侵略!パンツァー娘   作:慶斗

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※この話は、大洗女子学園編から黒森峰女学園編までの各三話、および知波単学園編から大学選抜チーム編各一話までを先にお読みいただいているともっとお楽しみいただけます。


※形式の都合上、キャラの名前が一部略称になっています。


ダージリン→ダー
オレンジペコ→ペコ
アッサム→アッサ
ルクリリ→ルク
ローズヒップ→ローズ
ニルギリ→ニル

アンチョビ→チョビ
ペパロニ→ペパ
カルパッチョ→カル

カチューシャ→カチュ
クラーラ→クラ
アリーナ→アリー

シンディー→シン


第3話・とっかえなイカ?

由比ヶ浜の平荒野型戦車演習場にて。

何台もの戦車が所狭しと走り回り、各所で戦闘を繰り広げている。

チャーチル、チハ、ティーガーⅡ、シャーマン、サハリアノ、IS-2もいる。

多種多様な戦車が入り混じる戦場に、あんこうチームのⅣ号もその中にいた。

 

優花里「三時方向よりティーガーⅡ!六時方向からチャーチルを目視しました!九時方向へ逃げましょう!」

みほ 「うん、わかった!」

華  「こちら、二両にマークされました。援護、お願いできますでしょうか?」

麻子 「砲撃で追撃を抑えよう。・・・・沙織、まだか?」

沙織 「うんしょっ・・・・もう、ちょっと・・・・!」

 

あんこうチームは優花里がキューポラから顔を覗き、

みほが操縦桿を握り、

華が通信を担い、

麻子が照準器を覗き、

沙織が顔を真っ赤にして砲弾を持ち上げている。

 

みほ (どうして、こんなことになったんだっけ・・・・?)

 

時は、朝にさかのぼる。

それは、イカ娘の一言から始まった。

 

~~回想~~

 

イカ娘「装填手やってみたいでゲソ」

 

みほたち戦車道履修者たちが合同演習のためれもんに集まったその日。

イカ娘が突然突飛なことを言い出した。

 

栄子 「いきなり何だよ」

イカ娘「これまで戦車に乗り続けてきて分かったことがあったのでゲソ」

みほ 「それは?」

イカ娘「装填手は装填していればいいのに、車長は忙しすぎるのでゲソ!」

渚  「え?」

栄子 「何バカなこと言い出してんだ」

イカ娘「バカなことじゃないでゲソ!これまでの試合でも、負けたら車長の私の責任みたいになってたじゃなイカ!」

栄子 「『みたい』じゃなくてそうだろうに。車長はチームを勝利に導くために指示を出すのが役割なんだ。それが出来ずに負けたらそりゃ責められるのは当然だろ」

イカ娘「でも装填手は負けても責められたりはしないでゲソ!砲弾を入れるだけでいいし、戦闘も責任は発生しないし、一番楽なポジションじゃなイカ!」

渚  「ええー・・・・」

栄子 「何突然装填手をディスってんだよ。第一、渚ちゃんに装填手やれって言って、お前が車長の座に居座ったんだろ」

イカ娘「じゃあ、今日から私が装填手するから、渚が車長でゲソ!」

渚  「えええ!?」

栄子 「アホ!お前のワガママに付き合う義理は無いだろ!ていうか、今日は私たちのためにみんな集まってくれたんだぞ!みんなの気持ちを無下にするつもりか」

イカ娘「やりたいでゲソー!装填手やりたいでゲソー!」

みほ 「まあまあ・・・・」

 

じたばたしてワガママを貫こうとするイカ娘とそれを叱りつける栄子。

 

ダー 「では、こう致しましょう」

みほ 「えっ?」

 

その後。

一同は演習場へやって来た。

 

まほ 「よし、ではルールを再確認しよう。今回はダージリンの提案を採用し、『全員が役割を入れ替えた状態』で戦う特別ルールだ。そして、各校から出せる戦車は一両のみ」

チョビ「そこからくじ引きでチーム分け、二チームに分かれた殲滅戦だったな?」

ケイ 「ウーン、面白いルールね!あと、その一両には誰が乗ってもいいのよね?」

カチュ「そう言ってたわね。本来の役割でないのならば、普段同乗していない子とでも組んでいい、と」

みほ 「基本原則として、他人の役割を担ったり、また入れ替わったりすることは禁止。でも、アドバイスは許可、だよね」

西  「経験の浅い役割を担うことで、初心を思い出す訓練ですね!全身全霊で挑ませていただきます!」

 

急で唐突な申し出にも、意外なほど乗り気な一同だった。

 

まほ 「では今から三十分、搭乗するメンバーと役割分担の相談の時間とする。決定次第ここに再集合としよう。では__開始!」

 

その後、チーム分けが行われ__

 

ボコ小隊

あんこうチーム(Ⅳ号)

プラウダチーム(IS-2)

知波単学園チーム(チハ新砲塔)

サンダースチーム(シャーマン)

 

エビフライ小隊

海の家れもんチーム(チャーチル)

アンツィオチーム(サハリアノ)

黒森峰チーム(ティーガーⅡ)

聖グロリアーナチーム(チャーチル)

 

というチーム分けになったのであった。

 

~~回想終了~~

 

みほ 「そうだ、それでこうなった訳だけど__」

 

無線からは、みほと同じチームを組んだ仲間の無線が聞こえてくる。

 

カチュ『ちょっとアリーナ!また外したわね!次カチューシャの装填した砲弾を無駄にしたら粛清よ!』

アリー『ひええー!勘弁してくだしゃー!』

ノンナ『ニーナさん、そちらを右へ。相手を追いましょう』

クラ 〈こちら今だ損傷無し。追撃を続けます〉

ニーナ『あんのクラーラさん、無線は日本語で話したほうがいいと思いますべ』

 

若干の混乱はありつつも、プラウダチームは楽しそうにしている。

 

華  「カチューシャさんがたも、楽しそうにしていますね」

麻子 「そうだな。こういう新しい刺激も勉強になる」

優花里「あっ、そこを左へ!」

 

ドンッ

 

みほ 「あうっ」

 

方向を指示するため優花里がみほの肩を蹴るが、焦りのせいで強く蹴りすぎてしまう。

 

優花里「ああああああ西住殿、申し訳ありませえええええん!お怪我は!お怪我は無かったですか!?」

みほ 「ゆ、優花里さん、落ち着いて!大丈夫だから!これでも優しいくらいだったから!」

優花里「くううう・・・・!この役割、私には重すぎるであります・・・・!」

華  「くじ引きで決めたんですから、最後まで頑張りましょう」

沙織 「よい、しょっと!ふう、でもこうしてると、他の役割の苦労がよくわかるね。最初はどうなるかと思ったけど、これもいい経験かも」

 

ドオン!

