ジュリオとの会話で、聖地に関する部分に触れています。
最後のほう、ルイズ→←トゥって感じかな?
あれからルイズがふて腐れてしまったので、トゥは、眠気を押して食堂に来た。
すでにそこには水精霊騎士隊の少年達がいて、ティファニアもいた。
ギーシュが椅子に座ったトゥの横に来て、あと3千エキューで城が買えるから頑張ろうと言ってきた。
しかし、トゥは、昨晩のタバサとの会話のせいであまり乗り気にはならなかった。
そこへ。
「やあ、おはよう。トゥさん。」
「ジュリオ君…。」
途端、奇妙な緊張感が二人の間に発生した。それを感じた水精霊騎士隊の仲間達は、黙った。
「なに?」
「カルカソンヌの中州での活躍は聞いているよ。水精霊騎士隊の諸君も。敵の士気をくじいていただいたとか。従って、教皇聖下から君達にこれをぜひ、っと頼まれてね。」
にこやかな笑みを浮かべてそう言ったジュリオは、机の上に袋の中の金貨をぶちまけた。
「受け取ってくれたまえ、神からの祝福さ。」
「坊さんのお布施なんかいらないよ。」
「自分の食い扶持ぐらい、自分で稼ぐさ。」
トゥとジュリオの間に何かあったことは察している彼らは、ジュリオの言葉にそう返した。
「…トゥさん、話があるんだ。」
「なに?」
トゥの表情が固くなる。
それを見た水精霊騎士隊の仲間達は、前に踏み出て、二人の間に割って入ろうとした。
「悪いね。君達の副隊長をちょっとお借りしたいんだが…。」
「僕らは、騎士隊だぞ?」
「だいじょうぶ。」
トゥは、そう言って、ギーシュ達に向けて微笑んだ。
***
トゥは、ジュリオと共に外へ出た。
「なんと言ったらいいか分からないが……、とにかくこの前はすまなかった。」
「なんのこと?」
「…君の世界をつなぐゲートを前にして、君を殺そうとしたことにたいしてさ。」
「ああ、そのことなら、もういいよ。」
あっさりと言ったトゥに、ジュリオが逆に驚いたのか僅かに目を見開き、ああっと芝居がかった仕草で額を押さえて宙を仰ぎ見て、それから両手をすくめて。
「適わないなぁ…。君には。」
「話ってそれだけ?」
「待ってくれ。もう一つ質問がある。」
「なぁに?」
「君の…その右目の花のことだ。」
「っ…。」
指さされてトゥの表情が消えた。
「君は、何か…魔法ではない、大きな力を持っているようだね? あれはなんだい?」
「……それがどうかしたの?」
「大きな問題だよ。あの巨大なゴーレムを弾き飛ばすほどの力なんだ、気になるだろう?」
「…見てたの?」
「…君達を援護するために風竜を連れてきていたんだ。」
「そう…。」
「君は、少し前に言っていたね。ウタウタイ…というものを知っているかと。ウタウタイとは、なんなんだい? あの力と何か関係があるのかい?」
「そうだね…。」
「その花も…。」
「ねえ、ジュリオ君。」
「なんだい?」
「アズーロ…連れてきて。」
「それはできない。そしたらまた君は食べられようとするだろう? 今、君がいなくなっては困るんだ。」
「じゃあ、ジョゼブ王様を倒したら、呼んで?」
「それは…、できない。そんなことは、したくない。」
「どうして?」
「君には…、できうることなら、死んでほしくないんだ。本当は、あの時だって殺したくなんてなかった。」
「聖地に行くんでしょ?」
「ああ…、僕らは、聖地を回復するためならなんだってするさ。だが…、これは僕個人の感情だ。」
「聖地に行って何するの?」
「ハルケギニアの民の将来がかかっているんだ。」
「…そっかぁ……。うん。そうだよね。」
「? 君は何を知っているんだい?」
「あそこには…、あそこには……。待っててくれているんだ。ずっと、ずーーーっと、昔から。」
「待っている? 誰が?」
「……姉さん…。」
「ねえさん?」
「………あれ? 何話してたっけ?」
「! ちょっと待ってくれ、こんな中途半端で終わらせないでくれよ。」
「? なんのこと?」
