『所で
唐突に、セイバーがそんな事を言い出した
時は昼過ぎ。俺達は、セイバーの望みに従って、それなりの店として、中華料理屋に入っていた
パッと見たが、中々のお値段だ。まあ、良いとはいえ、毎回このランクの店だとフェイから貰った金は凄い勢いで減っていくだろう
そもそも、一応Yシャツは買ってあったから良かったものの、あまり予備は無い。格式的にしっかりとした服を求められると辛い。そんな事を言えば、セイバーのワンピースもどうかと思うのだが、まあ、似合ってはいるし、そこまで問題にはならないだろうか
『お料理、楽しみ』
一度近くを離れ、何時しか戻ってきていたアサシンはというと……そもそも上手く認識出来ないが、とりあえず、しっかりとした服を着ている……ようには見える。というか、入れた以上気にしても仕方ない
「俺について……か?」
『ええ、そもそも、救世主を呼ぶ……だったかしら?ヴァルトシュタインの計画とやらに実感わかないのよ。襲ってきたから対応はした、私には目的があるから仕方なく協力もしてあげる。けれども、良く分からないものにずっと協力させられるのって不快なのよね。いい加減、サーヴァントへの誠意として、何故そこまで彼等を敵対視するのか、しっかり話して貰えないかしら』
『そういえば、「我」も聞いてない』
ため息を吐く
「……話さなかったか?」
『ヴァルトシュタインは正義だとは聞いたわね。それだけよ』
ちらり、と周りを見回す。中華料理屋の個室、扉は閉められており、座ったばかりなので料理が来るまでに時間はあるだろう。静かな場所なので、話を聞こうと思えば聞こえるだろうが、まあ話すに悪い場所ではない
「ヴァルトシュタインの目的、それは言った通り、救世主を呼ぶことだ」
『救世主……ね。どうしてそんなものを呼ぶのかしら?』
セイバーがきちんと話せとばかりに聞いてくる
「何でも、かつてヴァルトシュタインという家系を立ち上げた初代、クライノート・ヴァルトシュタインが、かのキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグの弟子だった頃の話だ。彼は、師の魔法……第二魔法の影響を受けて、遠い未来を見たという」
『それで?』
「その未来、人類は……異なる星から降臨した神によって滅ぼされたという」
『だから、救世主を呼ぶ、と?』
「ああ、彼等は……救世主、地球の守り神、そういったものを召喚し、未来に来るべき侵略者を撃退しようとしている」
『そんな未来の事を考えるなんて、バカじゃないの?』
セイバーがつまらなさそうに吐き捨てる
それは確かだ。バカのやることだ。普通であれば
「……そうでもない、らしいな」
アサシンが首を傾げる
「石の森、鋼の木、眠らぬ世界。あらゆる神秘の衰退。クライノートの見たという滅びの未来の世界は、そういうものだったという」
『……立ち並ぶビル、無数の電柱、夜にも灯る明かり……』
アサシンが、ぼんやりと呟く
「そう。現代。20世紀以降の特徴だ
急速に発展してゆく世界に、ヴァルトシュタインは焦りを覚えた。何時、先祖が残した記録にある滅びが来ても可笑しくはないと」
『だから、そんなバカみたいな事を信じる、と?』
「ああ、そうだ。バカみたいかもしれない。だが、それでも、彼等は世界を救おうとしている
ORT……とある時代の当主が見つけ、帰らぬ人となって残した怪物の記録のような、滅びが目覚めるその前に」
『そう』
「だから、俺は悪だ。どんな犠牲を払ってでも、本気で未来を救おうとしている彼等を、自分のエゴで潰そうとしているのだから
未来など知らない、滅びなど興味ない。ただ、仕方ない犠牲とされた者の無念を識っているから、そんな正義を認めない
彼等は正義であるが、構わない」
『一つ、聞きたいのだけれども』
聞き終わり、セイバーは言った
『それらは、本当に来るのかしら?』
「来る」
確信を持って、俺は返す
何故確信しているのか、俺にも分からない。直感、啓示といったものとしか言いようがない。根拠なんてものはない。だが、それでも、『星は来る』と、俺の中の何かが……眠っている英霊が、そう告げている気がしてならない
『信じられないわね』
「信じてくれ、としか言いようがない」
『それで、救世主様とやらは何なのよ。何を呼べば良いと思ってるのかしらね』
「フェイと考えた事だが……」
一瞬、言い淀む
「恐らく、言葉のままだ」
『どういう事かしら?』
「
『……驚き』
アサシンが固まる。セイバーも、言葉が出ないようだ
それも当然。俺だって、その結論に達した時には何を考えているのかと思った
だが、人類への愛を持ち、救世主足り得る存在と考えると、それが相応しい気もするのだ
『この聖杯戦争は縁を持つ者を呼び寄せ、纏う……』
呆然としながら、セイバーが呟く
『主を、呼ぼうというの……彼等は……』