 

即座にⅣ号が火を吹く。

 

麻子 「すまん、外した。次装填頼む」

沙織 「んもー!ちゃんと当ててってばー!」

 

その頃、Ⅳ号を追うティーガーⅡ内部。

 

まほ 「Ⅳ号の後ろを取った。このまましばらくはこの位置を確保する。エリカ、狙えるか?」

エリカ「も、もちろんです!」

小梅 「エリカさん、当たるまで何発でも装填しますからね」

エリカ「あまり私を見くびらないでくれる!?行進間射撃っていったって、この距離で外すわけが」

 

ドオン!

 

まほ 「外れたな」

エリカ「今のは位置調整です!次こそは!」

 

ドオン!

 

小梅 「次、装填完了です!」

エリカ「お遊びは終わりよ!」

 

ドオン!

 

黒森生「あの、増援が駆けつけてきそうなので、出来るだけ早めに・・・・」

エリカ「わかってるってば!」

 

ドオン!

 

エリカ「・・・・」

まほ 「・・・・」

小梅 「・・・・」

黒森生「Ⅳ号、有効射程から離脱しました・・・・」

まほ 「・・・・エリカ、帰ったら行進間射撃の練習をしよう。私も付き合うから」

エリカ「ううう・・・・」

 

エリカはがっくりとうなだれた。

 

優花里「ティーガーⅡ、追撃を断念したもようです!さすが西住殿、戦車の操縦も天下一品です!」

みほ 「えっ、ううんそんなこと__」

 

言い淀むみほ。

 

華  「みほさん?」

みほ 「・・・・実はね、あのティーガーⅡ、たぶんエリカさんが砲手してたんだと思う」

沙織 「え?」

みほ 「お姉ちゃんは小さいころから操縦も出来たからきっと操縦手をしてるだろうし、赤星さんはああ見えてけっこう力持ちだから、装填手を担当してると思う。そして、このルールだと車長はエリカさんは出来ないから__」

麻子 「逸見さんは砲手しかない、と踏んだわけか。いい考察だ」

みほ 「それで、黒森峰にいた頃、みんなで砲撃訓練をしたことがあったの、その時、エリカさんの砲撃はなぜかいつも右寄りになちゃってたから・・・・」

沙織 「そっか!それでそのクセを読んでかわし続けてたんだ!」

みほ 「ちょっとずるかったかな、向こうの事情を知った上の対策だったから・・・・」

華  「いいえ。きっとあちらもそうは思っていませんよ」

みほ 「ありがとう、華さん」

優花里「でも、もしかしたら通信手だったかもしれませんよ?」

みほ 「えっと、それは・・・・」

 

再び言いよどむみほ。

 

優花里「あー・・・・確かに、ですね」

麻子 「何でとは言わないが、きっと無理だろうな」

みほ 「あっ、みんな、今のはエリカさんには言わないでね!?絶対だよ!?」

華  「うふふ、どういたしましょう」

沙織 「友達に隠し事は良くないよね~?」

みほ 「もうっ、みんな!」

 

Ⅳ号の中にみんなの笑い声が上がる。

 

ケイ 「みんな楽しんでるわねー。たまにはこういうのも刺激があっていいわよね」

ナオミ「アリサ、左に急旋回」

アリサ「オッケー!」

 

ドオン!

 

ケイたちの近くのシャーマンに着弾の砂煙が立つ。

 

ケイ 「ワオ!今のは危なかったかしら?」

ナオミ「大分近かったですね。今のは__四時方向のチャーチルからでした」

アリサ「チャーチル?どっちのよ?」

ナオミ「断言はできないが、今のはスクイーディたちのチャーチルだろう」

アリサ「まったくもう!何であっちのチームにチャーチルが二両いるのよ!ややこしいったらありゃしない!」

ナオミ「くじ引きで決まったのだから仕方ないだろう」

ケイ 「砲手は誰がやってるのかしら?正直シンディーさんより狙いが正確じゃない?」

アリサ「あのメンバーで砲撃が得意そうなのは__」

 

かくして、イカ娘たちのチャーチル内部。

 

栄子 「あーくそっ、外した!」

渚  「さすがナオミさん、狙撃手だから撃たれそうなタイミングがわかるんでしょうか」

シン 「どうする?このまま追いかけるの?」

渚  「どうしましょう・・・・?サンダースほどの方たちが、このまま追いかけられっぱなしなままだとはどうにも思えないんですが・・・・」

イカ娘「考えすぎでゲソ!攻め手を緩めず反撃の隙を与えなければいいのでゲソ!」

渚  「いえ・・・・何だか意図的な動きを感じます。深追いはよしましょう。シンディーさん、今来た道を戻ってアンチョビさんたちと合流します」

シン 「オッケー、揺れるわよ」

 

Uターンするチャーチル。

 

イカ娘「渚は慎重すぎるのでゲソ。むざむざチャンスを逃すこともなかったでゲソ」

栄子 「今の車長は渚ちゃんだろ。車長の指示と決定には従うもんだぞ。__それより、装填の手が止まってるぞ」

イカ娘「わかってる、でゲソ!」

 

イカ娘が装填を行った。

 

