Fake/startears fate   作:雨在新人

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十一日目ーさよなら、きつねの都

『……終わったな

 庇った意味も無かったか』

 詰まらなさそうに、銀と紅の聖王は呟く

 

 それを俺は見ていた

 肉体は無い。だがそんなものは関係ない

 

 「……意味はあったさ』

 『……何?』

 初めて、冷徹であった男の顔が歪む

 「……ああ、さようなら、アサシン。有り難う、強く在れない俺(ザイフリート・ヴァルトシュタイン)を信じてくれた強く在った俺(ザイフリート・ヴァルトシュタイン)

 『何が、聞こえている!』

 「とっくに御存知なんだろう、プレスター・ジョン』

 『悪魔は、死んだ!そのはずだ!』

 「……死んださ』

 一息置いて、告げる

 「……最後の魔狩人、ニアが同じくニアとして顕現していたコアの記憶。お前の存在を知っていた事の原因……

 全て、たった一つの理由だ』

 『悪魔の戯れ言など!』

 槍を振り回し、聖王は十字の光を放つ

 だが、何も意味はない

 「現代の吸血鬼(バーサーカー)現代の魔狩人(アサシン)と共に討ち果たした最後のヴァンパイアハンター』

 ああ、そうだ。俺の力を、星の緑光を半分持っていけたのも当たり前だ

 「サーヴァント、アサシン。ザイフリート・ヴァルトシュタイン(ヴェドゴニア)。それが、彼女(かれ)の真名。あの日お前の前まで自分が立てなかった事を知り、誰でもなかった彼女として、俺を助けようとしてくれた俺

 貴様が殺したサーヴァントは、そういうサーヴァントだ』

 怒りはない。それを半ば気がついていて最後までサーヴァントとして使ったのは俺だ。最低なのは俺だろう

 

 だから静かに、全てを終わらせる前に事実を告げる

 『何を……悪魔め、貴様』

 「ああ、英雄伝説は此処に完結した。十字軍の盟主、東方の聖王は確かに悪魔(ザイフリート・ヴァルトシュタイン)を討ち滅ぼした』

 そう、彼は確かに俺を殺し、英雄伝説を再現し終えた(・・・)のだ

 『ならば、貴様は!』

 「俺はザイフリート・ヴァルトシュタイン

 星と盟約を紡ぐ、遊星の尖兵(アンチセル)

 

 同時、もういいかと俺本体……体が燃え尽きて地面に落ちた<月王顕す盟約(ファンタズム・レガリア)>に魔力を通す

 「複合夢幻召喚(クロスインストール)

 遂に戻ってきた、ずっとアサシンが持っていた片翼、彼女の祈りか赤の中に緑の炎を巻き上げるそれを秘めたカードをも巻き込んで、詠唱。銀の翼を翻す何時もの姿を魔力でもって一から編み上げる

 

 『……何故、だ。悪魔よ……』

 「何故も何も、ザイフリート・ヴァルトシュタインはさっき貴様が殺しただろう?それで貴様の英雄伝説は終りだ、ブレスター・ジョン』

 実に久し振りだ、全部構成する際に無いのも面倒だからと右目等神巫雄輝の肉体からは喪われたものも構成した為に得た五体満足の体は

 『星を喰らう、悪魔がぁぁぁっ!』

 

 槍の一撃

 ……かわす気にもならない

 突き出される槍ごと、その右目を左銀翼を伸ばして貫く。残された穂先が上に乗って面倒なので左に凪いで落とす

 『……成程。やっぱりそうなりましたか』

 求めていた声に振り向く。やはりというか、翼振りで壊れるのを恐れたのか世界を元に戻した銀髪のメイドの姿が其処にある

 

 「……知っていたか』

 『ええ。だからワタシは最後に負ける筈がないと言ったでしょう?

