二番目の使い魔   作:蜜柑ブタ

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サブタイトルほど、浸っているかな? よく分からん。


第八十四話  トゥとルイズ、幸せに浸る

 

 ワンワン泣いたルイズが落ち着いてから、ルイズは、トゥと共にアンリエッタの部屋に招かれた。

 そしてルイズは、家出した先で出会ったジョゼットのことや、偶然にも自分を匿っていたのがジャックを含め、トゥを襲った刺客である元素の兄弟だったこと、さらにジュリオがジョゼットを迎えに来たことからおそらくジョゼットが新しい虚無の担い手であることや、タバサと入れ替わっているタバサそっくりの娘がジョゼットであろうことを語った。

 アンリエッタは、怒りと絶望が混じったが、それに耐えた。

「トゥ殿が見破っていたのですが、これで間違いないですわね。」

「ジョゼット…。」

 アンリエッタは、女王の顔で言い、トゥは、タバサの双子の姉妹であるはずのジョゼットの名を呟いた。

 

 

 それらのことを事務的に終えた後、ルイズはトゥと一緒に、迎賓館の外にある、トゥに割り振られた天幕に行った。

「ごめん。ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…。」

「もういいよ。済んだことだし。」

 天幕に来て、トゥが椅子に座るとルイズがトゥの膝にすがりつくように膝をついて謝罪を繰り返したのだった。

「だってぇ…、だってぇ…。」

「でもびっくりしたよ。ルイズがいなくなって…。」

「うわーーん!」

「もう、泣かないでよ。」

 また泣き出したルイズの頭を、トゥはよしよしと撫でた。

「でもどうして家出なんてしちゃったの?」

「そ、それは…。」

「もしかして、お姫様と仲良くしてるの見て、勘違いしちゃったの?」

「うぐ…。」

 図星だった。ルイズは、アンリエッタとトゥがそういう関係に見えてしまい、自分じゃアンリエッタに敵わないと思って早とちりを起こしてしまったのだ。

「お姫様とは、お友達になっただけだよ?」

「じゃ、じゃあ私のことは!?」

 ガバッと顔を上げたルイズ。

「大切な人だよ。」

「えっ! も、もう一回!」

「えっ?」

「もう一回言って!」

「た、大切な人…だよ?」

「いよっしゃあああああああああああああああああ!!」

「わっ!」

 ルイズは、トゥからどき、飛び跳ねて喜んだ。

 勝った!っと、ルイズは確信した。

 そして自分自身に大きな自信が持てた。

 自分は、虚無を扱える。そしてトゥにふさわしい女だと。

「トゥ!」

「な、なぁに?」

「好きよ!」

「ふぇ…。」

 ルイズが飛びつくようにトゥに抱きつき、トゥはルイズを受け止めた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 トゥは、息苦しさを感じて目を開いた。

 自分の胸にルイズが顔を埋めている。そしてがっちりとトゥの体に腕と足を絡めて寝ていた。

 もう二度と離さん!っと言わんばかりの抱きつきようにトゥは、小さく苦笑した。

「ルイズ。」

「む~~~…。」

「ねえ、ルイズ。起きて。」

「む…? もう朝?」

「んーん。まだ夜。」

「寝かせなさいよ~。」

「散歩しない?」

「え~?」

「私と散歩はイヤ?」

「する!」

 トゥがそう言うとルイズは飛び起きた。

 

 

