暫く京の街を歩き回り、地下への入り口を見付ける
この時代、上下水道の整備だとかまともに出来ていなかったような気はするし、だとすれば地下にしっかりとした空間が用意出来ているというのも明らかにおかしいのだが、そこらはもはや突っつくだけ無駄というものだろう。気にしたら負けだ
……この気にしたら負けというのも何度目だろうか。
待ち時間は……特に無い。人気はあまりないらしい。普通に考えれば、遊園地の人気アトラクションといえばジェットコースターというほどに重視されるものだとは思うのだが。やはり、地下コースター故に何か物足りないのだろうか。ならば空中に……と言いたいが、それぞれのゴンドラを運べば良い式神式観覧車とは異なり、それなり以上のスピードで、乗客が上空に放り出されないように固定して運ばなければならないジェットコースターというものは式神にやらせるにしても面倒が多いのだろう。遊園地における事故の大半もジェットコースターがらみだというしな。だから、まだレールを引きやすい地下に作った。結果……あまり平安の人間には受けなかったというのだろうか
『そこなんですよねぇ』
「そもそも、何で地下に掘った。上下水道でも使ったか?」
『不潔ですぅっ!そんな事しませんよーぅだ!
これはタマモちゃんが神様パワーで掘った由緒正しい地下迷宮ですっ!』
「つまり、岩戸に引きこもったニート神の力か
ご利益も何もあったものじゃ無さそうだな。それはもう、忌み嫌われるだろう」
『引きこもりニート神じゃありませんっ!太陽、太陽神ですぅっ!』
「良いじゃないか、ニートの女神
案外信仰を集めるかもしれないだろう?」
……一応言っておくと、天照が引きこもったとされる天岩戸は別に忌み嫌われるなんて事も無く神ゆかりの地として扱われている。本気でこの狐が掘った地下迷宮が平安の都に存在したら神地として扱われ、ついでに日本にやって来た魔術師が研究対象として、神地故にとそれを阻む神道のお偉いさんと火花を散らしていたりするのだろう。あくまでも、嫌味という奴だ
「それで、何の用だ桃色狐」
『「ボク」と「我」の希望の時間
邪魔』
『まあまあ、そう怒らずに
そもそもタマモちゃん、見掛けたから声をかけただけですしぃ?』
「出会うには、それなりの理由があるものだろう、C002
ついさっきまで、お前の言うご主人様と共に、籠に乗っていたんじゃないのか?」
『いえいえ、あれはご主人様お一人で。この良妻が、あんな陰険野郎の式神に、大切な大切なご主人様の乗る籠を、任せる訳がねぇ!という話で御座いまして
同乗するならば、式神代わりはこの良妻がご用意した専用のものに決まっておりましょう?』
憤慨して尻尾を逆立てる桃色狐に、それもそうかと聞き流しつつ声を返して
「それで、ならば何をしていた」
『……問題ない。終わらせる』
「……いやニア。お前……俺が言ってるこの都でやるべき事、本当に分かってるのか?」
ふと疑問に思い、問い掛ける
たぶん分かっているとは思う。俺の仮説が若しも本当に正しいならば、きっと。だからこそ、アサシンは俺を風じれた。故にこそ、アサシンは封じた力の欠片で、片翼を出せる。だが、それはどうにも受け入れにくい仮定で……
『あっちで、待ってる』
その白く細い指先で、アサシンはしっかりと、真北を指した
「……なら、良い」
真北で待っているサーヴァント。ああ、正解だ。内裏を越えた先、かつて
『……あってる?』
こてん、とアサシンは首を傾げる
「不安か?合っているさ
だからアサシン、それはしっかりと忘れるんだぞ」
『忘れずに、忘れる?』
「ああ、そうだ」
『あのー、矛盾してません?』
「何の矛盾も無いさ
フェイの最大の敵……という事になっている彼を倒す為に。盟約を果たすために。俺以外が、その事を覚えていてはいけないんだ。特にニアは、な」
『それはまたどうしてなんです?』
「当たり前だろ」
軽く嘆息する
「俺……というか、己以外にフェイの未来視を覆せるかよ」
『それもそうですねぇ……』
『「わたし」……邪魔?』
「悪い。あのサーヴァントを倒す事。それだけに関しては、己以外全員邪魔だ。俺すらも
完全な尖兵に近い姿でなければ、あのサーヴァントは倒せない。フェイもまだ仕掛ける時ではないとしている意表をつけない」
フェイの意表をつく。未来視を曲げる。それがある意味目的である以上、魔女モルガンの千里眼に捕捉される者の行動は論外だ。あの眼は、心の中までも見通す事は無くとも、行動は見通す。未来に己以外が行動を起こしたならば、既にバレているだろう。それではいけない。フェイは昔全部知ってますからと言っていたが、それは間違いでも何でもない。実際に見て知っていたのだろうから。千里眼:EX、俺の右目が今の形になってから相対した時に、その存在は確認している
……だが、此処に一つ例外が存在する。己の存在だ。フェイは意図して己を出させないようにしてきていた。元から俺の真実を明かしていれば、等々あるはずなのに、俺にお前はジークフリートですと枷をかけてきた。その事実に、アルトリア・ペンドラゴンを死なせてしまった事実を掛け合わせると一つの答えが浮かび上がる。同格以上の存在は、その未来を読みきれない。そうしてカムランの日、彼女は抜け出せる程度の幽閉から抜け出したマーリンが解決してくれるという可能性の高い未来視を信じ、そうして妹を喪った
ならばそう。同じく読みきれないはずの己だけは、フェイの意表をつける……!
まあ、だとしても、あのフェイを倒せるかというと……微妙な話はある。未来視そのものは一度たりとも外れていなかった
ならば、アサシンを殺してアサシンに奪われた片翼を……力を取り戻すか?否や。戦略としてはアリなのだろうが、俺の中の何かがそれはいけないと叫んでいる
『んまあ、ちょーっとジェットコースターの調整をやっただけですしぃ?本当に本当に、たまたまですぅっ!』
「そうか。乗って来る
面白くなかったら狐鍋な」
『
そんな俺の言葉に、そそくさと狐は逃げ去っていった