二番目の使い魔   作:蜜柑ブタ

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ジョゼフの最後。

展開は原作と同じです。

若干短め。


第七十話  トゥと、ジョゼフの最後

 

 それからは、怒濤のように全てが動き出した。

 ガーゴイル達を倒した聖堂騎士達がフリゲート艦に到着し、シルフィードからルイズとアンリエッタもフリゲート艦に降り立った。

 ジョゼフは、憑き物が落ちたように晴れやかな顔で聖堂騎士達に囲まれていた。

 やがて、タバサがフライの魔法で飛んできてフリゲート艦に降り立った。

 タバサが来ると、聖堂騎士達が輪を開け、ジョゼブへの道を空けた。

 タバサは、硬い表情でジョゼフに近寄り、杖を構えた。

「シャルロットか。似合いじゃないか、天国のシャルルも喜んでいるだろう。」

 まるで人が変わったようなジョゼフに、タバサはいぶかしんだ。

 ジョゼフは、冠を取ると、それをタバサの足下に置いた。

 そして紡がれるのは、長い謝罪の言葉だった。

「……何があったの?」

「説明はせぬよ。おまえの父の名誉に関わることだからな。」

 そしてジョゼフは、自分の首をはねてくれと言った。

 タバサは、ジョゼフの変心の理由が分からず、話して、何があったというのと問うた。

 だがジョゼフは、何も答えない。

 タバサは、首を振り、ぎこちない怒鳴り声で。

「いったい、何があったというの!」

 と叫んだ。

 そんなタバサを、聖堂騎士達が促した。

「さ、お早く…。」

 タバサは、ハッとし杖を構え、詠唱を始めた。だが途中で止めた。

 トゥが、見ている。

 見ると、トゥは泣いていた。ジョゼフを見つめて泣いていた。

 そんなトゥを見ていると、今まさに憎き敵を討とうとしていた手が震える。

「トゥ…、なんで泣いてるのよ…。」

「だって…。」

 土のルビーに残されていた記憶を花を通じて共有したトゥは、あふれる涙を止めることができなかった。

 タバサは、トゥが何かを知っているとみて、トゥに問いかけようとしたが。

 それよりも早く、涙を乱暴に拭ったトゥが言った。

「タバサちゃん。タバサちゃんは、神様のためでも死んだ人のためにでも復讐するわけじゃないよね? 復讐は、結局自分がするんだよ。自分のためにするものなんだよ。神様とか死んだ人のためとか、そんな理屈じゃ気が済まないからするんだよ。これからのためだとかそんな理由でするためじゃない。…私は、よく分からないけど、これだけはいえる。」

 トゥは、一息おいた。

「タバサちゃんが、どんな道を選んでも、私は、それを尊重する。」

「!!」

 それを聞いたタバサは、目を見開いた。

 だがすぐに表情を硬くすると、呪文を唱え、氷の矢を作り出した。

 だが氷の矢を、ジョゼフに向かって振り下ろせなかった。

 このままジョゼブを殺しても、それはただの死刑執行なのだと気づいてしまったから。

 タバサは、氷の矢を消し、杖を下ろした。

 

 そして、終わらせたのは、ミュズニトニルンこと、シェフィールドだった。

 

 彼女は、まったくのノーマークだったこともあり、短剣を使い、それをジョゼフの胸に突き刺したのだ。

 ジョゼフが吐血する。

 アンリエッタが悲鳴を上げ、聖堂騎士達がシェフィールドを取り押さえようと動いたがシェフィールドが、火石を突きつけた。

「動くな。私とて虚無の使い魔。すべての魔道具を操るミュズニトニルン。この火石をただ爆発させるだけなら可能だ。」

 っと脅しの言葉を述べた。

 怯えながら落ち着くよう促そうとした聖堂騎士を無視して、シェフィールドは、口から血をあふれ出させているジョゼフの口に無理矢理口づけをした。

「唇を重ねるのは、契約以来ですわね。」

 絞り出すように声で紡がれるのは、なぜ自分を見てくれなかったのか、ただ自分はジョゼフに愛されたかっただけなのにっと…。

 しかし、ジョゼフは、もう答えない。すでに事切れていた。その表情は満足げである。

「去れ。二人きりにしてくれ。」

 シェフィールドは、そう告げた。

 聖堂騎士達は、慌てふためきながら一人、また一人とペガサスに跨がって船から下りていき、トゥもルイズとアンリエッタと共にシルフィードに乗った。

 タバサだけは、身じろぎもせず、虚無の主従を見つめ続けていた。

 やがてタバサは、踵を返し、シルフィードに跨がった。

 誰もタバサに声をかけられなかった。

 

