二番目の使い魔   作:蜜柑ブタ

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竜の羽衣は、ゼロ戦じゃなく、鉄でできた戦闘機です。別の完結作みたいに。




第十四話  トゥと竜の羽衣

 タルブの村まで、シルフィードに乗っていくのだが、その途中、シエスタに竜の羽衣のについて聞いた。

 だがシエスタの説明はあまり上手ではなかった。

 彼女の話をまとめると。

 

 竜の羽衣は、シエスタのひいおじいちゃんが乗ってきた物。

 だがもう飛べないと言っており、彼の話を誰も信じなかったこと。

 その後タルブ村に住み着いたひいおじいちゃんは、一生懸命働いて、竜の羽衣に固定化の魔法をかけてもらい、寺院に奉じたこと。

 

「実物を見るまではわね~。」

 キュルケが言った。

 

 やがてタルブ村につき、シエスタに案内されて問題の竜の羽衣がある、寺院に赴いた。

 そこにあったのは…。

「これ……。」

「なんなんだい? これは、鋼の塊じゃないか!」

「せんとうき…。」

「えっ?」

「旧世界の…遺物…。」

 トゥが、フラフラと竜の羽衣なるものに近づき、手で触れた。

 途端、彼女の左の手のルーンが光った。

「知ってるんですか?」

「ワン姉さんなら分かるかもしれないけど…、私はよく分からない…。でもこれ…、飛べるよ?」

「ほんとうですか?」

「でもまだ飛べない。この子は、燃料がないから。」

「ねんりょう?」

「油。でもただの油じゃダメ。」

「なんでそんなことが分かるのよ?」

「よく分からない。触ってると分かるの。不思議だね。」

「ええ、不思議。あなたは、不思議。」

 キュルケはそう言った。

 シエスタが、もしよければ竜の羽衣をあげると言い出した。

 キュルケとギーシュは、驚いたが、トゥは、本当!っと嬉しそうにした。

 シエスタによると、今ではお年寄りがたまに拝むだけで、村では邪魔になっていたらしい。それでいてシエスタの家の持ち物みたいなものなので父親に言えばなんとかなるとのこと。

「でもどうやっても持って帰るのよ。」

「私が持ち上げて持って帰る。」

「まあ…あなたならできそうね。でも何日もかかるわよ。」

「それでも持って帰る!」

 そう言って譲らないトゥに折れたギーシュが、父親のコネで借りた竜騎士隊とドラゴンを使って学院に運ぶことになった。

 手配がすむまで、タルブの村に滞在することになった。

 シエスタの家に案内され、トゥの姿にシエスタの父母がびっくりしていたが、シエスタが学院でお世話になっている人だと説明すると、納得し、いつまでも滞在していくれと言った。

「トゥさん、よかったらこの村の草原を見ていきませんか?」

「そうげん?」

「はい、今の季節、とても綺麗なんですよ。」

「わあ、じゃあ見る!」

 はしゃぐトゥを見てシエスタは、微笑み、彼女を案内した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 その頃。

「まったく余計なことをしてくれたな。」

「申し訳ありません!」

 学院長室にて、コルベールが土下座していた。

「まったく、下手をするとどうなっていたか…そうでなくとも、君日頃の品行があったからこそ痴漢の嫌疑はかけられなかったのだぞ?」

「は…はい。」

「しかしなぜ彼女を襲おうとした?」

「いえ、私は襲うおうなどとは…!」

「なんて冗談じゃよ。なぜ花を始末しようとした?」

「は、はあ…。もうやめてください。」

「もう一度聞く、なぜ花を始末しようとした?」

 オスマンの言葉に、コルベールは、すぐには答えなかった。

「どうしたのかね?」

「恐ろしかったのです…。」

「なんじゃと?」

「あの娘が…。あの力が…。」

 コルベールは、汗をダラダラとかいた。

 コルベールは、フーケ討伐の際に同行し、トゥの力の一部を垣間見ている。それを見て恐れをなしたのだ。

「やはり、あの娘の力と花が関連していることに気付いていたか。」

「はい…。」

「確かにその通りじゃ。彼女の力は、花の力じゃ。」

「ならば…。」

「じゃが。だからこそ危険なんじゃ。」

「何がそこまで…。」

「あの花こそが真に危険なんじゃ。危険だからこそ、迂闊に手が出せん。手を出せば、自分自身だけじゃなく、周りをも巻き込むことになるじゃろう。それでもやるというのか?」

