二番目の使い魔   作:蜜柑ブタ

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この世界の竜について色々と捏造しないといけないなと思う今日この頃。
少なくともDOD3の世界の竜とは別種族だけど、近い種族ということにしましょうか。
なので花に対して反応しますし、食欲を刺激されます。

トゥが若干狂気。



第二十七話  トゥと、竜騎士

 

 トゥは、戦闘機を飛ばし続け、やがて空中艦隊と合流した。

 戦闘機を着艦する予定の艦、ヴュセンタール号を見つけたが、戦闘機を着艦させるには甲板の距離が短かった。

 そのうえ、戦闘機のスピードが彼らが思っていたよりも速過ぎた。

 スピードを落とし過ぎると墜落するため、難儀した。

 そこでトゥは仕方なくウタを使い、急ブレーキをかけつつ、魔力のクッションを作り、戦闘機を着陸させるために用意されていたロープの網と、風の系統の魔法でなんとか着艦した。

「ふう…。」

「トゥ、大丈夫なの?」

「もうちょっと大きな船だったらよかったんだけど…。」

「それは贅沢よ。」

 折角の戦闘機を乗せるために作った艦が、まさか戦闘機に合ってなかったなどと、いまさら言われても遅い。

「これだとウタを使ってスピードを上げないと飛べないかも。」

「これから戦うのに、無駄な体力を使うってこと?」

「うん。」

 どうやら思っていた以上に現状は厳しいらしい。

 

 

 戦闘機から降りたトゥとルイズを、甲板士官が出迎えた。

 そして二人を船内に案内する。

 士官は、最初に名乗ったっきり何も喋らなかった。こちらの質問にも答えてくれなかった。

 まず二人が過ごすための部屋に案内された、酷く狭い部屋だったが個室である。そこに荷物を置いて、さらに別の場所へ案内された。

 ジグザグに進んでいき、やがて案内されたのは、会議室のような部屋。

 そこにとても階級が高そうな人達が並んで座っていた。

 それから、階級が高そうな人達…、将校達がそれぞれ名乗った。

 そしてルイズ達の紹介となったが、彼らは胡散臭そうにルイズとトゥを見た。

 そりゃそうだ、あのタルブでの奇跡の戦いを勝利に導いたのが、女子供とあっては、胡散臭くもなるだろう。

 この艦が極秘であり、竜騎士達と戦闘機を乗せるため、大砲も積んでいない総司令部であることなどを説明された。

 そして軍議が始まったが、軍議は難航した。

 まず、タルブで殲滅した十数隻を抜いて、アルビオンには、まだ40隻ほど艦隊が残っており、寄せ集めの軍隊であるこちらに指揮系統の混乱が起これば、練度の高い相手に負ける可能性が高いこと。

 次に、6万の兵を下ろせる場所。これは、アルビオンの二か所のどちらかとなる。しかしまっすぐ船を進めれば当然だがすぐに見つかり、敵の攻撃を受けることになる。そのため奇襲が必要とのこと。

 そこでルイズの虚無でまた艦隊を吹き飛ばしてくれないかと頼まれたが、ルイズは首を振った。

 いわく、あんな爆発を起こすには、相当な時間を要して精神力を溜めなければ撃てないのだと。

「そんな不確かな“兵器”は切り札とはいわん。」

 ルイズを兵器として扱う彼らに、トゥが持っている剣を握りしめたが、ルイズがトゥのもう片手を握って止めた。

 そして軍議に結果としては、ルイズに奇襲をかけるための魔法を選定をし、陽動を行ってもらういうことで落ち着いた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 会議室を出た後。ルイズは、べーっと会議室に舌を出した。

