東方双赤星 ~A story of ECLIPSE~ 作:ドリル隊長
月明かりの無い、真っ暗な新月の空に、赤く光る星がある。
それは少しづつ明るさを増しながら、こっちに近付いてくるようだった。
俺は、この夜を百年も待ち続けてきた。
彼女が帰って来るこの日を、魔理沙とタスクは迎えることができなかった。
でも、だからこそ、寿命という運命に逆らわず生涯を遂げた仲間達のためにも。
俺の全身を覆っていた鋼の装甲を全て外し、真っ赤に光る「骨」となった身体を空気に触れさせた。
八月の高温多湿な空気を感じることも、もうできない。
この状態で里を歩き回ったら、きっと使徒かフェストゥムか何かと勘違いされるはずだ。
それに、俺はこの姿の事は好きではない。
俺も、命を持った状態ではこの日を迎えられなかった。
人間の仲間の中では、俺が最初に命ではなくなってしまったから。
まさか「死ぬことも許されない」償いに感謝することになるとは思ってもみなかった事だ。
みんなを呼んで一緒に迎えに行こうかとも思ったが、それはやめた。
紫さんは俺と同じくらい会いたがっていたが、連れてくるのはやめた。
拾六代目巫女はいろいろと話して勉強したい、と言っていたが、連れてくるのはやめた。
この日だけは、俺一人で十分だ。
幻想郷に下りたら、きっと大忙しだろう。
幻想郷を、そして地球を救った偉人の姿を一目見ようと、幻想郷中の人妖が集まるだろう。
忙しすぎて、しばらく俺とゆっくり話す時間を取れないはずだ。
だから・・・。
胸骨を空に向け、奥に光を放ちながら浮いているコアを曝け出す。
爆音とともに、俺の意識はコアとともに空高くまで飛ぶ。
あっという間に博麗大結界のボーダーライン付近まで到着したが、それが俺を咎めることは無かった。
オレンジ色の多数の四角いエフェクトを抜けたそこは、宇宙空間だった。
とは言っても、フェムトファイバーで隔離された第拾七月面経路には高密度のエーテルが敷き詰められており、猛スピードで駆け抜けるのには難があった。
コアを中心に大量の正六角形の構造体が発生し、抵抗で急激に減速しながらそれらは砕け散っていった。
続いて肋骨、四肢、頭部、そして大きな単眼が形成され、徐々に速度が落ちてゆく。
それでも常に目線の先にある赤い光との距離は縮まってゆく。
それが人の姿をしているのがはっきりと視認できたのは、間もなかった。
-この姿を、臆病だった彼を受け入れてくれた存在に、一言。-
-地上から、二つの赤い光が一つになるのがはっきり見えたのと同刻、千條遥斗は一言、こう言った。-
「お帰り、霊夢。」
トウ ホウ ソウ セキ セイ
東 方 双 赤 星
-A story of ECLIPSE-