「そうなる前に私の炎で焼き払って見せます!」

「バカ者! 焼くだけであの花を処分できるならとっくの昔にやっておるわ!」

 オスマンがテーブルを叩いた。

 オスマンの剣幕に、コルベールは、たじろいた。

「申し訳…ありません。軽率な行動でした。」

「うむ。分かったならよろしい。」

 オスマンは、ソファーにどかりと座り直し、溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「わあ! 綺麗!」

「でしょう。」

 シエスタに案内された草原は、どこまでも続くように広くて、所々に花が咲いている。

「本当に綺麗。」

「よかった。この村、本当に辺鄙な普通の村で何もないんですが、私にとってこれだけは自慢なんです。」

「お花摘んでいい?」

「いいですよ。でもお花を摘んでもどこに飾るんですか?」

「あ…、そっか。ごめん。」

「じゃあ、押し花にしませんか?」

「するする!」

「じゃあ、押し花にする花を選びましょう。」

 二人で、キャッキャッと嬉しそうに草原の花を摘んだ。

 そしてシエスタの家に持って帰って、押し花づくりを始めた。

「……。」

「どうしたんですか?」

「これ…ルイズにあげたら喜んでくれるかな?」

 押し花にした花を摘まみながらトゥは、目を細めた。

「どうでしょうか…。貴族の方の好みは分かりませんので…。」

「うん。でも…、あげる。喜んでくれないかもしれないけどあげる。」

「そうですか。じゃあ、一番きれいなのを選びましょう。」

「うん!」

 トゥは、元気に頷いた。

 

 

 翌朝。

 ギーシュが手配してくれた竜騎士隊とドラゴンが来て、太いロープでできた網に、戦闘機を乗せた。

 なんでこんなものをと、キュルケ達は怪訝な顔をしたが、トゥがどうしてもと言った。

 鋼でできた戦闘機を運ぶのにドラゴンが難儀し、レビテーションを唱えて浮かせて、なんとか運んだ。

 結果、とんでもなく運賃がかかってしまい、トゥは困ってしまった。

 しかし、学院に戻って見ると、その代金を払ってくれる人物が現れた。

 なんとコルベールが払ってくれたのだ。

 

 トゥは、コルベールの姿を見ると怯えてキュルケの後ろに隠れたが、コルベールは、それどころじゃなく、広場に置かれた鋼の塊・戦闘機に夢中だった。

「これはなんだね! よければ説明してくれないかい?」

「あ、あの…戦闘機…です。」

「せんとうき?」

「空を飛んで、敵を撃墜するの。」

「ほう、空を飛ぶ! しかしこの翼は羽ばたくようにはできていない。それでいて全体が鋼でできている! これが飛ぶのかね!」

「燃料がないから、飛べないの…。」

「ほう燃料か。つまり油かね?」

「そうです。でも普通の油じゃダメ。」

「ふむ…。」

 コルベールがもう自分を襲ったりしないと判断したトゥは、戦闘機に近づき、燃料タンクの蓋を開けた。

「これ。」

「ふむ…。ムッ。この匂いは…、嗅いだことがない油の匂いだ。」

「この油が必要なの。でもその前に…。」

 トゥは、竜騎士隊を見た。

「お金…、どうしよう…。」

「う…うーむ、そうか。なら私が立て替えよう。…君に酷いことをしてしまったせめてものお詫びだ。」

「…ありがとう。」

 トゥは、コルベールに頭を下げた。

 こうして、運賃代をコルベール立て替えてくれた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ルイズ。」

「トゥ! あんたどこ行ってたのよ!」

 帰って早々、ルイズに怒鳴られた。

「ごめんなさい…。」

「まあ、いいわ。」

「うん。あのね…。ルイズ…これ…。」

「なにこれ? 押し花?」

「一番きれいだったのをルイズにあげようと思って…。私が作ったの。」

「……もらってあげるわ。」

「よかった。」

 トゥは、嬉しそうに笑った。

 そしてトゥは、部屋を出て行こうとした。

「ちょっと、トゥ。どこに行くの?」

「広場。」

「広場って…何をしに?」

「持って帰ってきたものを置いてあるの。」

 そう言って部屋を出て行ってしまった。

「あ、こら、待ちなさい!」

 ルイズは、押し花を机の上に置くと、トゥを追って行った。

 

