『誰ぞ』
轟く声に、その銀龍は咆哮で応えた。
同時、人の願った龍人機……ちっぽけな
生来、此は全てを喰らい尽くす破壊兵器である。罷り間違っても人等ではない。精神など持ち得ない。
よって当然、撃破されエジプトの砂漠に残骸を晒していた筈の機神アフロディーテの権能など、何の意味も為さない。
だが……
「アフロディーテェェッ!ゼェェウスゥゥゥッ!』
自身を己と呼び顕す異様な行動を取る遊星の翼は、飛翔するために噴出する魔力を止めて忌々しげに叫んだ。
己の中にあるほんのちっぽけなナニカ。
「不快、不快、破壊、不快、破壊
総ての不快を、ハカイ、スル……』
そんな取るに足らない筈の……破壊し捕食して己の一部へ刻み込んだ覚えの無いデータの残骸が、効く筈の無いアフロディーテの放つ歌を銀の巨神に不協和音として響かせていた。
「目標、アルテ……ミ……ス』
既に空には己を除いても9つの機械巨影。
遊星は完全に破壊されたこの世界の自分ではなく、呼び起こす切欠となった青い月の世界での交戦記録から自己分析する。
敵、オリュンポスの機械神十二機。
各個撃破、可能。
Gオリュンポスの捕食……不可能
優先目標、機神単騎の破壊。
エラー、障害名■■フリー■・■■■■シュ■■ン。
破壊への障害を見出だし、感慨もなく機械的に、遊星のコアはアフロディーテの影響を受けるちっぽけなエラーを完全破壊しようとして……
不意に回路に過るのは見たこともない筈のナニカ。
1万と2000年前にこの世界の遊星に捕食され、そこから
どんな世界にあっても汎人類史の存在として扱われる……即ち、どんな世界でいかなる姿に成り果てても同一の……汎人類史のアルビオンとして存在する境界の性質が、光を越えて飛来するもう一機の銀竜に走る壊れ行く記録を遊星に共鳴させる。
轟音、そして爆発。
飛来した銀竜の熱線が、紅の魔力を走らせる銀翼の遊星を貫いた。
「今一度喰われに現れたか、ALBIONッ!』
遊星は叫び……優先度を変える。
目標、飛来した銀竜の撃滅と捕食。
興味深いと反応したエラーへの対象……優先度低。
だってそうだろう?既に壊れていく異界のアルビオン。今喰わなければ損だ。龍の熱線はフォトンに近い性質を持つ。文明ではないがゆえに、喰らい尽くして即座に修復することは出来ないが、眼前に良い素材がある。
そんな思考からか、エラーの処理を後回しに遊星は今の体のオリジナルたる銀の竜を迎え撃つ。
本当の優先度を、小さな齟齬を気にも止めずに。
……そう、ブリテンの妖精が呼び出した最後の竜が活動できる時間なんてほんの刹那。
だが……睨み合うことを忘れた刹那こそが、顕現した神々にとっては、そして……紅の銀星にとっても何よりも必要だった時間。
軍神アレスを取り戻され未だ肥大化していない遊星に対して、捕食されうる結合基を晒すその一瞬。
それをカバーするようにアルビオンが遊星に噛みついた瞬間、オリュンポス船団があの日為し得なかった最大最後の複合権能が起動する。
『融合権能、
かつて眼前の収穫者に破れた軍神の残した剣を掲げ、一番因縁の深い真紅の機神が吠える。
『人よ 我等を受け入れ、我等が終焉を看取る愛し子よ。
叫べ』
大神ゼウスの宣言と共に、ゼウスの眼前に二人の人の姿が現れる。
それは、本物ではなく、大神の認めた……今とは異なる時空の盟友の姿。機神ゼウスが相応しいと思った宣言者の影。
一つは黄金の揺れる長髪を讃えた白き魔術師。一つは、焔と共に鎚を振るう日本の刀匠。
ゼウス
ポセイドン
ハデス
ヘラ
アテナ
アルテミス
アポロン
ヘファイストス
ヘスティア
アフロディーテ
デメテル
そして……アレス
全承認。
総ての機神が、遊星の呪縛を解き放ったアレスからの連鎖召喚により、モルガンの作り出した偽りのブリテンの空に、喪った筈の
『『『『『『『「
七柱と共に、杖を翳す一人が高らかに謡い、
『『『『『『『「
腕に輝く雷の令呪を胸元に掲げ、一人と七神の勅命が世界に轟く。
『
そして、総ての機神の声は重なり合い、一つの奇跡に変わる。
「……ッ!』
