Fake/startears fate   作:雨在新人

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四日目ー幼馴染の真実(多守紫乃視点)

『アーチャー、伝言』

 歩いていると、そんな声を掛けられた

 見ると、其処には……

 

 フードを被った、明らかに怪しい一人の少年……それとも少女?が立っていた

 『ようアサシン。何の用だ?マスター側から何か言われたか?』

 「あ、アサシン!?」

 アサシン……暗殺者の英霊。マスター側を殺しかねない危険な存在

 思わず身構え

 『ああ、気にすんなマスター。多分今は味方だ』

 アーチャーに頭をポンポンと軽く叩かれる。……子供みたいな扱い。少しだけ、むっとする

 「そうなの?」

 『いや、昨日マスター連れてくのもなって離れたろ?あの後戻ってみりゃあのセイバーのマスター護ってルーラーとぶつかってたのよこいつ』

 「それは……うん、確かに味方っぽい」

 けど、ということはもしかして

 「アーチャー。ひょっとしてあの彼、死んでなかったりするの?」

 『生きてるぜ、あの後またルーラーに襲われたなんてギャグは多分ねぇだろうし』

 「アーチャー……」

 『ん?』

 「きちんと言って?私、アーチャーがルーラーの恐ろしさばっかり話したから、あの二人死んじゃったんだって思ってたのに」

 むくれる私を前に、アーチャーは頬を掻く

 『悪りぃ、マスター。オレは普通に見てたからさ、あいつらが死んでないってのは前提で話してたわ

 んで、』

 と、アーチャーはアサシンへと向き直る

 『伝言ってのはアレか?お前のマスターからか?それともセイバー側か?』

 『「我」のマスターから。あちらは希望』

 『希望、ねぇ……』

 アーチャーは手を叩く。さぞ、面白いというように

 『随分と色々な子引っかけてるじゃねぇのあいつ。モテモテだねぇ』

 『……?』

 アサシンが首を傾げる。私にもよく分からない

 「アーチャー、モテモテって」

 『いや、あのセイバーだって、あいつの何かに惹かれたから召喚された訳だろ?あの森ならば、普通に考えりゃ円卓の騎士が来るだろうし、それを押し退けるなんてのは、強い縁がある』

 アーチャーは指を1本立てる

 『んで、あのルーラー。ちょっと見ただけだが、決して悪印象持ってるようにゃ見えない。寧ろ、甲斐甲斐しく朝御飯作ってた訳だろ?オレ達も食わせて貰ったが

 寧ろ好感持ってて、仕方なくやってる感じかねぇ。ルーラーってのも難儀なもんだ』

 アーチャーが二本目の指を立てる

 『んで、多分あいつが今まで生きてこれたって事はヴァルトシュタイン側にも味方居るわけだろ?そして希望とまで言い出すアサシン。これは理由よく分かんねぇけど』

 アーチャーが、片手の指を立てきる

 『んで、家のマスターと』

 「待ってアーチャー、私……」

 『ん?そうじゃねぇの?』

 「違うよ、私は……あんな怖い彼なんて」

 アーチャーが、少し驚いた顔をする

 直ぐに、ぽんと手を打った

 『ああ、成程。無意識だったのね、アレ。気付いたのかと思ったわ』

 「気付いた?無意識?しっかり話してアーチャー」

 訳が分からない。あのアーチャーはどうして、いきなり彼の肩を持ち始めたのだろう

 『ん、言って良いのかマスター?

 気付いてないなら、その方がマシかも知らねぇ、救いのない話だぜ?』

 救いのない話。嫌な予感がする

 けれど、でも。かーくんが居なくなって、あんな別れかたをして、そのままでは居たくなくて。かーくんは、私の為に、あんな酷いことを言ってでも私を遠ざけたのに。最後の言葉が「大嫌い!もう知らない!」だなんて嫌で

 だから、私は、もう逃げたくなくて

 「教えて、アーチャー」

 そう、言っていた

 

 『んじゃ、言うけどよ

 多分、あのセイバーのマスター、マスターの探してた想い人の成れの果てだぜ?』

 えっ?

 意識が、フリーズした

 成れの果て?