ケイ 「あれー、追ってこなかったわね」

アリサ「ええー・・・・。こんだけ無防備な背中晒してたのに・・・・。追うでしょ普通は」

ナオミ「こちらの動きに作為を感じたようだな。渚も、いい勘をしている」

 

ケイが運転をしながら無線を入れる。

 

ケイ 「ハーイ、こちらケイ。ごめんねー、フィッシュアウトしちゃったわ」

西  『承知いたしました。ではこちらは西住殿と合流致します!』

 

シャーマンの近くの茂みに潜んでいたチハ(新)が姿を現す。

 

福田 「どうやら伏兵に勘づかれたようであります!」

玉田 「ううむ、敵ながらあっぱれな観察眼だ!」

細見 「我等もうかうかはしていられんな!次こそ戦果を上げようぞ!」

寺本 「では左へ転身!合流的前進であります!」

細見 「了解だ!」

 

時同じく、イカ娘のチャーチルが戻った先には、サハリアノとティーガーⅡがすでに合流をしていた。

 

渚  「皆さん、損傷はありませんか?」

黒森生「依然問題はありません」

ペパ 「なかなか勝負が決まらないっす。あっちの砲撃が当たらないのは助かるんすけど、こっちの砲撃もなかなか当たんないっすからねー」

カル 「あと数回砲撃を交わせば感覚も掴めると思うんですが」

 

ふと、サハリアノがいきなりチャーチルに近づき、こつんと車体を当てる。

 

早苗 「イカちゃ~ん♪見てた?私の操縦テクニック!」

イカ娘「車内にいたから見えてないでゲソ」

早苗 「ああ~ん、残念!」

チョビ「それで__どうだった、ダージリン?」

 

アンチョビが無線機ごしにダージリンへ声をかける。

 

ダー 『そうですわね。試合開始直後に比べ、皆さんそれぞれに慣れが見え始めておりますわ』

ペコ 『特に動きをいち早くものにしていたのは、やはり大洗の皆さんでした』

アッサ『役割が入れ替わっているとはいえ、搭乗している方々はどれも超一流の方々です。互いにアドバイスを交わしあい、高めあっているのでしょう』

チョビ「一口に言っても楽なことじゃない。あいつらの技量の高さはほんと並じゃないな」

まほ 『__それで、お茶の時間が終わったならそろそろ動いてくれないだろうか、ダージリン?』

ダー 『あら、心外ですわ。私は動かなかったわけではなく、こうして身を潜め相手チームの皆様の戦車の馴染み具合を計っていたのですわ』

チョビ「紅茶を飲みながら、か?」

ダー 『・・・・』

 

返事のない無線から、コクッと小さく紅茶を飲み干す音が聞こえた。

 

まほ 『動きから読むに、あちらのチームは全車集結していると見ていいだろう。小回りの利くチハとシャーマンを前に押し出しながらⅣ号が一足置いてカバー、そして後ろからがIS-2狙撃してくるだろう』

チョビ「定石だな。しかし__向こうには西住みほのあんこうチームがいる。どんなトンデモな案で攻めてくるか分かったもんじゃないぞ?」

エリカ『望むところじゃない。あの子たちがどんな手で来ようとも、今度こそ王者の貫禄を持って買って見せようじゃないの!』

まほ 『その意気だ』

渚  『ですが、相手はそれすら読んで二段、三段と構えているかもしれません。こちらもそういった事態に対応できるよう、策を何重にも構えてみませんか?』

ペコ 『では、まず四両編成で向かってこられた場合__』

 

と、車長や主軸となるメンバーで話し合っている最中、

 

イカ娘「ふー、やっと一息付けるでゲソ」

 

イカ娘はチャーチルの中で伸びていた。

 

栄子 「なんだ、もうバテたのか?まだ試合が始まって三十分も経ってないぞ」

イカ娘「その三十分で何発撃ったと思ってるんでゲソ。もうちょっとペースを抑えたっていいじゃなイカ!」

栄子 「アホ。これでもいつもより断然砲撃回数は少ないんだぞ?」

イカ娘「え、そうなのでゲソか?」

栄子 「お前の時は相手が見えるたびすぐ『撃つでゲソー!』だからな。シンディーも景気よく撃ってくれるもんだから、消費速度はハンパないぞ」

イカ娘「気が付かなかったでゲソ」

栄子 「まあ、これでお前も装填手の苦労が分かっただろ。次からはもうちょっと渚ちゃんにも気を遣うんだな」

イカ娘「?」

 

栄子の言葉にキョトンとするイカ娘。

 

栄子 「・・・・おい、お前まさか、今後ずっと装填手やってくつもりじゃないだろうな?」

イカ娘「当然じゃなイカ。だから役割交換したのでゲソ!」

栄子 「お前は・・・・!」

 

栄子が何か言おうとした瞬間。

 

イカ娘「ちょっと待つでゲソ」

栄子 「待つか!」

イカ娘「何か聞こえなイカ?」

栄子 「はあ?」

 

イカ娘はチャーチルから降り、高台から音の方を眺めた。

__途端、イカ娘の顔色が変わる。

 

イカ娘「んなっ!?」

栄子 「おい、どうした!?」

イカ娘「来てるでゲソ・・・・」

栄子 「は?」

イカ娘「大洗の西住さんたちが来たでゲソ!」

 

目線の先、二キロほど先の場所から、Ⅳ号たちが土ぼこりを立てながら迫ってきている。

慌てて駆け下り、まほたちに報告をする。

 

まほ 「そうか。__これはまずいな」

イカ娘「どういうことでゲソ!?向こうは一時撤退したんじゃなイカ!?」

ダー 「恐らく、一時撤退と見せかけ背中を見せ、こちらも合わせて今後を話し合うために集合すると読んでいた」

チョビ「そして、引いたと見せかけ気付かれないように再び反転、こちらを追いかけてきた・・・・」

まほ 「そして一網打尽、か。いい作戦だ」

渚  「言ってる場合じゃありませんよ!早くこの場を離れないと!」

まほ 「考えなしに散会しては各個撃破されて終わるだけだ。作戦には作戦をぶつけなければ勝ち目はない」

イカ娘「じゃあ、どうするのでゲソ!」

まほ 「まずは各自戦車に乗り込んでくれ。無線で作戦を伝える。迅速な対応を頼む」

渚  「りょ、了解しました!」

 

