『さて、と』
メールを書き終え、ワタシは息を吐いた
『へぇ。見せて貰えます?』
送信中に、ピンクい狐が、その画面を覗き込んできた
『えっと、何々……』
そうして、ワタシが書き上げた文章をそのまま読み上げる。近くでこっそりと耳をピンと立てつつも、さも興味ありませんとばかりに明後日の方向を向いている陰険狐にも聞こえるように
『「拝啓、ワタシのザイフリート・ヴァルトシュタイン様」』
『……ワタシの、とは付けてませんが?』
『心の声ですよーだ!』
ぺしり、と近くに置いておいた柔らかいホコリ取りで、頭ピンクの頭をはたく
『読むならば真面目にやってください』
それに対し、ピンク狐はにやにやと笑って返した
『ふっふっふっ、これぞ墓穴……』
『あっ』
言われて、気が付く
そもそもだ、勝手にメールの中身を読むことを、ワタシは許可してなどいなかった。たから、読むのは禁止ですと言うことも出来た
けれども、真面目に読んでくださいという言葉には、真面目にならば読む事を許しますという意味が含まれてしまっている
『言質は取りました。今更訂正しても遅いですよーだ!』
嬉々としてワタシからTVと共に持ち込まれた携帯を取り上げ、ピンク狐は読み上げ始める
『「拝啓、ザイフリート・ヴァルトシュタイン様
って、格式張ったものはアナタ相手には似合わないですね。以降は普通にします
メールを送った理由?あのマスターとのデート程度、邪魔する意味も理由もありませんし、一度で済む形式を取っただけの事です
昨日の事なのですが。夜に入る前くらいに、微弱な魔力を持った一般人が森に紛れ込みました。それはたまにありますし、このブリテンの森はアヴァロンの魔術師☆Mによって例え強く館へ向かう意思を持たない人間が紛れんでもそれとなく領域外へ向かわせるようになっていますが、時間的に止まっている世界へは帰れません
結果的に、ひょっとしたら彼はこの森から何かを見ていたのでは……と、慣れない事ではありますが、アナタとしても知らなければ困るかと思い、ねっと検索なるものをやってみた訳です
その結果が下です。軽く調べてみた所、無名ながら、昨日の魔術決戦に関してを、世界的に隔たれた為に全て見て、その事実の発信者となったようです。どうせ秘匿に動くでしょうが、何処まで秘匿が成り立つものか、分かったものではありません。ですので、恐らく現当主は、速攻を旨として動き出すでしょう。アレは、最早猶予は無いという考えをすると思います
ですから、アナタが動くかどうかに関わらず、バーサーカーは仕掛けに来るでしょう。なので、とっととワタシのものになるか、あのアサシンとアナタの魂を縛るにっくき生き物が大切にしていたアーチャーのマスターでも連れてこの街から出ていくかして下さい。そうでなければ今日の夜に死にますので
闘い、倒す?きっと此処まで読んで一度アナタはそう言うでしょう。なので先に返事を書いておきますが、バカ言わないで下さい。寝言は寝てから言うものです。どう考えようが、バーサーカーの食らい溜め込んだ魂を使いきらせる前にアナタの寿命が来ます。人間一人の未来の残骸と、幾千幾万の魂。確かに変換効率は違いますが、流石に物量差を考えてモノ言ってください。アナタがアナタとして挑んで気合と根性と変換効率で誤魔化せるのは精々100倍差までです。数千……いえ、アナタの寿命なんてどうせ昨日も削って二ヶ月かそこらだと思うので数万倍にどうして挑むなんて考えが浮かぶのやら。アサシン一人に任せて、存分に使い潰した方がまだマシです。だとしてもどうせ間に合いませんが
長くなりましたので纏めますが、どうせ今日でこの第七の聖杯戦争はヴァルトシュタインの手によって終わります。正直ボロクズのようになって死ぬのは見たくないので、ワタシのモノになるか逃げるかをとっととして下さい。以上です
追記。あの教会の神父ですが、昨日の夜森に入ってきたようですね。理由は知りませんが」
ですかぁ。実に思いのままに書きなぐった感じですねぇ……陰険はどう思います?』
『ええ。良く分かりました
これが、語るに落ちるというもの。言葉の端々から、隠しきれない愛しの彼への想いが見え隠れしている、と』
ふっ、と銀髪狐は笑う
『誰が愛しのですか、誰が』
『いえいえ、あなた様以外におりませんとも。そんな明白な事すら分からないなんて、そんな事は御座いませんよねぇ
『……どうやら、狐は節穴だったようですね』
反論せず、ワタシはそう話を打ち切った
『所で
打ち切った所で、耳をぴこぴこさせ、興味深そうにピンク狐はそう問い掛けた
『当然ですね。昨日の夜のアレ、数十倍を覆したからこそ、あのアーチャーに勝てた訳です』
『スペック的に、100倍でききます?正直、わたくしも100倍……とはいかずとも81倍には縁がありますけど、どう見ても100倍じゃ足りませんよねぇ
そこのところ、どうなんです?』
『おやおや、そこの狐はおかしな事をおっしゃる
彼を壱、かの大聖を……仮に500としましょうか
ならば、ルーラーが400、ライダーが50程受け持ってくれれば、50で済むでしょう?』
『あれ?この計算加算です?
