「今日はいよいよエクスちゃんの雷撃回避訓練が行われる日ね…。あんな事があった後だから心配だわ」
話はエクスが魚雷を見て倒れた日から1週間後に戻る。鎮守府の執務室では、一通り書類作業を終えて休憩中の真理恵が窓の外の景色を眺めながらコーヒーを啜っていた。
「…それにしてもあの子の世界には魚雷が存在してないなんて。たしかに自国以外が帆船なら魚雷がなくても問題ないのでしょうけど…、魚雷が普遍的に存在する世界で暮らす私からすれば未だに信じられないわね」
真理恵は自分の机に置いてある袋から煮干しを取出し、ぽいっと口に入れて咀嚼する。
「う~ん、うまい!」
煮干しの旨味が口いっぱいに広がり、真理恵は幸せそうな笑顔を浮かべ、艦娘でもないのにキラ付け状態になる。
(煮干しをコーヒーのお供にする奴なんて…この世界でもきっとコイツしかいないでしょうね…)
幸せそうな真理恵の様子を眺めながら、彼女と共に休憩している霞はそう思った。
「…でもエクスはその魚雷で沈んだんでしょ?何であんたは魚雷がないなんて言うのよ?」
ここで霞が真理恵の言葉の矛盾点を指摘する。
「エクスちゃんから聞いたんだけど…、あの子を沈めた艦隊の所属する国家は今まで存在が確認されていなくて、ほんの2年くらい前から突然現れては周辺国を次々と侵略していったんですって」
「突然現れた?魚雷を保有するほどの技術力を持った国なんでしょ?そんな国が近くにいながら気付かなかったなんて変じゃない?」
霞の疑問は尤もだ。高度な文明を築いている国家同士が近くにいながら、その存在に今まで気付けなかったのはどう考えてもおかしい。ましてや神聖ミリシアル帝国が把握している世界の範囲内でそのような国家が存在していたなら、両国はとっくの昔に国交を結んでいたはずだ。
「それについてなんだけど…。もしかしたらその国は転移国家じゃないかしら?」
「…はぁ?」
霞は真理恵が何を言っているのか分からず、疑問の声を発する。
「思い出してカスミン。エクスちゃんがどうやってこの鎮守府にやって来たと思う?」
「…あんたが魔法を失敗したせいで異世界から召喚されちゃったんでしょ?」
「そうよ。そしてこの召喚…厳密には転移の一種なんだけど、…別世界からまた別の世界へ転移出来るのは、実は個人や物だけに限らないのよ」
「…つまりどういう事よ?」
霞は腕を組んでさらに説明を求める。
「時には国家だって何らかの原因で別世界へ飛ばされるようなこともあるって事」
ぽかんと口を開ける霞。
「何よそれ…?国ごと?あたしにはとても現実味のない話だわ」
「まぁ、そう思うよね。魔法をほとんど知らないこの世界の人にとっては転移そのものが胡散臭い話よね」
真理恵は自分の椅子に腰を下ろし、一度コーヒーを啜ってから再び口を開く。
「…でも私たちのように魔法をよく知る人にとっては、理論上は国家そのものの転移や召喚も可能だという事が分かっているのよ。…まぁ普通の場合、人為的には魔力が足りなくて不可能だけど、事故という形ならありえるわ」
「…要するにその国が別世界から来たというなら説明がつくって言いたいのね、あんたは?」
「そう言う事。断言は出来ないけどね」
真理恵は煮干しを口に放り込むと、視線を窓の外に向けた。
(…しかし、もしその国が本当に転移国家だとしたら……”元祖国”以外における国家転移の初めての実例になるわ)
――――
横須賀鎮守府 正面海域
午後。遂に雷撃機を相手にする対空訓練の時間がやって来た。
「……」
海のど真ん中でただ一人立ち、模擬魚雷を搭載した演習機の来襲に備えるエクス。その表情は不安と緊張で一杯だった。
(大丈夫…、この日のために魚雷の事をたくさん学んだ…。落ち着いてやれば…必ず出来る)
少しでも不安を減らそうと、エクスは心の中で何度も自分に言い聞かせる。しかし、頭の中を自分が沈んだシーンが何度も流れ、彼女の意思とは裏腹に不安は一層大きくなっていく。冷や汗が彼女の頬を伝い、足の震えも大きくなる。
(お願い、落ち着いて…。お願い…)
言う事を聞かない自分の身体が、エクスに苛立ちを募らせると同時にさらに不安にさせる。
