雷が落ちる
そうとしか、表現出来なかった
ミラの拳が、光の剣を砕き、振り下ろされる
当然だ。そもそも、勝てると思っての宝具解放ではない。せめて攻撃を弱める為、生き残る為の解放、そうでしかない
空中に、地面と水平に立ったミラが振り下ろす全力の右ストレートを、甘んじて光の鎧、そして胸で受ける
「がぁぁぁぁっ!」
落ちていく……自分で言うのも何だが、雷の如く落とされる
だが、良い。鉄板は更にひしゃげたかもしれないが、致命傷だけは免れた。ならば、後は……どうにかして、速度を抑えて着地するだけ!
だが、その手は無理矢理の魔力放出というもの位しか思い浮かばず……
『……釣り』
だが、雷と共に落ちていく体が、不意に横に引かれる
物理法則を無視し、そのまま俺の体は、何者かに抱き止められた。いや、何者か、は一人しかいない。アサシンだ
『……間一髪』
アサシンが手に持った……鞭が、俺の右手に巻き付いている。それで引き寄せたのだろう。物理法則?知らん、よく分からないが宝具の前には無視されても仕方ない
「……有り難う、アサシン」
言って、立ち上がる。背骨はやっぱり折れている、上手く立てない。けれども、意識があるならば、何とか出来るはずだ。やらなければ死ぬのだから
結局、魔力を通し、血管を硬化させて対応する。無茶だが、無いよりはマシの応急手術
『……飛び出てる』
背骨だろうか。いや、背骨の事に違いない。耐えろ、起きろ、彼の苦しみはこんな温くは無かったはずだろう!そう気力を振り絞れば俺なんかでも耐えられる程度の激痛が走っているのだから
「……気にするな、まだ動ける」
『……動けるだけだけどね。受け止めようって必要、無かったかな』
ミラが、呆れたようにそう言った
横に天から降りてきた、俺に雷の拳を振り下ろしたもう一人のミラが降り立ち……ブレて、一人に戻る
「……分身、か」
『そう。分身だよ。どれだけ早く動けても、一人じゃ皆にプレゼントを置いてる時間なんて無いからね』
「……複数人制じゃ無いのか」
『複数人だよ?全員わたしってだけ』
不意に、後頭部を打たれる
ギリギリであった体は耐えられず、前のめりに倒れ込む
『だから、こういう事も出来るよ?』
打ったのはやはり、二人目……分身のミラ
『……驚き』
『どの分身がどう動くか、一つの思考で判断しなきゃいけないし、寝てる子供の枕元にプレゼントを置くって事前に行動を全部決めてられる時は兎も角、戦闘中にはそんなに便利じゃないけどね』
そんな、欠点にもならない事を言って、ミラは笑う
立て……まだ行けるだろう。そう思うけれども、体が動かない。魔力が足りない
情けない。これは……銀霊の心臓の機能不全だ。未来から、その未来を潰す代わりに、本来その未来に持っていたはずの魔力を現在の魔力に転換する。認識としては、未来、すなわち寿命を削る代わりに、削った寿命分の魔力を得る力。人間の身では、そもそも魔力が多くもない身では、絶対に用意できない魔力を、無理矢理未来から持ってくる、世界に一つの魔術機関
本来の現在使える魔力など当に尽きている。まだ、一度に持ってきすぎてオーバーヒートしてはいない。ならば、魔力不足になるとしたら、未来から魔力を持ってこれなくなったのだ。何故?なんて分かっている。諦めかけた……からだ
魔力を、自分の未来と引き換えに引き出してでも、今を切り抜けられると思えなかったからだ
……情けない。……あまりにも、情けない。そんな弱音、俺に許される訳があるか。立ち上がれ
『……無理しなくて良いよ』
「……無理というのは、全ての……希望が……」
ああ、大丈夫だ……もう、問題ない。誰にだって出来る事、諦めない事は……取り戻した
寝てる場合じゃない、目覚めろ……銀霊の心臓!
