所有物には名前を書いて ―幸せをかき集めて―   作:絵琉

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絵琉こと黒兎です!
今回はこちらにて書かせていただきます。
楽しんでくださったら幸いです。


第一話

「……大きくなったね」

そう呟くなり、彼は私のお腹に顔を寄せる。そして愛しむように優しく撫でた。

「ふふっ。まぁ、妊娠してる、って分かってから、五か月も過ぎたからね?」

「ん…………。」

私はあの日のことを思い出した。急に何とも言えない吐き気がして、耐え切れなくなった私はその場に倒れてしまって。丁度いっくんが呼んでくれた、彼の義兄にあたるカラ松さんとトド松さんによって、病院へと運ばれた。意識が戻った後、精密検査をして……。そこで妊娠しているのが判明したんだ。

「あの時のいっくん……、かっこよかったよ。」

「お世辞はいらないから。」

「ホントだって。」

相当私のことを心配してくれたんだろう。医師に呼ばれて入ってきた時の彼の息は荒く、焦りからか汗が頬を伝っていて。それでも冷静に私に声をかけてくれた。

あの時の、恐怖から喜びに顔色を変える様は、何度思い出しても幸せな気持ちになる。

「心配されてるの、嬉しかった。」

「心臓に悪いことばっかりするからでしょ……。……もう次倒れたら、許さないから。」

「分かってるよ。」

「はぁ……」と呆れたようなため息を一つ。そして、彼は私のお腹を、円でも描くかのようにくるりと撫で上げた。

「……後、どれくらい経ったら産まれてくる予定なの。」

「え?うーんと、早生まれとか遅生まれとかもあったりするから、正確ではないんだけど。今のまま、順調なペースでいけば、後一か月くらいかな。普通の子が九か月と一週間ぐらいで産まれてくるらしいから。」

「ふーん……」

「何それ、自分で聞いたのに」

むぅ、と彼のことをちょっぴり睨んでみせると、「いや、えっと……」と、彼は撫でていないほうの手で自分の前髪をくしゃりと掻き上げた。

「…………早く産まれてきてほしい、っていうか……。あんたの子供だから、絶対美人だろうし。だから……。」

「いっくん?産まれてくる子は双子だよ。男の子と女の子。女の子だけ贔屓したら、反抗期が早く来ちゃう。」

「それは…、嫌だけど。」

「でしょ?それに、男の子もいっくんと同じで、イケメンになると思うけどなー。」

「……はぁ?」

今度は彼が眉間に皺を寄せる。

「俺をイケメンって言ったら、この世の男は皆イケメンだから……。……ま、俺に似なければいいんじゃない……?……っあ。」

ぴたり、と彼が一度固まって。それから顔を私のお腹から離した。そして、すいっと私のお腹を指さした。

「…………今、俺のこと蹴った。」

その顔は驚きに満ちていて。でも次第にその顔は、嬉しさに緩んでいっている。

「もう反抗期?大丈夫、お父さん?」

茶化すように一言。嗚呼もう、幸せだ。

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