逃亡。
そして出撃。
ルイズがなんか血迷ってます。ガールズラブ要素。
翌日。
バタバタと、トゥとシエスタが寝ている納戸にルイズの実家の使用人達が駆け込んで、箒や雑巾などの掃除用具を取りに来たことで、トゥとシエスタは目を覚ました。
使用人達の言葉から、ルイズの父親が帰ってきたことが分かった。
この後、トゥは、ルイズと合流したが、ルイズは、トゥをひと睨みし、そしてそっぷを向いて口を利かなかった。
昨晩のことを覚えていないトゥは、首を傾げた。
朝食の席で、またトゥは、ルイズの席の後ろで控えていた。
五十ぐらいの初老の男性を見て、ああ、この人がルイズのお父さんなのだと思った。
そこからの展開は、ざっくりまとめると、ルイズのお父さんは、戦争自体が反対、もちろんルイズが従軍することも反対、ゆえに戦争が終わるまで屋敷に閉じ込めて置けと執事に命令、ついでにルイズに婿を取れと命令、ルイズその場から駆け出す、トゥがルイズを追いかける。
ルイズを追いかけて中庭に来ると、中庭の池の小舟に乗って、池の中心に行ってしまった。
周りからルイズを探す使用人達の声が聞こえる。トゥは、茂みに身を隠し、ルイズがここにいることを知られないようにした。
小舟に乗っているルイズのすすり泣く声が聞こえる。
トゥは、周りの声が遠ざかると同時にウタを使って池の湖面を歩き、ルイズの傍に来た。
「ルイズ…。」
「トゥ…。」
「ルイズは、ただ、お姫様の役に立ちたいだけなんだよね?」
「……。」
「頑張りたいんだよね?」
「……。」
「……どうしても戦いたいの?」
「……。」
「じゃあ、逃げようか?」
「はあ?」
ここにきてルイズは、素っ頓狂な声を上げてトゥを見た。
「認めてもらうには、やっぱり実力を示さなくっちゃ。戦って、それで頑張った姿を見せればいいんだよ。」
「でもそんなことしたら…。」
「ルイズは、家族が大切なんだね。」
「……。」
「でもこのままじゃ、ルイズは、ルイズになれなよ。きっと。」
「あんただけ行けばいいのよ…。」
「えっ?」
「この戦争で陛下が期待されてるのはなにも私だけじゃない。あなたのあの、セントウキってのと、あんたの力が必要なのよ。私が従軍すれば必然的にあんたもついてくる。だから私は陛下に期待されてるの。」
「そんな…。」
「たぶん、あんただけでも十分。私、分かるもの。あんたの力…、想像を絶するわ…。あんたは、その気になれば5万のアルビオン兵相手でも戦えちゃう。それだけ強い。だからトゥ、あなたは…。っ。」
するとトゥがルイズを抱きしめた。
「ちょっと、トゥ!」
「イヤ。」
「なにがよ!」
「私、ひとりじゃ、イヤ。」
「っ!」
「ルイズも一緒。だって私…、使い魔でしょ?」
「トゥ…。」
トゥが、ルイズの方から顔を上げて、ルイズの顔を見てにっこりと笑った。
「……バカ。」
ルイズは、トゥを抱きしめ返した。
ムニュっとトゥの胸が当たった。
なんとなく、その胸に顔を押し当て、谷間に顔を埋めた。
トゥは、少し驚いたが、それでルイズが落ち着くならと好きにさせた。
グリグリと顔をこすりつけると、極上の柔らかさと弾力が跳ね返ってきて、だんだん癖になってきた。
「あ、あ…、ルイズ、ルイズ。」
「ジッとしてなさい。」
「あ…、ルイズ…、ちょっと…。」
「いいから。」
「そうじゃなくってぇ。」
「はっ?」
ルイズがガバリッと顔を上げると、周りには、顔をこわばらせたエレオノールと、使用人達で取り囲まれていた。
「あ……。えっと…、これは…、その…。」