 

 遠くの空に、一匹の風竜がいるのをトゥは気づいた。

 アズーロだった。

 その背には、ジュリオと、ヴィットーリオが乗っていた。

「……これで満足?」

 トゥは、そう呟いた。

 

 シルフィードと聖堂騎士達を乗せたペガサス達がフリゲート艦から離れていく。

 フリゲート艦は、遠くの空へと舞い上がっていく。

 やがてフリゲート艦を、巨大な爆発と炎が包み込み、跡形もなく消し去った。

 タバサは、その火の玉をぼんやりと見つめていた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 戦いが終わった後、ヴィットーリオの演説が始まった。

 彼は長々と語った。ジョゼブの死を持ち出したりもして、聖戦の正当性を詠い、そしてエルフこそが真の敵だと、そしてジョゼフは、エルフにそそのかした恐ろしい敵なのだと虚偽を交えて語った。

 ティファニアが、不安げにフードを深くかぶったのを見て、トゥは、その背中を摩った。

「結局、ロマリアの思い通りになっちゃったわね。」

 ルイズが冷たい目で呟いた。

「ジョゼブ王様の心を変えたのは、あの人だ…。」

「それ本当?」

「うん。」

「…あなたが言うなら、そうなのね。」

「参ったな。役者が上すぎる。今度の教皇は、もしかしたら聖戦を成功させるかもしれないなぁ。」

「それはないよ。」

「どうして、そう断言できるんだい?」

「そりゃそうよ。あの火の玉だってエルフの千住魔法だし、あんなの見て、エルフとこれから戦おうって言われてガリア兵達が頷くかしら? それに、虚無の本当の力を復活させるためには、四の四が必要なはずよ。でも、ガリアの担い手は、使い魔ごと死んじゃったわ。三の三じゃ、さすがにエルフには勝てないでしょ。」

 ルイズが肩をすくめて言った。

「……揃っても揃わなくても…。」

「トゥ?」

「……どうしたの?」

「あんた、また……。ねえ、トゥ。」

「なぁに?」

「あなた、聖地について何を知ってるの?」

 ルイズは、強い口調で聞いた。

「なんのこと?」

 トゥは、キョトンとした。

「有耶無耶にしないで。答えて。」

「だから、なんのこと?」

「っ…。今はいいわ。」

 トゥが本当に答えを持っていない状態だと判断したルイズは、そう見切りをつけて前を向いた。

「ねえ、ルイズ。」

「なによ?」

「お家買うとき、一緒に選ぼうね。」

「なっ…!」

 笑顔で言うトゥに、ルイズは、ボンッと顔を赤らめた。

「ちっちゃいお家。」

「今話すことじゃ無いでしょうが!」

「えー。」

「えー、じゃない!」

「おいおい、こんなところで、イチャイチャはやめてくれよ?」

「誰がイチャイチャよ!」

「あでっ!」

 茶々入れてきたマリコルヌを、ルイズが蹴っ飛ばした。

 ひとまず終わった戦いに、少年少女達は、笑い合った。

 

 

 その後、タバサ…、いや、シャルロットの戴冠式が行われた。

 そして、ひとまず戦いを終えたトゥ達は、トリスティンへ、魔法学院へ帰った。

 




花を通じて、土のルビーの記憶を見たトゥ。
でも現状を変えることは彼女にはできません。

聖地について何か知ってる風なトゥですが、補正により記憶が消えたり戻ったりです。

次回は、トリスティン魔法学院での話と、住むお家探し?かな。

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