二番目の使い魔   作:蜜柑ブタ

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魅惑の妖精亭編です。



第二十二話  トゥとルイズ、働く

 

 トゥは、現在ルイズの前で正座させられていた。場所は広場である。

「一週間休みを貰いたいって、どういうことかしら?」

「えっ…、だから…、シエスタの村に来ないかって誘われたから…。」

「ダメよ。」

 却下されてトゥは、しょんぼりした。

 トリスティンは、夏の季節を迎え、学院は夏休みを迎えた。

 2カ月にも及ぶ長い休みだ。

 生徒達や教師達が帰省する中、トゥがルイズに頼んだのである。シエスタの村に行くから休みをくれないかと。

 それをルイズは、却下した。

 理由を上げるのだとしたら、シエスタがいまだにトゥに恋しており、諦めていないということだろうか。何をするか分かったもんじゃない。

「トゥ、あんたはなに?」

「えっ?」

「あんたは、私のなに?」

「使い魔…。」

「そうね。そうよ。だから離れるなんてしちゃダメ。私にもしものことがあったらどうする気?」

「それは…。」

「トゥさんにもお休みは必要だと思います!」

 そこへシエスタが来て叫んだ。

 ルイズは、シエスタを睨んだ。だがトゥに恋するシエスタは、負けじと睨む。そこに貴族と平民という階級はない。女の意地と意地のぶつかり合いだ。

「トゥさんは、精神的なショックで記憶を失ったりして、休暇が必要だと思うんです! タルブならのんびりと、穏やかに過ごせて精神が休まると思ったので誘いました!」

 そう言われるとルイズは、言葉に詰まった。

 トゥは、まだ全部の記憶を取り戻せていない。だが思い出さない方がいいのだろうか…。だが精神的なダメージはまだ癒えていないだろう。あれからまだそんなに日にちは経っていない。

「トゥは、私の使い魔よ。使い魔の処遇が決めるわ。」

「…それだけなんですか?」

「なに?」

「以前、トゥさんが私にお洋服を作ってくれた時から思ってたんですが、最近ミス・ヴァリエールのトゥさんを見る目が変だな~っと思いまして。」

「な、なによ!」

「だって、あんなに、私に着せようとした服を着るって言って譲らなかったんですもの…。」

 あのスカスカの服か…。っとルイズは思いだし赤面した。

 あの痴態をシエスタに見られていたのだということに今更気付いた。

「あんなに必死になってたら、誰だっておかしいって思いますよ。」

 ルイズは、グッと言葉に詰まった。

 確かにあの時の自分はどうかしていた。

 トゥがシエスタシエスタと自分を差し置いてシエスタばかり構うので、イライラしていたのは事実。

 だがしかし、だからと言ってあんなこと(ゼロの服を着ると言って譲らなかったこと)を強行したのは自分の失態だ。

 自分のやったことを受け入れられないルイズは、そうよ全部トゥが悪いのよと、ルイズは思うことにした。

「と、とにかくダメよ。トゥにはやってもらわなきゃならないことがあるから。」

「それってトゥさんの体調を考えずにすることですか?」

「とにかく! トゥは私と一緒にいるの! いいわね!」

「う…、うん。」

「ダメですよ! トゥさん!」

「ごめんね。シエスタ。」

「…無理しちゃ、ダメですよ?」

 シエスタは、本当に本当に心配している顔で言った。

 その様子を見て、ルイズは、罪悪感を感じ胸が痛んだ。

 だが今は優先すべき任務がある。

 ルイズは、トゥを連れて部屋に戻った。

「ねえ、ルイズ。何をするの?」

「姫様からのご依頼よ。」

 そう言って説明を始めた。

 アルビオン共和国は、主力の艦隊を失い、正攻法での侵略はしてこないので、今度は内部からトリスティンの民の不安を煽ったりして内部から攻撃を仕掛けてくる可能性があることを説明した。

