Fake/startears fate   作:雨在新人

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"夢幻の光剣"承 第七次聖杯戦争/上
六日目幕間 目覚めるは魔狩人


忘れるな。闇ある所、必ず光がある

 この世に悪意は満ちるだろう。だが、その闇は人の心の正しき光をも呼び覚ます

 希望せよ。明けない夜はない、払われぬ闇も無い。悪ある所、正義は必ずあるのだ

 それが……英雄原則

 

 ふと、暗い部屋に蠢く影

 襤褸切れのような青年に掛けられた、やはり襤褸切れそのものなフード付きマントの切れ端がわずかに輝いたかと思うと、一瞬の後に一人の少女の姿を取る

 ……サーヴァント・アサシン、魔狩人(ヴァンパイアハンター)。人が語り或いは願った、無数の夜に潜む魔を狩る者の……業績或いは物語の集合体。ルーラーにより討たれたはずのサーヴァントが、その場所に不意に現れていた

 『ん』

 確かに死んでいたはずの狩人は、されどそれを驚く事もなく、軽く息を吐く

 

 ……少女(・・)にとって、これは驚愕でもなんでも無い当たり前だから。()は、吸血鬼に類される理不尽に苦しめられる人々の、何時か奴を倒して自分達を救ってくれる都合の良い救世主という祈りを多分に背負う者。闇ある所に光があるように、夜の眷族ある所には魔狩人が現れる。故に、夜の貴族(バーサーカー)ある限り、それを狩る者も当然居るのだ

 それが英雄原則。魔王は勇者を呼び起こす。幾度死のうとも、バーサーカーある限り、アサシンは幾度であろうとも蘇り立ちはだかる。バーサーカーという魔を狩るその時まで

 

 だが、無数の伝承のうち青髪の少女の姿をしたものを代表としたアサシンは、即座にその役目を果たすことはなく、自身が再臨したその場所を眺める

 薄暗く、そこまで大きくない部屋だ。特徴としては、狭い机の上に、『花の魔術師マーリン 著/絵:アヴァロンの魔術師☆M』と書かれた分厚い……それこそ紙にして200枚はあるだろう資料が置かれていること、そして暗がりにあって尚圧倒的なまでの存在感を示す一本の剣が壁に掛けられている事くらいだろうか

 部屋の主であるメイド服の少女は、一人用のベッドを他人に明け渡し、その者の右腕を枕にしてすやすやと寝息を立てている

 壁に掛けられた小さな時計が、午前4時を軽く4度の音で告げた

 

 触れて起こさないように、それでも出来る限りの近さで、青髪の少女は、銀髪のメイド少女を眺める。何かを探るように

 その胸付近のポケットに、ちらりと金色のカードのようなものが見えた

 ベッドの枕元に置かれた赤いカードと同質らしい、不可思議なもの。流石に、それを取れはしないだろう

 諦めたように、アサシンは枕元のカードを手にする

 漆黒、そして真紅。忌まわしき力を感じさせるそのクラスカードに刻まれるは星の力。即ち……

 『びー、すと』

 何処か納得したように、少女はそう呟いた

 

 ベッドの上から降りることなく、少女はベッドに寝かされた者を見る

 ボロボロという言葉が実に相応しい、白髪(しらが)の青年……いや少年。アサシンにとっては、何よりも大切な……、そうだったという事を、一度死ぬ事で思い出した希望。あの言葉を覚えている、差し出した手を知っている。そして、あの終わりを思い出した

 『……「ボク」の希望……ザイフリート』

 だが、その少年は、当然というか魔力不足で危険な状態にあった。当然だ。アサシンが彼を庇って消えた時点で、彼は相当に無理に魔力を未来から引きずり出していた

 それからの事は知らないが、とりあえず更なる無茶を通しただろうことはアサシンにも予想が付く

 

 『大丈夫。「私」が、「ボク」が、させない』

 言って、アサシンは少年に軽く口付ける

 経口による魔力供給。マスターが居り、魔力が十分な状態で再度現界したアサシンにとっては、彼の為ならば何でもないこと。だが、それはアサシンの意識に霞をかけ

 何時しか、アサシンの少女も、満足そうに眠りについていた

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