「無いときにだけ言う言葉だ!」
再起動。全身に魔力を流し、立ち上がる。倒れてなどいられない。立っても未来があるとは言い切れないが、倒れていてもその先に未来なんて有り得ない。ならばせめてもの希望にすがる
『……本当に、諦め悪いよね、フリットくん』
「誰だってそうだろう?」
『……そんなこと、無いよ。普通の人は、そんなに強くない』
「……強いさ。追い込まれればきっと」
ゼロだった俺にさえ、出来たんだから
『それは、努力したけど出来なかった全員に対する冒涜なんだけどなぁ
貴方だから出来たことだよ、フリットくん』
ミラが手を差し伸べる
『またかって言われるかもしれないけれど、最後に聞くよ、フリットくん。終わる位ならば、此処で止まる気は無い?』
それは、何度目かの誘惑
『もしも、本当に貴方が願うなら……心の底から望んでくれるなら
その体も未来も、わたしが全部なんとかするから』
その声は、何処か悲しそうで……
『だからもう、自分を殺して戦うのは止めて?』
俺にとっては、最低最悪の悪魔の誘いでしかなかった
「……その未来に居るのは、ザイフリート・ヴァルトシュタインだろう?」
『……うん』
「ならば、俺の答は変わらない。神巫雄輝が理不尽に何かを奪われて、俺なんて悪魔がのうのうと生きてる未来なんぞ、認めるわけには……いかねぇんだよ!」
……俺がそれを諦めたら、俺としての生を肯定してしまったら……誰が、理不尽から神巫雄輝を救うのだ
多守紫乃?ああ、普通に考えたらそうだろう。だが、彼女はきっと……これから先の未来しか考えてない。奪われた過去を考えていない。次善策としては良いだろう。だが……
あの嘆きを知ってしまった以上、そこで満足などしていられない。だからこそ俺は悪であるし、そうでなければいけない。全てを滅ぼしてでも、彼一人を救うために
「この剣は正義の失墜」
体が悲鳴をあげるが、無視する
止まってなどいられない。やるしかないのだから
けれども、その動きは、別の要因で止まる
止まらざるをえなくなる
ミラの手に、一画の令呪が輝いていた
『なら、殺さなきゃ……いけないから』
その声は、何処までも、覚悟から遠そうで……
『令呪をもって命ずる!
アサシン、フリットくんを……ザイフリート・ヴァルトシュタインを殺して!』
それは、悲鳴のような命令
けれども、裁定者の持つ令呪による、絶対の指令
サーヴァントであり、神代に近い時代の代行者でもある彼女の命令は、サーヴァントとはいえ拒否など赦されない。抵抗すら無意味、どのようなサーヴァントがどれだけ抵抗しようとも、従わざるを得ない宣告
だから、俺がこの時やるべき行動は、即座にアサシンを脅威として斬り捨てる事で
決して、アサシンを失うことを恐れ、俺が一昨日やったように令呪をもってそれを防ぐ事をアサシンのマスターに期待して待つ事などではなかった
故に、即座に切り捨てる判断が出来なかった俺は、結局の所諦めない事しかないのに、その程度の覚悟しか無かった間抜けであったと証明したと言えるだろう
だから、俺の死は規定事項。アサシンが抵抗しようとも、そんなものは僅かな隙にしかならない。その隙を活かせない者に未来は無く
だが、それでも、せめてもの抵抗として全力で飛び下がり、光の剣を振るおうとし……
しかし、規定事項の死は、胸から生えた剣によって阻まれた
俺の……ではない。アサシンの胸から生えた、見覚えのある長剣……幻想大剣。心臓を背中から貫いたそれが、俺を殺すはずのアサシンの足をその場に縫い止めていた
『……やっぱり、来ちゃうかぁ』
ミラが呟く
『全く、見てられないわね』
俺の知る限り、他人の宝具を扱えるサーヴァントはこの聖杯戦争には一気も居ない。ならば、幻想大剣を振るえる者は一人しか居ない
即ち、俺の前から去った……のだが、何だかんだ近くで見ていたセイバーだ
「すまない、セイバー。助かった」
軽く謝る。それしかする事がない。恐らく、認めてくれた……というよりは、あまりの不甲斐なさに呆れて一度助けてくれただけ、寧ろ完全に見限られる直前に一度だけ機会をくれた、といった方が正しいのだろうから
