無駄な細かい設定が気になる人だけお読みください
七日目断章
『……終わりましたか』
灰色であった空に夜が戻り、星が瞬き出す。もう、魔力の光は見えない。彼の血光も、竜の蒼光も、そしてアーチャーの翠風も、止まった時の中に置き去りにされて、誰も見ておらず、記憶にも無いだろう
この日この時、一つの世界を護る戦いがあったなんて、それこそ、当事者達しか知らない。世界は、人々はこうして、何も知らないでのほほんと生きていく。未来へ
『なんて、少し感傷が過ぎましたかね』
自分の思考に苦笑しつつ、ワタシは手を出す
『ということで、それは一応ワタシのものです、返して貰えますか、ライダー?』
その声に、窓の外に立つライダーが振り返る
その手にあるのは、かつてワタシが折れてくれても構わないから固い剣として使いますか?と彼……ザイフリート・ヴァルトシュタインに渡そうかと思った一本の剣。結局は、彼がそれを拒否したことで意味を持った星の聖剣。アヴァロンの魔術師☆Mが置いていったとされる模造品
即ち……<
『あ、ああ……』
言われて、剣を眺め続けていたライダーは、慌てて剣をワタシに投げ返す
少し危ないけれども、ワタシはその柄をキャッチ、立て掛けておいた鞘に納める
『それにしても、突然来たときには驚きましたよ』
『これしか手は無いと思った。騎士道?自力?そんなものは、出来る者だけが唱えて良いもの』
開けっぱなしの窓を乗り越え、土足でライダーが屋敷に踏み入る
西洋式の屋敷であり、外履きを脱ぐ様式では無いため別に良いけれども、せめて汚れは軽く払ってからにしてほしいものです、なんて思うけれど、口には出さない
『私は、使えるものは何でも使う、獅子の剣では、例え止められても消滅するだろう
だから、星の剣に任せるさ』
そんな事を言いながらも、少しだけ自力で何とかできない事を悔しがるように奥歯を噛んで、ライダーは呟いた
『まあ、止められたから良いですけど、賭けじゃありませんでした、アレ?』
横で事態を眺めていたピンク狐がもう過ぎたことを蒸し返し
『ええ。止まらなければ、あのまま街一つ消し飛んでたでしょうね』
何時しか戻ってきていた銀髪の狐がそう返す
『ひっどく大味な戦いでしたねぇ……
正直、面白くねーですよ』
『おやおや、怖じ気付きましたか?
くつくつと、意地悪く銀髪の狐は笑う。敵視している……というか気心が知れているからこそじゃれている為か、容赦は無い
『特等席だぁ?そもそも何しに行ったんです?』
そのノリに乗るように、ピンク狐が食って掛かる
『ええ、戦いの特等席、かの渦中のマスターの元
まあ、
『おや、実はきにしてたんですか?式神に任せた結果、探し当てられなかった事』
『どういう事だ?』
ワタシの呟きに、ライダーが首を傾げる
ニマニマしているピンク狐はやっぱり気が付いているのでしょうが、ライダーには分からなかったようだ
まあ、当然ですが
『意識陥穽ぬらりひょん。其処に居ることを、何をしていようが当たり前と認識してしまう認識の落とし穴』
『……それは分かる。それと、この狐が……』
ライダーが黙りこくる
『ええ、思った通りの話です。幾ら意識を誤魔化そうが、其処に異物が居れば誤魔化し切れる訳も無し。此処が怪しいですよという道標そのものにしかなりようも無し、という話です
ですが、それが無くとも……あのアーチャーならば、恐らくは
避けられぬ死という爆風を目前にして、僅かな陥穽の傷から探し当てた、そんな気はありますよ、恐ろしいことに』
そう、道標。アーチャー達が、アレを気にしないでいるのは可笑しいと思う切欠。そうなるべく、彼は多守紫乃……ワタシがどうしても好きになれない
まあ、あの銀髪狐のことだから、どうせそうでしょう。見れてはいないし、此処からでは気配も何も分からないので、本当に彼が紫乃の元に行ったのかは実際の所不明ではあるけれども
『おやおや、わざわざあんなところに行くなんて、自殺願望でも?それともぉ』
ピンク狐が悪戯っぽく笑い、銀髪狐の肩を叩く
『まさか、自分だけは無事生き残る、何て思ってた訳じゃ御座いません事?』
『おや、確実に無事であればこそ、向かうに足りると思うのですが?