各自が大急ぎで各々のポジションに戻った。

その様子を、上空からドローンが空撮している。

場所は変わり、海の家れもん。

演習に出ていなかったメンバーが、固唾をのみながら設置されたテレビで試合の様子を見守っている。

 

千鶴 「あらあら、少し気が付くのが遅れてしまったようね」

ルク 「あああ、ダージリン様ったら油断するから!背後を取られるなんてあっちゃいけないのに!」

妙子 「え?」

あけび「え?」

ルク 「・・・・何だよ、何か言いたいことでもあるのか?」

典子 「いや、別に?」

忍  「ええ、ありませんよね?」

ルク 「目が必要以上にモノ語ってるんだよ!このこのこの!」

 

じゃれあうようにアヒルさんチームに跳びかかるルクリリ。

 

ローズ「ルクリリさま、まるでネコですわね」

ニル 「うふふ」

 

楽しそうに笑顔を浮かべるニルギリを、不思議そうに見つめるローズヒップ。

 

ニル 「・・・・あの、ローズヒップさん?どうかなさいましたか?」

ローズ「ニルギリさま、なにかありまして?」

ニル 「えっ?」

ローズ「いつもなら、『私もあそこにいたかった、でも私なんかが一緒に行ったって・・・・』とか、よくため息ついてらしたのに」

ニル 「ああ・・・・そんなこともありましたね」

 

懐かしそうに笑顔を浮かべるニルギリ。

 

ローズ「・・・・マジでどうなさいましたの」

 

カウンターでは、カメさんチームの面々が千鶴と話している。

 

千鶴 「ダージリンちゃん、面白いルールを思いついたものね」

杏  「私たちも他の役割練習してみよっか。かーしまは操縦、小山は装填と砲撃の練習とか」

桃  「それで、会長はどの役割を?」

杏  「私は、干し芋を食べる係~」

柚子 「それは役割にはありません!」

 

おもむろに袋から干し芋を取り出し、食べ始める杏。

 

杏  「千鶴さーん。この干し芋あげるから、これで何か作って~」

千鶴 「干し芋で?・・・・そうね、面白いかもしれないわ」

杏  「おお、やった~。言ってみるもんだね」

柚子 「どんな食べ物が出来上がるんでしょう・・・・」

千鶴 「そうね、確か、あれがあったはずだから・・・・」

 

杏の提案で何か思いついたのか、冷蔵庫に歩み寄る。

 

千鶴 「あら?食材が・・・・」

 

冷蔵庫を開けると、そこには大した食材が残っていなかった。

その頃、れもんの裏手を抜き足差し足で立ち去ろうとするミカたちがいた。

背中に担いでいるリュックサックは、パンパンに膨れている。

 

アキ 「ねえミカ、これじゃ泥棒だよ」

ミカ 「アキ、泥棒というのは人のものを奪って返さない人のことを言うのさ。これはただ、借りているだけに過ぎないんだよ」

ミッコ「返す当てもないと追うけどねえ」

 

そのまま立ち去ろうとすると__

 

ガッ!

 

ミカの頭を誰かが掴んだ。

 

ミカ 「・・・・」

 

ゆっくり振り返ると・・・・

 

アキ 「・・・・!」

 

笑顔で、鬼のようなオーラを放つ千鶴が立っていた。

その頃、強襲を仕掛けたボコ小隊の方は__

 

優花里「おそらく、あそこの高台の向こう側にエビフライチームのみなさんが集結していると思われます!」

ノンナ「引いたと思わせ背後を攻める。追い払ったと見せかけ一網打尽。味方ながら空恐ろしい方々です」

カチュ「カチューシャにだってできるわよ!だけどそんな策に頼る必要がないから、あえてそうしなかっただけなんだから!」

ノンナ「わかっています」

寺本 「恐らくこの作戦の成否が勝敗に大きく影響します!今こそ知波単魂の見せ所でありましょう!」

 

ブオオオオン!

 

早まったチハ(新)が速度を上げ、単独で駆けてゆく。

 

ケイ 「ヘイ、知波単ズ!前に出すぎよ!」

寺本 「ご心配なさらず!露払いは我等にお任せを!」

西  「よく言った寺本!この戦を制してこそ、新生知波単の礎となるのだ!」

細見 「さあ行くぞ!正義は我らにあり!」

 

足並みを全く揃えず単独で突っ走る知波単勢。

 

カチュ「どうするの?見捨てようかしら」

優花里「いえ!共に協力することはあろうとも、見捨てたり利用するなどということはあってはいけません!」

ナオミ「そう言うと思っていた。アリサ、速度を上げろ!知波単に合わせるぞ!」

アリサ「ああもう!ほんと手がかかる!」

 

知波単の独走をきっかけに、小隊全体の速度が上がった。

 

華  「あらあら」

沙織 「これで決着、ついちゃうかも!?」

麻子 「どうだろうな。しかし今回の訓練、やってて楽しいことも多かった。終わってしまうと思うと寂しい所もあるな」

優花里「そうですね。とてもためになる訓練でした。__島田殿も、来られたらよかったのですが」

みほ 「うん。イカ娘ちゃんを紹介したかったし、声をかけてみたんだけど__」

 

~~回想~~

 

みほは自室で、愛里寿と電話で話している。

 

みほ 「・・・・そっか。愛里寿ちゃん、来れないんだね」

愛里寿『ごめんねみほさん、私もすごく参加したかったんだけど・・・・』

みほ 「謝らないで。仕方ないよ、愛里寿ちゃんのお母さん、凄く心配してたんだと思う」

愛里寿『うん・・・・それはわかってる。やっぱり、この間の置き手紙の書き方が悪かったんだと思う(※大学選抜チーム編・第一話を参照)』

みほ 「今はお母さんのそばにいてあげて。落ち着いたら、また一緒に戦車道しよ?」

愛里寿『うん・・・・』

ルミ 『隊長、失礼します!あの、家元がお探しです・・・・』

 