ルイズは、顔を赤くした。
「妙な魔力を感じて来てみれば…、どういうことかしら?」
トゥは、自分の足元に光る天使文字を見てハッとした。
「なるほど、ただの人間じゃないことは確かね。いい研究材料が見つかったわ。」
「エレオノール姉様!」
「えー、ルイズを捕まえて、塔に監禁しなさい。少なくとも一年は出さん。鎖は頑丈なものを用意しろ。エレオノール、そこの得体のしれん女はおまえの好きにしなさい。」
「お父様!」
「あの青髪の女を捕えなさい!」
エレオノールの命令で使用人達が襲い掛かってきた。
トゥは、ルイズを抱きかかえ、高く跳躍し、使用人達の群れから抜け出した。
エレオノールも、ルイズの父親も素早く杖を抜き魔法を放とうとしたが、それよりも早く、トゥが片手でデルフリンガーを抜き、杖を斬った。そしてそのまま二人の横を駆け抜けていった。
そのまま門へと走っていると、跳ね橋が徐々に上がりだした。
トゥがウタを使おうとした時、跳ね橋を支える鎖が腐食し、切れた。
よく分からないがチャンスだと走っていると、すると、馬車が門の横から飛び出してきた。
ただ引っ張っているのは、馬じゃなく、竜だった。
「早く乗ってください!」
シエスタが震えながらそう叫んだ。
「シエスタ!」
「は、ははははは、早く…。」
シエスタは、竜に怯えていた。
トゥは、ルイズを馬車の中に突っ込むと。シエスタに代わって竜の手綱を握った。
全速力で走りだした竜の馬車。
シエスタは、トゥの横で振り落されないようにトゥの腕にしがみついた。
それを馬車の中から見ていたルイズは、ギリッと歯を食いしばった。
エクスプロージョンを唱えようとして、ギリギリで止めた。
一々使用人に虚無を使うなんてしなくても、トゥは、自分のものだ。誰が何と言おうと。例えそれが姉でも渡すものかと、ルイズは、そう決意した。
***
学院に逃げ帰って一か月。
戦闘機を戦場に持っていくため、トリスティン城から使者が来たり、それを積むための船が作られたり、土のメイジ達ががんばって燃料を大量に作ったりと色々とした。
戦闘機には、コルベールが作った新しい兵器も積まれ、あとは、戦闘機を新鋭の艦に着艦するだけである。
今朝がた、トリスティンの艦隊がアルビオンに向けて出港した。戦闘機を着艦しなけれならないのは、すでに出発した新鋭の船があるからだ。
「行くのかね?」
「はい。」
戦闘機に乗る前にコルベールがトゥに話しかけてきた。
「本当は止めるべきなのだ…。君を戦場に送るわけにはいかない。君の花は危険だ。」
「……。」
「だがこの戦争に勝たなければ、もっとたくさんの犠牲が出るだろう。それを防ぐには君の力が必要だ。矛盾していると思うかい?」
「……私が頑張れば、この学校の生徒さん達も無事に帰ってこれます。」
「……ありがとう。すまない。」
「いいえ。」
トゥは、にっこりと笑った。
「トゥ。準備ができたわ。」
「遅いよ。ルイズ。」
「色々と準備することがあるのよ!」
ルイズは、ブツブツと言いながら、梯子を使って戦闘機のコックピットに登り、後ろの席に座った。
「じゃあ…、行ってきます!」
「…ああ。」
トゥが元気よく、そして笑顔で言うと、コルベールは短く返事を返した。
トゥは、操縦席に座り、戦闘機を飛ばした。
コルベールは、空へ舞い上がり、彼方へ飛んでいった戦闘機をずっと眺めていた。
トゥの胸を堪能したルイズ。
エレオノールに狙われたトゥ。
なんか、コルベールとの親密度が上がってるような気がする…。