Fake/startears fate   作:雨在新人

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十日目ー三原色

「アサシンちゃん!」

 その私の叫びに、うん、とだけ頷いて、緑の閃光が走る

 

 何で、どうして?

 聞きたいことは幾らでもある。幼い少女が展開する花萌葱色の、あまりにも鮮やかな……けれども、毒々しい血色のスパークがやっぱり時折そのエネルギーの周囲に走る、私を救ったビームと同様の色の片翼。それは片方だけで、左翼が無くて

 そして、あまりにも……かーくんが展開していた紅のそれに酷似していた。大きく拡げなければ、翼と言うよりもブースターのように見えるその形状、噴き出す魔力により姿を保つその実態。何もかも、そのまんまで

 

 『……悪魔めが』

 『そうでもない』

 その手に携えるのは、携行出来る大きさとは思えない巨塊。アサシンちゃんの全長を越える、バカみたいに大きな銃。対人じゃなくて、対物ライフルって言うんじゃないだろうか、あれ

 『背を低く』

 「う、うん」

 言われるまま、私は腰を屈める

 

 そして……風が、吹き荒れた

 何の事はない。アサシンちゃんが、無造作に銃口を天へ向けた状態から下ろし、適当に相手に向けて、スコープなんて覗かずに、小脇に抱えて引き金を引いた。それだけの事

 けれども、その銃口から放たれるのは銀の弾丸でも、ましてや通常の弾丸でもなく、莫大な魔力の奔流。私を救ったビームの、その更に太い版。その反動を受け流すべく、右翼は背に回り、一基の背部ブースターであるかのように点火、その小柄な体を強引に支える。そのフレームからは……廃熱でもしているのだろうか、暖かな空気が噴出し、私の髪をぐしゃぐしゃに弄ぶ

 

 風が止む。花萌葱の暴威が消えたその時、其所には一条の道が生まれていた

 其所に居た筈の無数の銀と紅は、空気に溶けたように姿を消していて。ひび割れた地面にぽつぽつと残る粗末で頑丈な靴だけが、其所にほんの少し前まで兵士が展開していた事を物語っていた

 『……逃げる』

 『了解、色々と聞きたいことはあるんだけど、それは後で!』

 ミラちゃんが私の足と腰に手を当てる

 そのまま、受け止めてくれた時のように抱き上げる

 地を蹴って急加速。切り開かれた道を雷鳴そのものの速度で

 

 ……どれくらい、逃げたんだろう。正直分からない

 ただ。前方には山じゃなくてすでに草原が拡がっていて

 其所に、巻き上がる砂塵が見えることは確かだった

 即ち、未知数だったはずの領域。謎のサーヴァントの心象領域

 一応、囲みは抜けられたみたいで……

 けれども、ミラちゃんに安堵の表情なんて無い。見たことのあまりない険しい、眉をひそめた顔で、前方を睨んでいる。アサシンちゃんはその逆。片方だけの翼は消さず、まるで追い掛けてくる事を警戒するように後ろだけを……ぼんやりとした目で見ている

 「アサシンちゃん、かーくんは?」

 ミラちゃんの腕の中で大人しくしながら、私が問うのはやっぱりそういうこと

 『……いない』

 けれども、返ってくるのはそんな気の無い返事。アサシンちゃん自身、半分上の空でそう返しているように見えて

 「居ないって、どういうこと?」

 『居ないものは、居ない』

 「死んじゃったの?」

 その問いには、ふるふると首を振る

 けれども、その言葉には要領を得ない。元々、かーくんは何でこんなに口数少ないのにアサシンちゃんが良く分かるんだろうって思ってたけど、中々私には難しい

 「何処に居たの?」

 『どこか』

 「それじゃ分からないよ!」

 『「オレ」にだって、分かってなかった』

 「何なの!?」

 『それでも。「ボク」はキミを喪うわけにいかなかった

 

 ……だから一人、一度死んで此処に来た』

 「……」

 言葉にならない

 

 そういえば、アサシンちゃんって死んでも何度でも戻ってくるんだっけって、でもそれじゃあ倒せないから、聖杯戦争的に何か弱点はあるはずで。けれど、そもそもアサシンちゃんは敵じゃないんだからそんなこと考える必要なんて本当は無くて

 考えが、纏まらない。アーチャーがアサシンの性質を持ってて、戻ってきてくれれば全部楽なのにって考えて、関係無いしアーチャー頼みの考えじゃ駄目だって振り払う

 

 『異次元に迷いこませる陣かぁ

 そりゃ見つからない訳だよ』

 うんうん、とミラちゃんが頷いて

 砂塵はもう、先頭の馬が見えるくらいまで近付いて居る

 その一番前に居るのは、恐らくは彼がサーヴァントなんだろうって偉丈夫

 

 『問おう!我等が地を歩む旅人共よ!』

 その声は低く、良く通る

 その姿は……何だろう、変色してしまったかーくんに何処か似ている

 銀の髪、焼けた褐色の肌、白を基本としたラフな服装

 『……裁定者?』

 こてん?とアサシンが首を傾げるのに合わせて、私も彼から視線を外してミラちゃんを見る

 

 何時もはどこか不敵なのに、今だけはそんな感覚が無い。目をぱちくりさせ、そのサーヴァントの姿に対して眉を寄せている

 「ミラちゃん?」

 『えっ?このサーヴァントって……あれ?フリットくん……じゃないし、けど……あれ?』

 混乱していた

 

 「ミラちゃん、ルーラーってサーヴァントの真名分かるんじゃ無かったの?」

 『そ、そうなんだけどね……

 フリットくんの中身がジークフリートみたいに見えてたり、アサシンちゃんの真名が良く分からなかったりって、別に万能じゃないよ?

 隠そうとして、それ相応のスキルがあれば誤魔化される程度のもの』

 「……それで?」

 『うん、真名が混乱してて、良く分からないね

 フリットくんに手を貸してるだろうサーヴァントと似てる気がするんだけど、そのサーヴァントって女性だから』

 「でも、寄ってくる彼は男だよ?」

 流石に、筋骨隆々で上半身半分裸、ベストみたいなものしか着てなくて胸の筋肉が見えてる髭が、女の子なんて話はないだろうし

 

 『うん、伝承通りアーサー王が男性って世界もあるらしいし、そういった混線?

 でも、彼にはフリットくんみたいな世界の敵としての性質は無いし……』

 世界の敵、人類悪、ビースト。うん、酷い単語だ。かーくんについての言葉だなんて思えない

 「つまり?」

 『フリットくんみたいな理不尽性能は無いよ?』

 『「私」にも無い』

 「えっ?」

 でも、その背にはかーくんと同じエナジーウィングが確かに有って

 『性質が違う。違いすぎる

 「勝利」()も、「破壊」()も、「慈悲」()も、この光()には無い。変わらないのは、単純出力だけ。緑は、弱さの光

 ……「逡巡」()軍神(せんし)でも、聖者(めがみ)でもない人間(しょうじょ)の強さで、弱さ。それが、「俺」の資質だから。「ボク」は、希望程には強くない。それで、構わない』

 静かに、良く分からない事をアサシンちゃんは告げた

 

 そのうちに、男は馬に乗った軍勢を引き連れて、それなりの近さまで寄ってきて

 そうして、告げた

 『我が妻を、何処へやった』

 と

 「はい?」

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