ぷしゅうと音を立てて、開いた扉が閉まる。出てきた青年の表情は重く、足取りはゆっくりと、それでいて一歩一歩に悲愴感が滲み出ていた。
「はー、俺はもう終わりなんだ……ついでにこの世界も終わらないかな……」
絶望からか、大変物騒な呟きをした青年。ポケットからl tunesと書かれた、梨のような物が描かれた紙が滑り落ちた。右上に10000と書かれたそれを見て、深く嘆息する。拾おうと腰を重々しく落とすが、あと一cmというところで別の誰かに拾い上げられる。
「なーにしけた面してんだい。折角救った世界を滅ぼそうなんて、なかなかに自分勝手でアタシ好みではあるけれどねえ?」
見上げると、そこにいたのは三角帽を被りニヒルに笑う、胸元の大きく開いた目に毒な衣装の、ナイスバディな美女。
「あ、姐御……姐御ぉぉぉぉ!!」
「あん?一体どうしたんだ、鳩がカルバリン砲くらったみたいな顔して」
「それ明らかに跡形も残らないやつうわあああああああ!!」
泣きながら女性――真名、フランシス・ドレイクに飛び付く青年。よしよしと頭を撫でられ、軽くいなされつつ、己のサーヴァントに愚痴をこぼすのだった。
「今さ……キャスターのピックアップしててさ……」
「キャスターって何処のキャスターだい?」
「EXTRAの……キャス狐……」
「あの狐か……」
バツの悪そうな顔をするドレイク。キャスター――玉藻の前とは相性が悪いのである。や、FGOの相性相関的意味合いじゃなくて。本質的に。性質的に。
「キャス狐欲しくてダヴィンチちゃんにお金渡して……石買って二十連したけど……出なかった……」
「ハハハハハハハ!そりゃ災難だったね!」
「笑いごとじゃないよ死活問題だよ……今月のお小遣いが死んだよ……」
「アンタねぇ、たかが数千数万の金でごねるんじゃないよ!人間がちっちゃいね。アタシのマスターならもっとドバッとガバッと、豪快に楽しみなよ!」
「俺はどうせちっちゃい人間ですよ……身長も心も……」
「命も金も、ありったけ使うから愉しいってのにねぇ」
l tunesカードを見て嘆息するドレイク。仕方ないねぇ、と言って胸の谷間から何かを引っ張り出す。
「やるよ」
「え……?それは……ッ!?」
「拾いもんだから使えるかは分からないけどね」
その手にあったのは梨の描かれたカード。それを見て目の色を変える青年。
「……いいの…?」
「ああ。どうせ、アタシには使い道のないものだしな。ただ、今後の報酬は弾んでもらうよ?」
「ありがとう姐御ぉぉぉ!!」
可愛くウィンクしたドレイクに何度もお辞儀をして、再び先程の扉へと引き返す。数分後、笑顔の青年が帰ってきた。
「ありがとう姐御!!爆死した!!」
「あーあ、そんなこったろうと思ったよ。アンタみたいな、勢いで人理修復しただけで根は小悪党な輩が、奴の言う"イケ魂"なはずないだろう?」
「うう……」
「ま、せいぜい私みたいなのがお似合いってことさね、マスター?」
ぱあっと、暗かった青年の表情が明るくなる。
「姐御……ッ姐御ぉぉぉぉ!!」
「あーもう、しょうがないねえ」
わしゃわしゃと青年の頭を撫でる姐御。自分のサーヴァントの温かさに、このままでもいいかななんて思うマスターだった。
「でもやっぱりキャス狐欲しい……ッ!」
「懲りないねえ……」
ばくしってつらいよね