炎上都市 冬木 1
・・・・・・・・・。
「・・・んっ」
眩い光を抜けると、そこは燃え盛る街だった。あたり一面は炎で包まれ、建物も崩壊している者が多い。
「ここはどこだろうか。今までとはどこか違うような感じがするな」
あたりの気配を探ってみるが、何も感じない。街は完全にゴーストタウンと化していた。
「さて、どうしたものか。今回俺はどんな主旨でここに来た?何をすればいい?・・・」
「考えてもわからんな」
そこでふと自分の左手の甲を見ると、そこには見たことのない赤い模様が刻まれていた。
「ん?これはまさか・・・、令呪というやつか?ということは、これはまさか聖杯戦争?」
これは驚いた。まさか先ほど話していた聖杯戦争に呼ばれることになるとはな。令呪とはたしか、自分が使役するサーヴァントに絶対の命令を3回だけ出せる、というものだったはずだ。いや、まて。何かおかしくないか。
(サーヴァントだと?サーヴァントとは俺自信のことじゃないのか?何故そのサーヴァントである俺がマスターと呼ばれる者になっている?)
サーヴァントがサーヴァントを使役するということが可能なのだろうか。あまり魔術には詳しくないからそこまではわからないが、これが何かイレギュラーな事態だということは理解できた。そもそも聖杯戦争ならば呼ばれた瞬間から、周りがこんなことになっているはずはないだろう。
「わかったからと言ってどうすることもできないのだが。ふむ、とりあえずはあたりの散策をしてみるか。何かあるやもしれんしな」
そうと決まれば行動開始だと思い移動しようとした瞬間、俺の左腕にある令呪が輝きだした。
「これは、まさかサーヴァントが召喚されるのか?まだ何もしていないぞ?」
元来サーヴァントの召喚には専用の魔方陣などを描かなければならないはずだ。現に俺はまだ何もしていない。だがこちらの世界に召喚されそうになっている今、最早どうしようもない。というか、止め方もよくわからん。まぁ、後は召喚されるサーヴァントが敵対してこないことを祈るだけだな。こうして英霊として召喚される、ということはそれだけの偉業を成し遂げたものということだ。あまり戦いたくはない。いくら多くの戦いを経験してきたとはいえ、こんな無名の俺とでは正直、格が違う。
「さて鬼が出るか蛇が出るか」
とうとう召喚の儀式が完了する。そこから現れたのは1人の女性だった。黒い戦闘装束で全身を包み、赤い目、長髪の綺麗な女性だ。手には彼女の目と同じ、深紅の槍を携えていた。正直あの槍は当たったらやばいな、と俺の第六感がつげている。
「影の国よりまかり越した。スカサハだ。マスター、と呼べば良いのかな。お主を?」
「ああ。一応そういうことになるかな。俺が君のマスターの黒・・・、黒式だ」
「そうか。・・・ん?まて、お主何者だ?ただの人間ではないな。だが完全なサーヴァントとも違う」
「はぁ、サーヴァント相手にはさすがにばれるか。その通りだ。俺は人間でも完全なサーヴァントでもない。まぁ色々わけありなのでね。とりあえずはこの現状をどうにかしよう。俺のことは移動しながらでも話すさ」
「ふむ、了解した。私は誰がマスターでも構わない」
「オーケー。それじゃあ移動しようか」
◆
それから俺は移動しながら自分のことを話した。移動しながらといっても、一応はサーヴァント同士だ。かなり速い。
そしてさっきは突然だったから気づかなかったが、スカサハといえばたしかケルト神話に出てくる『影の国』の女王として有名だ。あらゆる武芸に秀でていて、なかでも槍に関しては有名すぎるな。ゲイ・ボルク。一撃必中の槍で、相手の心臓を穿つと言われる槍だ。とすると手に持っている槍がそのゲイ・ボルクだろう。どうやら俺の直感は間違っていなかったようだ。後は、かの有名なクー・フーリンの師匠としても有名だな。クー・フーリンに槍を授けたのもスカサハだとか。
どうやら相当の英霊(彼女曰くほぼ神霊のようなものらしい)が来てしまったようだ。俺がマスターで大丈夫だろうか。
「おい、何を考え事をしている?あれを見ろ。敵だ」
スカサハが指したさきにはけっこうな数の骸骨が蠢いていた。
「ん、すまない。あれは、俗に言う骸骨だな。・・・とりあえず倒すか」
「わかった。ところでお主も戦うのか?」
「もちろんだ。あの程度なら俺1人でも問題ない」
「ふむ、ならばお手並み拝見といこうか。今回私は見ているとしよう」
「了解」
根っからの師匠の血が疼いたのか、どうやら俺の実力を見たいらしい。なら彼女のマスターとして、恥ずかしくない実力をみせましょうかね。