『……気にしなくて良いわ。貴方なんてそこのルーラーに滅ぼされれば良い、その思いは変わってないもの。あまりにも無粋過ぎて止めただけよ
どうして諦めないのか、貴方が理解出来ない。そんな化け物、死んでしまえば良いのよ。もしもあそこで諦めたならば、私も貴方なんて最低の
セイバーの声は冷たい。それはそうだ。セイバーからしてみれば、俺はロクなマスターじゃないだろう
けれど、それでも、俺は……
「諦められないから」
『そう。最期くらい看取ってあげるわ。
とさっ、と軽い音と共に、アサシンが地に倒れる
剣は刺さったままだ。人間であれば文句なしの致命傷、サーヴァントであれ、即死でも可笑しくはない。消滅していないのはサーヴァントの意地といった所なのか、それとも令呪の命令を死んでは果たせないからなのか、それは分からないが、とりあえず脅威としては弱い
だから、今考えるべきは……ルーラーの対応
ミラの手に、いや全身に、雷鳴が集い始める
……明るい。今までも全身に雷を纏ってはいたが、それがあくまでも力の差を見せつける為の……心を折るための加減であったのだろう、と思えるほどの明度。沸き上がる
「……流石に、派手過ぎるんじゃないか?」
牽制。あくまでもルーラーが聖杯戦争の運営を旨とするならば、派手な事は秘匿に関わるだろうからと揺さぶる
……空まで俺を打ち上げている時点で対応しているだろうに何を、と言いたくはなるが、時間は稼げる
「『ーーー告げる』」
呟くのは、最後の賭け。俺がジークフリートに助力を求めたとき、俺の中の英霊は応えなかった。何度やっても同じだろう
ならば、取るべき手は別にある。応えないならば、応えさせるまで。英霊召喚の呪文を使い、強引にでも俺の中の英霊に力を貸させる。ジークフリートだろう彼程の大英雄がこんな悪に力を貸さないというならば、俺の中により強い繋がりで召喚し直すまで
『……大丈夫だよ。良い子は寝る時間だからね』
ミラの胸元で、ベルが鳴る
……体はもう限界だ。寝なければ、と一瞬思う心を振り払う
「……催眠、か。それは」
『……フリットくんが思ってるような事は起きないよ』
食い付いてきた。時間は……これならば、足りるかもしれない
「『……汝の身は我に、汝の剣は我が手に』」
告げるのは言霊。フェイとの何度かの練習で、呪文詠唱を切る事無く話す術は身につけた。行けるはずだ
「……突然の催眠で火事などは起きない、と?」
『わたしだって嫌だからね、そんな悲劇。このベルの音はサンタクロースは眠っている時にやって来るってお話の再現だけど、あくまでも今日は疲れたし最低限の事やって早く寝なきゃって強く思わせるだけ。その場で眠ったりはしないよ』
だから来るのにだって10分掛かったんだし、ね。とミラは小さく笑う
宝具の効果ならばまず誰も目覚めないと見て良い。目撃者が生まれ得ない以上聖杯戦争の秘匿でルーラーが止まるのは有り得ない
ならば、勝つしかない。アーチャー陣営は……紫乃は、覚悟を決めた……昔の紫乃らしからぬ強い決意の瞳で森を見てくると言っていた以上、今日の救援は期待出来やしない。セイバーはあくまでもチャンスをくれただけ、これ以上は助けてはくれまい。俺の手で、やるしかないのだ
「『指輪の寄るべに従い、この縁この理に従うならば応えよ』」
……俺自身俺なんかには相応しくないと知っている、
「『誓いを此処に』」
『……本当の最後に、もう一度だけ聞くよ、フリットくん』
行幸。ミラは勝手に話を続けてくれている。ならば……間に合わせる。魔力の高まりは感じない。上手く行く保証は無い。だからこその賭け
『わたしは、今でも、君に死んでほしくなんか無いよ』
「何故、神巫雄輝を救わない。俺よりも、余程救うべき人だろう!」
『わたしが助けたいのは、生きてほしいのは……死んでしまった彼より、今を生きている君の方なの!』