「つまり?」

「私達は、情報収集をするのよ。平民に紛れてね。」

「ルイズ……、できるの?」

 トゥは、首をかしげて言った。

「なによ?」

「だってルイズは、貴族でしょ? 貴族は平民になれないよ?」

「だから…変装するのよ!」

「普通の服を着るんだね? 分かった。」

「姫様から依頼料としてお金はもらっているわ。それでまずは服を買いに行くわよ。」

「学院はお休みだから、帰れないよ?」

「そ…それは、宿を取るとかするのよ。」

「すぐお金なくなっちゃうよ?」

 トゥは、ルイズが安い宿で満足するとは思えなかったのでそう言った。

「うるさいわね! とにかく、行くわよ!」

「えー。」

 トゥは、不安いっぱいで城下町に行くことになった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 トゥの不安は的中した。

「こんなの着れるわけないでしょ!」

「でも、普通の人が着る服だよ? 貴族の格好してたら平民に化けれないよ?」

「うっ…。」

 トゥに正論を言われてルイズは言葉を詰まらせた。

 貴族のマントと紋章の付いた服を着ていては、こちらが貴族であることを示しているようなものだ。

「トゥこそ、その格好なんとかしなさいよね!」

「うん。分かってる。おばさーん。お洋服ください。」

 ルイズと違い、変なプライドとかそういうものがないトゥは、難なく普通の服を着こなす。右目の花は仕方ないが。

 そんなトゥに、ギリッと歯ぎしりをしたルイズは、勢いで平民の服を着た。

「なにこれ、着心地最悪!」

「えー。」

 トゥ的には別に気なるほどじゃないのだが、贅沢な環境で育っているルイズには我慢ならないらしい。

「普通の人はみんな着てるんだよ?」

「分かってるわよ!」

「分かってないよ。だって文句ばかり言ってるもん。」

 トゥに言われっぱなしでルイズは、唇をかんだ。

「ねえ、これからどうするの?」

「まずは、宿を探すわよ。」

「安いところじゃないといけないよ。」

「ダメよ! 安いところじゃ眠れないわ!」

「ルイズ、文句ばっかり。平民の人にはお家がない人もいるんだよ?」

 トゥは、そう言って、路地の脇で、座り込んで施しを待っている人を指さした。

「一緒にしないでよ!」

「例えばって話。ルイズ、全然お姫様の任務する気ないでしょ?」

「やる気はあるわよ!」

「じゃあ我慢することを覚えようよ。」

「うぐぐぐ…。」

 ルイズは、怒りでブルブルと震えた。だが言い返せない。文句を言っているのは事実。そしてトゥの言うことは正論。

「でも2ヵ月もどこかに泊まるってなると…、食費も含めて結構かかるよね? なんとかお金を増やせないかな?」

 トゥは、震えているルイズを他所に、うーんっと考え込んだ。

 トゥは、キョロキョロと周り見まわし、張り紙を見つけた。

 トゥは、張り紙に手を触れて字を見た。

「……ねえ、ルイズ。お姫様の任務って、街の人達から情報を集めるんだよね?」

「…そうよ。」

「酒場って、情報がいっぱいだよね?」

「はあ、なによ急に…って、まさかあんた!」

「酒場で働こうよ。」

 トゥは、いい案だとルイズを見て笑った。

「イヤよ! なんでそんなことしなきゃなんないのよ!」

「ルイズ、文句ばっかり言ってたら何もできないよ?」

「も、もっと他にお金を増やす方法が……、あっ。」

「?」

 ルイズの視線がある場所にいったので、トゥもつられてみると、そこは博打店だった。

「…ルイズ?」

「そうよ。野蛮だけど、手っ取り早いわ…。そうよ、そうよ…。」

 何かに取りつかれたかのように、ルイズがブツブツと言いながら博打店にフラフラと歩いて行った。

「待って! ダメだよ、ルイズ!」

 さすがにまずいと、トゥがルイズの腕をつかんだ。

「放しなさい。」

「ダメ!」

「命令よ。放しなさい。」

「ダメだったら、ダメ!」

 ルイズとの攻防が続いたが、結局他に案が思いつかないトゥが折れてしまい、ルイズを博打店に行かせることになった。

 