 かーくんは、あんな白髪してなくて、あんな人殺しのような、深淵のような紅い瞳なんてしてなくて、所々斑模様な濃さが様々の濃い肌なんてしてなくて、だからそんな事あり得なくてあり得ないあり得ないあり得ないあり得な……

 「いやぁぁぁぁぁぁっ!」

 けど、心の何処かで、それは正しいって、思っていた

 

 

 『ったく、落ち着けマスター!戻ってきな!』

 突然、誰かに抱き締められる。苦しい

 誰かの、声がする

 誰だったっけ。かーくんじゃ、なくて……

 『ったく!』

 口の中が苦い

 痛い痛い痛い、どうしてそんなこと

 『マスター!マスターはもうそんな弱くねぇだろ!』

 「……アー、チャー?」

 漸く、彼が誰だったのか認識した

 

 『ああ。マスターの忠実なお猿、アーチャー様だぜ』

 彼の右手が、何かを押し込むように、私の口に当てられている。口の中には、確かな苦み。これは……

 薬草か何か、だろうか。とりあえず、私の精神に効くものではあったのだろう

 ぽんぽんと、左手で頭を軽く叩かれる

 安心しろ、とでもいうかのように

 「御免、アーチャー」

 謝る。アーチャーは、しっかりと警告してくれていたのに。私は警告を無視して話を聞いて……そして、そのまま正気を喪いかけた

 『気にすんな。マスターがどれだけ、あの幼馴染が大切だったか分かっちゃいたってのに、普通に言ったオレも悪いわ』

 「本当なの?アーチャー?」

 その言葉そのものを口に出さずに聞く。言葉にしたくない。分かってはいても、私がそれを言ってしまう……認めてしまうなんて嫌だ

 『ああ、多分な。確認取った訳じゃねぇが』

 「どうして、そう思ったの?」

 言われてみれば、多分そうだと思える。けれども、私は……その結論を考えもしなかった

 だから、問う

 

 『何て言うかな、マスター。まずはだが、あいつは血で縛られてたとか言ってただろ?

 他にも血で縛られてた奴はあのアサシンモドキとか居るわけだが、それに比べて明らかにあいつだけ動きが遅かった

 更には、その縛りが無くなった後、つまり同盟を持ち掛けてきた時だが

 敵意が欠片も無かったんだわあれ。いっそ清々しい程に、危害を加える気が無え。逆に怪しまれても仕方ねぇってもんだ』

 「そう……なの?

 私で何かを釣り出すとか……」

 では、あの恐ろしさは何だったというのだろう

 『ああ。やってたぜ

 セイバーを潜ませるなんて、予防線張ってな

 本気でセイバーという切り札を隠す気ならば、セイバーをあそこに置いておく意味がねぇんだ。いざとなりゃ、令呪を躊躇うヤツでもなかろうし』

 「……うん。そうだね」

 彼が、本当にかーくんだとしたら……

 多分、追い込まれたら、きっと

 きっと、最善ではなくて苦しくて、それでも何とか解決してしまう方法で、事態を終わらせてくれる

 「だから、セイバーが居たのは……もしもライダーが誘い出されて襲ってきた際に、私を守れるように?」

 『だろうな。後は、同盟だって言ってるのに、とっとと情報を話した事。あれも本来可笑しいだろ?

 オレはこんな事知ってるぜ、とちらつかせた方が交渉としてはよっぽどマシってもんだ

 ってのに、わざわざとっととどちらも話すって事は、情報流すから死なないように警戒しろと暗に言ってるようなもんだろ?

 嘘かって疑ったが、ライダー見る限り嘘は混じってねぇしな』

 アーチャーが、震えの落ち着いた私の体を離す

 温もりが僅かに消え、思わず手を伸ばしかけるが、我慢する。そんなんでは、アーチャーに笑われてしまいそう

 『んで大体確信したのは、同盟の際だ』

 「何かあったっけ?」

 『なあマスター。マスター、一度もあいつに名乗ってないだろ?』

 ………………

 「そう、いえば」

 私は多守紫乃。それは私にとって当たり前の事で、だから何も引っ掛からなくて……

 けれども、他の人にとっても当たり前の事ではないのだ

 「あれ?でも……」

 私が伊渡間に来る原因となった手紙を思い返す

 

