※放射能の毒性について、不適切な表現があります。
症状や影響などは、はだしのゲンなどや、過去に見た放射能汚染による影響を綴った書記を表現を参考にしています。
もし、間違っている。また偏見に繋がるというご意見がありましたら、メッセージなどで申してください。書き直します。
それから、何もないまま三日が過ぎた。
聖地の場所が分からない以上、動くことができないし、情報収集しようにも、ここはエルフの土地。完全に部外者であるトゥとティファニアが動くことはできない。おまけに、現在いる場所が海である以上、動くことはできない。ウタを使えばできんことはないが、それだと次に待つ砂漠を越える時の準備をすることができない。
それに、逃げないという約束をルクシャナと交わしているので、それを破るわけにはいかない。
ルクシャナは、トゥの花を警戒していたものの、今警戒していても埒があかないと判断し、今ではほぼ放置している。今、竜を連れてきてトゥを殺しても、シャイターンの門にいるもう一人のウタウタイ、ゼロが残るため何もできないというもあるのだろう。
食べ物は、イルカが取ってきてくれる。飲料水は、雨水を使った。しかもルクシャナの魔法のおかげで美味しく飲める。
そのうち追っ手が来るのではと、ティファニアが心配すると。
「この辺りはね。潮の流れが複雑で、エルフ達はあまり近づかないの。」
さらに大荒れになることもあるのだと、ルクシャナが説明してくれた。
イルカが小舟を引いてくれなかったら、たどり着けることはない場所なのだそうだ。
入るのも大変だが、出るのも大変だ。
っというわけで、絶賛やることがない。
何もしてないでジッとしているのもアレだし、トゥが海水に浸かって泳いでいると、ティファニアが泳ぎ方を教えて欲しいと言ってきたので、教えることにした。
やることがないのはルクシャナも同じで、水中呼吸の魔法を使ってくれた。おかげで水の底とまで泳ぐことでき、豊富な魚介類が住むこの辺りの海の質もあって楽しめた。
飲み込みが早いティファニアは、泳ぎ方を覚え、トゥと一緒に水中を泳いだ。
陽光が差し込む青く透き通った海中を、並んで泳ぐトゥとティファニアは、まるで人魚のように美しい。
やがてティファニアがトゥの肩をつついて、海底を指さした。
ティファニアが海底に向かって泳いでいき、それを追っていくと、ティファニアは、海底の岩と珊瑚の間に手を入れた。
すると大きなエビをティファニアが掴んで持ち上げた。
今日のお昼ご飯だよっと口が動き、いたずらっぽく微笑むティファニアに、トゥも微笑み返した。
そしてトゥも、負けじと大きな巻き貝を捕った。
ずっと、このままだったらいいのに…。
ティファニアは、そんなことを思い。けれど、自分を恥じた。
ハルケギニアのことも、聖地のことも、虚無のことも何もかも忘れて、トゥと一緒にここでずっと過ごせたらなんて…。
薄青い海の中でも、薄紅色を失わないトゥの右目の花がイヤでも視界に映る。
……あの花がある限り、トゥに安息はない。
悲しい事実。悲しい現実。悲しい未来…。
トゥにのしかかる悲しい運命は、自分の非じゃ無いだろうっとティファニアは思い、悲しい顔をした。
トゥは、怪訝に思い、ティファニアに近寄ってその頬に手を添えた。
どうしたの?っと口を動かすと、ティファニアは、ハッとして首を横に振った。
トゥは、慌てて手を放した。ティファニアが触られて嫌がったのでは思ったのだ。ティファニアは、アッという顔をして手を振って違う違うと身振り手振りをした。
その時、トゥは、周りを見回しだした。
ティファニアがそれを不思議に思っていると…。
トゥがティファニアの傍に来て、デルフリンガーを抜いた。
ティファニアが驚いていると、背びれが尖った魚…、サメが何十匹も群れを成してやってきた。
デルフリンガーを握ってティファニアを背にして構えているトゥとは反対に、サメを知らないティファニアは混乱した。
やがて頭上でサメの群れが回転しながら泳ぎだし、やがて一匹がトゥとティファニアの存在に気づいたのか動きを変えた。
それに呼応したサメ達が矛先をトゥとティファニアの方に向け出した。
すると、横からルクシャナのイルカが猛スピードで泳いできて、サメに体当たりした。