電話の向こうから、申し訳なさそうに愛里寿を呼ぶルミの声が聞こえる。

 

愛里寿『わかった、すぐ行くと伝えて。__それじゃあ、みほさん』

みほ 「うん。また電話するね」

愛里寿『うん・・・・ありがとう』

 

~~回想終了~~

 

沙織 「う~ん、心配するのは悪いことじゃないんだけどね~」

麻子 「過保護すぎやしないか」

華  「きっとすぐに、一緒に戦車道が出来ますよ」

みほ 「うん、そうだよね」

優花里「そろそろ会敵します!皆さん、準備をお願いします!」

 

優花里の合図に全員の表情が強まる。

四両の戦車が高台を迂回し、反対側へ回る。

しかし、強襲をすでに察知していたエビフライ小隊はそこにはいなかった。

 

ケイ 「シット!気づかれていたわね!」

 

ノンナが周囲を見渡すと__

 

ノンナ「・・・・発見しました。八時方向です」

 

すでにエビフライ小隊はその場から去り、一塊になって移動を行っていた。

 

ナオミ「いい読みをしている。もう少し気づくのが遅れていたら勝負は決まっていたな」

アリサ「だけど背中ががら空きよ!チャンスには変わりないわ!」

寺本 「追撃続投であります!我に続けー!」

カチュ「あっ!アンタたちまた!ニーナ、追いかけなさい!」

ニーナ「はっ、はいー!」

 

勢いを殺さぬまま追いかけ続けるチハ(新)。

それを追いかける形のボコ小隊。

エビフライ小隊は急いでいるためか、必要以上に砂煙を立てている。

 

みほ (何だろう・・・・違和感がする。向こうにはお姉ちゃんもダージリンさんもいる。あの二人が、相手に背中を見せたまま考えなしに撤退だけするなんて考えられない)

みほ 「ということは__」

 

次の瞬間、みほは狙いに気が付く。

 

みほ 「いけない!皆さん、追撃を止めてください!」

 

ドオン!

ドン!

ドオオン!

 

みほが叫んだ次の瞬間、エビフライ小隊が何発もの砲弾を放つ。

 

寺本 「うおおお!?敵砲弾、襲撃!応戦、応戦であります!」

玉田 「よしいいぞ!福田、撃てぇ!」

福田 「了解であります!」

 

ドオン!

バアン!

 

応戦するべく砲弾を放ち、着弾する。

 

福田 「やりました!」

西  「よし、やったぞ!」

細見 「でかしたぞ福田!」

 

しかし__

 

ドオン!

 

着弾したはずの相手戦車は、構わず砲弾を撃ち続けている。

 

寺本 「な、なんと!?敵戦車被弾するも健在、繰り返す、敵戦車健在!」

カチュ「どういうこと!?チハの砲弾だからって、背面装甲が抜けないわけがないでしょ!?」

 

やがて土ぼこりが収まって来て、姿をはっきりと現し始める。

 

ナオミ「なっ・・・・、__なるほど、そういうことか」

ケイ 「ワーオ、グッドアイデア!」

アリサ「ちょっと・・・・ふざけすぎでしょ!?」

 

エビフライ小隊は、敵に面した後方にチャーチル、ティーガーⅡ、サハリアノを配置、さらに奥にチャーチルを配置した陣形を取っていた。

だが、奇をてらっていたのは陣形ではなく__

 

ナオミ「全車両へ。エビフライ小隊全機、『バックで移動』している。繰り返す、全機バックだ!砲口を全部こちらに向けながら後退している」

 

エビフライ小隊の戦車は、全車両がボコ小隊に正面を向いていた。

器用に車輛をバックさせ、バックしながらの行進間射撃にて応戦を行っていた。

 

優花里「なるほど、考えましたね!これなら攻撃しながら後退しやすく、かつ全面装甲により防御力も上がる!」

麻子 「しかし速度は最悪だぞ。それにわざわざバックする必要を感じないのだが」

沙織 「逃げながら撃ちやすかったからかな?」

華  「まだ何か、あちらには盛り返す手段が用意されているのでしょうか」

みほ 「そうだと思う。警戒と観察を怠らないようにしないと」

カチュ「こんなの苦し紛れのウケ狙いよ!ノンナ!」

ノンナ「はい」

 

カチューシャの意図を察したノンナは、IS-2を少し盛り上がった高台の上に移動させ、停車させた。

 

ノンナ「ここで我々が援護を行います。追撃をお願いします」

優花里「了解であります!」

ナオミ「相手は不安定な体制で進行しているのもあり、命中率もさほどではないはずだ。後方からはIS-2の狙撃もある。ここで勝負を決めるぞ」

寺本 「承知いたしました!吶喊ー!」

 

我先にと飛び出すチハ(新)。

もはや誰もツッコミを入れない。

が、次の瞬間__

奥にいるチャーチルを除き、三両が停車した。

 

福田 「!?敵機、停車したであります!」

西  「何っ!?」

 

ブオオオオオオオオン!

 

直後、アクセルを全開にふかしたような音がしたかと思うと、陣形の中からサハリアノが飛び出してきた。

そのまま全速力で前進し、チハ(新)の真正面に躍り出る。

 

寺本 「なっ!敵機襲来!応戦用意!」

 

しかし、対応が遅かった。

サハリアノの動きに驚き反応が遅れたチハ(新)は、超至近距離までサハリアノの接近を許してしまっていた。

 

ペパ 「今だ!撃つっす!」

 

バアン!

