二馬鹿駄弁り回です。別に話は進みません
『いやー、ホント、酷っどい世界ですねぇ』
ごろんと木の床に転がりながら、服装をメイドのものから本来のラフめな和装に戻した桃色狐がそう呟いた
『そうですか?』
『そうなんですぅーっ!というか
上半身だけを起こし、ニヤついて狐が食い付く。どうでも良いけれども、今の自分は幼い姿だと言うことを忘れて着付けた頭ピンク狐の和装は胸元のガードが少し緩く、ワタシとそう変わらない大きさの胸の頂点が見えそうになる。男が見たなら兎も角、ワタシとしては見ていて面白いものでもない。それはもう、育てば誰しも振り向くぼんきゅっぼんだと言い張る本人含めて。絞ってやろうかと思うのも仕方ない事ですね
『今更メイド服な理由ですか?
着慣れたので割と楽なんですよこれ』
『えぇーっ、ホントですぅ?
『わざわざ人の
足を折り、床に置かれた
『それが何か?』
『人なんかに縛られない力ならあるでしょうに。何故首輪を自ら付けられに行ったやら
ワタシには到底理解の及ばない話ですね』
『この、夢の無い純情系ビッチ!』
すこーん、と。狐は頭を叩く素振りだけを見せ、腕だけで支えていた体制を崩してすっ転ぶ
『頭の中に夢しか詰まってない色ボケ狐に言われても何も感じませんね』
『生娘でもねーのに初めての恋に振り回される純情系やってるおかしなビッチの
なんなんですか!頭の中に夢が無い恋なんて、キラキラしてないから御免なんです!』
『……話を、って何だここ』
突如、言い言葉に買い言葉、のフリでじゃれあう空間を破り、一人の男が足を踏み入れる。この空間に似合うような似合わないようなかっちりとしたスーツを着込んだ金髪の男……
『今は
『サノバビッチ?何ですかそれは』
『son of a bitch。悪いが、母上への侮辱は……
侮辱は……』
はあ、とライダーは溜め息を吐いて作った拳をほどいた
『事実か……』
『ライダー、教育方針を間違えましたか……』
『今の私の中の母上が間違った方針だったなんて、思いたくはない
ただ、母上。どう考えても異父兄弟のガウェインや我等が王から絞り出した成分を使ったモードレット等が居る時点で、貴女をビッチではないと言い張る事は出来ない。端から見たら何人もの男との間に息子と娘が居て、あの
『ビッチ?人聞きが悪いですね
寧ろ生娘の方が、自分の武器を使わない怠慢でしょう?』
『そんな事は、恋を知らなかったから言えるんですーっ!』
『人によっては溺れるのは分からないでも無いですが。あんな生理的な快感にそこまで入れ込みますか?男性は、また違うそうですが』
『今からまたその体を交渉の武器にしようとすれば、
恋を知って純情系に転職するビッチ……ああ、やだやだ面倒くさい。そんな入れ込むくらいなら、最初からビッチなんてやらないで欲しいですねぇ』
ぱん、と立ち上がった狐は音を鳴らして手を叩く
『それで、さのばびっちさんは何の用です?
もう今日の
『……そもそも私が残ったまま第七次が終わったのが驚きなのだが……それは良い。他にも残っているのが居るのだから、気にするだけ負けだろう、もう
ただ、この真実の聖杯戦争に私が関われる以上、そのサーヴァント等について何らかの資料が欲しい
アヴァロンの魔術師☆M名義の資料は、彼に見せても良いレベルのものを分別して書いたものだろう?』
その言葉に、ワタシは頷く
『まあ、カムランに来なかった裏切り者の息子に全部話すとまた裏切られた時が怖いので、全てを話すことはしませんが』
『……私が、暗くて何も見えなかった時に勘違いされて斬られた傷をおしてカムランに駆け付けていれば、
いや、そもそもあれは母上がどうしようもなく暴走する前に一応の恋人としてマーリンを呼んで来て止めていればだな』
『冗談です。アナタは信じてますよ、ワタシの息子として、しっかりワタシの想いを汲んでくれると
けれども、アナタ自身は兎も角、あのふざけたルーラー等がアナタに変なもの付けてないとも限りませんからね。全てはまだ言いません』
さて、と一息つき、ワタシは話を始める
『そもそも、これはヴァルトシュタインの聖杯戦争。その結実だろう?何で争ってるんだ?
ヴァルトシュタインのサーヴァントが全て勝ってきた。彼等の目的は本来一つじゃないのか?』
『ああ、それですか?
話は簡単です』
当然の疑問に、ワタシは返す
『では、その目的を持っていたマスターは?
