二番目の使い魔   作:蜜柑ブタ

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仕事が忙しい…(涙)。
春のシーズン嫌い…。ゴールデンウィーク?なにそれ美味しいの?

今回は、デルフが生きてるので、微妙にオリジナル展開ですが、原作沿いです。

このネタにおけるエルフにとっての、悪魔とは…?


第九十二話  トゥとティファニアとルクシャナ

 

 見た感じの年齢は、ティファニアとルイズを足して二で割ったような容姿の、そのエルフの少女は、タオルで濡れた身体を拭きながら現れた。

 ティファニアの尋常じゃ無い胸とは反対に、どちらかというとルイズよりの胸であるが、むしろそちらの方が妖精っぽさが増すのだという変な発見をした。

「あら? 目が覚めた?」

「あなたは…。」

「私は、ルクシャナっていうの。よろしくね。」

「はあ…。」

 なんだか拍子抜けする。

 敵意も殺意も感じられない。

 だがティファニアのことをいつでも守れるように構えつつ、トゥは、ルクシャナと名乗ったエルフの少女に質問をした。

「ここは、どこ?」

「ここは、砂漠(サハラ)よ。私達の国、ネフテス。」

「砂漠?」

 自分は確かド・オルニエールにいたはずだ。なのに、いつの間に砂漠になど来たのか。いや…そもそも、彼女は私達の国と言った、つまり…。

「私と…ティファちゃんを攫ったの?」

「そうね。」

「どうして?」

「あなた…、悪魔なんでしょ?」

「えっ?」

 悪魔と言われ、トゥは、呆然とした。

「しかも、虚無の守り手だし。あなた達が復活しちゃうと困るんですって。とんでもない魔法で、攻められたらたまんないわ。」

「だから攫った?」

「そうよ。一人でも欠けたら…、そもそも悪魔自体がこっちの手に落ちれば大丈夫でしょ? あなた達って不便よね。」

「私が…、悪魔?」

「あら? その自覚が無いのね?」

「トゥさんは、悪魔なんかじゃありません!」

 ティファニアが声をあげた。

「私はよく分からないけど、そういうことなのよ。」

「ルクシャナさん。」

「えっと…、あなたの名前は? あ、トゥって言ったわね。蛮人の名前にしては覚えやすいじゃない。」

「私達を、どうするの?」

「どうもしないわ。」

「えっ?」

 思いがけない返答に、キョトンとしてしまった。

「私達は、あなた達の力が復活しなければそれでいいの。だから逆に、死んでもらっては困るわけ。あ、でも悪魔のあなたはどうなるかしらね?」

「殺すの?」

「それは私が決めることじゃないわ。叔父様達が決める事よ。あなた、叔父様に勝ってるんでしょ?」

「勝ったって…、もしかしてビダーシャルさんのこと?」

「そうよ。」

「へ~…。」

 あのエルフの人にこんな姪っ子がいたのかと、トゥは、声を漏らした。

 しかし。

「どうして、私だけじゃなく、ティファちゃんまで攫ったの?」

「その子、ハーフなんでしょ?」

 目をキラキラさせて、そう言うルクシャナに、ティファニアは、ちょっと引きながらこくりと頷いた。

「私、すぅううううううううううううっごく、興味があるの!」

 ルクシャナな興奮して力説する。

 自分は蛮人を研究している学者なのだと。

 ああ、だから、この部屋は変な飾りばかりだったのかと、納得できた。

「蛮人じゃないよ。トゥだよ。」

「あら、蛮人は蛮人でしょ。」

「自分が嫌な呼ばれ方したら、嫌じゃないの?」

「それもそうね。分かったわ。」

 ルクシャナは、意外にも快諾してくれた。

 もしかしたらエルフとしては、ずいぶんと柔軟な考えの持ち主かも知れない。まあ、自分のことを蛮人の学者と言うぐらいなのだから。

 それから、ルクシャナは、トゥとティファニアに質問攻めをした。

 しかし内容は実にどうでもいいことばかりで、例えば何を食べているかとか、住んでいる建物のこととか、日常のことに始まり、政治のことや農業、酪農、工業、商業、社会構造まで多岐にわたった。