「ならば、相容れるわけが無いな。神巫雄輝の慟哭を知ってしまった以上、俺には彼を救う義務がある!ザイフリート・ヴァルトシュタインなんてのがのうのうと生きていて良い訳が無いんだよ!」
ミラの言葉は切り捨てる。俺の中の死にたくないと叫ぶ情けない甘さと共に
「『我は常世全ての善の倒す者』」
『……此処で、死ぬとしてもなの!』
「……諦めた時点で、死んだも同じだ」
『……そう。ならば、本当に、此処で終わらせるよ
何時も、つい加減しちゃってるからね』
神鳴が、更に膨れ上がる
その果てに……神を見た、気がした
顔は分からない。只、人に似た何かとしか分からない。けれども、ミラの背後の神鳴に、聖堂教会の言う主を幻視した
『だから、確実に終わらせる。この宝具で』
「『我は常世全ての悪と為る者ーー』」
……駄目だ。紡ぐ速度が遅すぎる。魔力の胎動を感じられないが故に、強引な手段であるが故に、どこまでも想像よりゆっくりとしか言霊を繰れない。これでは間に合わない
……だが、それがどうしたというのだ。ならば、受けながら完成させれば良い
光の剣を、左手に逆手に持つ
ミラの宝具とて、恐らくは拳。ならば光の剣、左手、そして光の鎧でもって受け止めるまで。それで時間は稼げる。後は速度次第
『〈
……この声は……この詩は、グレゴリオ聖歌の一節、だっただろうか。いや、アマデウス・モーツァルト編曲版レクイエムだったろうか。カッコいいのって好きかな?と歌ってみせてくれたことがあった気がする。だが、これは宝具だ、今やそんなことはどうでも良い
その拳は、何処までも弱く。それでも、聖人による慈愛の裁きとしての性質を、神鳴を纏っていて
『
それは、文字通りの神鳴。人を越えた神の裁きともされた最大級の脅威
だが、止まるわけにはいかない。そんな事は許されない
「『汝、三大の言霊を覆う七天!』」
詠唱は止めず、ミラの宝具を受け止める為、身構える
……突如、倒れていたはずのアサシンの体が跳ね上がった。構えるのはナイフ、未だ剣は刺さったまま、致命傷を追い、それでも令呪の絶対命令に従い、俺を刺し殺す為に動き出す
……だが、可笑しい。今更の行動もそうだが、アサシンにはボウガンがあったはず。ルーラーの宝具を手助けし、構えを崩すならばそもそもわざわざ突進してくる意味は何処にもない。それに、何より……
アサシンの歩む、その軌道は……ミラの通り道だ。アサシンの速度は速くない、間違いなく激突するだろう
……アサシンが、笑った気がした
同時に、気が付く
わざとだ。あのアサシンは……俺を殺す令呪を死にかけだから果たせないと今の今まで抑え込み、立ち上がったのだ。俺を殺す為に動いたら、たまたまミラと激突したという体で、俺の盾になるために……!
ならば、俺も応えるしかない
「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」
重くなる口を開き、強引に言霊を完成させる
……だが、何も起こりはしない
当然だ、最後のあれは言霊ではない。魔力が乗らなかった。これでは、召喚は完成しない。するわけがない。やはり、強引に召喚するというのも無理があったのだろうか
だが、これしか手は無かった。もう、こうでもしなければ、ミラは俺を逃がす訳がないだろうから
そんな俺の目の前で、ミラの拳はアサシンの思惑通りか、アサシンに激突し
……文字どおり、消し飛んだ。刺さっていた肉体が消滅し、幻想大剣が、セイバーの呼び出した幻想のジークフリートの剣が此方へと飛んでくる
それを、アサシンの遺した更なる一手を更なる盾とすべく左手で受け止め、前を見据える
もうアサシンの姿は見えない。文字どおり消し飛んで消えてしまった。だが、アサシンは守ってくれた。こんな俺を
……ならば、応えろ。諦めるな。そんな事が許されると思っている弱さを切り捨てろ
この手には幻想大剣がある。状況は変わった。前よりも可能性は高い。そして、言霊になっていなかった以上、呪文は途切れていない。何処からだ、考え……紡ぎ直せ
その為の時間は……元より稼ぐ気だったろう!