 その結果……。

 

「どうするの、ルイズ。」

「今考えてるわ!」

 全財産をスッてしまったのである。

 路地裏で足を抱えて座り込むルイズに、トゥは溜息を吐いた。

「…お腹すいた。」

「私もよ。」

 トゥも座り込み、二人は途方に暮れた。

 

「もし、そこのお二人。」

 

 すると奇妙な格好の男が現れた。

「だれ?」

「そちらの青い髪の、右目に花をつけたお嬢さん。あなたが噂の美女かしら?」

 しかしなんだか女言葉である。

「うわさ?」

「ちょっとそこの服屋で服を買って行った右目に花のついた美女がいて、貴族にいじめられてるって聞いたから、もしかしって…思ったの。」

「誰がイジメてるですって!」

 ルイズが叫んだ。

「誰もあんたのことを言ってるんじゃないわよ。」

「私を誰だと思ってるの、私はこうしゃ…。」

「だめ、ルイズ。」

 トゥがルイズの口を手でふさいだ。

「こんなところで座り込んじゃって…、もしかして行く当てがないの?」

「はい…。」

 トゥは、そう嘘を吐いた。

「じゃあ、うちの店にいらっしゃい! ぜひとも来てほしいわ、あなたみたいな美女、大歓迎よ。」

「……はあ。」

 トゥは、首を傾げた。

「ただし、一階の酒場で働いてもらうわよ。そしたら食事と寝る場所をあげる。どう?」

「ほんとう? ねえ、ルイズ、良い話だよ!」

「……ぷは! 何がいい話よ! こんな怪しい奴…。」

「あんたは別にいいわ。私は、そちらの青い髪の子に来てほしいんだし。」

「ダメよ! トゥは行かせない! 行くなら私も行く!」

「トレビアン。じゃあ、いらっしゃい。こっちよ。」

 二人は奇妙な男に連れられて、男が経営する宿に向かった。

「申し遅れたは、私はスカロンって言うの。」

「トゥだよ。こっちは、ルイズ。」

 トゥは自己紹介をし、ルイズを紹介した。ルイズは、ずっと下を向いて黙っていた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 スカロンの宿の名前は、魅惑の妖精亭。

 そこで他の店員達紹介する前に、着替えさせられた。

 色気ある、けれど魅惑の妖精のような格好。

 ルイズも同じく着替えさせられたが、トゥと並ぶと……。

「あらまあ……、霞んじゃうわね。」

 トゥと並ぶとルイズの美少女な容姿も霞んでしまう。

 きわどく短いキャミソール、体のライン丸わかりの上着、大きく開いた背中。

 特に胸の差が……、ルイズと大きく違っていて…。

「ルイズちゃんも可愛いわよ。」

 全然嬉しくないっと、ルイズは思い、拳を握った。

「なんなら…ルイズちゃん、裏方に行く?」

「…そうするわ。」

 トゥと並ぶとなんだか惨めな気持ちになるため、ルイズはそう言い着替えに行った。

「ルイズも可愛かったのに…。」

 トゥだけが残念そうにした。

 そして、店員達への紹介となり、ルイズは、エプロンを着てトゥと並んだ。

 頭を下げるよ言われ、ルイズは、グッとなったが、アンリエッタからの任務を遂行しなければという気持ちがなんとか勝ち、頭を下げた。

「よろしくおねがいしまーす。」

「トレビアン。元気があっていいわぁ。」

 元気よく頭を下げたトゥを、スカロンが賞賛した。

 

 女の子達が、きわどい格好で給仕をするのが売りのこの魅惑の妖精亭に新しく入った給仕がいると聞いて、客達は、トゥの登場を待った。

 そして満を持して現れたトゥを見て、客達は目を見開いて、持っていた酒瓶を落としたり、口にしていたつまみを落とした。

 その美しさに、きわどい格好から見える染み一つない、美しい白い肌。右目の花が奇妙ではあるが、トゥの美貌を引き立て、青い短めの髪の毛が揺れ、シンプルな花飾りが青い髪を引き立てる。