さぁ戦闘開始だ。集中力を高める。意識が、五感が研ぎ澄まされていく。俺は腰に下げていた刀を一本腰を落として構える。足に、足先に力を込め、大地を掴む。
「ふっ」
直後俺は瞬時に骸骨に近づき刀を抜刀する。距離、零距離。一撃一殺。一刀のもとに骸骨を粉砕する。骸骨の強度はそれほど頑丈ではない。逆袈裟斬りの形振り抜いた刀を返して、今度は敵の首をはねる。
「はっ!」
次の一刀でまた敵を屠る。俺は高速で動き回る。先ほどから使っている移動術、名を『縮地』。『瞬動術』に『縮地法』を合わせて高めたもの。極めれば、相手に技の入りすら知覚させないほどのものになる。
俺は敵が立っている限り容赦はしないつもりだ。油断はそのまま死を招く。どんな相手でも決して油断せずに対処する。抜刀した刀を止めることなく敵を殲滅していき、数分後には骸骨の群れは文字どおり死体の山とかしていた。
「戦闘終了」
抜いていた刀を鞘に戻し意識を通常へと戻す。
「今回も勝ててよかった」
俺は自身の戦闘を見ていたであろうスカサハの元へと向かう。
戦闘を終止見ていたスカサハは、最初の時点でマスターである彼の実力が並外れていることに気づいた。まず彼が最初に見せた縮地。スカサハ自身ですら、意識を集中していなければ見逃していたであろう速度だった。その後の戦闘も一切の躊躇なく敵を斬り伏せていく。
(これは驚いたな。まだかこれほどとは。これはもしかしたら、私を・・・)
彼の実力の片鱗をみたスカサハはどうしようもなく思ってしまった。あいつと手合わせをしたい。望むべくは殺し合いを。
(殺し合いは無理だろうな。だが是非手合わせをしたい。いや、無理やりにでもやってもらおう)
そう心に決めたスカサハは機嫌をよくして、マスターを迎えに行った。
◆
「どうだった、スカサハ?俺の実力は満足いくものだったかな?」
「ああ、想像以上だ。今度是非手合わせ願いたい、いや一勝負やろう」
「んー、そうだな。無事この現状を乗り切れたらな」
ちょっと予想以上のスカサハの食い付きぶりに驚いてしまった。まぁ何はともあれ、スカサハにとりあえず認めてもらえたのならよかった。
(しかし、手合わせか・・・)
はたしてケルトの大将と言っても過言ではない彼女に勝てるだろうか?まずはあの槍をどうするかを考えるのが先だな。
と、まぁ今はこんなことを考えてもしょうがないな。他に誰かいないか探しに行くとしよう。
「よし、じゃあまた移動するぞ」
「わかった」
その後俺達が遭遇したのは、黒いサーヴァントだった。いや、完全なサーヴァントというわけではないのだが、全身が影に覆われていた。
「こいつらは・・・?」
「ふむ、こやつらは所謂サーヴァント擬きだな。恐らく今回の本来の聖杯戦争に参加していたサーヴァントだろう。もしくは新しく召喚されたか。どっちにしろ聖杯の影響を受けて、もはや本来の英霊とはいえない存在だ」
「なるほどな。それにしてもスカサハはもうこの現状を理解しているのか?」
「だいたいな」
「さすがだな。俺なんて全然わかんないよ。魔術とかそういう関係のことは、からっきしだからな」
「ふっ、なら今度私が教えてやろうか?」
「いいのか?そいつは助かるな」
スカサハといえばたしかルーン魔術にも秀でた存在だったはずだ。そんな彼女に教えてもらえる機会は滅多にないだろう。ならだめもとでも教えてもらうとしよう。
「おっと、無駄話が過ぎたな。どれ、先ほどは任せてしまったからな。今回は私がいこう」
「ん、そうか?なら任せた」
今度は逆に俺がスカサハのお手並み拝見といこうか。まぁ、拝見する必要もないと思うが。
スカサハの戦闘はまさしく圧巻だった。恐らく俺と同じように、亜空間にしまってあるであろう槍を使って変幻自在に攻撃を繰り広げていた。さすがはスカサハ。こりゃ強いですわ。
(はー、手合わせの約束なんてするんじゃなかったかもな)
そんなことを考えていると戦闘を終えたスカサハが帰ってきた。
「お疲れ様。見事な戦いだったよ」
「あれぐらい造作もないさ。さ、次にいこう」
「はいよ」
そんなこんなでまた探索に戻って、しばらく行くと、ようやく生存者らしき人を発見した。
「ん、ようやく見つけたな」
「そうだな。しかし、どうやら戦闘をしているようだぞ」
「ふむ。とりあえず様子見をしよう」
どうやら俺達は別のサーヴァントとマスターを発見したようだ。さてさて、どうなるのやら。
こうして俺の、いや俺達の長い長い旅が始まった。
読了ありがとうございました。
自分はスカサハ師匠好きなのですが、持っていません。いつか出て欲しい・・・