 匿名の手紙。確かそこにも、私の名前は……

 「無い。手紙にも、名前は無かった」

 『だろ?』

 アーチャーが、笑っていいのか、いけないのか、微妙な笑いを浮かべる

 

 『アサシン、これがオレの推理な訳だが……何か間違いあるか?』

 『半分だけ、正解』

 『半分……人体改造だ何だで性格変わったか何かかと思ったが、そうじゃねぇと?』

 『体は、確かにそう』

 「体は?どういうことなの?アサシン……ちゃん?」

 

 少しだけ、アサシンは悩む。表情とか良く読み取れないけれど、きっとそう

 『魂は……誰でもない』

 『……誰でもない、か』

 「一年の酷いことで、荒んでしまったかーくんじゃなくて?」

 どういう事なんだろうか

 『アーチャー。「ボク」からも』

 『いや、オレだけに頼むわ。マスターもう、一歩踏み出しちゃいるけどよ、流石に辛いものは辛いわ』

 アーチャーが屈む。50cm近くも差がある気がする二人なので、耳打ちにもそれなりの対応が必要らしい

 

 

 『成程ね。半分位正体言ってるようなもんだが、良かったのかよアサシン?』

 『「わたし」は構わない』

 二人の話は続く 

 ……かーくんについてでは無かったのだろうか。何でアサシンの話が出てくるのだろう

 

 しばらくして、アーチャーが立ち上がる

 『んじゃ、ある種のスペシャリストたるアサシン先生から授業された事言おうか』

 「お願い、アーチャー」

 『……先、生』

 アサシンが呟く。喜んでいる……のだろうか?本当に良く分からない

 『誰でもないってのは文字通り誰でもないって事だ。特定個人でも何でもない』

 「それはおかしいんじゃ?だって、彼はかーくんなんでしょ?」

 『魂って概念、知ってるだろ?』

 「知ってるけど……」

 『そのかーくんの魂は……改造の際に深い傷を負ったか何かでな、二度と目覚めるかも怪しい眠りについちまった

 けどよ、それだと困るものがあった訳だ』

 「改造した人達?」

 聞くだけで心が痛い。言葉を発する度に、気絶してしまいたくなる

 けど、聞かないといけない

 『いや?肉体だよ肉体。魂がなけりゃ肉体は滅ぶしかねぇだろ?魂が抜けると死体になるんだからよ』

 「……だから、別の魂を入れた?」

 『……いや、自然発生した。何でも無かったはずのナニカが、自我を持って魂の代わりを果たした

 それが、ザイフリート・ヴァルトシュタインって話らしいぜ?』

 「つまり?」

 『魂が消えてないとなると、起こせば戻って来れるんだろうな。魂の傷を癒すか、或いは物質化してしまって無理矢理治せる段階に持ってくか……

 その辺りで、何とか出来るんだろうよ』

 「アーチャー、ということは」

 『喜びな、マスター

 聖杯か魔法があれば、間違いなく、マスターはまたあの大切な幼馴染に会える。それは、このアーチャーが保証する』

 堂々と、真剣な顔でアーチャーは告げた

 

 それは、私にとって、福音とも言える言葉だった

 「本当なの?アーチャー?」

 『ああ、多分間違いねぇわ』

 「また、かーくんに……会えるの?謝れるの?」

 『ああ、会えるさ。ただ……』

 「ただ?」

 『謝るのは、向こうじゃねぇかな?』

 首を傾げる

 『いやだってよ、多分マスターを遠ざける為とはいえ、散々な事言ったんだろあの神巫雄輝っての』

 言われて、思い出す

 酷いこと言ってまで救おうとしてくれた。それが嬉しくて、けど悲しくて……

 そして、良く考えたら、かーくんと交わした言葉自体は、それはもう酷いものだった

 