そして、次々にイルカがサメを倒していく。
だが、次にやってきたものに、イルカもサメ達も逃げ出した。
『どーやら、あのサメ共はアレから逃げてきたらしいな。』
デルフリンガーが言うそれは、海竜だった。
全長十メートルほどで、ワニのような胴体に、水中移動に特化したヒレの手足がついているその海竜がジロリッとこちらを見てきた。
海母の仲間じゃないの?っと、トゥがデルフリンガーに聞くと。
『いんや。ありゃ、知性もかけらもない、獰猛で気性が荒い奴だ。この辺りじゃ最強だろうな。』
「トゥさん!」
「ティファちゃん、下がって!」
ゆっくりと近づいてきた海竜が大口を開けた。
そのまま突っ込んでくる海竜から、ティファニアを守るためにティファニアの頭を掴んで押さえつけて一緒に海底に伏せた。頭上を海竜が通り過ぎ、海竜は、旋回すると再び口を開けて突進してきた。
トゥは、跳躍し突進してきた海竜の頭にデルフリンガーの切っ先を突き刺そうとした。だが水の抵抗が凄まじく、陸地と違って勢いを殺され、威力も落ち、絶大な筋力を誇るトゥの力を半減させてしまう。デルフリンガーの先は滑り、海竜の固い鱗を貫けなかった。
『こりゃ、分が悪いぜ、相棒。』
「分かってる!」
海竜が太い尾を振ってきた。咄嗟にデルフリンガーで防ぐが、相手は海を住まいとする海竜、身体の作りが根本から違うためそのパワーに吹き飛ばされ、トゥは岩にたたきつけられた。
背中を打ち付けて痛みにうめいていると、海竜の口が迫ってきた。
トゥは、片手で下顎を掴んで止めた。
ギリッと渾身の握力で海竜の顎を握りしめると、海竜は、ジタバタと暴れ出した。
トゥは、下顎の…おそらく鱗が無い部位だったであろう部位に、デルフリンガーを突き刺した。
血があふれ、海竜は、暴れてそのままある方向に向けて、デルフリンガーが刺さったまま泳ぎだした。トゥは、デルフリンガーを掴んだまま一緒に引っ張られた。
『相棒。頼むからこの手を放さないでくれよ。こいつと一緒に海の藻屑になっちまう最後は迎えたくねぇ。』
「分かってるよ。」
猛スピードで泳ぐ海竜に導かれるまま進んでいくと、やがて海竜は、スピードを落としていった。
その隙をついてトゥは、ふんばり、デルフリンガーを海竜から引き抜いた。
海竜は、トゥをちらりと見た。反撃が来るかと思ったが、海竜はそのまま巣と思われる岩壁に入っていってしまった。
「……ふう。」
岩場に上がって一息つく。
すると、トゥの左手のルーンが光り出した。
「えっ? なんで?」
『俺は鞘に収まってるぜ。』
「分かってるよ…。…あっ。」
トゥは、周りを見回した。
すると、今居る場所がおかしいことに気づいた。
自然にできたモノじゃない。明らかな人工物だった。
「なんだろう、これ…。」
それは、“潜水艦”と呼ばれるモノだったが、それを知らないトゥには船のようなモノとしか認識できなかった。
トゥが呆然とそれを見上げていると、イルカがやってきた。
イルカに跨がって、ティファニアもやってきて、大丈夫かと聞いてきた。
「うん。大丈夫だよ。」
泣きそうなティファニアの頭を撫でながらトゥは微笑んだ。
***
海母の巣に戻ると、ルクシャナに船のようなモノを見つけたことを話した。
目を輝かせたルクシャナは、それを見に行きたいと言いだし、案内することになった。
そして、その問題の船…潜水艦のところへ来た。
「変な船ね。こんなのヘンテコなの作って蛮人って変わってるわね。」
「違うよ。」
「はっ?」
「これはね。海の中を進みやすい形なの。」
「なんで分かるの?」
「左手が…教えてくれるの。」
トゥは、潜水艦に右手で触れた状態で、光っている左手のルーンを見せた。
「海の中を進む立って、どうやって?」
「ほら、スクリュー…、回転をしながら進むものが後ろに突いてるんだけど、ここからじゃ見えないね。」
トゥは、説明しながら、キョロキョロと潜水艦を見回した。
そしてついに、探していたモノを見つけた。
「あった!」
「なに?」
「これに入るところ。見つけた。」
トゥは、よじ登り、錆びたハッチを掴んで無理矢理こじ開けた。
そしてルクシャナとティファニアを中に呼び、三人は潜水艦の中に入った。
