Fake/startears fate   作:雨在新人

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デート回という名の日常はまだ続きます
すまんな、此処くらいしか主人公にルーラーとのんびりさせる場所がないんだ


十一日目ー今一度、振り返る

何でか出ている屋台で良くわからないが売っているタコヤキを手に、広場の端に用意された襤褸の上で一休み

 既に、お化け屋敷はほぼお化け屋敷の体をなさずー主に俺のせいである。お化けよりも客の方がよっぽど怖いとは、お化けにビビって逆走しかけた客の言だ。その客は俺の姿を見るなり気絶してしまったので担いで出たーその後の休憩時間に入っている

 

 タコヤキになんぞ入ってるわけも

 って入ってんじゃねぇかこの時代に蛸が取れる訳も京まで運ばれる訳もねぇだろうがフォォォォォックス!ご主人様に愛妻料理食べてほしいですしぃ?そこら辺は御都合って事でなにぞととか言ってそうだがもうちょっと当時に似せる努力はないのかフォォォォォックス!そもそもタコヤキなんぞ焼ける時点で可笑しいがなフォォォォォックス!

 もう良いや。言うだけ無駄だ。寧ろ意味不明過ぎてこれそのものが大きなひとつのアトラクションとまで言えるかもしれない。他のアトラクションはお化け屋敷やら観覧車やらくらいだが

 ……って、何で式神観覧車なんてものがあるんだよ、遊園地か此処は。というか、街を見て回るゴンドラを運ぶ役に式神使役させられて良くスルーしてんな陰陽師達……

 と、言っている俺の目が、簡易な木と布のゴンドラ(動力は式神なので当然と言えば当然である。電力を通す必要はないので人がしっかり乗れれば十分)を運ぶ数体の式を捉えた。凄く見たことがある。というか、戦ったこともある。そう、まともに話したことはあまり無いが、俺としての人生のほとんどに絡んできたフェイの配下C001……として俺に干渉してきたあのザ・グレイテスト・オンミョージの式神である

 じゃあ仕方ないな。あの銀狐すらやらされてるんだから、他の陰陽師がそうそう逆らう訳もないか

 ……というか、あの狐の式神が複数で持ってるあのちょっと他より布が多くて豪華っぽそうなゴンドラの中って恐らくは旧セイバーだろう。何をなさってるんだあの方。桃色狐と二人で空の旅か何かか。残念ながら人力……ではないが式神力観覧車なので二人きりでも何でもなく、一般的観覧車のように甘い空気を出せば運んでる式神とその術者にバッチリ見られるという悲しいものだが

 紫乃と見た映画のように観覧車内でキスなんぞした日には降りた瞬間からねちっこく陰陽師にからかわれる事必至である。使えないにも程がある。二人っきりの狭い場所で甘い空気になる事が厳しいなら観覧車に何の意味があるのだろう。高い場所からの景色ならちょっと紅翼で飛ぶくらいでも見れるだろうに

 

 (……人は、空を飛べないよ)

 いや飛べるだろう。かつては魔法の領域、神の特権に近かったとはいえ、鉄の翼は人が空を飛ぶために産み出した力だ。今やそんなもの魔術に過ぎない。現に銀翼ではなく俺状態の血翼(魔術)でも割と自在に飛べるのだから。というか今正に式神の魔術で実質空を飛んでるだろあいつら

 と、いう所で、それが己でも勿論俺でもない何者かの言葉であったと気が付く

 

 ……神巫雄輝、これはお前か?

 返事はない。当たり前だ。適当にハッキングした月のリソースを砕けて消えた神巫雄輝の魂の欠片の穴埋めに回しているー月の正当な抵抗の発動を、己とは関係の薄い所にリソース回させる事で対己事項から外してある程度抑え込む策の一環として己も奨励している立派な公認作戦であるーとはいえ、まだまだ補完完了には程遠い。奇跡的に一瞬夢で会えた事はあるが、それ以上はまだ無い

 まあ良いか。どうせ、そうだとして何だというのだ。あれだけの苦痛を、慟哭を、残したままに彼にこの当に死んでいるはずのかつて彼であった骸を返した所で、そんなもの発狂して終わりだ。少なくとも、俺が彼なら慟哭に呑まれて終わる。あれだけの正当な恨みと共に死んだ人間、若しも普通に生き返らせられたとして、やった所で死ななければ呑まれていた恨みに呑まれ絶対に元の彼になど戻れない。残るのは、俺が正義(ヴァルトシュタイン)を殺してしまう以上、それこそセイバーみたいにサーヴァントして互いに召喚されることを待つか聖杯で殺すために相手を無理矢理生き返らせるくらいでしか果たせない空虚な怒りと恨みを抱えた心の壊れた廃人だけだ

 俺なんぞより心が強いだろう彼ならば実は耐えられるかもしれないが、そんな不確定要素に任せてどうするというのだ。失敗した時、彼を確実に救えると言えるのは、それこそミラしか居ない。だというのに、ミラは彼よりも俺を救いたいなんて、今居るだけの悪魔を救うべき人間よりも優先する妄言を吐いて彼を救ってくれない。そこだけは、相容れる事なんて出来はしない。紫乃と二人、支えあって立ち直れればパーフェクトだが、その保障はないのだから、確実な道を往く

 

 俺の願いを、自らの利でもあるとして、己は此処にあるのだから。止まる道など、実は最初から何処にもない。あってはならないのだ

 『回帰』を果たすこと。俺が産まれたその際に閲覧し許せなかったあらゆる不幸を『破壊』する。その成就を確約させる事と引き換えに、かの星は己を尖兵として認めたというのに。尖兵である事を捨てた俺に、何が出来るというのだ。神巫戒人が死なず、敵対したら面倒なミラのニコラウス(ルーラー)が召喚されず、当然ながらセイバーは俺という縁が無い為円卓の誰かが戒人をマスターとして呼ばれたらしい世界。あのバケモンではないアーチャー、円卓の騎士なセイバー、そして俺が拾ったらしいアサシンの三騎で同盟を組めただろう本来の世界線で、バーサーカーをアサシンの相討ちで抹消したとはいえ普通に旧ランサーに全員殺された程度でしかないというのに。その死に際の呪いに、あの星は応えてくれた。故に俺は、俺として成立した瞬間から尖兵であると本来の未来を剪定し、今此処に居ることが出来るというのに

 

 いや、でもまあ、そんな真面目な話は、後で良いか。フェイ最大の敵ー一応言っておくと、当たり前ながらフェイ本人でもミラでも勿論アーチャーでも無い。正直な話その三騎の方が余程だが、此処はフェイの警戒から、目下"彼"を最大の敵ということにしているーを倒しに行く頃には、嫌でも考える必要があるだろうし

 と、弱さに流されながらタコヤキを頬張る。別に味や熱さが分かるわけではもう無いーそんな無駄な機能に回す魔力があるならば、その分をいずれ戦わなければならないかもしれないオリンポスの機神……アテナ神を撃破するための貯蔵に回すべきだーが、気分というものである。平安気分なんてものは無いが、祭りの浮かれ騒ぎ気分は、何となく味わえる


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