これが答えですよ。彼等のマスターは当の昔に寿命で死んでいます。まあ、一人ほど最終決戦で対峙したサーヴァントに殺されてたりしますが、ね。ワタシがメイドのフリをしっかり覚えたのも、それが原因です。ワタシがメイドのフリで気を引いたからマスターを殺せて、互いにマスターを喪った事によって単独行動の差でギリギリ勝利。全く、決戦だと意気揚々と対策もせず表に出てきて円卓の騎士にさっくりと殺されるとか、あの当主は使えないにも程がありましたね、彼の爪の垢でも飲んで欲しかったです』
『……つまり?』
『マスターを持っているのは本来は
「正義だ」
答えたのは、ライダーが開けたままの扉の先に立つ老人だった
「絶対の正義が、マスターとしての権限を持つ」
『翻訳すると、彼が持ってる訳ですよ、ワタシのマスター権限を
令呪と共に魔術刻印として、聖杯戦争を勝利するべき当代当主の、その影たる兄弟がその遺志を受け継ぐ。それがヴァルトシュタイン。彼は第6次の時の当代の息子、グルナート・ヴァルトシュタインであり、クライノート・ヴァルトシュタインとなった者な訳です
まあ、残念ながら第6次の当代当主は本来あとを継ぐべき彼の兄と共に聖杯戦争で死んでますからね。当代たるべき人が居なくて一時しのぎで当主やってた時代もありますが、そんな事はどうでも良いですね』
「然り、然り
正義は、途切れぬ、途絶えぬ」
その姿は、扉の前から歩き去る
『ということで
ワタシの令呪は彼が、旧セイバーの令呪は当時の当主からパクったワタシが、そしてかつてランサーであったバーサーカーの令呪は押し付けておく為のホムンクルスが、其々持っている形
ただ、逆に言うとヴァルトシュタインが持っている令呪はその3つだけな訳です。残り4騎については一切制御なんて効きません。彼等は自分の夢を果たすため、第二回戦に進んだだけです。それでも、彼等は座に還る事無く存在が連続した個体、聖杯戦争中にヴァルトシュタインに心酔してくれればそのまま此方側に来ることもあったでしょうが』
和室から遠くを見る。遥かに見えるのは、和の山城。円卓の騎士に負けかけた前回の戦いの勝利者であるアサシンの拠点
『だーれも賛同なんてしてないというオチです。絶対に賛同しないと知っていたアーチャーは兎も角、他も駄目なサーヴァントばかり選んでますね、当時の当主等。しっかりとヴァルトシュタインに従えと令呪を使っておくように、と言っておきはしましたが。自分に従うようにとしか言ってなかった訳ですね、この状況になるということは』
『ふっふっふっ、この
『……ええと、藻女だったか?
それは良い。友と駆け抜けて地理は頭に入れた』
『なんとーっ!』
わざとらしく、桃色狐は仰天したように背を反らし、座布団に倒れこむ
『中央のこの平べったい都が、セイバーの世界
そこから北の無数の妖怪が屯する山城があの糞アサシンの世界
西に広がる大草原と騎馬民族は恐らくはライダー
では、それ以外は?』
『ええ、中々正しいですね。誉めてあげましょう』
『母上、今更ポイントを貯める気は無い
もう、交換するものでもないだろう。私だって大人だ』
『おや、もう要りませんか?
昔は寂しい寂しいと、添い寝をぐずったというのに』
『年の離れた妹みたいな外見の母に、添い寝をしてもらう
犯罪そのものの絵面だ、流石に無い』
『そうですか。因みに、アナタが当てていなかった東の教会についてはランサーの場所。南にある燃え続ける城はバーサーカーのもの、そして……
大神殿は亡霊の住処という訳です』
『アーチャーはやってないんです?』
桃色狐の言葉に頷く
『ええ、アーチャーは心象展開自体をやっていませんから
だから燃える城の近くの神殿は、聖杯に突っ込まれた亡霊の……あの第七次のキャスターの亡霊の城な訳です』
『キャスター過多にも程があるな……』
『ええ。四騎居ますからね
勝つのはワタシですが』
勝てないならば、そもそもこんな戦いは仕掛けない。一番怪しいのはセイバーだが、だからこそ無理矢理マスター権限を奪い取って逆らえぬように抑えた。負ける訳なんて何処にも……
だからワタシは、息子にそう告げた
『信用出来ない……』
『欠片も信じられませんとも、
『怒りますよ、ユーウェイン。後、そこのピンクは狐鍋です、洗うの面倒なので自分で血抜きしてきてください』