PERSONA5 after   作:薬売り

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懐かしのルブラン

暁はそのドアを開けた。動くと共にカランカランと、懐かしい音が鳴った。

 

「待ってたぞ。久しぶりだな」

 

この喫茶店、『ルブラン』のマスターである佐倉惣治郎は腰に手を当て、頬を上げている。

お久しぶりです、そう伝えると「おう」と返事が帰ってきた。すると、俺の後ろから双葉がひょいと顔を出した。

 

「惣治郎、スッゲー寂しがってたぞ!晩飯のカレー作るのを忘れるようになったし」

 

「余計なこと言うんじゃねぇよ」

 

カレーは俺が作っているのが多かった。それで、忘れるようになったのだろうか?だとしたら、嬉しいと思わず笑ってしまった。

取り合えず皆が席に着き、竜司はコーラでそれ以外はコーヒーが出た。しかも、それは春が淹れたコーヒーだ。懐かしい香り、家にはインスタントコーヒーぐらいしかなく、なかなかちゃんとしたコーヒーを飲める機会は少なくなった。

一口、懐かしみながらコーヒーを啜る。おいしい、その一言がつい口から出た。

 

「本当?ありがとう」

 

「あぁ、確かにおいしいな」

 

祐介の同意の言葉に続き、他の皆もそれを称賛していた。竜司は少し困ったような顔をしている。

 

「ハルは勉強中なのか?」

 

「そうなの、ここルブランでね」

 

「アルバイトとして雇ってんだよ。暁と同じ成長スピードで驚いたぜ」

 

ちゃんと、前に進んでいってるようで良かった。俺はコーヒーをまた一口啜る。

 

「なぁ、暁は大学とか決めたのか?」

 

竜司の質問に、俺は静かに頷き真と春に眼をやる。真はニコニコとしながら、大学のことを話す。

 

「実はね、私達と同じ大学に来るのよ」

 

「マジで!?」

 

「そうなんだ!頭良いもんね」

 

まぁ、行く大学もなく、真と春が居るから行くという理由だが。選び方としては良くないのだろうが、俺はこれで満足している。

竜司は?と聞き返すと、竜司は「俺か?俺はな……」とコーラを片手に持って話を続ける。

 

「体育大、教師になるんだ」

 

少し驚いたが、直ぐに納得できた。理由が大体予想の付くものだったからだ。

 

「鴨志田みてぇなクソな教師が、また現れねぇようにする。それが志望理由だ」

 

「フ、相変わらずリュージだな」

 

「へへ、まぁな」

 

本当に相変わらずに居てくれて良かったと思う。前のまんまで、変わらずに居てくれたことに、俺は笑みの混じった安堵の息を漏らす。

 

「アン殿は?」

 

「お前、訊かなくてもわかるだろ?」

 

「そうだな、愚問だった」

 

「そんなに有名になってないよ」

 

俺は真っ先に否定した。杏は、確実に有名になった。その個性と美貌が今では話題のモデルであり、いくつか有名なバラエティー番組でもゲストとして目にすることはある。父も「この娘、最近見るけどかわいいよな」と呟き、友人だ(本当は仲間だと喉まで出かけたが)と言うと眼を見開いて驚いていた。それほど、彼女は有名になった。

その事を杏に伝える。

 

「えへへ、そうかな?」

 

と、照れた。これも変わっていない。

すると、双葉が体を前のめりにし「私はな!」と大きく口を開く。

 

「学校に通ってるぞ!すごいだろ!褒めても良いんだぞ?ん?」

 

すごいな、と微笑み返すと「そうだろそうだろ!!」と元気良く、ドヤ顔でこちらを見る。

 

「入学式、めっちゃ緊張してたよな。ロボットみたいな歩き方でさ」

 

「ぬあ!?それをゆーなと言っただろうが!!」

 

悪戯の顔をする竜司。俺はそれを微笑んで見ていた。

そうだ、祐介どうだ?と話を振る。

 

「俺は今、色々な物を描いている。暁に見せたあの絵で、少しだけ俺の名が知れたんだ。寮には数通、画廊に展示してくださいと俺宛に手紙が来た」

 

「へぇ、すごいじゃないか」

 

これは驚いた。画廊の方から展示させてくださいと来るのは異様だ。もしかしたら、祐介はこれからすごい絵描きになるのかもしれない。

 

「マコトは?」

 

「私は普通に大学に通ってるわ。卒業したら警察学校に通おうと思ってるの」

 

「警察かー、お父さんの意思を継ぐんだな?」

 

「そんな大層なものじゃないわ、お父さんみたいな警察になりたいとは思うけどね」

 

皆、それぞれ進歩していってる。その事を、まるで自分自身の出来事の様に嬉しく思えた。

こうやって集まるのも久しい。積もる話もあり、ルブランでの会話は夜が来ても続いた。


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