丁度そこへ通信が入った。
『こちら、龍驤や。こっちの準備は終わったで。…そっちもええか、エクス』
相手は龍驤だった。彼女の声は此方を心配している様だった。
『…ええか、エクス。魚雷は真っ直ぐにしか進まんし、そのスピードも砲弾や爆弾と比べれば亀みたいなもんや。進路の予測は容易や。せやから今まで通り冷静に対処すればええんやで』
「…うん、分かった。ありがとう…」
エクスは不安の混ざった声で龍驤に礼を言う。通信が切れ、彼女は演習機がやって来る東の空を見る。
(…そう、冷静にしていれば大丈夫。グラ・バルカス機から雷撃を受けたのは、魚雷そのものについて全く知識がなかったから。だから気付いた時には手遅れだった。でも今はちゃんと魚雷に関する知識を持っているし、対処法も金剛さんたちから教わった。…あの時とは違うんだ。だから大丈夫…)
今は先週みたいに魚雷を見て倒れる事はなくなった。だが、それでも魚雷に対する恐怖がなくなったわけではない。流れ出る汗を拭い、エクスは対空魔光砲を旋回させた。
――――
「……エックス」
エクスから東へ15kmほど離れた海域で、彼女を心配する金剛。
その隣で龍驤が、空中浮遊する飛行甲板の巻物を展開させ、形代(かたしろ)を空へと飛ばしていた。それらは飛行中に光に包まれ、黄色い機体が特徴の演習機に姿を変える。その数12機、唸るような轟音と共に飛び去っていく。
「…ホンマにええんか?もう少し他の子の訓練を見せて慣れさせた方がええんやないか?」
全機発艦を終えた後、龍驤が金剛に話し掛ける。
「エックスからの強い希望デース…。私も今日の訓練はもう少し様子を見てからって言ったのデスが、予定通りに行って欲しいと言われマシタ…」
あの日、倒れたエクスは医務室へと運ばれた。そこで目を覚ました彼女は、傍でずっと見守っていた金剛と清霜に自分が沈んだ時の状況を説明した。彼女の世界に魚雷は存在しないと聞いていた金剛は困惑した。金剛はすぐさま詳しい説明を求めたが、彼女も自分を攻撃した国家についてはよく分からないとの事だった。
その後、予定通り翌日から彼女に魚雷について教える事になった。講義はこれと言って問題なく進める事ができたが、魚雷を使用する訓練を見学した時、彼女はその度に体を震えてさせていた。
「…それでもエックスは雷跡から目を逸らさなかったデース。みんなの足手まといになるのは嫌だからと、無理やりトラウマを克服しようとしているみたいデース…」
「無茶やな…。怖がる自分を強引に押さえつけて乗り越えられるほど、トラウマと言うもんは簡単やないで」
「…その通りデース。だから何か良い方法を考えなくてはなりまセーン。このままではエックスの心は余計に傷が深くなるだけデース…」
金剛たちもエクスの気持ちはよく分かる。自分達だって当時は無力だったのだから。だが、自分を傷つけてまで無理に強くなろうとしても、身体や心に負担をかけるだけで意味がない。
「とりあえず今回は様子見も兼ねて訓練を行うけど、…あまりにも症状が悪化しそうやったら、無理やりでも止めさせた方がええで?」
「…無論デース」
頷く金剛。次第に見えなくなっていく演習機を見ながら、彼女はエクスのために何が出来るか考えるのだった。
――――
「き……来た…」
低空より現れた黒い点。魔力探知レーダーでも同様にその影を捉えた。エクスはそれを見て震えた声を上げる。
「大丈夫…、出来る…。落ち着いてやれば、…必ず出来る」
エクスは何度も自分に話し掛け、心の中で増大する恐怖を押さえる。やがて黒い点は飛行機械の形になり、腹に抱えた模擬魚雷もはっきりと見える様になった。
「うぅっ……」
演習機にぶら下がるそれを見て、エクスは少し後ずさる。彼女の脳裏には、自分達に魚雷を喰らわせんと迫るリデル級艦攻の姿が浮かび上がる。
「はぁ…はぁ…。…た、対空魔光砲……魔力充填…。属性…比率……爆…16…」
息を荒くしながらも、艤装の対空魔光砲に魔力を込め始める。様々な種類の魔法が付与された対空魔光砲は、砲口を赤く光らせて迫りくる目標を指向する。
しかし、砲手妖精も魚雷に対するトラウマを抱えている為か、94式高射装置の統制下でも追尾が覚束なかった。
