なにせ同性同士ですからね…。原作のようにイチャコラとはいきません。
そもそもルイズの恋心の芽生えの描写が難しいです…。
今回は、ルイズの自覚かな?
後日。
トゥは、ぶらぶらと校内を歩いていた。
ルイズから、休めと言われ、授業に出ないことになったので暇を持て余したのだ。
適当に歩いていると、やがて図書館に辿りついた。
そこは、本来は平民が入れない場所だが、シュヴァリエのマントを身に着けているトゥは、通された。
「うわぁ。いっぱい本がある。」
高さは、30メートルはありそうな大きな本棚が並んでおり、その光景はすごい。
「…ワン姉さんの書斎もいっぱい本があったけど、ここはもっとある…。」
図書館は、学院の本塔にあるのだが、本塔の大部分が図書館となっているらしい。それくらいの本の量だ。
「面白い本、あるかな?」
適当に本を取ってペラペラとめくる。が、すぐに閉じてしまった。
「分かんない。」
トゥには分からない魔法や秘薬についての内容ばかりだった。
「ワン姉さんなら、分かるんだろうなぁ…。」
彼女は、難しい本ばっかり読んでた記憶がある。
自分に読める本はあるだろうかとキョロキョロと探していると、後ろから誰かにツンツンとつつかれた。
「ん? あ、タバサちゃん。」
振り返ると、そこには、タバサがいた。
「これなら、読める?」
「これは?」
「…『イーヴァルディの勇者』。」
「んー。これは…、おとぎ話?」
ペラペラと適当に内容を見てから聞くと、タバサは頷いた。
「読んでもいい?」
「いい。」
トゥは、椅子に座り、机の上に本を開いて読みだした。
なぜかタバサがトゥの隣に座り、ジィっとトゥの様子を窺うように見ていた。
トゥは、最初のプロローグ部分からきちんと読み出し、やがて物語の内容にのめり込んだのか真剣に読むようなっていった。
「…ふう。」
そして読み終わったトゥは、本を閉じた。
「面白かった!」
「よかった。」
タバサが微かに微笑んだ。
「ねえ、タバサちゃん。これ借りてもいい?」
「これは図書館の本。だから借りるときはきちんと貸出簿に記入する。」
「分かった。」
『イーヴァルディの勇者』を借りたトゥは、ルンルン気分でルイズの部屋に戻った。
そこへ、ルイズが帰ってきた。
「あら、トゥ。本なんて読んで、珍しいわね。」
「うん。タバサちゃんがお勧めしてくれたの。」
「タバサが?」
ルイズは、トゥが呼んでる本の題名を見た。
「やだ、イーヴァルディの勇者じゃない。」
そう言って顔を歪めた。
なぜ顔を歪めたのか分からず、トゥは首を傾げた。
「そんな本、学院にあったの?」
「えっ? なんで?」
「それ平民向けの本よ。」
「それが何か悪いの?」
「ここは貴族の学院よ? そんな本あったって何にもならないわ。」
ルイズが言うには、イーヴァルディの勇者は、平民向けの物語と言われるほどいい加減で、原典が存在しないため文学学者もほとんど調べようとしないものらしく、伝承やその物語の展開そのもののバリエーションが豊富で、主人公である勇者も男であったり女であったり、実にいい加減らしい。
「読むんならもっとためになる本にしなさいよ。」
「でも、他の本って難しいのばっかりなんだもん。」
「私が選んであげる。」
「でもこの本、気に入ったんだもん。」
「読むのをやめなさい。」
「イヤ。」
「やめなさい。」
「イヤ。」
「なによ! 私が折角選んであげるって言ってるのに!」
「人の好みはそれぞれだよ。」
トゥは、ツーンっとそっぷを向いた。
「この…、生意気言って!」
「ふひゃ!」
ルイズに飛び掛かられ、トゥは、ルイズと共にベットに倒れた。
「このこの!」
「あははははは! くすぐったい、くすぐったいってば!」
ルイズにわき腹をくすぐられ、トゥは、悶えた。
「お返し!」
「きゃっ! ちょっ、くすぐった…、やめ、あー!」
キャーキャーっと、二人はしばらくくすぐり合った。
その時、ふいに我に返ったルイズ。
ルイズは、ちょうどトゥを押し倒しているような体勢になっていた。
自分の下でヒーヒーっとひきつけを起こしかけて顔を赤くして笑っているトゥ。白い肌がほんのり色づいていて、とても色っぽい。
……なんかヤバくないか?
