノ之さんに頼んで一夏の鍛錬かな」
思いつく限りできそうな事を並べてみた。谷本さんの言う通り俺たちは付け焼刃で基礎もかなり危うい。それどころかIS操縦経験が極端に少ない。比べてオルコットは経験、知識、技術、どれをとっても圧倒的に上だ。どうやったら勝てるんだ? 某プロボクサーみたいに判定勝ちとかか?
出来レース臭いんじゃなくて、出来レースそのものなんだな。その上考え無しの一夏が勝負すると言うんだから、もうこれは馬鹿が意地になっただけの子供のケンカかな?
考えすぎると悪い方にしか向かわないな。俺は早く外の空気を吸いたくて廊下に出ようとした。
「情報だけなら手伝えるかもよ~」
本音の声に思わず足を止めた。
「どういう事だ?」
「にしし、布仏さんはなんとIS学園生徒会の書記なのだ!」
「そっか、そのうち邪魔するよ」
「ま、まってー! IS学園生徒会には強い権限があって、代表候補生の情報もある程度集められるんだよ!」
俺は思わず振り向いた。本音の言うことが本当なら、公開されている限定的な情報をネットや図書館で苦労して集める手間が省ける。
「そいつは本当か?」
本音はもちろん! と元気よく答えた。
「えっへん! 今なら経験豊富なロシア国家代表のアドバイスもついてくる!」
「……? 誰だそんな物好きは?」
「それは、行ってからのお楽しみ~」
どこかうさん臭い話だが、本音が嘘をついてるようには見えないし、何よりずいぶん助かる話だった。特に俺が。
ただ代価に何を要求されるかだ。おかしな事を言い出したら断るか。どうせ頑張っても互角に持ち込むのさえ難しい勝負だ。無理して変な要求を呑むことはない。
「面白そうだな! 行ってみようぜ三治」
「お、おい一夏! 道場の方はどうするのだ?」
一夏も乗り気だな。篠ノ之さんは不満そうだがなだめればどうにかなるか。
「分かった。本音の話に乗ってみよう。篠ノ之さんもいずれISに乗るんだし、一夏も行くからせっかくだし一緒に話だけでも聞いたらどうかな?」
「むう……」
篠ノ之さんはやはり不服そうだが一夏が行くと聞いてついて行きたいようだ。
「決まり~じゃあついて来て」
案内する本音を先頭に、俺たちは予定を変更して生徒会室へ向かう事になった。
「ここだよー」
本音は『生徒会室』と表示された掛札のある部屋のドアを開けた。
「連れてきましたー」
本音に続いて中に入ると、髪をまとめ眼鏡をした真面目そうな女子と、ベスト風に改造した制服に黄色いネクタイを締め青い髪をした、くだけた感じの女子の二人がいた。
「来たわねえ。今話題の男子二人! 私が生徒会長の更識楯無よ、よろしくね」
青い髪の方が自己紹介した。朗らかだがどこか隙の無い態度で、笑顔のままこちらを探るような視線を向けてくる。
「布仏
もう一人は大人しく物静かな印象で、本音の姉だと名乗ったのには驚いた。何とも対照的な姉妹だ。……いや、一夏と織斑先生だってそうだし、よく考えたら俺もか。世の中の兄弟姉妹はそんなものかも知れない。
「どうも始めまして、音羽三治です。こっちが織斑、それに篠ノ之さんです」
二人もそれぞれ自己紹介し、虚さんにすすめられイスに座って向かい合うと、会長が興味深そうに俺たちを眺め回した。じっくり観察されて一夏はどうにも居心地が悪そうだ。
最後に会長の視線は俺に固定された。
「ふぅーん」
「何か?」
会長は意味ありげに笑った。
「いえ、あの織斑先生と一対一で何度もやり合って、ほとんど折れさせたんでしょ? どんな子かと思ったんだけど」
「そいつはがっかりさせてすいませんね」
ISで模擬戦したわけじゃなし、期待し過ぎというもんだ。
「そうでもないわよ? それで質問なんだけど」
「答えられる事なら」
「本音ちゃんとはどこまでいったの? お姉さんに教えなさい! ね? どうなの!? 本音ちゃんに聞いてもナシのつぶてなのよ!」
俺はガクッと来た。恋バナしたいだけかあんた!?