「う、撃ち方始め…!」
まるで恐怖に押されたかの如く、エクスは演習機に向かって対空攻撃を始めた。膨大な数の赤い光弾が、接近する目標を滅するために飛翔する。
演習機は即座に回避行動をとり、魔力弾の群れを余裕で躱していく。龍驤もまた歴戦の空母。彼女の飛行隊も鳳翔のそれに全く引けを取らない。恐怖のあまり統制が取れなくなったしまった対空砲火など、彼女の飛行隊にとっては脅威でも何でもなかった。
「そ、そんな…!昨日はあんなに落とせたのに、なぜ当たらないの…!?」
恐怖で自分の攻撃が当たらない原因に気付かないエクスは、魚雷を投下されまいとひたすら魔力弾を撃ち続ける。だが、いくら攻撃しても当たらず、それがより焦りを強くさせる。
「嫌だ…!来ないで!来ないでよ…!!」
この時点で彼女は冷静さをほとんど失い、恐慌状態に陥っていた。対空魔光砲は高射装置の統制から完全に離れ、各々が無秩序に魔力弾を撃ち続ける状態になってしまった。高射装置の妖精たちも、統制が効かなくなった砲手妖精を落ち着かせる事で手一杯だった。
エクスと彼女の仲間を沈めた未知なる兵器。それを搭載した飛行機械は、12機全機が無事に攻撃可能圏内へと進入を果たす。
そして遂に魚雷が海へと投下された。攻撃を終えた編隊は機体を翻し、対空魔光砲の射程外へと迅速に離脱していった。
「あ……」
1機も撃墜判定を与える事が出来ず、飛び去る演習機を呆然と眺めるエクス。だが、彼女のすぐ近くまでトラウマが迫って来ていた。
「!?…あ……あぁ…」
空から海に視線を移すと、エクスは自分に迫る12の航跡を確認する。不安、恐怖、焦り……、様々な負の感情が、彼女の心を埋め尽くしていく。酸素魚雷とは異なり、演習用の魚雷は回避を容易にするため航跡がはっきり見える仕様になっている。それが皮肉にも彼女をより追い詰める原因となった。
「か、躱さなきゃ…」
兎に角、この場に留まっていたら確実に被弾してしまう。そう判断したエクスは魔導機関の出力を上げようとした。
「あ…あれっ?」
だがその時、自分の足から次第に力が抜けていき、遂には立つことが出来ずその場に座り込んでしまった。
「ど…どうしたの?何で足に力が入らないの…!?お願い!立って…!立ってよ…!!」
座った体勢では回避はおろか、まともに動くこともままならない。エクスは立ち上がろうと足に力を入れるが、まるで穴の開いた風船に空気を入れている様だった。
『エックス!どうしマシタか!?』
上空を飛ぶ航空機のカメラがエクスの様子を撮影する。それをタブレットの画面越しに見た金剛が、様子がおかしい彼女を心配して無線で叫ぶ。
「……こ、金剛さん。あ、足に力が入りません…」
エクスは力なく言葉を紡ぐ。魚雷は彼女のすぐ近くまで迫っていた。当時の情景が重なる。
「ひいっ…!!」
この後起こる現象を想像し、エクスは悲鳴を上げて身構える。
その数秒後、模擬魚雷がエクスに直撃、巨大な水柱が彼女を包み込んだ。
――――
横須賀鎮守府 正面埠頭
「…エックス。落ち着きまシタか?」
訓練終了後、金剛は座り込んだエクスの側に寄り添い、彼女に温かい紅茶が入った魔法瓶を渡す。
「…はい」
エクスは力なく頷くと、金剛から魔法瓶を受け取って中の紅茶を少しずつ飲む。
「まだ訓練は始まったばかりデース。少しずつ克服していけば良いネ」
金剛が優しく語りかける。傍で立っていた龍驤も、エクスに優しい笑みを見せる。
「今日はとりあえず寮でゆっくり休んどき?その状態で無理して続けても同じ結果になるだけやから、続きはまた明日にするで?」
「…うん」
本心ではまだ訓練を続けたい。少しでも早く強くなって仲間を守りたいエクスにとって、このような結果では納得など出来なかった。だが、真剣にこちらを心配してくれている2人に強くは言えず、彼女は大人しく引き下がるしかなかった。
同時にエクスは自分に対して腹を立てていた。今日の訓練は終了と聞いて、魚雷から逃げる事が出来て安堵する自分がいたからだ。
(何で安心しているのよ私…!逃げてどうにかなる訳ないでしょ…!!)