左手、そして逆手に構えた幻想大剣、及びそれを核とした光の剣で、ミラの右拳を受け止める
いや、受け止めようとした
触れた瞬間、文字どおり左手は消し飛んだ。光の剣は盾にもならなかった
握るものを喪った幻想大剣が地に向けて落ち、都合よく左足に突き刺さる
だが、問題はない。纏っている神鳴は兎も角、拳そのものの威力は今まででも相当に低い。アサシンが稼いだ、そして左手で稼いだ時間でもって、右手と胸で抑え込める程に……
拳が胸にめり込む。銀霊の心臓の外郭である鉄板を歪め、千切り、捩じ込まれる。だが、そこまで。核たる指輪までは届かない。右手で手首を掴むのと合わせ、捕らえた
『無駄だよ、フリットくん』
同時に、神鳴が俺を
……いや、違う
同時に、理解する。ミラがどうしてこの宝具を撃ったのか。どうしてアサシンが消し飛び、俺も消えようとしているのか
この神鳴は……祝福だ。神の慈愛だ
摂理から外れた、神に背いた、そんな者達すら主は赦し、正しき道に立ち返らせる。回心の拳
それは、普通の人の摂理から外れたサーヴァント、死徒等に、そして俺にとって、摂理に引き戻す力となる
そう、神が作りたもうたという人間へと慈愛をもって還す、それがこの宝具
ならば、本来あるはずの無い俺は、本来死んでいるはずのサーヴァントは、不死を得たはずの死徒は、
ミラだって分かっていたのだろう。あの宝具で摂理に還った際に、俺は居ない。残るのは……改造される前の神巫雄輝の死体だけ。それも、加減されたとはいえサーヴァントの拳に耐えきれず、消し飛ぶだろう
消えていく。ザイフリート・ヴァルトシュタインという摂理から外れた化け物が消えていく。神の慈悲の元に、元々ゼロだった真実に還っていく
もう、胸がない。息が出来ない
もう、右手が無い。せめての抵抗をしたかったけれども、剣を振るえない
もう、頭がない。言霊を紡ぐ口が無い。せめてもの嫌がらせに唇でも奪ってやろうかということも出来ない
もう、腰がない、足が束ねる物を失って倒れていく。いや、もうその足もない
もう何もない。ゼロだ
……本当に?
心の中で、何かが叫んだ。……諦めるな
もう、心が無い
そんな訳はない。何かが叫んだ。忘れるな、彼女は……世界を……
もう、沈んでいく。諦めても、諦めなくても、結果なんて変わらない。ならば……と、何かが言った
諦めなくても変わらないとしても最後まで諦めない、それでいいじゃないか
痛む。無くなったはずの左足が痛む。幻想の剣が、何かを伝えるように灼熱している
もう居ないはずの俺に、何かを残して……
心の奥底で、誰かが言った。倒すべきは、彼女じゃない
化け物が吠えた。託されたんだ、終わるものか
何かが応えた。救うべきは……
誰かが、決意した。……だって、この想いは消されない
……そうだ
意識が浮上する
まだだ。まだ終わってなどいるものか。まだ届く
何故ならば、消えるはずの無いものがある。アサシンが弱めた威力の差で拳を受けなかった……神鳴では消されない力がある
叫べ。まだ終われない。終わるわけにはいかない。頭が残るくらいで辿り着けるどころじゃない。ずっと川底に残っていた。存在することが真実。だから神鳴により還ろうとも消えきってやしない。消えていないならば足掻けるだろう。叫べ、叫べ!叫べ!!
俺にはまだ、
この身は悪、現在を破壊する悪魔。力を貸して等とは言わない。英霊が、
「抑止の果てより来たれ』
だから、俺が勝手に振るう。その為の、魂が紡ぐ言霊。ならば、これは英霊召喚等ではない
「天秤の破壊者……!』
力を寄越せ、俺の
あえてこの力を呼ぶならば、そう
「