「……ルイズぅ?」
舌足らずな声でトゥが名前を呼んだ瞬間、ルイズは、ボンッと顔を赤くさせた。
そしてルイズは、トゥの上からどくと、一目散に部屋から飛び出していった。
「???」
残されたトゥは、身を起こし首を傾げた。
その日、寮の廊下を突っ走りながら、『違う違う!!』っと叫ぶルイズが目撃されたという。
***
その夜。
今日も今日とでシエスタを入れて三人で寝ている。その最中、ルイズは目を覚ました。
横を見ると、ちょうどトゥの顔があった。
その寝顔に思わずドキリとしてしまう。
更に可愛いとさえ思ってしまう。
「…どうしちゃったのかしら、私?」
なぜか、ドキドキする。
自分の顔が赤らむのを感じる。
「いくらなんでも…、使い魔に…、それも同性に…、違う違う、なんでそうなるのよ? なんでそんなこと考えてるのよ、私。」
身を起こして、ブンブンと首を振って頭をよぎるモノを振り払おうとする。
しかし、次から次に湧いて出て来る。
トゥが可愛い。
トゥが綺麗。
トゥがカッコいい。
トゥ……、好き。
「ああああああああああああああ!」
「ルイズさん…、うるさいですよ。」
「ちょっと黙っててぇぇぇぇぇぇ!」
「むー…、ルイズ、うるさいよぉ…。」
「ご…ごめん。」
トゥに文句を言われた途端、急にしおらしくなるルイズ。
そんなルイズの様子に、寝ぼけながらもシエスタは、不審を感じた。
翌日。
ルイズの挙動が、おかしかった。
トゥをまっすぐ見ない。トゥが話しかけるとしどろもどろする。
その顔がほんのり色づいていることに、シエスタはすぐに気付いた。
気付いたシエスタは、顔を青くさせた。今までルイズは、トゥにはそんな恋愛感情的な物はなかったはずだ。それが何かの拍子に芽生えたのだとしたら、トゥの告白して断られた自分は不利になるかもしれない。
それだけは、避けなければ!っと、シエスタが決意した時。
「ねえ、ルイズ。変だよ?」
「べ、べべべ、別に変じゃないわよ…。」
「変だよ。じゃあ、私の顔ちゃんと見て。」
「っ…。」
「ねえ、見てよ。」
ルイズの顔を見ようとすると、ルイズは、ぷいぷいと別方向を向いてしまう。
「…ルイズ!」
「ひゃっ!」
我慢の限界だったトゥは、両手でルイズの顔を掴み自分の方に向かせた。
トゥの顔が目の前にある。
ルイズは、耐え切れず顔を赤くさせた。
「ルイズ?」
「あぁ…。」
「?」
「…好き。」
「えっ?」
「ルイズさん!」
シエスタが叫んだ。その叫び声でハッとしたルイズは、トゥを振り払って逃げ出した。
「る、ルイズ?」
戸惑うトゥと、ハーハーと荒い呼吸を繰り返すシエスタが残った。
「今、ルイズが…。」
「トゥさん!」
「好きって…。」
「トゥさん!」
「なぁに、シエスタ?」
「まさか本気にするんじゃありませんよね!?」
「えっ?」
「ミス・ヴァリエールがさっき言ったことをですよ!」
「……。」
必死なシエスタの顔を見て、トゥは、少し考え、そしてルイズを追いかけに行った。
「トゥさん!」
シエスタは、走っていくトゥに手を伸ばすがその手がトゥに届くことはなかった。
シエスタは、その場にへたり込み涙を流した。
「私じゃ…ダメなんですか?」
その言葉はトゥに届くことはなかった。
***
自室に逃げ込んだルイズは、ベットの上で膝を抱えて丸くなっていた。
「何やってんのよ…、私…。」
勢いで、好きだなんて言ってしまった。
なぜか自然と出てしまった。
トゥの返事など聞く余裕などなかった。
しかしよくよく考えたらトゥは、シエスタからの告白を断っているのだ。恐らくそういう同性の恋愛観は持っていないのだろう。
「私だってそんな気はないわよぉぉぉぉ…。」
自分はノーマルのはずだ。だがワルドの一件もあり、男性に対して無意識のうちに壁を作っているのかもっと思うと、トゥにときめくのも頷けるのだろうか?