飛来した銀竜の翼をその牙で噛み千切った遊星が、優先度を間違えたというエラーの警告の意味を理解したその時、既に総ては完了していた。
真紅の機神アレスの背後に、十二機神最大の偉容を誇るポセイドンが立ち上がる。
そのメインコア付近、機神のコクピットが開き、コアであるアレスを呑み込んだ。
……刹那、機体が接続された事で、大きく伸びた尾びれのような後方が畳まれる。其所に飛来するのは機神アルテミス。本体をポセイドン背部に接続させコードを伸ばして機首がアレスの格納された前面ハッチを覆い飾る胸飾りとなるや、主翼がポセイドンの前ヒレを覆って肩飾りへと変貌。
肩となった前ヒレのコアに向けて飛び込むのは、建造物のような姿をした2柱の機神、ヘファイストスとヘスティア。
武具を鍛える焔神は撃滅の右腕へ、竈を……家庭を護る焔神は守護の左腕へとそれぞれ己を展開してポセイドンと合体。
それに呼応して、さらに二柱が飛来する。機神アテナ、そして機神デメテル。
既に遅い。合体が開始してからでは間に合わない。
遊星の中に眠る、今正に降臨しようとしているモノによって倒された世界での記録が警告を放つ。
それを無視して、捕食したアルビオンの力を振るい龍人機は熱線を放つが……全てを喰らい概念的に永遠に閉ざす虫すらも撃ち抜く筈のそれは、クリロノミアとして剥がれていくイチジクとリンゴのような二機の外殻のバリアによって防がれた
外殻の中から現れるのは巨大な拳。盾を携えた左拳、翼と靴のようなパーツが巨大なビームブレードの発振機と化した右拳。
本当の姿を見せた二機が、対応する機神が変形した腕に合一する。
下半身、畳まれた尾びれに飛来するのは何処か翼を思わせる機神アフロディーテ。アルテミスのように背後に合体するやその翼のようなパーツでヒレを覆って腰のアーマーを形成し、音波を発する二つの発振機を更に下のヒレにくっ付けた。
同時、ポセイドンのヒレは割れ、両の腿へと姿を変える。
大地を割り立ち上がるのは、機神ハデス。慈悲と愛故に冥府を護るオリュンポス最後の砦。ケルベロスを模した……いや、ケルベロスの原型となった三頭の星船の中央の頭が外れ、残された胴と双頭が左右に分かたれた。
そして、頭を膝に、二つに別れた機体は両の足となってアフロディーテ及びポセイドンと合体する。
太陽の具象のような巨大な頭を持つデフォルメされた生き物にも見える機神アポロン。
背部アルテミスと小型の胴部が接続されると太陽のような頭が開き、燃え盛る翼として空を焼く。
そして……黄金の顔を持つ機神ゼウス。全てを待っていた司令塔たる万能神、兜の機神ヘラが覆う。
そして、精悍な姿の兜ヘラに覆われたゼウスが、機体を司る頭部として、ポセイドンの先端に接合、同時外れていたハデスの最後の顔が、アルテミスの胸飾りに合体した。
マスクの奥で、絶対神の目が輝き、ヘラの兜の一角から、煌めくクリロノミアの髪が展開される。
『
大神ゼウスの声が轟く。
『
海神ポセイドンの声が重なり、
『
冥神ハデスの宣言が響く。
「『
太陽の翼、破星の雷剣。希望の星船
かつて、遥かなる星の知的生命体が、捕食遊星に滅ぼされんとしたその時に、滅亡の危機に立ち向かうために作り上げた最後の希望。
創造種は03によって滅び、遂ぞ発動する事の無かった祈りの機神達は、遥かなる時を経て、遂に地球上でその本来の役目を果たさんとする。
その名は……
「『
対遊星融合機神、破星大神G・オリュンポス。単純戦闘力で言えば機神達の母船カオスすらも越える最強の機械神が、人理という世界のテクスチャをただ其所に存在するという事実だけで剥がしながら、此処に産声を上げた。
『遊星の使徒よ。
搦め手を持たぬ02故、一度は脅威の速度を量り間違えた』
太陽の翼を持つ、地球最大の山よりも高い神の声が、銀の翼の龍星を打ち据える。
『天空に二度は無い。
さらば』
注意:ゼウス等が対ヴェルバー用というのはオリジナルです。
滅亡の危機に瀕した創造主等を救うために作られたけど創造主が滅んだので載せずに旅立った、までが公式です。