ルイズのお姉さん達と遭遇。
最後の方、ガールズラブ要素あり。これR-15かな?
夏休みはやがて終わりを迎え、魅惑の妖精亭でアルバイトをしていたルイズとトゥも学院に戻った。
ルイズは、ともかく、トゥがやめるにあたり、非情に惜しまれたが、事情が事情なので仕方がない。
トゥが残して行ったレシピや、お酒のメニューも一新され、トゥが辞めた後の店のこともなんとかなるだろう。…っと思いたい。
そして問題はここからだ。
アルビオンとの戦争が本格化するにあたり、生徒達も従軍することになったのだ。
ルイズも従軍したいと志願したいと思い、その許可をもらうために実家に一度帰省することになった。
帰省することになったのは、まずルイズが手紙で従軍することを実家に伝えた、そしたら実家は大騒ぎ、そしてそんなことは許さんなという返事がかえってきた、それを無視したら、ヴァリエール家の長女・エレオノールがやってきた。
それだけでもルイズは、不機嫌なのに、更に不機嫌になる事態が起こった。
「それでね、魅惑の妖精亭ってお店で働いたの。」
「それは大変でしたね…。お金でしたら私がなんとかしたのに…。」
「シエスタからお金借りられないよ。」
「そんな! トゥさんが困っているのを見過ごせません!」
貴婦人は、身の回りの世話をする侍女を連れて歩くものだと言われ、仕方なくその場にいたシエスタを指名したのが……。
トゥとシエスタを乗せた馬車の後ろを走る、ルイズとエレオノールを乗せた馬車。ルイズの視点から見て、いちゃ付いているように見える二人の様子に、ルイズは気が気じゃなかった。
そんなルイズを、エレオノールがほっぺたを抓った。いわく、自分が話しているのによそ見をするなと。
普段のルイズからは想像もできない弱気なルイズがそこにいた。
前を走る馬車に乗っているトゥは全然気付いていない。
ルイズは、涙目になった。
***
ルイズの家の敷地に着くのは、夜遅くなる。
「遠いよぉ。」
二日ほど馬車に乗って、まだかかるのかとトゥは、頬を膨らませた。
敷地に着くなる領地の村人達が来たりして、ちょっともみくちゃになったりしたが、村人の一人がエレオノールに婚約話のことを離した途端、エレオノールの機嫌がすこぶる悪くなった。おかげで場の空気も緊迫し、シエスタが怯えてトゥにくっついてきた。
そこに空気を読めないルイズが、エレオノールに、婚約おめでとうなどと言ってしまったものだから、エレオノールの怒りはルイズに向き、ほっぺたを抓り、婚約の解消の話をして、それからお説教が始まった。
だがお説教は長くは続かなかった。
もう一人のルイズの姉であるカトレアが現れたからだ。
エレオノールは、性格をそのままに、ルイズの気の強さをさらに強くした感じのきつめで。
カトレアは、外見はルイズにそっくりで、ルイズをもっと大人にしたらこんな感じという感じで、穏やかな雰囲気をしている。
二人ともルイズに似ているが、カトレアの方が似ているだろう。ただ胸が……。
「ルイズにもお姉ちゃんがいるんだね。」
「あんたにもいるの? そういえば、いるって言ってたような…。」
「ゼロ姉ちゃんと、ワン姉ちゃんがいるよ。あと妹が3人いるよ。」
「まあ、ご姉妹がたくさんいらっしゃるのね?」
「うん!」
穏やかに笑うカトレアに、トゥは元気よく笑顔を作って頷いた。
「まあ、まあ、まあ、まあ。」
「?」
「お花が素敵ですね。」
「……。」
右目の花のことを言われ、トゥは、固まった。
「ちい姉様! あまり花の事には触れないでください!」
「あら? やっぱり何かあるのね、ちびルイズ?」
「そ、それは…。」
言えない。アカデミーの優秀な研究者でもあるエレオノールに、あの花のことを言うことができない。
言ってしまったらトゥは間違いなくアカデミーに囚われ、研究材料にされてしまうだろう。
いや、それによって、もっと惨いことが……。
「眼帯でも義眼でもない。生きた花が生えてるなんて普通じゃなくってよ。白状なさい。」
「私は、普通じゃないんです。」
「トゥ!」