「もーお嬢さま! そんなんじゃないっていってるのに~!」
本音の抗議もどこ吹く風、会長の勢いは止まらない。
「いいじゃないのちょっとくらい! あ、さっき虚ちゃんの方見てたわよね? そっちの方がタイプなの!?」
女子ってやつはどうしてこう、何でも恋愛に結び付けたがるのか? そりゃ、まあ……本音の事は、まぁ……。
でも本音にはっきり否定されるとそれはそれでダメージでかいなぁ。
「さっき虚先輩を見たのは、本音と全く対照的な姉だなと思ったからですよ。俺も妹がいますが、俺と違って社交的で勉強も出来て、親をガッカリさせた俺とはえらい違いですよ」
急に会長の表情が曇ったように見えた。
「そう……そうね。兄弟や姉妹が対照的って、あるかもね」
さっきまでの会長の油断の無さそうな雰囲気が、急に寂しそうなものに変わった。
「さあ、それじゃそろそろ本題に入りましょうか! 同じクラスのオルコットさんとISで模擬戦するんでしょ? 彼女の模擬戦記録とISの基礎情報は揃ってるわよ?」
一瞬で寂しさを振り払った会長は急に話題を変えた。
「ほんとですか!? やったな三治! これでだいぶ有利だぞ!」
一夏は大喜びだ。しかし俺は少々不安だった。さっきの会長の変化も少し気になるが、それ以上に情報と交換で何を要求されるか分からなかったからだ。
「でもね、タダって訳にもいかないのよね」
会長は値踏みするように俺たちを見回しつつ言った。
「とりあえず持ち合わせが無いんでタダでお願いします」
俺は即座に言葉を被せるように答えた。
「そうね、ってそんな訳無いでしょ!?」
「気にしなくていいですよ、一夏なんてここでの会話も明日には忘れてますから」
「そうなの!? だからそうじゃなくて何言ってるの気にするわよ!」
ノリもテンポもいい人だ。さすがに只者じゃない。そういう問題でもないが。
「会長がくたびれる前に真面目に聞きましょうか。何が欲しいんです?」
「最初からそうしなさいよ! もう」
「すみません。最近人間関係に疲れて言葉がぞんざいになってるんです」
会長はやれやれとため息をつき、俺たちに向き直った。虚先輩は訳が分からず目を白黒させ、本音は口元を押さえて声を殺しながら笑っている。俺の横にいる一夏は訳が分からずボケたような顔で、篠ノ之さんは呆れて眉をしかめた。
「まず持ち合わせが無いなんて嘘よね? 政府から特別会計で結構な金額もらってるでしょう?」
「要求は金か」
「人を誘拐犯みたい言わないでよ! それでもいいけど、今は違うの」
「では?」
会長は俺のポケット辺りを目線で示した。
「オルコットさんとのやりとりの録音、まだよそに漏らしてないみたいね?」
「今のところはね」
俺はスマホを取り出し、生徒会役員と俺、一夏、篠ノ之さんで向かい合ったテーブルの上に置いた。実際他にたいしたデータなんて入ってない。
「確認していいかしら?」
会長は不敵な笑みで片手を差し出した。
「会長!?」
「音羽っ、こいつは信用できるのか!? 布仏! 私たちははめられたのではないだろうな!?」
一夏は驚き篠ノ之さんは激昂した。録音データが消えればオルコットの差別的で
「今のやりとりも録音中ですよ」
俺はスマホを人差し指で叩いた。
「あははっ。面白いねキミ!」
会長はどこか楽しそうだった。
「こいつのカメラわりと高性能なんですよ。会長の鼻のアップも撮っておきますね」
「ちょ、やめてよ!?」
「面白いでしょ?」
まったくもう、と会長は少し怒った顔で再び俺を見つめた。
「それで、見せてくれる?」
