「なあ、暁」
とある猫が青年に話しかける。
この猫、彼の名前は『モルガナ』という。そして、モルガナが話しかけている青年は『来栖暁』。
どちらも半年前、世間を賑わせた『ザ・ファントム』という怪盗団の一員で、暁に関してはそのリーダーなのだ。
「もう大学を決めなきゃいけない時期だろ?お前って頭良いのに決めてないし、親もお前が居ないとこで心配してたぞ」
分かっている、そう答えた。
実の所、迷うどころか迷えるような大学すら無い。頭を抱えるような状況で、スマホがベッドの上で震えた。
「誰からだ?」
画面には『真』と書かれている。『新島真』…彼女も怪盗団の一員で参謀として、共に歩んだ仲間だ。
どうしたのだろう…と、スマホのロックを解き、SNSを開く。
モルガナも画面を覗こうと、暁の肩に飛び乗る。
『急にごめんね』
『気にするな』
『ありがとう。大学ってもう決めた?』
「おい、暁。もしかして、大学の誘いじゃねえか?取り合えず返信しろよ」
『まだだ』
『そう。だったら、私が通っている大学はどう?』
モルガナの言う通り、大学の誘いだった。
ナイスなタイミングだ。丁度悩んでいた時に、ありがたい。
『ありがとう。真の大学にするよ』
『そう!嬉しいわ』
実は、真の他にも『奥村春』が通っている。彼女も怪盗団の一員だった。
懐かしいな。そう思い、暁は画面上の文字を打つ。
『今度、皆で会おう』
『良いわね!いつにする?』
「おいおい、勝手にそんなことして良いのか?ワガハイは構わないし夏休みを有効活用するのはいいが、親にはちゃんと言えよ?」
暁は無言で頷いた。
後で話そう。そうだ、皆にも連絡しないと。怱治郎さん、泊めてくれるかな?いや、家族と言ってくれたんだから、泊めてはくれるか。
『皆には連絡しとくわ。マスターにもね』
「真はやっぱり気が利くなぁ」
『ありがとう』
『気にしないで』
暁はスマホを閉じ、自室のドアを開けた。
居間にはサッカーの試合を映しているテレビを観ている両親が居た。
「お、暁。今、良いところだぞ?観ていったらどうだ?」
暁は親に、夏休みの間は『ルブラン』で過ごしたいと言った。両親は少し驚きつつも、直ぐに了解してくれた。大学を考えてから言え!!とか言われるかと思ったのだが…
「やったな!」
暁は親に、いつ行くかを伝えた。
本当に楽しみだ。皆とは半年も会っていなく、最初はスゴく寂しい気持ちで一杯だった。徐々に慣れては来ていたが、飽くまで慣れただけで寂しさが消えていった訳ではない。
******
「忘れ物、無いよな?」
無いはずだと、暁は静かに喋る。
腕時計で時間を確認し、そろそろ出ようかと靴を履く。
すると父親が話しかけてきた。
「なあ、暁。その、警察から『貴方の息子さんは怪盗団のリーダーです』って聞いたとき、驚きはしたけど流石俺の息子だって…そう思ったんだ」
知らなかった。父親が暁の正体を知っていたとは。
しかし、考えてみれば当たり前。血の繋がっている親には警察も話すか。父親が全く触れなかったおかげで気付かなかった。
「今から会うのも、元怪盗団の仲間なんだろ?目一杯、遊んでこい!」
暁はゆっくり頷いた。行ってきますと言い、玄関のドアに体を向けた瞬間。インターフォンが鳴った。
誰だろうか。ドアを開け、確認した。
「よう、暁!」
「久しぶり!元気してた?」
「相変わらずだな」
「まさか迎えに来るとは思わなかったでしょ?」
「フッフッフ…私の作戦だ」
「いや、皆で考えたんだけどね」
そこに居たのは、なにも変わらずに居てくれた仲間達。
「皆そろったな。ワガハイも嬉しいぞ!怪盗団『ザ・ファントム』の再会だ!!」