 でもまあ、アナタがどうしてもあのアサシンを手元に置いておきたいならば、ワタシの手を取らなければならなかった

 だから聞いたんですよ、ワタシがやりましょうか?と』

 「余計な心配だったよ、フェイ』

 『ええ、そうだったようです。元々、アレ』

 と、フェイの視線は後ろで固まる男をちらりと見て興味無さげに此方に戻る

 『をどうにかする為に、令呪にしがみついて存在を維持していたようですからね。残る気は無かったんでしょう』

 「ああ、そうだろうな』

 そう笑い、手を差し出す

 『おや、握手ですか、ハイタッチですか?』

 「たまには良いだろう?』

 『まあ、勝利条件を満たすまでだけは強敵っていう、人をイライラさせる存在でしたからね』

 最早止めを刺していないことなど気にも止めず、俺の出した左手にフェイは右の手を合わせ……

 

 その甲を、引っ掻いた

 『……おや、ワタシの皮膚でも欲しく……』

 紅の光が弾ける

 令呪が砕ける

 

 ……そう。俺の狙いは……此処に来た目的は最初からこうだ

 フェイの手にある旧セイバーの令呪の破壊。フェイにとって令呪でもって縛り付けなければならないほどの大敵(旧セイバー)を、令呪を破壊し寄る辺を無くすことにより退場させる。フェイからの支配の解放、そしてこのヴァルトシュタインが勝つと決められた下らない聖杯戦争からの退場。それがあの桃色狐とかわした新しき盟約の内容だ

 フェイの敵の排除。一切嘘は言っていない。必要以上にフェイを傷付ける気も無い。あくまでも令呪は後付け、フェイを傷付ける事にはならない。ならば幾ら未来を見てようと、警戒してようと、破壊できないほどに俺を近付けない事は流石に無い

 「……約束は果たしたぞ色ボケ狐』

 約束を護れという気はさらさら無い。そもそもあの狐二匹は仮面を付けていた頃聞いたことによると旧セイバーによって召喚されている御付きのサーヴァントが現世でも動けるようにホムンクルスの肉体を使って受肉したもの……らしい。旧セイバー本体が消えれば共に消える。神核寄越せなどと行っても約束果たす前にすたこらさっさと座に消えれば渡す材料は何も残らない

 

 ただ、フェイにのせられたままが癪で。この夢の世界でやりあうのがどうにも苦手で

 だからその果たされる訳もない不平等盟約に乗った

 

 『なるほどなるほど

 まあ、やりたかった構いませんが……ワタシに言ってくれればすぐにでもあのサーヴァント消しましたよ?

 真の聖杯戦争、7つの魂集めたサーヴァント同士の戦いが始まった後、正直な話居なくても勝てる旧セイバー生かしておく意味なんて、倒すとあの狐まで消えるから寂しくなるって事だけですし』

 

 瞬間、世界が斬れた

 旧セイバーを旧セイバー足らしめる唯一の剣。生前刀剣類など持ったことがあるかすら怪しい繁栄した古代日本の帝。されどもかの血は天孫の尊き血統、なればこそ、その血を引く彼と天照大神……つまりあのピンク狐(玉藻前)が揃った時、天孫降臨の際に託された神話の再現として、神世の一太刀をこの世に現出させる。それこそが神器、天叢雲剣。草薙剣とも同一視される、草を薙ぎ炎を押し返す剣。ただ一太刀に限り、神世の剣そのものを振るう宝具

 これ則ち、(世界)を薙ぎ、(呪い)を返す対界宝具。今貼られたアヴァロンを凪ぐそれこそが……<神器・真形天叢雲(じんぎ・しんぎょうあめのむらくも)>

 消え行く間際放たれたかの宝具に斬られた妖精郷は砕け、世界は本来の有り様(伊渡間)に還って行く……

 

 『悪魔がぁぁぁっ!』

 と、もうどうでも良い奴の声がした、気がした




真名解放
アサシン:???/ヴァンパイアハンター➡ザイフリート・ヴァルトシュタイン/ヴァンパイアハンター

エンディング分岐

  • 2流の因果応報
  • 3流の喜劇
  • 2流の悲劇

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