……この人がオルコットやイギリスの息がかかった人物でないという保証はない。とはいえここで見せなければ話は進まない。さて、どうすべきか。
わかんねーよ。
凡人のガキである俺に相手の真意を見抜く能力などない。仕方ないので会長の顔を見返してみたが、腹の内などかけらも見せない様子だ。
俺は触れたスマホをテーブルの向こうへ滑らせた。
「バックアップあるからいいや」
会長は呆れつつもスマホをキャッチし、録音データを見つけ再生した。
「確かに。それでバックアップはどこにあるの?」
「ハッタリですよ」
俺はさらっと答えた。一夏と篠ノ之さんが抗議の声を上げる中、会長はしばらく俺の目をじっと見ていたが何も言わず、虚先輩に目で合図してUSBメモリを出させると、一夏の方に放って寄越した。
「オルコットさんの模擬戦映像と専用機ブルー・ティアーズの開示データが入っています」
虚先輩が抑揚のない声で説明した。
一夏が慌ててキャッチするのを確認すると、会長は俺にスマホを滑らせて返した。
「ねえ音羽くん。キミ、私を信じて渡したの?」
「いいえ」
「じゃあ、なぜ?」
俺はチラッと本音の方を見て、それから会長に向き直った。
「会長が面白い人だからですよ。あ、髪の色の事じゃないです」
「これは地毛よ!! それで、面白い人なら渡していいの?」
「面白い人はケチでつまらない事はしませんよ。他の誰かにやらせりゃいい」
もちろん何の確証もないただの屁理屈だ。だが本当にオルコットやイギリスと繋がっている人間なら、もっと簡単にスマホぐらい奪えたはずだ。俺は護身術の心得もなければ専用ISもない。本気で奪おうとすれば一瞬だろう。こんな手の込んだことをする必要はない。
「……本気でそう思う?」
俺は笑った。
「もし本当に誰かに頼まれて録音データをもみ消そうとしたんなら、会長はセコくてケチ臭い仕事を
会長はイスを蹴飛ばして立ち上がった。
「青いのはやめてよ! もう。分かったわよ」
会長はムッとした顔で答えたが、やれやれと頭を振って座った。
「でもね、君たち三人とも見落としてるというか、勘違いしている事があるの。最初に本音ちゃんに言われなかった? 『ロシア国家代表がアドバイスしてくれる』って。それ私なのよね」
驚いた。まさかとは思ったが、会長はこの若さでG8の一角の国家代表なのだ。
「音羽くん、オルコットさんのこと織斑先生から『外部に漏らすな』って言われたでしょう? 私がこの情報を揉み消すんじゃなくロシアや他の国に売ったらどうなるかしら?」
ぐうの音も出ないとはこの事だ。完全な俺の落ち度で、今度こそ自分が初代ブリュンヒルデの鉄拳を食らっても文句は言えない。
一夏と篠ノ之さんもギクリとした表情だ。
「織斑くんと篠ノ之さんもね。今のは音羽くんの問題だけれど、本人が悪いとはいえ個人の将来を左右するような情報を安易に他人に渡すものではないわ。例え必要だとしてもね」
まあ私は生徒全体を守る生徒会長の立場だから外部に漏らすことは無いけど、次からは本当に気をつけてね。会長は俺たち三人の顔を見てそう言った。
「試すような真似をして御免なさいね。一応生徒会としても君たちの人となりを確認しておきたかったの」
会長の言葉に面食らっていた一夏と篠ノ之さんはようやく落ち着き、納得の顔を見せた。
一方で俺は自分の考え無しがこんなに恥ずかしい事もない。オルコットの奴も好きにはなれないが、危うくあいつに対して取り返しのつかない事をする所だった。