棒読み言葉でトゥが言ったため、ルイズが慌てた。
「どう普通じゃないのかしら?」
「……私は、人間じゃない。」
「………そう。」
トゥを上から下までジロジロと見ていたエレオノールは、そう言った。
ルイズは、気が気じゃなく、冷や冷やしていた。
「まあ、いいわ。」
そう言ってトゥから視線を外した。
ルイズがホッとしていると、エレオノールは、ルイズを見て言った。
「主人が白状すればいいのよ。」
「……言えません。」
ルイズは、ギュッとスカートの裾を握って俯き精いっぱいな状態でそう言った。
「エレオノール、そこまでにしてあげて。」
「……仕方ないわね。いいこと、変な真似をするじゃなくってよ?」
「…はい。」
トゥは、そう機械的に返事を返した。
そして一同はカトレアが乗ってきた大きなワゴン型の馬車に乗って屋敷に向かった。
従者を同じ馬車に乗せるなんてっと、エレオノールが文句を言ったが、カトレアが大勢方が楽しいと笑って言ったため、渋々承諾したのだった。
馬車の中には、色んな動物がいた。
カトレアは、動物好きなのだとルイズが説明した。
トゥは、動物と…虎と戯れたり、蛇を首に巻いてみたりしていると、シエスタが怖がって気絶してしまった。
「シエスタ、大丈夫?」
トゥがシエスタを介抱した。
そうしてルイズの実家に着くのに夜までかかった。
***
ルイズの実家は、まさにお城のような家だった。
トゥは、キラキラと目を輝かせてルイズの実家を見上げていた。
大きなゴーレムが跳ね橋を下ろしたりするのも、わくわくした様子で見ている。
その様はまるで本当に子どものようで、カトレアは可愛いと言っていたし、エレオノールは呆れていたし、ルイズは…。
「トゥ、落ち着きなさい。」
「だってぇ…。」
「できる限りジッとしてなさい。」
「えー。」
このままでは、屋敷に入った途端に興味の赴くまま走り回りそうなので釘をさしておく。
やがて屋敷の中に入ると、案の定、トゥは、落ち着きなくキョロキョロと周りを見回し、ルイズに落ち着けと怒られても懲りななかった。
シエスタは、召使たちの部屋に案内され、トゥは、ルイズの使い魔なので晩餐会に同伴することになった。
トゥは、椅子に座ったルイズの後ろに控えて立っているだけである。
30メートルもある長いテーブルを使っているのは4人だけなのに使用人は20人ぐらいは控えている。その圧倒的さに、トゥは、ふわぁっと思わず声を漏らしていた。
「母様、ただいま戻りました。」
エレオノールが挨拶すると、ルイズの母親が頷いた。
ルイズは、緊張でカチンコチンになっている。
確かに緊張するのも頷ける。迫力が凄いのだ。ルイズの母親は。
そこからエレオノールがルイズが従軍するなどと馬鹿げたことを言っていると言った。
女の子が行くものではない、男が行くものだと。
だがルイズは反論し、エレオノールがアカデミーの研究員になれたのを例えに出して今は時代が違うと。そして自分は陛下に信頼されていると言った。
するとエレオノールが、どうして信頼されているのと疑問符を飛ばした。
ルイズは、唇をかんだ。自分が虚無の系統だということは、一部を抜いて秘密である。だから家族にも秘密であって、言うことができなかった。
さらにエレオノールが言おうとした時、ルイズの母親が食事中だということで止めた。
明日、父親が帰って来るから話はそれからだということになった。
***
トゥが案内された部屋は、納戸のようなスペースで、箒や雑巾があった。
トゥは、別にそれに不服があるわけじゃない。だが、なんとなくルイズ達との差というものを実感した。
ベットに座っていると、扉が叩かれた。
「開いてるよ。」
「あの…。」
「あっ、シエスタ。」
「眠れなくって…。」
「そうなの? 入って入って。」
トゥは、シエスタを招き入れた。
シエスタは、トゥの隣に座った。
「ラ・ヴァリエールのご実家は、トリスティンでも5本に指に入るほどの名家なんですって…。」
「すごいよね~。トリスティン城より大きいかも。」
「はあ…、爵位も、財産も、美貌も…何でも揃ってて…、私が欲しくても手に入らないものをたくさんお持ちなんですもの…。」