「なんだかイヤな感じ…。」

「そうね。それにあの人達、私のこと、駒としてしか見てないわ。」

「そうだね。でも…、そうじゃないと、戦えないんだと思う。…?」

 ふと視線を感じたトゥがそちらを見ると、貴族と思われる少年達がこちらを見ていた。

 リーダー格と思われる者が顎をしゃくり、来いと言葉を言わずに示した。

「トゥ? ちょっとどこに行くのよ?」

「? 来いって言うから…。」

「やめなさいよ。ロクなことにならないわよ。」

「えー。でも、行く。」

「あー、もう!」

 さっさと行くトゥを、ルイズが追いかけた。

 彼らについていくと、甲板にロープで括りつけられた戦闘機のところに来た。

 トゥがナニナニ?っと聞くと、少年の一人が、恥ずかしそうに聞いた。

 これは生き物なのかと。そう言って戦闘機を指さした。

「違うよ。」

 トゥは素直に答えた。

 すると少年達は、がっかりしたり、ガッツポーズを取ったりと色々な反応をして金貨を出したり受け取ったりしていた。

 どうやら賭けをしていたらしい。

 それから彼らに戦闘機のことを説明した。しかし彼らには魔法以外の力で飛ぶことのできる物のことを理解できないようであった。

 戦闘機の説明が終わった後、彼らの中で太っちょの少年が自分達は竜騎士だと説明した。

 それから彼らが乗る竜のもとへ案内された。

 タバサのシルフィードよりも二回り大きい竜がそこにいた。

 竜騎士になるのは大変なんだと彼は言った。いわく、竜はとても気難しく、使い魔として契約した以外では、自分に乗るにふさわしいかどうかを見定めるらしく、そのために様々な面を見られ、油断ならないのだという。

 トゥが、ジーッと竜を見ていると、寝ていた竜がパチリッと目を開けて、トゥを見た。

 途端、グワッと大口を開けてトゥを喰おうとした。

 竜騎士の少年はびっくりして大慌てで手綱を握り、竜を落ち着かせようとした。

 その騒ぎに気付いた他の竜騎士の少年達も、急に騒ぎ出した他の竜を落ち着かせるべく動いた。

「ちょっと! どんな躾してんのよ!」

「ああ…、よかった。」

「何が良かったよ! あんた食べられそうになったのよ!?」

「この世界の竜は、私を食べてくれるんだ…。」

「…トゥ…?」

 トゥの横顔を見て、ルイズは戦慄した。

 彼女は、喜んでいたのだ。涙が出そうなほど。

 ルイズは、思わず怖くなってトゥから一歩離れた。

 トゥの右目の花を見て、まさか…っと思った。

 そういえば、タバサのシルフィードに、トゥが食べるかと聞いてシルフィードが涎を垂らしていた。

 トゥのあの花は、竜にとって極上の食べ物なのだろうか?

 恥じもなく涎を垂らして、見た途端に食べようとするほどに…。

 やがてなんとか騒ぎは収まった。

 しかし隙あらばトゥが竜に近寄ろうとするため、ルイズは、トゥを掴んで部屋に引きずって行った。

「ルイズぅ…。」

「あんたに今死なれたら、誰がセントウキを操縦するのよ!」

「っ…。」

 そう言われたトゥは、引っ張られながら悲しそうに眉を寄せた。

 

 

 与えられた部屋に入ったルイズは、トゥを無理やりベットに寝かせ、寝入ったのを確認すると、始祖の祈祷書をめくって、陽動に使える呪文を探した。

 意識を集中し、慎重にめくっていくと、やがて一つの呪文が浮かび上がり、ルイズは笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 そして始まる戦争。