そんな自分をエクスは内心で罵る。
「エックス、どうしたのデース?具合でも悪いのデスか?」
エクスが歯を食いしばっている様子を見て、金剛が心配して話し掛ける。彼女はハッとして首を振る。
「…いえ、何でもありません。大丈夫です」
これ以上心配を掛けまいと笑みを向けるエクス。その後、彼女は金剛に連れられて艦娘寮へ帰り、今日の反省点を踏まえて明日の訓練に臨む事にした。
――――
横須賀鎮守府 艦娘寮 エクスの自室
その夜――――金剛との明日の打ち合わせと夕食を終えたエクスは、自室のベッドに腰を下ろしていた。
「……はぁ…」
本日の訓練を思い出し、深いため息をつく。
「…本当に克服できるのかな…?」
エクスの魚雷に対するトラウマは、彼女が思っている以上に深刻だった。これを克服するには何か大きい切っ掛け、または長い時間が必要だろう。…いや、今は乗り越えられるかどうかすら怪しく思えてしまう。
エクスにとってそれは我慢ならない事だった。自分が訓練している間も、仲間たちは前線で戦っている。彼女たちの実力は十分に理解しているつもりだ。だがそれでも、…もしかしたら誰かが沈むかもしれない…。そう思うと居てもたってもいられなかった。
1秒でも早く仲間たちと共に戦い、そして守ってあげられる存在になりたい。エクスはそう決めてからというもの、厳しい訓練に全力で取り組んできた。その結果、彼女はわずか1週間で金剛たちの予想以上に練度を上げることが出来た。もはや執念と言っても良い彼女の努力の賜物であった。
しかし、トラウマに起因する恐怖はその執念を大きく上回っていた。エクスはトラウマをある程度克服した後も、しばらくはその執念とトラウマの板挟みで苦しむ事になる。
「はぁ~…」
エクスは再度ため息をつき、自分の膝に顔をうずめる。するとそこへ3人(?)の妖精がベッドを上り、彼女の元へと近づいてきた。
「…ん?」
自分のすぐ傍まで来た妖精の存在に気付き、エクスはゆっくりと顔を上げる。見るとその妖精たちは彼女の艤装にいた子たちだった。
「…どうしたの、みんな?」
エクスは手をベッドに下ろし、妖精たちに乗る様に促す。彼女たちが手の平に乗ってから、自分の顔へ近づける。
「もしかして、心配して来てくれたの?」
エクスが尋ねると、妖精たちはぴょんぴょんと飛び跳ねて答える。エクスにはその動作が「イエス」を表していると理解できた。
「…ありがとね」
そんな妖精たちに、エクスは微笑んで答える。少しだけ元気になれた気がする。
「…ん?」
ふとここでエクスは、妖精たちに違和感を感じた。彼女たちの服装に視線を向ける。それはエクスにとって見覚えのある物だった。
「ところで、みんな。何で私の乗組員と同じ格好をしているの?」
妖精たちに尋ねてみる。すると3人(?)の妖精のうちの1人(?)が、身振り手振りで説明を始めた。しばらくそれを見ていたエクスは驚きの表情を浮かべる。
「…乗組員の魂?それがあなたたちの正体なの?」
妖精たちはコクコクと頷き、さらに詳しい説明を続ける。
自分たち妖精は、軍艦と共に沈んだ乗組員たちの魂を元にして生まれた存在だと言う。一般的に艤装に宿った存在だと言われるのは、彼女たちが乗組員だった頃の記憶がある故、艤装の装備を扱う事が出来たためだ。ただし、あくまでも魂を元にした存在であって、乗組員が妖精として生まれ変わったわけでは無いらしい。