「お待たせしましたー。」

「あ…、はい。」

 緊張して思わず背筋を正してしまう。

 客達は、トゥに見惚れて、口の運ぼうとした酒をドボドボと零すような痴態を晒していた。

「お注ぎしますね。」

「あ、あ、ああああ、ありがとうございます…。」

 ガラの悪い客ですら思わず敬語になってしまう。

「おかわりは、いかがですか?」

「く、ください…!」

 一人の客が勇気を出して言うと、それに呼応して他の客達も俺も俺もと叫びだした。

 

 

 一方ルイズは…。

 

「ちょっと、また割ったの?」

「す…すみません。」

 皿と格闘していた。

 皿洗いなどしたことがないルイズが急に皿洗いをしろといわれてできるわけがない。

「もうここはいいわ。あっちで野菜の皮むきして。」

「はい…。」

 ルイズは、屈辱に耐えながら洗い場からどいた。

 しかし、野菜の皮むきだってしたことがない。そもそも彼女が知っている野菜は、すでに調理した野菜なので、野菜の原型など知るわけがない。タマネギの山を前にオロオロとしていると、一人の少女が近づいてきて、タマネギを剝きだした。

「こうやって剥くんだよ。」

「あ…。」

「分かった?」

「はい…。」

 ルイズが返事をすると少女は去っていった。

 残されたルイズは、必死にタマネギを剥いた。だが剥きすぎて全部の身を無くしてしまい怒られた。

 やり方をやっと覚えたが、今度は目に染みてきて、涙を流した。

「うう…なんで私がこんなことを…。」

 タマネギの成分で流れる涙を拭い、垂れて来る鼻水をすすりながら必死にタマネギと格闘した。

 そうして店の営業が終わるまでの間にルイズが剥けたタマネギは、山と積まれたタマネギの20分の1だった。

 

「お疲れ様ー! いやー、トゥちゃん、トレビアンだったわよ! おかわりコールが止まらなかったじゃないの!」

 

 店が終わった後、スカロンが腰をくねらせながらトゥに近づいてきて賞賛した。

「えへへ。」

 トゥは照れ臭そうに笑った。

 トゥの隣でルイズは、ずっと自分の手を匂って顔をしかめていた。

「おかげで、最近落ちてた売り上げが一気に上がったわ! これが毎日続けばね~。じゃあ、はい、コレ。」

「なんですかこれ?」

「請求書よ。ルイズちゃん…、何枚お皿割ったの?」

 スカロンが笑みを消して言った。ルイズは、エプロンを握って耐えた。

「トゥちゃんには、ハイ。」

「えっ?」

「今日のお給料よ。」

「わあ、ありがとうございます!」

「本当に元気ねぇ…。」

 あれだけ働いたのにまったく疲れた様子もないトゥにスカロンは半ば呆れ顔で言った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 トゥとルイズに与えられた部屋は、屋根裏部屋だった。

 何年も誰も使っていなかったのか、そもそも人が住むための場所じゃないのか、埃っぽく、荷物が乱雑に置かれていた。

 ベットが一つあり、それにルイズが座るとベットの足が折れた。

「なによこれ!」

「ベットだよ。」

「なにあれ!」

「コウモリだよ。」

「こんななところで貴族を寝かせる気!?」

「ルイズ、我慢我慢。」

 トゥは、毛布の埃を払うと、それにくるまった。

「ルイズ。明日は、お昼に仕込みで、お掃除があるんでしょ? 早く寝ようよ。」

「うう~。」

 ルイズは、唸った。

 トゥはさっさと眠ってしまった。

「順応早すぎでしょ…。」

 ルイズは、順応性が高いトゥに呆れながら、トゥの隣に潜り込んだ。

 埃臭い中で、トゥの匂いが鼻をくすぐる。

 それに安心している自分がおり、ルイズは、心の中でイヤイヤ違うと首を振りながらやがて眠りに落ちた。

 

 