 ルイズが虚無の呪文を会議で発表し、その呪文を取り入れた作戦が組まれた。

 こちらがアルビオンの、ダータルネスの港に向かうように見せかけるため、ルイズを運ぶために戦闘機による出撃となった。

 しかし距離が足りないため戦闘機が飛べそうにない。

 なんとか揚力を得ないといけないので、トゥとメイジ達ががんばるが、コルベールと違いうまく伝わらず困った。

 仕方なくトゥは、ウタを使い体力の消耗を覚悟で揚力を得ることにした。

 竜騎士達が先導しようとしたが、戦闘機のスピードが速く竜騎士達がついていけない。

 仕方なく置いていき、トゥは操縦桿を操作してダータルネスを目指した。

 瞬く間に眼前に敵の竜騎士達が群がってきた。

 そしてふと気づいた。

「武器…ない。」

 ミサイルは、タルブで撃ち尽くした。

 機関銃が残っているが、残弾数からいって心もとない。

 あとは、ミサイル発射口から撃つウタを使った大魔法だけだ。しかしこれは凄まじく体力を消耗する。連発はできない。

「あ、そうだ。コルベール先生が新しく武器を付けてくれたんだっけ!」

 それを思い出し、トゥは、手紙を取ろうとしたが、操縦桿から手を離せられないので困った。

「ルイズー、ごめん。コルベール先生の手紙取ってー。」

「なによ。」

「読んでー。手が離せないの。」

「分かったわよ。」

 ルイズがゴソゴソと動いて、手紙を取って広げた。

「えーと…、炎蛇の秘密?」

「新しい武器のこと書いてあるはずだから、読んでー。」

「えー、まずは心を落ち着けて、エンジンの開度を司る棒の隣に取り付けられたレバーを引きたまえ…。」

「これ?」

 トゥがそのレバーを引いた。

 すると前の計器の下に隠されていた蓋から、ヘビの人形が顔を足て、言葉を発した。

『トゥガンバレ! トゥガンバレ! ミスヴァリエールガンバレ!』

「なにこれ?」

「先生…。」

 ルイズもさすがに頭を抱えた。

 トゥは気にせずルイズに続きを求めた。

「えーと…、追いかけられた時は愉快なヘビ君の舌を引っ張ってみたまえ、おっと、注意! 周りに味方がいる場合はなるべく近づいてもらいなさい。」

「どういうこと?」

「分かるわけないでしょ!」

「うーん…。でもこのままだとまずいから…。やってみよう!」

 トゥは、追って来る敵の騎士を見て、決心した。だが肝心の味方は置いて行ってしまった。

 仕方なくこの状態から秘密兵器を発射することにした。

 トゥは、ヘビ君人形の舌を引っ張った。

 しかし何も起こらない。

「あれ?」

「先生…。」

 またおかしな仕掛けをしたのか。それも不発かっとルイズが呆れていると、それは突然起こった。

 何本もの火薬で進む巨大な火矢が後方のアルビオン竜騎士に向かって飛んでいき激突した。

 追手の竜騎士達は半減し、戦意を失ったのか撤退していった。

「やった!」

「すごいすごい! 先生凄い!」

 その威力にルイズも感心し、コルベールを賞賛した。

 しかしふと前を見ると、そこには、先ほどの竜騎士達以上の数の竜騎士達が待ち構えていた。

「まずい…。」

 トゥは、大きく息を吸った。

 そしてウタった。

 ミサイルの発射口から放たれる大魔法。

 それにより、竜騎士達は消滅していく。

「うっ…。」

「トゥ!」

「一旦引き返すよ…。」

「逃げる気!?」

「違う、このまま反転して戻るの。このままじゃ敵の中心に入っちゃうから…。」

 そう言って操縦桿を操作してUターンした。

 その時、戦闘機と入れ替わりに、味方の竜騎士達が戦闘機の横を通り過ぎた。

「あれは…。」

 あの少年達だ。

 戦闘機がUターンしたことで、一見すると撤退したように見えたのか、敵の竜騎士達が、味方の竜騎士達にターゲットを定め、群がった。

「ああ!」

 圧倒的な敵の数に臆さず突き進む味方の竜騎士達の姿に、トゥは悲鳴を上げた。

「トゥ! 行くのよ!」

「ああ…あああ…。」

「彼らが敵の注意をひきつけている、今しかないわ!」

「あ…う…。」

「私達の任務は、ダータルネスの港に虚無の呪文をぶち込むことよ! 彼らの勇気を…死を無駄にする気なの!?」

「っ!」

 そう言われ、トゥは、カッと目を開き、操縦桿を握りしめ、敵に後ろを見せていた戦闘機をターンさせてダータルネスを目指した。

 味方の竜騎士達はすでに敵の中に飲まれてしまった。

 トゥは、唇を噛みしめ、敵の横を通り過ぎた。

 やがて見えたダータルネスの港。

 ルイズは、詠唱を始めた。

 

 初歩中の初歩。

 幻影を作る魔法。

 イリュージョン。

 

 雲が消え、そこに巨大な戦列艦隊が描かれ、見るものを圧倒した。

 

 ダータルネスの空に幻影を浮かべた後、たった一機になってしまった戦闘機とトリスティンの艦隊が合流する合流点へ向かった。

 

 

 黙っているトゥ。

 ルイズは、何も言わない彼女を心配した時、コルベールの武器の説明書に手紙が添えられていることに気付いた。

 それを口に出して読んだ。

 そこには、コルベールの想いが綴られており、そして彼が過去に大きな罪を犯したことについての懺悔が書かれており、死にたいする彼の想い、そして戦闘機などの科学があるトゥの世界への憧れが綴られていた。

 手紙を読み終えた時、トゥの微かにすすり泣く声が聞こえた。

「なに泣いてるのよ…。」

「分かんない…。でもねルイズ…。私のいた世界は……、世界は…、たぶん、ここよりもずっと…残酷…。」

 トゥは、そう語った。

 

 




この展開はかなり難しかったです。

ハルケギニアの竜種は、DOD3の竜種と近いけど別種ということにします。
けど近いので花に反応するし、食欲を刺激されます。けどミハイルに比べるとその欲求自体は低め。なのですぐに落ち着きます。
もしも食べたら……、ミハイルのように、なるかも?

ハルケギニアとDOD3の世界。どっちが残酷でしょうかね…。

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