どうやらそこの頭桃色は節穴のようですね、残念です』
『ふざけないで貰えます?どうして無事だ何て……
いや、良く考えれば安全だわ、あそこ』
ぽん、とピンク狐が手を打つ
『どういう話だ?』
ライダーがまた首を傾げる。馬鹿ではないけれども、やはりというかワタシ達の話には付いていけない
暇なときに色々と語りあってきた前提が、ライダーには特にないから
『それはアーチャーという化け物が、どこまで化け物かを認識すれば分かりますよ、ユー……ライダー』
少しだけ可笑しくて、一目で分かるライダーの真名を言いかける
そんなワタシ自身、模した彼女に近い行動で……戯れている狐二匹に忠言しておいて、と笑ってしまう
『……化け物』
『ええ、かつてあのアーチャーはマスターが居るのにこの森であの宝具を撃ちかけた。完全な正気で
ならば、アーチャーは……あの宝具のなかで、マスターを護る術を持っている、それは確実な話です』
『確かにそうだな。撃たれたら終わるからと魔力で空を目指していたから、あの時はそこまで考えていなかったが』
二日ほど前を思いだしながらか、少しだけ目線を合わせずに、ライダーが首肯する
『そして、あのアーチャー、吸血鬼の衝動全てをやるべき事、つまり使命感に押し付けて、最後の最後にマスターを救うだけの余力を残していた
……ならば、あの宝具が激突する瞬間……マスターを護りに、最後に残った正気を振り絞ってマスターを護る、それもまた明らかです』
くすりと、一応の敵を褒めながら笑う
『ええ。ならば確実に、かのマスターの近くのみは安全圏。かのアーチャーの宝具が炸裂したならば、街一つを消し飛ばし、神秘の崩壊と真相不明の傷痕を世界に残し……この第七の聖杯戦争そのものを破壊して、マスターを生かして街から帰したでしょうとも
その際に、浚った当人であれば兎も角……
『言われてみれば、
いや、考え直せ、私。血縁のごり押しエクスカリバーという同じく楽しいネタを見たはず、悔しくありませんとも、ええ。寧ろアレを見れなくて残念でしたと言いましょう』
ちらりとワタシとライダーの方を見て、ピンク狐が呟く
『……ところで、アーチャーは兎も角、向こうの……S346だったか?アレには驚かないのか?』
ライダーが問い掛けてくる
中々に新鮮な状態。C00と付く二馬鹿は無駄に物分かりが良いので、色々と話せない
『何を驚く必要があります?
彼は星を滅ぼす片鱗。この世界に終わりを呼び込むビーコンみたいなものです
ならば……真の力の欠片くらい、撃てない道理はありません』
『真の力ねぇ……
変身した上に翼が完全に実体化しててまんま竜でしたけど、それが真の力とはこれ如何に。竜殺しの英雄を宿したならば、その方向可笑しくありません?
いや、何か
今更なピンク狐に苦笑する
『どこも?竜の姿?当たり前ですね
かの魔竜ファフニールとは、財宝を奪われぬ為に竜となった、とも言われていますし』
『そもそも、彼にとって最強の力とは
それに何より……』
『
銀髪狐の言葉を引き継ぎながら、くすりとワタシは笑う
『ならば、寧ろ竜にならない方が、可笑しいでしょう?』
本当はもうひとつ、恐らくはワタシだけが
そう、ワタシは言葉を結んだ