「…そうなんだ。じゃあ、あなたは私に乗艦していた司令官?」
エクスは横1列に並んだ妖精たちの、一番右にいる妖精に尋ねる。その妖精は自分の元司令官であるアルテマと同じ軍服を纏っていた。質問を受けたその妖精はコクコクと頷く。
「じゃあ、あなたは艦長…?」
今度は左端にいる、艦長インフィールと同じ軍服を着た妖精に尋ねる。彼女も先ほどの妖精と同様の動作で「イエス」と答えた。
「じゃあ……!」
最後に3人(?)の中央に立つ、元は下っ端海兵と思われる妖精に視線を向ける。するとエクスはその格好を見て固まる。その妖精をしばらくの間じーっと眺め、彼女は自分の記憶に間違いがない事を確認した。
その妖精の服の左胸には、オレンジの菱形のバッジが付いていた。
「…あなた、…あの時魚雷の接近を報告した監視員なの?」
エクスの問いに、その妖精はコクンと頷く。
あの時――――グラ・バルカス航空隊襲撃時、エクスは終盤でリデル級艦攻の雷撃を受けた。その少し前に海中を進む魚雷の接近に気付き、司令や艦長たちに報告した見張り員がいた。この妖精は、その見張り員ケイトの魂を元に生まれた存在だった。
「そうだったんだ。…あなたも私と一緒に沈んじゃったんだね…」
エクスがそう言うと、3人(?)とも一様に暗い表情になる。
「…どうしたの3人とも?そんなに暗い顔をして」
急に落ち込んだ様子の妖精たちを見て、エクスは心配そうに尋ねる。再び身振り手振りで何かを彼女に伝える妖精たち。
「…”あの時は気付いてあげられなくてごめんなさい”……って」
妖精たちが伝えた事、……それは謝罪だった。彼女たちはエクスがいち早く魚雷の接近に気付き、必死にその事を伝えようとしていた事を知り、非常に申し訳ない気持ちで一杯だった。
そんな妖精たち元気付けようと、明るい笑顔を彼女たちに向けるエクス。
「気にしないで。あの時の私は無力な船魂…。仕方のない事だったんだから、みんなのせいじゃないよ」
それでも暗い表情のまま俯く妖精たち。エクスは彼女たちの頭を人差し指で1人ずつ撫でてあげた。
「…過去は変えられない。でも、未来は変えられる。…どうしても納得出来ないと言うなら、次こそは失敗しないようにすれば良いんだよ?前は兎も角、今はこうして話す事も見る事も、…そして触れる事も出来るのだから」
妖精たちは顔を上げ、じっと自分たちの艦の顔を見つめる。
「また同じような危険が私に迫って来たら、その時は教えてくれるかな?」
「「「!!」」」
エクスの言葉に妖精たちは表情を明るくすると、すばやく整列し直して彼女に敬礼する。
「うん、お願いね。みんな」
その様子をエクスは微笑ましそうに眺めながら、彼女も妖精たちと同様に敬礼した。
その後、すぐに消灯時間になったため、妖精たちはエクスの元で一夜を明かす事になる。
――――
明日も今日と同じ条件で訓練に挑む。
決して簡単には乗り越えられない壁に当たってしまったエクス。だが、当然ながら彼女には”あきらめ”と言う選択肢など始めからない。
(トラウマだろうと関係ない。明日は必ず乗り越えてみせる…!)
そう心に誓ってから、エクスは眠りに就くのだった。
To be continued...