差がありすぎると、護って貰わなきゃどうしようもなく、戦いにすらならないと思うんですけど?
っていうか、10が三人居ても、30に勝てるかというと、ノーなのでは?
ってか、あの闘い……良く考えたら殆ど棚ぼた止め以外ルーラーが殆どやってません?あのぶっぱも、何か雰囲気違うっていうか、中身出てきた感じしましたし。本当にあんな計算が成り立つのか……』
『闘いになっていたので計算上問題ありませんね』
呆れたように、ワタシは掃除を始めながら、そう呟く
今日はホコリ取りから掃除を始める。まずは、
『ちょっと、ストップ、ストップぷりーず!』
『何ですか、ホコリ取りたいんですが』
『愛しの彼を小馬鹿にされた気になって気分を害したのかもしれませんが、わたくしをホコリ扱いするのは止めて貰えません?
あっ、そこの銀髪の陰険ホコリは有害なので早めにお掃除ぷりーず』
『おや。頭ピンクが何か言ってますね
ホコリは貴女だけでは?』
『いえ、同類なのでどちらもホコリです』
『ひどっ!それは酷くありません?
というか、観念したんですねぇ……』
『どうやら違うということを理解する脳が無いようなので。否定するのもバカらしくなりました』
ニヤニヤを止めない狐達に、ワタシはホコリ取りの手を止めず、呆れたように言った
実際には、ここまで割と何時ものやり取りなのは感じながら
『というか、本当に今日で終わります?この茶番聖杯戦争』
ヴァルトシュタインの勝利を前提とした七つの聖杯戦争。それを茶番としながら、ピンク狐は問う
『終わりますよ。かのシュタール・ヴァルトシュタインは此処で待てが出来るような人間ではありませんし』
『ってことは、出番?』
『
執事服で寛ぎながら、銀髪狐は返す
それは確か。ワタシや彼等が出てこないといけないということは、あれだけの事を……現存する全ホムンクルスに血を注ぎ、吸血鬼化……そうして不完全なホムンクルス達の魂を食らい、自身の魂へと変える程の準備をしておいて、それだけでは足りない程まで追い詰められるという事
幾ら恐らくは今日仕掛けた際にあの
そうして、更に、彼は……現当主シュタール・ヴァルトシュタインは、ヴァルトシュタインが竜脈を弄り、束ねることで発展させてきた魔術的ヴァルトシュタインのお膝元、伊渡間を使い潰す気で、この最後の聖杯戦争の勝利条件を満たしに行くだろうに。時間の問題のはずのそれすら果たす前にバーサーカーが追い込まれるとなれば、どれだけ無能なのかと思わずにはいられない
……そう。この日伊渡間は滅びるだろう。神秘の秘匿など、ヴァルトシュタインは考えていないから。主さえタイプ・アースとしてこの世界に降臨なされるならば、それが新たなる法だ、旧法など意味を為さなくなる。ならば主に姿を現していただく際に、旧法など考える意味があるか、と彼等は本気で言うだろう。確かにその通り。ヴァルトシュタインの計画が果たされた時、世界は再び神世になる。この世界に、神が帰還する。ならば、神秘の秘匿も何もなくなる
だから、ワタシとしては、彼に離れて欲しい。この伊渡間が終わる際に、居て欲しくない。別に、サーヴァント達を連れていっても構わない
何故ならば、今日起こる事は現代のヴァルプルギスの夜。今日は4月30日ではなく、12月18日ではあるけれども。
つまりは、止める方法など、数千のバラバラに住民を襲い吸血鬼化させるホムンクルスと吸血鬼化した住民を全滅させる無謀しかないのだから。そんな事を出来る方法なんて、既に居ないアーチャーが、微弱な魔力を持った一般人を犠牲にする覚悟を決めて、魔力を持たない全ての時を止め
だから、この