 

 アウストリの広場に置かれた戦闘機によじ登り、席に座ったトゥは、操縦桿を触ったり、他の計器を触ったりした。

「…壊れてない。うん。分かる。」

 左手のルーンが輝き、トゥに知識を与えて来る。

「トゥ? これがあなたが持って帰ってきた物? なにこれ?」

「戦闘機だよ。」

「せんとう、き?」

「これで空を飛んで、敵を倒すの。」

「これが、空を? 嘘でしょ。」

「嘘じゃないもん!」

「じゃあ飛んでみなさいよ。」

「できないの。まだ燃料がないから。」

「ねんりょう?」

「コルベール先生が作ってくれてるよ。」

 操縦席から顔を出して、トゥが嬉しそうに笑った。

 ルイズは、あんなことがあったのに、よく頼めるなっと思った。

「ねえ、トゥ。一週間も何してたの?」

「宝探し。」

「ご主人様に無断で行くなんてどういうこと?」

「だって…、ルイズが離れてた方がいいって言うから…。」

「だからって黙って行かないで。」

「……ゲルマニアに来ないかって誘われたの。」

「誰に?」

「キュルケちゃんに。」

「キュルケが? なんでよ?」

「ゲルマニアに行けば、お金さえあれば貴族もなれるって。」

「あんな野蛮な国になんて行かせないわよ!」

「でも…。」

「あんた承諾したんじゃないわよね!?」

「……。」

「黙ってるってことは、承諾したのね!? そんなに私といるのがイヤ!?」

「それは、ルイズの方だよ!」

「なんでよ!」

「私に花が咲いてから…、私に変に優しくするし…、それに周りからヒソヒソされて…辛かったでしょ?」

「それは…。」

 ルイズは、口ごもった。

「私がいなくなれば、ルイズが楽になるって思ったの。」

 トゥは、操縦席で足を抱えた。

「……トゥ…、降りてきて。」

「イヤ。」

「いいから。」

「……叩くんでしょ?」

「いいから降りてらっしゃい。」

 何度も降りてこいと言うと、やがてトゥが操縦席から降りて来た。

「トゥ…、確かにあの時、怖かった。でもね…、あなたのこと、それでも嫌いじゃないの。それは本当のことよ。」

「私も…怖かった。」

 トゥは俯いた。

「花が咲くのが…。もう咲いちゃったけど…、私の中でどんどん育っていくコレが怖かった。」

「トゥ…。その花は、なに? なんなの?」

「怖いもの…。危険なもの…。私を苗床に育つモノ…。」

 トゥは、哀しそうに言った。

「それはあなたの体に寄生しているの?」

「たぶん私が生まれた時からずっと…。よく覚えてないんだけど…。ゼロ姉さんから別れたもの。」

「そのゼロ姉さんって?」

「あの人は……。あれ? 思い出せない。」

 トゥは、頭を抱えてウーンウーンと唸った。

「無理しなくていいわよ。思い出せないものは仕方ないわ。」

「でも…。」

「いいから。ね?」

「…うん。」

 トゥは、頷いた。

「じゃあ、今日から洗濯物してもらうから。破っちゃダメよ?」

「えー。」

「なによ。やる気あるんでしょ? そんなにしたいなら、やらせてあげるのよ。」

「えー。」

「なによ! 優しくされるのがイヤなんでしょ!」

「だって急だったんだもん。」

「とにかく今日から、掃除洗濯、着替えも手伝ってもらうから。」

「えー。」

 

 

 そんな二人の様子を、キュルケ達が見ていた。

「仲直りしたようだね。」

「そうね。」

「雨降って地固まる。」

 

 

 




竜の羽衣は、ゼロ戦より進んだ、鋼の戦闘機です。
ドラッグオンドラグーン3の旧世界の遺物ならトゥは、見たことがあるんじゃないかと思ったので。

なんだかんだでルイズとは、和解(?)。
いつも通りになります。

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