 翌日から、また仕事が始まる。

 店の掃除も、トゥは慣れた様子でこなしていくが。

「あっ。」

 っと言う間に、箒を折ったり、その辺の物を壊してしまうのである。

「トゥちゃんってば、ずいぶん力が強いのね?」

「私、怪力なんです。」

「へえ? どれくらい?」

「えーと…。」

 そしてトゥは、ワインがつまった一番大きい樽を見つけて、それを軽々と片手で持ち上げて見せた。

 それを見たスカロンや他の店員達が目を見開いた。店員達がざわついた。

「ちょっと、トゥ!」

 異変に気付いたルイズが店の裏から来た。

「あら…、それだけ力が強かったら、護身に関しては安心ね。でも絶対にお客様には向けちゃダメよ?」

「はい。」

「トゥ、絶対にダメよ。」

「うん。」

 トゥは、頷いた。

 そして夜になれば、トゥは、給仕として働く。ルイズは、裏方としてまた野菜の皮むき。今度はジャガイモと格闘していた。

 包丁の使い方など知るわけがなく、教えてもらっても皮ごと身を剥いてしまうのでほとんど残らない。それで怒られながら、ルイズは、こっそりと店の表の方を見る。

 トゥは相変わらず綺麗で、客達は初日ほど緊張してないものの、トゥを眺める客の多いこと多いこと。

 さらに客がトゥの噂を聞いて他の知人を連れて来るので、店の外にも客が溢れていた。

 トゥは、自分目当ての客の邪な視線など気にせず、せっせと給仕をしている。

 そして、偶然、本当にたまたまなのだが、うっかり他の給仕の女性とぶつかってしまい、運んでいた食事のソースを被ることになってしまった。主に胸に…。

「あー、もったいない。」

 そう言って、胸についたソースを指ですくい、口に運ぶ仕草、そしてソースが、たまたま白っぽかったこともあり、胸の谷間に白っぽいソースが伝って行く様に、店の客達が鼻血を噴いて倒れる事件が発生。

 店の中が一時鉄の匂いがする有様になった。

 店の外に担がれていく撃墜した客達が去り際に、グッジョブと親指を立てながらチップを置いていった。

 

「トゥちゃん、ちょっと刺激が強すぎたわね…。」

「?」

「あら、分かってない? 無自覚だからこそのあの破壊力なのかしら?」

 スカロンは困ったような仕草をした。

 

 

 閉店後、白っぽいソース事件でたくさんのチップを手に入れたトゥ。

 そしてスカロンは、チップレースの開催を宣言した。

 これは、この店で定期的に行われていることらしく、今週のチップレースで優勝した者は…、スカロンが持つ魅惑のビスチェという魔法の家宝、それを着る権限を一回貰えるのだと言う。

 この魅惑のビスチェ。着た人間の体格に合わせてサイズが変わることと、魅了の魔法がかかっているそうだ。

 男のスカロンがそれを身に着けていても、まあまあいけると感じる程度になるのだから、普通の女の子が着たならば絶世の美女に見えるぐらいになるのだろうと、ルイズは分析した。

 ならば…、トゥが着たらどうなる?

 今現在の姿で、ソースがかかっただけで客の男に鼻血を出させるトゥだ、もしあのマジックアイテムを身に着けたら……。

 ルイズは、この瞬間、決意した。

「あの!」

「どうしたの?」

「私も給仕をするわ!」

「あら? いいの?」

「やると言ったらやるわ!」

 ルイズの様子に、スカロンは、チラッとトゥを見てから、なるほどっと頷いた。

 他の店員に魅惑のビスチェを着せて、トゥだけ着せないわけにはいかないのだから。

 それに魅惑のビスチェを着てもいい権限を褒賞としたのは、他ならぬスカロンなのだ。

「がんばりなさい。」

「言われなくても!」

 トゥに、魅惑のビスチェを着せないために、ルイズは、裏方から給仕に転向した。

 

 




別の意味でチップレースを頑張ろうとするルイズです。
全然気付いてないトゥ。

次回はチップレース編。

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