 しかし、トゥは、もともとこの世界の者ではないし、ティファニアも最近やっと外に出て世間を知り始めたばかりの箱入りだ。あまり答えられない。

 ルクシャナは、心底がっかりした様子で。

「まあ、そのうち思い出したりするでしょ。」

 っと言った。

「無理言って、あんた達を預かることにしたのに…、拍子抜けだわ。」

「そんなこと言われても…。」

「あのね、本当はあんた達、カスバの地下牢に閉じ込められるところだったのよ。私が引き取るってことで、それを免れたのよ。」

「えー…。」

 なんだか分からないが、たぶん過酷な環境に放り込まれるのを彼女が止めてくれたのだというのは分かるが、そんな言い方は…っと思っていると、ルクシャナは、何か思いついたようにティファニアを見てまた質問を始めた。

「ねえ、あなた。ティファニアだっけ? やっぱり、ハーフって虐められるの?」

 いきなりそんなことを聞かれて、ティファニアは、トゥを見た。

 トゥは、困ったようにティファニアを見た。

 ルクシャナは、まったく人の話を聞かないタイプのようだ。

 質問に答えないと止まらないだろうと判断し、トゥが頷くと、ティファニアは、困ったように答えだした。

「初めの頃は、そういうこともあったけど、今はあまり……。」

「ふーん。なるほどねぇ。私達って、どのぐらい嫌われてるの?」

 ルクシャナは、ティファニアからトゥに、視線を変えた。

「嫌われてるっていうか、恐れられてるよ。」

「どうして?」

「だって、強力な先住魔法を使って、ハルケギニアの貴族を散々苦しめたんだでしょう?」

「えー。だってそっちが悪いのよ。攻めてくるから、こっちはしょうがなく応戦したんじゃない。」

「それはそうだけど…。聖地さえ返してくれればいいだけど。」

 さりげなくその話題を出すと、ルクシャナは肩をすくめた。

「はあ? 何言ってるの? あそこは元々私達の土地なのよ。あんた達が勝手に聖地だなんて言ってるだけじゃないの。」

「えっ? そうなの?」

「そうよ。」

「じゃあ、魔法装置もないの?」

「なにそれ?」

 トゥは、ルクシャナに、今ハルケギニアが風石の暴走で大ピンチなことと、聖地にあるとされるハルケギニアを救うという魔法装置のことを聞いた。

 ルクシャナは、キョトンとした顔をした。

「シャイターンの門に、そんな魔法装置とやらがあるなんて聞いたことないわ。」

「やっぱり…。」

「やっぱりって?」

「なんでもない。じゃあ、聖地には何があるの?」

「あのねぇ、言えるわけないじゃない。自分の立場を考えてよ。それに聞かない方が良いわよ。知ったらあんた達、間違いなく地下牢行きよ。」

「それもそうだね…。でも、エルフのあなた達は、大地がめくれ上がって浮き上がってもいいの?」

「そんなの場所に住むのが悪いんじゃない。というか風石のよって大地が上がることも大いなる意思の思し召しだわ。あなた達が大地に暮らす仲間だというのなら、それも受け入れるべきね。」

「あんまりだわ!」

 それまで黙っていたティファニアが口を開いた。

「私のお母さんはエルフだったけど、あなたみたいな冷たい人じゃなかったわ!」

「別に私が冷たいわけじゃないわ。エルフならみんなそう考えるでしょうね。」

 ルクシャナは、そう言うと立ち上がり、自分は昼寝するから、適当にその辺の物を食べて良いことと、ベットを貸すから使えと言い。

「ああ、それから。逃げようだなんて思わないでね。この周りは砂漠よ。半日で日干しになっちゃうわ。。あと、私を襲おうだなんて考えない方がいい。この家は、私が契約してる場所。私に危害を加えようとしたら、一瞬で灰になっちゃうからね。貴重な研究対象を失いたくないから。以上、二点、よろしくね。」