シュポッ

 

ペパ 「よっしゃ!」

 

サハリアノのすれ違いざまのゼロ距離砲撃が命中し、チハ(新)は白旗を上げた。

 

 

寺本 「む、無念・・・・!」

細見 「まさか、あそこから前に出るための後進だったとは・・・・」

玉田 「皆々様、申し訳ない!」

福田 「我らはここで散る運命となりました!」

西  「死して屍拾うものなし、後はお願いします!」

カチュ「やっぱりやられてるじゃない。アイツラはやっぱり何も考えてなかったのね!?」

クラ 〈サハリアノ、やはり恐ろしいスピードです〉

ノンナ〈そうですね。はやり一番の脅威は彼女らかもしれません〉

 

チハ(新)を撃破したサハリアノは、大きく迂回するようにボコ小隊の側面に回る。

 

ニーナ「まずいべ、横撃をしかけられちゃ!」

ノンナ「アリーナさん、サハリアノを狙って下さい。注意をこちらに引きましょう」

アリー「了解じゃ!」

 

ドオン!

 

IS-2の着弾が近距離で起き、サハリアノはIS-2に注意を向ける。

 

ペパ 「やっぱあっちのほうがヤバいっすね。あっちを先に片付けるっす!」

 

読み通りにサハリアノはIS-2に向かって突撃を始めた。

その頃、エビフライ小隊の追撃を続けるⅣ号とシャーマンは苦戦を強いられていた。

前列のチャーチルとティーガーⅡが絶え間なく砲撃を続け、近寄ることが出来ずにいる。

 

優花里「砲撃をよけねばならぬ状況で、相手は静止射撃、かつこちらは二で相手は三、圧倒的ピンチです!」

ケイ 「ネバーギブアップ!諦めなければ状況は打開できるものよ!」

 

ドオン!

ズドオン!

 

あちこちで土煙が起きる状況で、優花里は必死に頭を働かせる。

そして、ある作戦が頭をよぎり、車内のみんなにそれを伝える。

 

麻子 「そうきたか」

沙織 「でも、それしかないかもだよ?」

華  「そうですね。あとは、サンダースの皆さんを信じましょう」

みほ 「うん。仲間を信じなきゃ!」

 

即座に同意を得た。

 

優花里「ありがとうございます!」

 

華が通信で作戦を伝える。

 

アリサ「ちょっ、マジで言ってるのあんたたち!?」

ナオミ「これは責任重大だな」

ケイ 「でも、ミホたちの覚悟は伝わってくる。いいよー、任せて!」

 

突如Ⅳ号とチャーチルがUターンし、エビフライ小隊からやや距離を離す。

 

黒森生「あら?下がっていく・・・・?」

エリカ「この状況で逃げるつもり?そううまく行くはずがないでしょ」

まほ 「警戒しろ。Ⅳ号は、きっと__」

小梅 「はい。絶対に、諦めていません」

 

そして__

 

優花里「参ります!」

 

グオオオオン!

 

更にUターン、エビフライ小隊に真正面を向け、そのまま真っすぐ突撃してきた。

 

ペコ 「Ⅳ号、突撃を敢行しました!」

アッサ「捨て身の玉砕、ということ?・・・・らしくないわね」

ダー 「みほさんたちのことだもの。確実に、お腹に一物含んでおりますわ」

 

仕留めるべく、照準器を除くエリカとダージリン。

しかし、すぐに違和感に気が付く。

 

エリカ(・・・・どういうこと?)

ダー (奇妙ですわね)

二人 (シャーマンは、どこに?)

 

ドオン!

 

Ⅳ号が走行しながら砲弾を放つ。

それに応戦しティーガーⅡとチャーチルの砲弾を放つ。

 

バアン!

ドオン!

 

二発の砲弾はⅣ号の両脇を捉え、黒い煙が上がり始める。

 

みほ 「二発被弾!でも、まだ走れるよ!」

優花里「西住殿、お願いします!」

 

みほはさらにアクセルを踏み、限界まで加速させる。

 

エリカ「突っ込んでくる!?」

 

ドガシャーン!

 

そのままの勢いでⅣ号はティーガーⅡへ突っ込んだ。

その衝撃でⅣ号の履帯は外れ、車体が大きく傾く。

 

シュポッ

 

すぐにⅣ号の白旗が上がり__

 

バアン!

シュポッ

 

直後にチャーチルが被弾、白旗が上がった。

驚愕するエリカ。

正面を見ると、そこにはどこにいたのかシャーマンがいた。

 

エリカ「シャーマン!?いったいどこにいたって言うのよ!?」

ペコ 「Ⅳ号の真後ろ、です・・・・」

 

Ⅳ号とシャーマンは一直線に並び、Ⅳ号の車体でエリカたちからシャーマンを隠していた。

そしてⅣ号の特高に気を取られたスキに、シャーマンがチャーチルを撃破したのである。

 

エリカ「くっ、こんな戦法を取って来るなんて!」

まほ 「まずいぞ、Ⅳ号が履帯に引っかかって動けない」

赤星 「ええっ!?」

ケイ 「ガッタイット!」

 

そしてケイは引き金に指をかけ__

 

バアン!

シュポッ

 

シャーマンは被弾し、白旗が上がった。

 

ナオミ「やられたか」

アリサ「今の一撃は!?サハリアノじゃないわよね!?」

ケイ 「と、いうことは~?」

 

被弾した方向を見ると、いつのまに移動していたのか後方に構えていたはずのイカ娘たちのチャーチルが、側面からシャーマンに砲撃を決めていた。

 

ナオミ「あの陣形は二対三のためではなく、二対二にしてから横撃を決めるためのものだったのか・・・・」

アリサ「あーっ、くやしい!読みが足りなかった!」

渚  「すごい・・・・ダージリンさんの読み通りだった」

栄子 「さすが巷では大洗キラーって呼ばれてるだけのことはあるな。結果的には計画通りになったけど、あそこでまさかⅣ号が特攻してくるなんて思わなかった」

シン 「やっぱり役割が変わると、採用する作戦の色も変わったりするのかしら」

イカ娘「何にせよ、あとはカチューシャだけでゲソ!このまま決めるでゲソ!」

 