「俺も自分の判断で勝手な事をして済みませんでした。一夏と篠ノ之さんも巻き込んで申し訳ない」
反省する事しきりだ。まったく、暴力担任より会長の方がよっぽどためになる。
「……でも、私は最初織斑くんに興味津々だったんだけど、話してみるとキミも案外面白いね」
会長は俺を見て興味深そうに言った。
「そいつはどうも」
俺は肩をすくめた。
「皮肉じゃないわよ? こんなにキミと話すとは思ってなかったんだから。さて」
今度は会長は一夏に向き直ると、また不敵な表情に戻った。
「織斑くん……ISで強くなりたい?」
一夏も真剣な顔で頷いた。
「はい!」
「それはなぜ? 単にオルコットさんに勝つためだけ? それとも他に目標があるの?」
「それは……」
一夏は少し逡巡する素振りを見せ、俺と篠ノ之さんを交互に見てから答えた。
「大事な人を守れるようになりたいんです!」
いい事を言っているのに、俺は一夏が珍しくちゃんとした事を言ったなと思ってしまった。どうも最近色々ありすぎて素直さを無くしているようだ。
「そう……」
会長は頷くと、微笑みつつ立ち上がった。
「じゃあ、行きましょうか!」
全員が驚いて会長を見つめた。
「一体どこへ?」
「決まってるでしょ、アリーナよ。ISのコツを教えてもらえるって聞いて来たんでしょ?」
「え? でも」
「口で言うより実際にやった方が早く身に付くでしょ?」
ホラ早く、と戸惑う俺たちを急かしてさっさと生徒会室から出ると、会長は後ろから声がかけられるのを無視してドアを閉めてしまった。
「時間は限られてるんだから急いで行くわよ。使用許可なら心配しないで、生徒会長権限でどうにかするから」
急いでアリーナに向かおうとすると、背後で生徒会室のドアが開いて虚先輩が叫んできた。
「お嬢さま! まだ決済の済んでない書類がたくさん御座います! お嬢さまーっ!!」
「会長、あれは放っておいていいんですか?」
篠ノ之さんが至極もっともな指摘をした。どうやら会長は生徒会の仕事をほっぽってきたらしい。さてはサボりたかったな。さっきちょっと尊敬しかけたのに。
俺は会長の顔をのぞきこんだ。
「お嬢さま~俺たちは生徒会の事には責任持ちませんよ?」
会長は俺の言葉にも
「怒らないでよ『おとーさん』♪」
ゲッ。このあだ名は本音以外に言われるのキツいな!
「んふふ。この場をしのいでくれたらもう言わないであげる」
しっかり人の弱み握ってやがる。食えない『青いの』だわ。
「そんな顔しないの。私の事はたっちゃんでいいわよ、音羽くん? もちろん織斑くんもね」
「……わかったよとっつぁん」
「銭型警部じゃない! たっちゃん!!」
ちらりと後ろを振り返ると、本音が虚先輩に捕まっていた。手足をバタバタさせている。
「おねーちゃん私もいきたーい」
「駄目、お嬢さまがいないんだから猫の手も借りたいの!」
気の毒だが本音には生徒会書記として頑張ってもらおう。これも一夏の訓練の為だ。
廊下の角を曲がって生徒会室が見えなくなると、とっつぁん先輩が俺に尋ねた。
「ねえ、まさか織斑先生の時もさっきみたいに煙に巻いてごまかしたんじゃないでしょうね?」
俺は神妙な顔で答えた。
「そのまさかですよ。しりとりに勝ったんで一夏は殴られずに済みました」
「うそっ!?」
「ウソに決まってんじゃないですか。では俺はこれで一旦失礼します」
一夏がびっくりして俺を見た。
「なんで一緒に来ないんだよ!?」
俺は右手のUSBメモリを見せた。
「オルコットとブルー・ティアーズのデータを見てみないとな、寮に戻るから、訓練が済んだらメールしてくれ。食堂で落ち合おう」