 「ねぇ、アーチャー」

 そして、気付く

 「私、あの日の事、アーチャーに言ったっけ?」

 アーチャーは、少しだけ気まずいのか、頬を掻きながら答える

 『悪いなマスター。見た』

 「見た?」

 『サーヴァントとマスターにはやっぱり繋がりがあってな』

 「それは聞いたよ」

 『なんで、たまに夢として見るんだわ、相手の記憶。見ようと思えば、ほぼ確実にな

 しかも、大体思った事も分かる』

 「えっ?」

 それは、プライバシーとか色々と

 『何で、うら若い乙女の秘密を覗き見とか悪りぃなーとは思いつつも、色々と見た。当然ながら、マスターの言ってた去年の12/24もな』

 ………………

 

 「いやぁぁぁぁぁ!」

 『いや、悪かったってマスター』

 アーチャーは素直に謝ってくる

 『ってか大丈夫だマスター。流石に明日のデートと幼馴染の事を思って、寝間着のボタンを外した辺りから目を反らしたから』

 「へ、変態ぃぃぃぃぃ!」

 思わず、手が出る

 アーチャーはそれをかわすことなく、大人しく拳を受け入れた

 

 固い。寧ろ殴った私だけが痛いのではないか、そう思うほどに、アーチャーは動じない

 

 見られた……色々と見られた……

 もうやだ

 かーくんに対して思ってた事とか、前日結局あまり寝られず、ちょっと言いにくい事を……見てないと言っても、存在を知られただけでも恥ずかしい

 

 『……落ち着いたか、マスター?』

 暫くして、アーチャーが声をかけてくる

 「……変態」

 『悪かったって』

 「こうなったら……」

 アーチャーへの復讐を考える。私と同じく恥ずかしい……

 と、考え始めて、ふと思う。私も出来るのだろうかと

 「私もアーチャーの恥ずかしい記憶見てやる」

 『ん?良いぜ、恥ずかしい記憶とかねぇけどなオレ。マスターが見たいって言うなら、見ようとすれば良い』

 「ううー」

 『まあ、弓も壊れちまったし、そろそろ本気出すべきかなーとは思ってたんで、マスターがオレについて知るってのは良い事だ』

 「……真名?」

 『そうそう。あんさん辺りからは普通に名前で呼ばれてるからなーオレ。オレの記憶さえ見れれば、多分分かるぜ』

 「うん」

 頷いた所で

 『伝言、良い?』

 アサシンがそう言ってきたのだった

 

 『ああそうそう、伝言とか合ったんだったな』

 アーチャーが言う

 私も、すっかりと忘れていた

 『伝言。「ボク」はマスターの命で、正式に同盟を組む』

 『それだけか?昨日突然現れて、こういう人間を殺して持ってけと言い出した時には何事かと思ったってのによ』

 そう。アサシンは昨日の夜、ランサーを軽く追い払ったアーチャーの前に現れて、とある人を殺して、その死体をルーラーの所へ持っていけと言い出し、直ぐに消えたのだ

 

 何事かと思いつつも、殺しはしないけれどもと言われた人を探してみると、あの日教会で会ったホムンクルスと同じように、その人が襲ってきたのだ

 あれは一体なんだったのだろうか

 『あれは、不死者』

 『不死者……か。食屍鬼(グール)とは別物か?』

 『別物。食屍鬼(グール)は死徒の一種。不死者は、バーサーカーの眷族』

 『違いがわかんねぇんだが』

 「何か違うの?」

 『いえす。不死者は、「吸血鬼に噛まれたものは吸血鬼になる」という伝承、バーサーカーの宝具により産まれるもの

 生きていても、即座に眷族になる』

 『……即効性の問題か?』

 『もっと。バーサーカーの眷族は、バーサーカーに魂を食われたも同じ』

 アーチャーが、少しの間黙り混む

 『まさか……魂喰らいか』

 『そう。眷族として数を増やしつつ、自身を強化する

 何より危険なのが、バーサーカーに指定された条件を満たすまで、本人すらそれに気が付かないこと』

 「魂喰らい?凄く嫌な言葉だけど……」

 

 『マスター。最低最悪のサーヴァント強化方法だ。知らなくて良い』

 アーチャーに遮られた

 聞いてはみたけれど、私だって分からなくはない。それが、おぞましい事だけは

 

 『んで?それを狩って来いって話だったのはよく分かった

 何故オレにそれを頼んだ?同盟を組むなら答えて貰うぜ』

 『裁定者を解き放つ為』

 アサシンの言った言葉は、良く理解出来なかった

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