ジュリオに両肩を掴まれたが、トゥは、キョトンとしただけだった。
「っ…、君は、聖地に誰かが…、いや、姉さんが待っていると言ったじゃないか。」
「言ったっけ?」
「本当に忘れているのかい…。そうか…。」
「?」
諦めたように言うジュリオに、トゥは、首をかしげた。
***
一方その頃。
「ここが寝室でー。ここが居間でー。」
あれからルイズは、寝られず、日記にトゥと一緒に暮らすための家の設計図なんぞを書いていた。
寝られなかったのは、トゥから一緒に住む?っと言われたことが嬉しすぎたからである。
「台所はー、コックが最低十人ぐらい必要だからこれくらい必要よね。あ…でも、トゥ料理好きだから…。でも、パーティーするぐらいのホールは必要よねー。トゥと一緒にダンス…、むふ、むふふふふふふ!」
一緒にダンスを踊る光景を想像して、ルイズは、堪えきれず悶絶しながら笑った。
過去に一回一緒に踊っているのだが、それはノーカンらしい。
「あと、寝室……、ベットは、もちろん寮より大っきいのにしてー。あああ、でもそれじゃあトゥと距離が離れちゃう! ベットは、ちょっと小さいくらいでいいわよね。もちろん一つだけ!」
ガリガリと書いていく家の設計図は、もはやこじんまりじした家ではなく、立派な城と化していた。
「ただし…、メイドは無し。」
っと、真顔になって日記の紙の端に注意事項を書いた。
「ああ、でも! 男の給仕がトゥに目移りしたらヤダー! あん、どうしたらいいのよぉ。」
っと、ルイズが贅沢なことを悩んでいると、トゥが部屋に入ってきた。
ルイズは、慌てて日記を閉じた。
しかしトゥは、ボーッと椅子に座り込んでいるだけでルイズに目もくれない。
「どうしたのよ?」
「あ、ルイズ。」
声をかけられ我に返ったかのようにトゥが反応した。
「ねえ、どうしたの?」
「ジュリオ君から…、花とウタのこと聞かれた。」
それを聞いてルイズは、目を見開いた。
完全に油断していた。ロマリアが…いやヴィットーリオがトゥのウタの力に目をつけないはずがない。聖戦を唱えた彼が、虚無以上の力を持つであろうトゥを利用せんと動かないはずがないだろう。
「そ、それで?」
「? 別に…。」
「それだけ? 本当に、本当に何か変なこと言われなかったの?」
「別に。」
「そ…そう…。なら、いいわ。」
トゥがそう言うのならそうなのだろうっと、ルイズは、無理矢理に納得しようとした。
「ロマリアって…、あんまり今の状況のこと危険だって思ってないんだね。」
「そうね…。」
「聖地って…どんなところなんだろう?」
「さあ? 長いハルケギニアの歴史の中でエルフからそこを奪還できてないから、何があるかまでは誰も知らないんじゃないかしら?」
「ふーん。」
トゥは、首を傾げながら声を漏らした。
「じゃあ、何もなかったらどうするんだろう?」
「さあ? 知らないわ。私が生まれた時から、それよりもずっと昔から大事なものだってことしか教わってないから。」
「それとも…、もっと危険なモノがあったら…。」
「…トゥ?」
「それで、世界が滅んじゃってもいいのかなぁ?」
「トゥ? ちょっと、しっかりしなさい!」
「ん? ルイズ、どうしたの?」
「あんた…。ううん、な、なんでもないわ。」
ルイズは、椅子から立ち上がり、トゥの傍に来てトゥを抱きしめた。
「どうしたの? ルイズ。」
「ねえ、トゥ。」
「なぁに?」
「私ね…。世界が滅んじゃっても、最後まであんたと一緒がいい。」
「ルイズ…。」
「私からも言うわ。最後まで、傍にいて。」
「……それも、いいかもね。」
トゥは、ルイズの胸に頭を擦り付けソッと目を閉じた。
ジュリオが果たして、ヴィットーリオに花とウタのことを話すかどうか…。
話したらたぶん大事になる。
最後のほう、なんとなく無理心中的なことを匂わせてますが、この作品の結末は、まだ考えてる途中です。まだ決めてません。