「シエスタ? 酔ってる?」
「酔ってませんよぉ。」
いや、酔っている。さっきから喋っているシエスタの口からワインの匂いがする。
「トゥさんも……。」
「私?」
「だってトゥさん…、ミス・ヴァリエールの使い魔で…。」
「私は使い魔だけど、ルイズのものじゃないよ?」
しかしシエスタは、ヒックヒックとしゃくりあげるように泣いていた。
トゥは、困り、とりあえず、シエスタの背中を摩った。
「トゥさんはぁ…、優しくって…、素敵で…、なのになんでミス・ヴァリエールのぉぉぉ…。」
「シエスタ、シエスタ。落ち着いて。」
「落ち着いてますよォ。」
するとシエスタは、シャツの隙間から酒瓶を出した。
「どこに入れてたの?」
「厨房のテーブルから失敬しました。」
「それ…ドロ…。」
トゥが言いかけた時、コルクを抜いたシエスタがグビリッと酒瓶から直接飲んだ。
その飲みっぷりは中々に見事である。
「飲めよォ、トゥ。」
「ふえぇ…。」
どうもシエスタは、酒癖が悪いらしい。意外な一面だ。
断ったら暴れだしそうな狂暴な目をしており、トゥは仕方なく差し出された酒瓶から酒を飲んだ。
ルイズは、毛布をかぶって、廊下をペタペタと歩いていた。
使用人達に、トゥがいる部屋を訪ね、納戸に向かった。
「べ…別に、トゥの匂いがしないから落ち着かいないとかそんなんじゃないんだから…。」
っと、誰に言うでもなく、ブツブツと自分に言い聞かせるように呟きながらトゥがいる部屋に行くと。
「あ、ダメだよぉ、シエスタ…。」
「ウフフフ。トゥさんのお胸、すっごい柔らかいです…。」
「そう言うならシエスタの胸だってすっごいよ。片手で持てないもん。」
「そうでしょう? ミス・ヴァリエールには、これだけは勝ってますよね?」
「ルイズ、すべすべだもん。」
「トゥさんは、やっぱりぺったんこより、大きい方がいいですよねぇ?」
「う~~ん。」
「悩むんですかぁ?」
なんかいかがわしい会話が聞こえてくる。そして怪しく艶っぽい息遣いも…。
ルイズは、カッとなって納戸の扉を蹴破った。
「あっ、ルイズー。」
「なんやってんのよ、あんた!」
「ルイズ、ルイズ~。」
「キャッ!」
「ああん、トゥさんってば!」
トゥは、ルイズに抱き付きそのままベットに押し倒した。
「なにす…。」
「ルイズ~。」
「こら! グリグリしないでよ! ちょ、酒臭…! あんた何飲んだのよ!?」
「強いお酒~。」
「あんたまた…。いや! ちょっと、どこ触って…、やっ!」
「ルイズ、すべすべ、気持ちいい…。」
「なによ! 胸が……、ないからって…あんた…!」
ルイズは、今トゥに襲われていることよりそのことで涙目になった。
「ルイズは、ルイズだよ? 胸がないとかあるとかそんなの関係ないよ?」
「っ…。」
トゥがにっこりと愛らしく笑った。その笑顔に、ルイズは思わず赤面した。
するとトゥの手がルイズの太ももを撫で上げた。
「や…、トゥ…、トゥ…本当に…マズイから…、やめて…。」
状況をやっと理解したルイズが涙目で懇願した。
「んー。」
するとトゥが、ルイズの口を己の口で塞いだ。
「むーー!」
ルイズはあらんばかりに暴れたが、トゥの身体能力にはまったく敵わない。
シエスタに助けを求めようと視線を向けると、シエスタは、床でスピスピと寝ていた。
「ぷは…! …トゥ…、お願い…、ダメ…。」
「ルイズ…。」
トゥの顔が、ルイズの首筋に埋もれた。
ルイズは、固く目をつむり、覚悟を決めた。
だが…。
「?」
ふと気が付くと、トゥは、ルイズに覆いかぶさったまま寝ていた。
ルイズは、トゥを横にどかしてトゥの下から逃れると、部屋から走って逃げって行った。
ルイズがいなくなった後、トゥはまったくそのことに気付くことなく、ムニャムニャと眠っていた。
エレオノールに目を付けられました。
最後の方、また酔ってルイズを襲いました。シエスタもダウンしたし、もしトゥが寝なかったらそのままいってたと思います。
次回は、お父さん登場だけど短めです。