そしてイカ娘のチャーチルはその場を去り、IS-2を仕留めるために高台へ向かった。

その場には撃破され動けなくなった三両と、身動き取れないティーガーⅡが残された。

その中でも、ダージリンは優雅に紅茶を飲んでいた。

 

栄子 「そういえば、ペパロニたちから連絡が来ないな」

渚  「言われてみれば・・・・」

シン 「もう決着ついちゃったんじゃない?」

イカ娘「それだと楽なのでゲソがねー」

 

やがてチャーチルはIS-2の元へたどり着いた。

そこには__

黒煙を上げながらひっくり返ったサハリアノが転がっていた。

 

イカ娘「やられてる!?」

渚  「でも、何も報告はありませんでしたよ!?」

 

撃破されひっくり返ったサハリアノの中では__

 

チョビ「きゅう・・・・」

カル 「うーん・・・・」

ペパ 「もう、食えねえっす・・・・」

早苗 「うふふふふふ・・・・イカちゃんったら、そんなにくっついて・・・・♪」

 

全員が伸びてしまっていた。

 

ノンナ「はやり、ここへ来たのはイカチューシャたちでしたか」

渚  「あのスピードのサハリアノを、ましてや早苗さんの運転なのに仕留めるなんて・・・・」

アリー「確かにわだしだけの腕前じゃあれに当てるんは無理ですだ。でも、アドバイスを貰えればやってやれんことはないべ!」

ニーナ「こっぢは鎮座して撃てばいいし、IS-2の威力なら多少は外れても衝撃で仕留められんべ!」

カチュ「一度イカチューシャたちとは腕を交えたいと思っていたの。貴女たちの実力、見せてもらうわ!」

渚  「!全速前進!」

 

ドオン!

 

直後、チャーチルのいた場所に着弾の煙が上がる。

衝撃で少し車体が持ち上げられる。

 

シン 「うわっ!?直撃してないのになんて衝撃よ!」

栄子 「あんなのもっと近くで食らったら直撃しなくてもやられちまうぞ!」

イカ娘「こっちも応戦するでゲソ!カチューシャたちに私の力を見せるでゲソ!」

栄子 「私『たち』、な!」

 

ドオン!

 

IS-2の砲撃を交わし、走りながら応戦するチャーチル。

しかし静止した状態のIS-2とチャーチルでは分が悪すぎる。

何度も着弾が間近で起き、いつひっくり返ってもおかしくない状況である。

 

渚  「このままではこちらがやられるのは時間の問題です!」

栄子 「でも、こっちが止まったらその瞬間やられちゃうぞ!?」

シン 「もし止まるなら、次の砲撃までに仕留めないとこちらの負けね」

イカ娘「ぐぬぬ・・・・チャンスを待つでゲソ!」

 

その後も何度も着弾が続き、ピンチが続く。

しかし__

 

渚  「・・・・あれ?」

栄子 「どしたの、渚ちゃん?」

渚  「何だか、砲撃の間隔が長く鳴って来てませんか?」

栄子 「え?」

 

言われてみると、確かにIS-2の砲撃ペースが鈍り始めている。

 

シン 「どうしたのかしら?そろそろ弾切れとか?」

渚  「いいえ、これは・・・・もしかしたら」

 

その頃、IS-2内部では。

 

カチュ「はあっ、はあっ、はあっ・・・・!」

 

カチューシャが大きく息を切らせながら砲弾を持ち上げようとしている。

 

クラ 〈カチューシャ様、大丈夫ですか!?〉

ニーナ「このペースで装填を続けるのは、カチューシャさまでもムリだべ!」

カチュ「何言ってるの・・・・!このカチューシャが、装填ごときで疲れるはず、ない、でしょ・・・・!」

 

歯を食いしばり装填するカチューシャ。

意地を張っているが、限界に近いのは目に見えている。

 

ノンナ「アリーナさん、早期に決着を。これ以上にカチューシャに負担をかけるのは許しませんよ」

アリー「はっ、はいい!!」

 

ノンナの眼光にすくみ上ったアリーナは、これまでになく集中する。

そして__

 

ドオン!

 

渚  「きゃあっ!?」

 

今まで以上に近くに着弾し、ついにチャーチルは大きく片側が跳ね上がりるが、こらえて元に戻る。

しかしその衝撃で、履帯が外れてしまった。

 

渚  「大変です、履帯が外れました!」

シン 「シット!これじゃ動けないわ!」

栄子 「次撃ち込まれたら終わりだぞ!」

ニーナ「チャーチルの足が止まりました!次当てればこっちの勝ちでしゃー!」

カチュ「ぐぬぬ・・・・!うううううん・・・・!」

 

最後の一撃を決めるための砲弾を懸命に装填しようとするカチューシャ。

 

シン 「どうするの!?このままじゃやられるわよ!?」

栄子 「こうなったら、手段は選んでいられん!イカ娘!」

イカ娘「!」

 

カチューシャが砲弾を持ち上げ、装填しようとしたその瞬間!

 

バアン!

 

カチュ「うわあっ!?」

 

IS-2に着弾が起き、カチューシャは砲弾を落としてしまう。

 

カチュ「んもう!あとちょっとだったのに!」

ノンナ「落ち着いてください。IS-2の装甲なら、一発の砲撃など問題ではありません」

 

慌てて砲弾を持ち上げるも__

 

バアン!

 

再びの着弾にまた落としてしまう。

 

バアン!

バアン!

バアン!

バアアン!