 そして二人は天幕から出て、手をつないで歩いた。

 月明かりを頼りに、他の天幕の間を抜け、庭園を歩く。

 やがて水音が聞こえ、そこへ行ってみると、噴水があった。

「ねえ、トゥ…。」

「なぁに?」

「私…、この数週間の間、色々と考えたわ。」

 ルイズは、噴水の端に腰掛けて言った。

 ルイズは、トゥを前にして家出をしている間に色んな事を考えたことを語った。

「私は、ただ逃げただけだったわ…。辛いことから…。そのせいで私は、あなたを酷く傷つけてしまった。それは紛れもない事実。」

「ルイズ…。」

「卑怯よね…。うん。卑怯。どんなに心が潰れそうでも、私、力を持っちゃったんだもん。その力を必要としてくれている人がいるのに、それに目をつむるってことだもん。」

「そうだね。」

「ごめんなさい…、トゥ。私…、きっとあなたに好きなんて言う資格なんてないわ。たくさん傷つけて、心を壊しかけたんだもの…。」

「…あのね、ルイズ。」

「なに?」

「私きっと……、ううん…、たぶん、間違いなく、そうなんだと思う…。」

「なによ?」

「私にとってルイズは、もう無くてはならない大切な人なんだよ。それは間違いない。」

「トゥ…。」

「私の心は…、もうそこまで浸食されちゃったんだ…。」

「しんしょく?」

「きっともう……、長くない。」

「トゥ?」

「約束、覚えてる?」

「! 馬鹿じゃないの?」

「えー?」

「私があんたを殺せると思ってるわけ?」

「だって…。」

「いい! 私は言ったからね! 世界が滅んでもあんたと一緒がいいって! あんたもそれもいいかもねって言ったじゃない! そっちを優先して!」

「えー。」

「えーっ、じゃない! はい、決定! いいわね!」

「えー…。」

「はいはい! もうこの話はおしまいよ!」

 ルイズがパンパンと手を叩いて言った。

 その時、ふとルイズは思いついた。

「…み…。」

「み?」

「み、みみみみ、水浴びしたいわね。」

「えっ?」

「だって、セント・マルガリタを出てから、一回もお風呂に入っていないのよ。汗かくし、服だって着たっきりだし……。」

「でも、今の時間じゃお風呂は…。」

「水場ならここにあるじゃない。」

「えっ?」

 ルイズは、背後の噴水を指さした。

「ここ外だよ?」

「今は夜よ。こんなに真っ暗で、誰も歩いていないわ。見てるとしたら月くらいよ。」

「…それでいいならいいけど。」

 トゥが渋々言うと、ルイズは、立ち上がって着ていた修道服を脱いでいった。

 そして裸になったルイズは、噴水の水の中に入っていった。

「はあ…、冷たくて気持ちが良いわ。」

「よかったね。」

「ねえ、トゥ。背中、洗って?」

「えっ?」

「手が届かないの。」

 それを聞いたトゥは、ハイヒールの靴を脱ぎ、青いタイツを脱いで水の中に足を入れた。

 トゥは、手で水をすくい上げ、ルイズの背中にかけて、ゆっくりと手のひらでルイズの白い背中を洗った。

「ねえ、トゥ…。」

「なぁに?」

「私、綺麗?」

「うん。」

「姫様より綺麗?」

「うん。ルイズは、綺麗だよ。」

「シエスタよりも、綺麗?」

「うん。」

「そう。ならいいわ。」

「ルイズ?」

 するとルイズがトゥの方に振り向いた。

 月明かりの下、ルイズの裸体がさらされる。

「あなたのも見せて。」

「ルイズ…。」

 ルイズは、トゥの服に手をかけた。

 しかしトゥは、その手をやんわり止めた。

「どうして?」

「…しないよ?」

「私ってそんなに魅力無い?」

「そうじゃなくって…。」

「じゃあ、どうして?」

「…きっと後悔すると思うから。」

「後悔なんてしないわ。」

「後悔するのは、私。」

「あんたが? どうして?」

「しちゃったら、ルイズの中に私が強く残っちゃう。」

「それがいいのよ。私、あなた以外愛する気はないわ。」

「…えっと…。」

「ねえ…、言い訳探してない?」

 ルイズがじとっとトゥを見ると、トゥは視線をさまよわせた。

「…意気地無し。」

「ごめん…。その…。」

「もしかして…、恋人だった人に操(みさお)立ててるの?」

「そういうわけじゃないけど…。」

「じゃあ、どうして?」

「……歯止めがきかなくなりそうで…。」

「はどめ?」

「ルイズを……、殺しちゃうかも。」

 トゥは、最後の部分を怖く言った。

 それを聞いたルイズは、背筋がゾクッとした。

 トゥの表情は無だ。彼女の中に巣くう何かが顔を出したかのような、得体の知れない恐ろしさがある。

「……ごめんね。」

 トゥの顔が、ふにゃりと変わった。

「いいのよ…。私のこと気遣ってくれてるのに。」

「先にルイズが死んじゃったら…、最後の時まで一緒に居られないでしょ?」

「そうね。」

「だから…、ごめんね。」

「謝らなくていいわ。」

 ルイズは、そう言うと、トゥに抱きついた。

「…好きよ。」

「…うん。」

 しばらく抱き合っていた二人は、やがて噴水から出て、服を着替えた。

 そして寄り添うように手をつないで、天幕に戻った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 二日後。

 園遊会も、あと一週間を残すのみとなった。

 二人は、現在庭園のベンチに腰掛けていた。

 何をするわけじゃなく、じっとして、前を向いているだけだ。

 ルイズは、着っぱなしだった修道服ではなく、アニエスから借りたシャツと半ズボンをはいていた。

 ルイズは、時々、ちらりとトゥを見ていた。

 トゥは、どこか儚げな、少し悲しそうな表情をしていた。

 何を考えているのだろうか? 悲しいことを考えているのだろうか? なんか今にも涙が出そうな顔だ。

「…トゥ?」

「……ん? なぁに?」

「辛いことでも思い出してたの?」

「んーん? 違うよ。」

「じゃあ、何考えてたの?」

「ド・オルニエールに帰ったら、何作ろうかなって…。」

「料理のこと?」

「記憶が戻る前ね、ルイズが帰ってきたら、クックベリーパイを作ってあげようかなって考えてたの。」

「私のために?」

「うん。」

「…トゥぅぅうううう!」

「うわ! 何?」

 ルイズがいきなり抱きついてきたのでトゥは驚いた。

「もう、好き! 大好き!」

「うんうん、分かった、クックベリーパイ作ったげるね。」

「そうじゃなくってぇ! もう…。」

「えっ? 食べたくなかった?」

「食べたいわよ!」

「分かった。じゃあ作ったげる。」

「もう、そんなところも大好きよ。」

 トゥの首に顔を埋め、ルイズは幸せに浸ったのだった。

 




いきおいでやっちゃたら、R15どころじゃないですからね…。

続けて、次回分も更新します。

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