天人お嬢様に恋をした   作:橘 聖

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気まぐれ投稿

甘々な展開、早く書きたいなぁ…


4話目 膝枕

同じデザインの新しい巫女服を着た霊夢が奥の部屋から出てくる

しかし、先ほどのこともあって話しかけづらい

そのまま、霊夢は俺の横に座り、自分でお茶を湯呑みに注いで無言でお茶を飲む

 

…居づらい

繁盛祈願は終わったから早く帰りたい

というかなぜ俺はあの時に帰らずに本殿に入った

過去の俺を責めたい、すっごく責めたい

 

「…ねぇ」

 

「ひゃいっ! な、なんでしょう」

 

霊夢から話しかけられ、思わず声が裏返ってしまう

だが、霊夢は気に留めていないようで言葉を続ける

 

「…見た?」

 

見たとはいったい何をなのだろう

すらっとした体? 白く透き通っているような肌? それとも着痩せしていた胸?

候補はいくつも出てくるが、霊夢は顔を髪で隠しており、表情を確認することはできない

 

「な、何をでしょうか」

 

自然と敬語になっているが、それを気にしている余裕はない

問いに問いで返すのはあまりよろしくないが、それしか聞くことができない

 

「な、何って…わ、私の…」

 

無言で、次の言葉を待つ

 

「私の下着を見たっ!?」

 

顔を上げ、こちらを睨むように見てくる霊夢

その顔は真っ赤になっており、羞恥を耐えているのだろうと想像できた

そして、霊夢からの問いの答えだが

 

「見てません」

 

「…本当に?」

 

ええ、本当ですとも

純白の下着など見ていません」

 

「…見てるんじゃない」

 

「…あ、口に出てた?」

 

「思いっきりね! 歯ぁ食いしばりなさい!」

 

霊夢がすくっと立ち、こちらを向き、手を握って腰を下げ、握った手を引く

俺の死亡理由が幼なじみの下着を見たからとかって末代までの恥だな、俺が末代だろうけど

ただ、これだけは言わせてほしい

 

「眼福でした」

 

「しぃねぇぇぇぇぇ!!」

 

瞬間、俺の顔に痛みと衝撃が伝わる

その痛みに耐えることはできず、俺は意識を手放した

 

 

* * *

 

 

意識が戻ると、後頭部に何か柔らかい感触が伝わってくる

その正体に疑問を持ちつつも、ゆっくりと目を開ける

そこには、橙色の光を受けるお嬢様の顔があった

 

「あ、起きた?」

 

やさしさを含んだその声に、一瞬声を返すことはできなかった

 

「…あ、はい」

 

ふと、お嬢様が見ていた方向を見る

そこには、オレンジ色の光を放ちながらゆっくりと顔を山に沈めていく太陽の姿があった

 

「きれいよね」

 

「そう、ですね」

 

「…ねぇ、あなたの名前を教えてくれない?」

 

なぜ俺の名前を聞かれたのかわからなかったが、俺の頭が理解する前に言葉を発していた

 

「…来宮蒼夜です」

 

「蒼夜、いい名前ね」

 

「ありがとうございます。俺の名前も教えたことですし、お嬢様の名前も教えてくれませんか?」

 

お嬢様、という単語が出てきた途端お嬢様は笑い始めた

 

「あははっ! お、お嬢様って、いやまあ合ってるけどお嬢様って…あはははっ」

 

「や、やめてくださいよ。名前も知らないんですしそう呼ぶしかなかったんですよ」

 

「はー…あーお腹痛い。私の名前は比那名居天子、天子って呼んでくれていいわ」

 

「比那名居…? 比那名居ってあの?」

 

「あら、知ってるの? その比那名居よ」

 

比那名居の一族は、名居の一族に仕える神官の一族であった。

名居の一族がそれまでの功績を認められ天人になった際、比那名居の一族も天界に住む事を許され、天人となった

というのを昔に聞いたような記憶がある

それほど天人としての資格があったのだろう

その比那名居一族の総領娘…跡取り娘ということならばお嬢様だろう

 

「天子だなんて、比那名居様と…」

 

「それはやめて」

 

明るかった声が一気に重い声になる

 

「私は比那名居一族の跡継ぎ娘として育てられてきた。だけど、天界での生活は全くつまらなかった。食べ物はおいしかったけど、何の刺激もなかった。比那名居という名字だけでもてはやされた。だけどそれは天子という存在では見ていないことは明らかだった。あくまでも比那名居というひとまとまりでしか見られていなかった。だから私は比那名居という名前では呼ばれたくない」

 

心の中をさらけだしたお嬢様の目には涙が浮かんでいた

 

「…蒼夜には関係ない話だったわね」

 

「…いえ、苦しいことは誰かに話したほうが楽になりますし、俺でよければ聞きますよ」

 

「かっこいいこと言うのはいいんだけど、その恰好だと台無しよ」

 

そう言われて自分の位置を確かめる

お嬢様が前かがみになると俺の目の前になる位置

そして俺の後頭部に当たる柔らかいもの

 

 

 

気づく

 

 

 

「どぉううぇぇぇい!!?」

 

自分の姿、どこにいたか理解する

足をばたつかせながら、転げ落ちながら急いで離れる

 

「なんでそんな慌てて離れるのよ」

 

残念そうに言うお嬢様だがこっちはそんな場合ではない

 

「な、なんで膝枕(・・)なんてしてるんですか」

 

心臓がバックバックいってるし…

そんな問いに、お嬢様はごく普通のかのように答える

 

「そりゃしてみたかったからね」

 

「…はい?」

 

膝枕をするだけなら従者さんがいたではないか

しかもほぼ見ず知らずの俺に膝枕をするのはいささか不用心ではないのか

 

「昔にね、とある本を読んだの。男女の二人の恋愛ものだったんだけど、それで膝枕とかしていたのよ。それがずっと気になっててね。男に膝枕をしてあげたら喜ぶとか書いてあったし」

 

「だからってほぼ見ず知らずの俺にするっていうのは…」

 

「いいじゃない。で、どうだったの?」

 

「どうだった、とは?」

 

「膝枕よ。膝枕をされた感想よ」

 

「知らぬ間にされていた手前、あまり…」

 

「何よ、嫌だった?」

 

「い、いえ、別に嫌というわけじゃ…」

 

お嬢様から睨まれる

 

「…早く感想いいなさいよ」

 

言おうか悩む

言わなければ赤面する必要はなくなる

しかし睨まれているので言わないと何をされるかわかったものじゃない

最悪、社会的に殺されるかもしれない

相手はあの比那名居家のお嬢様だ、造作もないことだろう

…言うしかないのか

 

「…言います、言いますからその何か緋色に光る剣は収めてください」

 

考え終わり、顔を上げたら目の前に剣が突き付けられているのだ

もうこれは脅しだよね、泣いていいよね

 

「…じゃあ言いなさいよ」

 

剣を収め、改めてこちらを向くお嬢様

俺はさっきまでのことを思い出す

 

「えーっとですね、柔らかかったですし、お嬢様からのいい匂いがしましたし、何より恋人みたいでドキドキしました…かね」

 

前二つで顔を赤らめていくお嬢様だったが、最後の『恋人』という言葉でボンッと言いそうな感じで、赤面のまま止まってしまった

 

「…あのー、大丈夫ですかね?」

 

そう声をかけるが反応がない

声では動かないと判断し、触るために一歩近づく

その足が地についた瞬間、お嬢様は無言のまま立ち、空に飛んで行ってしまった

 

「…これって俺が悪いのかなぁ」

 

お嬢様の飛んで行った方向を見ながら呟いたが、当然答える者は誰もいない




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