 

ニーナ「ちょっ、どういうことだべ!?チャーチルが連射してねか!?」

アリー「あの間隔はおかしいべ!短すぎでねえか!?」

クラ 〈確かに・・・・装填しているとしたら、ありえない速度です〉

ノンナ「いえ、ひとつだけ可能性が」

クラ 〈・・・・もしや〉

 

その時、チャーチル内部では。

 

栄子 「いいぞ、効いてる!どんどん入れろー!」

イカ娘「ゲソーーー!」

 

イカ娘が十本の触手で十個の砲弾を持ち上げ、次々と装填している。

人の手ではありえない装填速度で、チャーチルの間髪置かない連射砲撃が実現している。

 

ノンナ「いけません、このペースで被弾していけば間違いなく被害が出ます。カチューシャ!」

カチュ「ううう、うううううう!」

 

しかしすでに疲労困憊していたカチューシャはプルプル震えながら砲弾を持つので精一杯。

装填口にまで砲弾を持ち上げられずにいる。

ひらりとノンナは車内に降り、砲弾を持たカチューシャごと抱っこして持ち上げる。

 

カチュ「ノ、ノンナ!?」

ノンナ「私が装填を手伝うのはルール違反です。ですが、私は今カチューシャを持ち上げているだけですので」

カチュ「物は言いよう、ねっ!」

 

ガコン!

 

ノンナの手助けにより、ついに装填が完了する。

 

カチュ「装填完了よ!アリーナ、やっちゃいなさい!」

アリー「ダー!」

 

ドオオン!

ドオン!

 

即座にIS-2の砲撃が放たれ、チャーチルに向かっていく。

そして同時にチャーチルの砲弾も、吸い込まれるようにIS-2の起動輪を捉え__

 

バアン!

シュポッ

ドオン!

シュポッ

 

双方は、相討ちとなった。

 

その様子を見守っていた、海の家れもんでは。

 

ローズ「ああー、引き分けですわね」

典子 「だが、いい勝負だった!至る所に根性を感じたぞ!」

妙子 「入れ替えた役職で、あそこまでの試合を見せてくれるなんて、皆さん流石ですねー」

忍  「セッターがアタッカーをやるようなものだものね」

あけび「今度練習に取り込んでみましょうよ、キャプテン!」

典子 「いいな!特訓の役割が広がる!だが、本来の役割を忘れてもいかん!自分の持ち味を生かしてこそのバレーだからな!」

三人 「はい、キャプテン!」

 

周囲の会話を聞き、首をひねるニルギル。

 

ニル 「・・・・あれ?引き分け?」

杏  「いんや、引き分けじゃないよねえ」

柚子 「えっ?だって、もう動ける車輛は・・・・」

ルク 「動ける車輛はもういなくても・・・・『撃破されていない』車輛なら、いたじゃないか」

柚子 「・・・・あっ!」

 

再び演習場にて。

 

優花里「あー、負けちゃいましたね」

麻子 「仕方ない。どっちが勝ってもおかしくない勝負だった」

エリカ「むう・・・・」

まほ 「どうしたんだエリカ。勝ったのだからもっと胸を張れ」

エリカ「この状態で、勝ったと言えるのでしょうか・・・・」

 

唯一、移動不能になっただけで撃破されていなかったティーガーⅡは、Ⅳ号に半分乗っかられ身動き取れないでいた。

 

エリカ「アンタたち!試合は終わったんだから、さっさとどきなさいよー!」

 

その後、海の家れもんに戻った一同。

各々が席につき、健闘を讃えている。

 

カチュ「さすがイカチューシャたちだわ!期待していた以上のものを見せてくれたわ!」

ノンナ「あの装填速度は恐れ入りました」

イカ娘「カチューシャこそ、最後まで装填し続けたなんていいガッツだったじゃなイカ!」

西  「見事に裏を突いたと思ったのですが・・・・さらにその虚を突き返されるとは!さすが高校戦車道随一の策略家、ダージリン殿でありますな!」

ダー 「お褒めに預かり恐悦ですわ」

ペコ 「砲撃しながら紅茶を飲んでいた時は、流石にどうかと思いましたが」

アッサ「それでもこなしてしまうのが、ダージリンの恐ろしい所ですね」

まほ 「そうか、あれは秋山さんの立案だったのか」

優花里「申し訳ありません、さすがに荒すぎましたでしょうか・・・・」

小梅 「いいえ、お見事な作戦でした。もう少し勢いと角度があれば、やられていたのはこちらだったでしょう」

沙織 「ナオミさんたちも即席によく合わせてくれたよね」

ナオミ「すまなかったな、結局二両仕留めるには至れなかった」

ケイ 「ホントよねー。装填と砲撃、もっとしっかり練習しておけばよかったわ。帰ったらみんなにカリキュラム組んで特訓しようかしら」

チョビ「サハリアノのスピードに呑まれていたような気がするな。全速力を出すタイミングは常でなくてもいいはずだ」

ペパ 「いやー、あのスピードは体験するとダメっすねー。あれ以下にしちゃうと遅く感じちゃってやきもきするっす!」

カル 「でもあのスピードなら、すれ違いざまの砲撃も決めやすいですね。もっと練習しましょう」

麻子 「たまの砲手も楽しかった。次もこういう機会があればいいんだが」

華  「次は、装填手になるかもしれませんよ?」

麻子 「撤回する。二度となくていい」

沙織 「撤回するの早っ!」

 

みんなの飲み物を注文するために、カウンターへ歩み寄るみほ。

 

みほ 「すいません、コーラと紅茶を四つずつ__」

 

言いかけてカウンター内のいる人物を見て、みほの口が止まった。

 

ミカ 「かしこまりました。コーラと紅茶ですね」

みほ 「・・・・継続さん?どうして、皆さんカウンターの中にいるんですか?」

アキ 「あはは、これは、そのー・・・・」

ミカ 「『役割の入れ替え』、さ。私たちもやってみたくなって、させてもらってるんだよ」

ミッコ「そうそう!決して、罰とかでやらされてる訳じゃないから!」

みほ 「は、はあ・・・・」

 

近くの座席では、千鶴がニコニコしながら紅茶を楽しんでいた。




勢揃いで試合をすると、かなり文面がにぎやかになりますね。
ガルパン本編では会話はスピーディに食い気味になるので、聞いててテンポよく進んでいる感じがします。
文章でも、あれくらいのテンポを再現できればもっと良くなれそうなんですが・・・・。

ちょっとした事情から二週間ぶりな投稿になった結果、かなり長めとなってしまいました。
もし読みにくかったとしたら、参考にさせていただきますので遠慮なく意見をお願いいします。
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