そんなことをモヤモヤ考えながら反対側に寝転ぶと、開かれたままの本があった。
イーヴァルディの勇者の本だ。
起き上がったルイズは、なんとなくその本を手に取り読んだ。
イーヴァルディは、姫から求愛を受け、受け入れた。
だが女であったイーヴァルディは、王の怒りを買い、国を追われた。
この本は、様々なイーヴァルディのバージョンの総集編みたいな本だったらしく、たまたま開いた部分が女のイーヴァルディの話だった。
そしてこの女イーヴァルディは、最後に姫と心中を行って物語が終わっている。
「…後味悪。」
なんでよりによってこのページを見てしまったんだと、本を閉じながら呟いた。
やっぱり同性同士じゃハッピーエンドは、難しいだろう。
非産的だという理由が大きいだろう。
「この気持ちはダメなのよね…。ダメ、ダメだから…。」
そう思いながら気持ちを抑え込もうと目を閉じた。
だが抑え込もうとした気持ちは抑え込むことができず、むしろ強くなっている気がした。
「あーーーーーー、もう! どうしろってのよ!? トゥが好きなのはいいけど、別にそんな関係になりたいとか…なりたいとか…、違う違う違う…。そうじゃなーい!」
「どうって?」
「ハッ!?」
ルイズが振り返ると、そこにはトゥがいた。
「……いつからいたの?」
「えっと…、ルイズが本読んでた時から?」
結構前からいたらしい。
「あ、あああ、あのね…、トゥ…、わ、私は…。」
「私のこと、好きなんだよね?」
「ち、違う! 違うの!」
「えっ、違うの?」
「そうじゃなくって、そうじゃなくって…、えーと、えーと…。」
ルイズは、パニックになっていてうまく言葉を紡げなかった。
トゥは、ジッとルイズを見ていた。
「ルイズ…。」
「ひゃい!?」
「……ごめんね。」
「へっ?」
するとルイズはトゥに抱きしめられた。
トゥの柔らかい肌と、ふわりとトゥの甘い香りが鼻をくすぐった。
「ごめんね。」
「な、なんで謝るのよ?」
「……私、恋人になれないの。」
「…だ…、誰が恋人になれって言ったのよ!?」
「一緒にもいられない…。」
「! なによそれ!」
「きっと別れることになる。そんなに遠くない未来に。」
「トゥ?」
ルイズの肩に濡れたものが触れた。
トゥが泣いていた。
「ごめんね。ごめんね。私なんかが使い魔で…。」
「何言ってるの…。馬鹿じゃないの?」
「ごめんね。ごめんね。ずっと一緒は無理…。」
「なんでよ…? 死に急ごうとしてんの? 約束したじゃない! 死に急がないでって!」
「そうじゃない…。私には、…たぶん時間がないの。」
「じかんがない?」
「今は、せき止めてくれている力があるけれど、それでも止められなくなったら…。」
「こ、殺さないわよ!」
「どうして? そうしないと全部壊れちゃうのに?」
「あんたが何者だろうと、その花がなんだっていい…。私は、あんたに死んでほしくない!」
「ルイズ…。」
「それじゃあ…、ダメ?」
ルイズは、トゥの顔を見上げた。
「…………ごめんね。」
トゥは、微笑んだ。
それは今にも消えそうな儚さを含んで。
『ごめんなさい。姫様。私は、女です。あなたの想いにお応えできません。どうか、城にお帰りください。そして素敵な王子と幸せに』。
『イーヴァルディ。わたくしは、あなたがよいのです。あなたと共にならば、例え冥府であろうと共に行けます』。
『なりません! 姫様』。
『どうかわたくしの傍にいてください。イーヴァルディ』。
やがて追手の足音が聞こえて来た。
『本当に共に来てくれるのですか、姫様』。
『あなたとならば、どこまでも。例え神様がお許しにならなくとも』。
『では、共に逝きましょう』。
『はい』。
そして二人は、抱きしめ合い、崖から身を投げた。
二人の魂が、冥府で結ばれたかどうかは、誰にも分からない。
「……バカ。」
ルイズは、トゥの胸に顔を押し付けて泣いた。
二人は、まるでこの時が永遠に続くことを望むかのように、お互いを抱きしめ合った。
女イーヴァルディの話は、捏造です。
バリエーションが豊富ならこういう展開の話もあるんじゃないかな?
トゥは、自分の未来をなんとなく察しており、応えられませんでした。