胸を鷲掴みにしたり、揉んだりする描写あり。
翌朝。
目を覚ましたルイズの目線の先に、ちょうど、トゥの胸元があった。
トゥの…、甘い匂いがする。
トゥがいる。生きている。帰ってきてくれたのだ。
たまらず寝ているトゥの体に抱き付くと、顔がトゥの胸に埋もれた。
ああ…、この感触も久しぶり…っと、ルイズがグリグリとトゥの胸に顔をこすりつけると、寝ているトゥがぐずった。
このままだとトゥが目を覚ますが、やめられない。この感触、癖になる。
「ミス・ヴァリエール……。」
地を這うような声が聞こえて、ルイズは、ハッと顔を上げると、部屋のドアを開けているシエスタが立っていた。
「あ…、これは…その…。」
シエスタに見られた事実に、ルイズは、カーッと顔を赤くした。
「ノックしてもお返事がないのでドアを開けさせてもらいました。…何を…、してらっしゃるんですか?」
「堪能してたのよ。」
ルイズは、開き直った。そしてハッキリと言ってのけた。
ルイズは、起き上がって、堂々と腰に手を当てて胸を張った。
「ふふん…。トゥは、私の使い魔だもの。トゥの体を堪能して何が悪いの?」
「寝ているトゥさんに淫らな真似をするなんて…。卑劣です!」
「勝手に言うがいいわ。羨ましいでしょう?」
ホッホッホっと、高笑う。
シエスタは、拳を握り、クッとなった。
「…ルイズ~?」
「ハッ!」
眠たそうなトゥの声が聞こえて、ルイズは我に返った。
これだけ騒げば、そりゃ起きる。
「お…、おはよう。」
「おはよう。ルイズ。」
トゥは、片手で左目をこすりながら起き上がった。
そして寝起きのぽや~っとした状態で笑顔になった。
その様子が可愛くて、ルイズは思わずドキリとしてしまった。
「あれ? シエスタもいたの?」
「あ、はい。」
怒っていたシエスタは、瞬時に表情を変えた。そこらへんはさすが魔法学院のメイド。
三人は、部屋から出て居間の方に行くと、ティファニアが朝ごはんを作っていた。
「手伝うよ。」
「ありがとう。」
居間に来るなりティファニアの手伝いを始めたトゥ。
「私も手伝います。」
シエスタが挙手した。
「わ、私も…。」
「ルイズは、座ってて。」
「なんでよ!」
「ひっくり返したらもったいないでしょ? 子供達の分が減っちゃう。」
「なによ! 私がひっくり返すこと前提!?」
「魅惑の妖精亭でいっぱい料理ひっくり返したでしょ?」
「うっ…。」
確かに給仕をした時に、運び損ねた料理は結構あった。飲み物だってこぼしている。
言われてしまったルイズは、大人しく椅子に座って、朝ごはんの用意が済むのを待った。
ルイズは、椅子に座ったまま、ティファニアを見ていた。
美少女だ…。本当に美少女だ。同じ女の自分がそう認めてしまわざる終えないほど美しい。まるで妖精だ。
自分からトゥが離れている間に、トゥはずっとここで世話になっていのだから、当然それなりに仲良くなっているので、トゥとティファニアは打ち解けている。
それにたいして、なぜかムカムカしてしまう自分がいる。
ティファニアに目が行っていると、シエスタとトゥが笑い合っているのが目に入った。
そうするとムカムカしていた気持ちがもっと高まる。
クーっ!と地団太を踏みそうになるのを堪え、ひたすら待った。
「あっ。」
「キャッ!」
床に凹みがあったのかそれに躓いたトゥがティファニアの胸に向かって倒れてしまった。
ティファニアの豊かな胸に…、トゥの顔が埋まる。
ルイズは、目を見開いた。その胸…っというには、あまりに凶悪な大きさに。衣装の所為で分かり辛かったが、トゥの顔が埋まって初めて分かった。
ルイズは、思わず自分の胸を見おろした。
そこには何もない。
立ち上がったルイズは、フラフラと外へ出て行ってしまった。
***
朝食の準備ができたので、ルイズを探しに来たトゥは、樫の木の影で座り込んでいるルイズを見つけた。
「ルイズ、ご飯だよ?」
しかしルイズは何も答えない。
トゥは、ルイズの傍に膝をついて体操座りをしているルイズの顔を覗き見るように首を動かした。
「ルイズ?」
「……ね…。」
「えっ?」
「いいわよね……。あんた達は…。」
「えっ? なにが?」
「自分の胸に聞きなさいぃぃぃ!!」
「ひゃっ!」
いきなり叫んだルイズに、両胸を鷲掴みされた。