そう言って途中で分かれると、うらめしそうな顔の一夏を尻目に寮へ戻った。
「しまった! 散髪……あーあ、もう今日は遅いか」
今からヘアカットの店を探して予約無しで飛び込んで、店から出た頃には一夏達から連絡がありそうだ。仕方なく俺は髪の事は忘れて寮の自分用に割り当てられたPCを起動した。借りたUSBメモリのデータを一応PCにコピーし、中身を確認してみた。両手に余る数の動画ファイルと文書ファイルが一つだ。
「動画データは全部模擬戦か、そこそこ長いし全部見てたらだいぶ時間かかるなぁ」
文書データを見ると、あまり量がないので印刷してしまう事にした。寮のプリンターは印刷にホチキス止めまでしてくれる。実際開示されるデータには限度があるし、細かいことはどうせ俺や一夏には理解できないだろう。
その後は模擬戦の映像を見始めたが、どれも文書データにあった大型レーザーライフルと、ドローンのようなISについて動くBT兵器というやつで戦うものばかりだった。強いのは正確な射撃で相手を寄せ付けないのと、6つのBT兵器で圧倒しているかららしい。それ以上は動きが早くて目が追いつかないし、大して知識もない俺には分からない。
「何か弱点ないのかよ?」
さらに幾つか模擬戦映像を見てみた。今まで見たのと同じく、相手にレーザーライフルとBT兵器のレーザーとミサイルを食らわせて倒している。
「あれ? ひょっとして飛び道具とBT以外に武器がないのか?」
あるにしても、全然使う場面が見つからない。オルコットは強いから、接近戦に持ち込まれる隙を見せないからか? でも互角程度の相手がいてもいいような……まてよ。
俺はいくつか前の映像をもう一度再生してみた。対戦相手が何度かレーザーをかわしてジグザグにオルコットへと進む。進むと言ってもヘリや飛行機じゃ考えられない機敏さと速度だ。そして目測で5mを切る辺りまでオルコットに近づいた瞬間。
「やっぱり! 他の武器を出さねえ」
オルコットは急ぎ距離をとり、BT兵器のミサイルで相手を倒した。
「剣とか槍とか、つばぜり合いで役に立つ武器が無い! あったとしても実戦で使えないか、使い慣れないからイザという時に頼りにはできまい!」
これでとりあえずの方針は漠然と見えてきた。とにかくレーザーとBTをかわして接近するしかない。
俺は大きく伸びをした。オルコットの暴言から始まって、一夏の味噌汁、決闘宣言でもめて生徒会室。よくもまあ一日でこれだけトラブルに遭うもんだ。あれ?
「半分以上発端は一夏なんじゃねえか?」
今日の出来事を詳しく振り返ろうとして、やめた。
「もういいや、どうせ疲れるだけだ」
今後俺に関係ない事は放っておこうと決めた。
夕陽に染まる部屋で映像を見て気がついたことをノートにまとめ、印刷した内容を見直していると、スマホが鳴り始めた。一夏からの着信で、疲れた声で寮でシャワーを浴びてからメシにしようぜと言って切れた。
夕食の後にはオルコット対策について二人で話し、さらに一夏に参考書で授業に出たポイントを超特急で暗記させなければならない。なにしろ夜9時にはISをまとった織斑先生が今や遅しと待ち構えているだろうから。
こんなあわただしい日はもう来ないで欲しいと切実に願った。
……というか一夏はこんな調子でもつのかな? 最悪一夏が駄目になったら、俺が模擬戦に出なければならないのか?
さすがに無いよなー。……ないよな?
想像以上に話の進み具合が遅くなってしまいます。
書くのも遅くなってしまいました。