 かなり怖いことを言い残して、ルクシャナは自分の部屋に行ってしまった。

 ルクシャナが去った後、トゥは、ポリポリと指で頬をかいた。

「別に、私ならそんなのどうにかできるのに。」

 ウタを使えば家の精霊などどうにでもなるし、そしてトゥは、砂の国で過ごした経験があり砂漠でのサバイバルの仕方は知っていた。

「トゥさん。」

「なぁに?」

「乱暴はダメです。」

「そんなこと言ってられないよ?」

「でも、ダメです。ここで暴れたら、エルフとの交渉が決裂してしまうかもしれないから。」

「…そっか。」

 トゥは、がっくりと肩を落とした。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ルクシャナの屋敷は、砂漠のオアシスだった。

 外に出ると、そこには、百メートルほどの泉があり、水の周りに草木が囲っている。

 水の青さと日差し、緑の鮮やかさと相まって、まるで夢の国のような景色だった。

 砂漠なのにたいして暑くなく、それを不思議に思って、少し砂漠の方に出てみると、いきなり砂漠特有の強烈な熱と日射が襲いかかってきた。

 どうやら魔法でオアシスと屋敷を包んでいるらしい。トリスティンをはじめとした人間のメイジ達の魔法では考えられないほど強力で大規模な魔法だ。

 これだけの技術を持った相手と交渉をしなければならないのかと、トゥもティファニアも愕然とした。

 

 

 その夜、オアシスの桟橋で、トゥは、夜空を見上げた。

 傍らには、デルフリンガーが置かれている。

 トゥが最後に持っていた大剣はなく、腰にあったデルフリンガーだけが、ルクシャナの家の中にあった無造作に置かれた剣の中に混ざっていたのだ。

 ずっとデルフリンガーが黙っていたのは、鞘に収められてたからだ。たぶん、うるさく騒いだのだろう。

『えらいことになっちまったなー。相棒。』

「ねえ、デルフ…。」

『なんだ?』

「悪魔って…、どういうこと?」

 トゥは、ルクシャナから自分が悪魔だと言われた理由についてデルフリンガーに問いかけた。

『……たぶんだが、その…。』

「花のせい?」

 トゥは、右目の花に、ソッと触れた。

「悪魔は…、昔もいた?」

『さぁな。そうかもしれねぇが。』

「その悪魔って…、ウタウタイだったのかな?」

『……。』

「デルフ?」

『仮にそうだとしても…、お前さんのせいじゃねぇ。』

「デルフ?」

『相棒は、そんなことのために、ここへ…この世界へ来たんじゃねぇ。』

「……ありがとう。」

『礼を言うことじゃねぇよ。』

「トゥさん。」

 そこへ、ティファニアがやってきた。

 ティファニアは、トゥの隣に来て座った。そして桟橋の下にある水に足を浸けた。

「冷たくて気持ちいいわ。トゥさんもやってみたら?」

「うん。」

 トゥもティファニアと同じように座って足を浸けた。

「本当だ。気持ちいい。」

「ねえ…。」

「なぁに?」

「ルクシャナが言ったこと、気にしない方がいいよ?」

 ティファニアの言葉に、トゥは表情を消した。

「トゥさんは、悪魔なんかじゃない。」

 ティファニアは、強い口調で言った。

 そんなティファニアに、トゥは困ったように笑った。

 




このネタにおける、エルフにとっての悪魔は、ウタウタイ(花)のことです。
ゼロがブリミルの時代にいたことが、伏線になっています。

デルフはいるけど、あんまり会話に参加しません。いてもいなくてもあんまり意味ないかな?

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