精密な計器が並ぶ艦内を進んでいく。
『おおー、こりゃーすげーなー。』
「ね、すごいでしょ。」
『こいつは、油で動くあの戦闘機っつーのと違うぜ。なんつーか、えーとな、物質を作る小さい粒が小さい粒同士でぶつかってエネルギーを作る力で動くんだ。』
「……ん?」
それを聞いたトゥは、止まり、顔を蒼白とさせた。
「ティファちゃん! ルクシャナ! ここから早く離れないと!」
「えっ? なになに?」
「どうしたの、トゥさん?」
「いいから! 危ない! ここ危ない!」
『でーじょーぶだ、相棒。』
「ふぇ…?」
『確かにこの船を動かす力の源はヤベーみたいだけどよ。それを動かすための棒っきれがねーんだ。だから、大丈夫だぜ。』
「ほんとう?」
『おおよ。』
「よかった~。」
「ねえ、いったい何で動くの、この船? そんな危ないモノを使うの?」
「ごめん…。とにかくね、すっごい毒なの…。すっごいエネルギーを生み出すんだけど、すっごい毒なの…。」
「ど、毒で動くの?」
ティファニアが震え上がった。
「あのね…。ちょっとなら大丈夫だけど、たくさん浴びると、例えば、髪の毛が抜け落ちて…、衰弱して、血を吐いて…、血便が出て…、身体の中のありとあらゆる内臓が壊れて…死んじゃうの…。あと色んな病気を併発するの…。」
「……それは、怖いわね。」
「でも、この船…、もう壊れてるのに…どうしてルーンが反応するんだろう?」
『たぶん…、武器なるもんが残ってんだろ。』
それを探すことにし、さらに奥へと進んでいくと、武器を装填しているであろう場所にたどり着いた。
「これ…。」
「なにこれ? ほら、説明しなさいよ。」
「危ない……。」
「はっ?」
トゥは、思わず後ずさった。
そこにあったのは、……ミサイルだった。
だが、ただのミサイルじゃない。
潜水艦を動かす力と同じ燃料を使った……。
核ミサイル。
「なんで、こんなものがあるの?」
『おう…、これにもこの船と同じエネルギーが入ってるな。こいつが爆発したら、大変だぜ。』
「毒をばらまく武器ってこと?」
「これが爆発したら…、都市が消える。」
「それくらいならエルフの技術でもできるわ。使わないだけよ。」
「ううん。それだけじゃない。一度爆発したら、その一帯は何十年以上もぺんぺん草も生えない焼け野原になる毒を残すの…。」
「なんじゅうねん!?」
さすがにルクシャナも驚愕したようだ。
「もちろん…、そこに住んでた人達も…毒で……。ものすごいエネルギーでできる火傷は普通じゃなくって…、色んな病気の原因にもなって…。例えば…、魚なら、頭が一つで身体が二つある魚が生まれてきたりするかもしれないの…。」
「ひっ…。」
「なんてモノを作るのよ、蛮人は!」
恐怖に震えるティファニアは、憤慨するルクシャナ。
「と、とにかく…、これは触っちゃダメ。爆発したら、海が大変なことになっちゃう。毒が漏れたら、たくさんの生き物が死んじゃうし、これから生まれてくる子供も奇形になっちゃうかもしれないの。毒が溜まった魚や貝を食べても大変なことになるから…。しかも解毒剤とか無くって…、何百年先も子孫に影響するかも知れないの…。」
「そうね…。」
ルクシャナは、想像したのか汗をかいていた。
爆発の威力より、後に残る毒の方が脅威だと思ったようだ。
放射能物質自体は、自然界にも微量存在することも知ってます。
放射線治療というものもありますし、完全なる悪ではないとは知ってます。
原作では、あまりその毒性とかについて触れていなかったので、あえて書いてみましたが、書いた後でこれは、偏見に繋がるのでは?っという疑問が浮かびました。
震災で原子力発電所の問題が浮上し、被爆の問題が連日上がっていたことや、そのせいで他県から偏見の目を向けられたというエピソードも知りました。
ですが、だからといって、怖い物だからダメってだけじゃダメではないのか?っという考えもありました。
あくまでも可能性…、こうなるかもしれない。ああなるかもしれない。だから封印しなければならないということは伝えないといけないと思って書きました。
……こんな二次創作でそんなことを述べても仕方ないと思われと思います。