「なんなの! 何がいけないのよ!? 栄養? 環境? 遺伝!? どうやったらこんなになるのよ!」
「る、ルイズゥ……。」
「あの中じゃあんたのは、そんなに大きかないけど、この感触は何!? 触り心地はなに!? なめんてんの!? ない私をなめてんの!?」
「そ、そんなことない、よ…。」
「ええ!? どうなのよぉぉぉ!?」
「分かんないよォ…。」
トゥは、涙目になった。
あらかた叫び、ゼーゼーと息を切らしたルイズは、だんだんと落ち着いてきて、ふと我に返った。
手に伝わる素晴らしい弾力と柔らかさに気付くと、慌てて手を離した。
「ご…ごめん…。」
「落ち着いた?」
「…うん。」
「ご飯。食べれる?」
トゥが聞くと、ルイズは頷いた。
「じゃあ、行こう。」
「…うん。」
トゥに手を引かれて立ち上がったルイズは、そのままティファニア達のいるところへ戻った。
ルイズがいなくなったので待たされた子供達は、空腹で文句をブーブー言ったが、ティファニアが収め、みんな揃ったところで朝食となった。
***
朝食後。
ルイズは、気になりだしていた。
ティファニアが帽子をずっと被っているのを。
妖精のごとく美しい少女のあの帽子の下には、もしや本当に妖精のような人外的なものが隠されているのだろうか。
食事の時でさえ外さないのだ。よっぽど見られたくないものがあるのだろう。
ふと、トゥの右目の花のことを思い出した。
得体のしれない花に寄生されているトゥだって、純粋な人間とは言い難いのだ。
子供達ばかりのこの村で、子供達は、ティファニアの帽子には触れていない。トゥの花にだって触れていない。
気にしてはいけないのだ。だが気になる。
「ねえ、トゥ。」
「なぁに?」
「あの子の帽子の下って、どうなってるの?」
「えっ…。」
ルイズに聞かれてトゥは、固まり口ごもった。
やはりトゥは、知っていると、ルイズは確信した。
「教えなさい。」
「……イヤ。」
「教えなさい。」
「イヤ。」
しつこくルイズは、聞いたが、トゥは首を振って拒否し続けた。
ここまで頑なに教えてもらえないとますます気になって来る。
そこでルイズは…、徐にティファニアに近づいた。
「あっ。虫がついてるわよ。」
「えっ? どこ、どこ?」
「そこじゃないわ。」
「! ダメ!」
ティファニアがキョロキョロと体を見ている隙に、帽子に手をかけた。トゥが慌てて止めようとした時には。
ルイズは、大きく目を見開いた。
「あっ…。」
「なんで…、エルフがいるのよ?」
帽子を取られ、露わになったツンと尖った耳を見て、ルイズは、震える声で言った。
「違うの、違うのルイズ!」
ルイズとティファニアの間に割って入り、ティファニアを庇うよう立ったトゥが叫ぶ。
ルイズは、慌てて杖を向けた。
『落ち着け、娘っ子。』
「これが落ち着いてられると思ってるの! エルフよ!」
『この娘は、ハーフだ。お前さん達の敵じゃねぇ。』
トゥの腰にあるデルフリンガーが杖をティファニアに向けるルイズを説得した。
『それとも何か? 家に泊めてくれた恩人をぶっ殺すのが貴族の流儀か?』
「そんなことしないわよ!」
『じゃあ、杖を降ろしな。』
デルフリンガーに言われ、ルイズは、ティファニアを睨みながら渋々杖を下ろした。
トゥは、ホッとし、後ろにいるティファニアは、怯えた様子でトゥの背中に隠れていた。
朝食後の食器を片付けてから、話し合いになった。
ルイズは、ティファニアの事情を聞いても終始ティファニアを警戒していた。
ルイズに睨まれ、縮こまるティファニア。
その細い腕で、胸が挟まれ…、強調される。
ルイズは、突然立ち上がり、ティファニアの隣に来た。
そしてティファニアの胸を掴んだ。
「きゃっ!」
「これ、偽物でしょ。」
「ち、違います…。」
「嘘。」
「ほ、本当です…。」
「こんな、手足が細い癖に、ここだけはしゃいでるってどういうことなの!?」
「あう、あうあうあうあう…。」
「でも触り心地は、トゥのが上ね。」
ルイズは、フッと勝ち誇ったように笑ってティファニアから手を離した。
「ティファちゃんを虐めないで!」
「ねえ、トゥ? あなた、大きいのと小さいの、どっちがいいの?」
「えっ?」
急に聞かれてトゥは、ポカンッとした。
「ねえ? どっち!」
「えっ? えっ? えっ?」
ルイズに詰め寄られ、トゥは、あわあわと手を動かし混乱した。
「トゥさんを虐めないでください!」
シエスタがトゥとルイズの間に割って入ろうとした。
なんだかよく分からない展開になり、ティファニアは座ったまま、ポカーンとしていた。
なんやかんやあって、ルイズは、納得し、ティファニアを睨まなくなった。
2、3日過ごした後、トリスティンに戻るために出発することになった。
「ティファちゃん。本当にありがとう。」
「そんな、お礼なんて…。」
「でもティファちゃんのおかげで、私助かったようなものだし…。何かあったら助けるからね?」
「ありがとう。」
「ティファちゃん…。」
「なんですか?」
「よかったら…、一緒に来る?」
「えっ?」
「ごめん。行けないよね…。」
トゥは、ティファニアの傍にいる小さい子供達を見回した。
「ごめんね…。変なこと言っちゃって…。」
「いいんです。誘っていただいて嬉しい。」
謝るトゥに、ティファニアは、微笑んでそう言った。
「本当に、ありがとう。」
「トゥ、行くわよ。」
「じゃあ…、またね。」
「はい。また…、またね。」
ルイズに呼ばれたトゥは、ティファニア達の方を何度も振り返りながら、行った。
***
ヴュセンタール号の出迎えでトリスティンへと戻ったトゥを待っていたのは、トリスティン城での称号の授与だった。
キョトンっとするトゥに、アンリエッタが言った。
「アルビオンの将が、あなたが七万の軍を足止めしていたと語ってくれました。」
「私は…。」
「ありがとうございます。あなたのおかげで我がトリスティン軍は、無事に戻ってくることができたのです。」
「私は…。別に…。」
「何度お礼を言っても足りませんわ。」
トゥは、ほとんど覚えていない。ほとんど意識を飛ばした状態でウタい続け、戦っていたのだから。
そこでっと、アンリエッタは、頭を上げ、何か書かれた紙をトゥに渡した。
「? これって…。」
「近衛騎士隊隊長の任命状じゃない!」
横から紙を見たルイズが驚いて声を上げた。
「このえ…たいちょう…。」
トゥはその言葉を呟いた。
「姫様! トゥを貴族にするというのですか!」
「ええ。彼女の働きは、彼女を貴族とするには十分な働きをしています。更に、此度のアルビオンでの撤退をも成功に導いてくださったこと…、トゥさん、あなたはこの国の歴史に名を残せる英雄です。」
「えいゆう?」
「で、ですが、姫様…。トゥは、この通り平民です! ええっと…、平民と言うには得体が知れないといいますか…。それにトゥは、私の使い魔です!」
「ええ、その事実は変わりません。ですが、貴族になればあなたのお手伝いもやりやすくなるはず。違います?」
「でも、でも…、私の虚無は秘密のはずじゃ…。」
「もちろん、秘匿です。使い魔さんがガンダールヴであることは、わたくしとアニエス、学院長のオスマン氏、及び国の上層部しか知りません。彼女は、これからも武器の扱いに長けた戦士として振る舞ってもらいましょう。」
「つまり…、どういうこと?」
トゥは、首を傾げた。
隣にいたルイズがずっこけた。
「あ、ああああ、あんた聞いてなかったの?」
「よく分かんないんだもん。」
「つまり、あなたは、これから貴族になるの。」
「私、メイジじゃないよ?」
「メイジじゃなくってもするって、姫殿下が言ったのよ!」
「えー。」
そう言われてもトゥには、いまいちだった。
「引き受けてはもらえませんか?」
「…ちょっと、考えさせてください。」
「分かりました。ですが、あなたのシュヴァリエの称号授与は、すでに各庁にふれをだしました。断られると、わたくしが恥をかいてしまいます。」
「…分かった。」
トゥは、そう言われて渋々頷いた。
ルイズは、終始難しい顔をしていたが、頷いた。
それから、シュヴァリエの称号を与える叙勲が行われた。
「これからもこの弱い女王を、あなたの持つ力のほんの少しでいいからお貸しくださいますよう。シュヴァリエ・トゥ殿。」
「はい。」
ルイズは、アンリエッタの前で片膝をついて頭を下げているトゥを見て、複雑そうな顔をしていた。
序盤、難儀しました。
ティファニア、シエスタ、この二人と並ぶと、トゥの胸はそこまで大きくはないということにしました(※Dカップ)。けど触り心地は群を抜いています。
次回は、シュヴァリエの称号を手にして貴族なってからの日常の変化を書きたいと思います。