召喚
日本国 横須賀鎮守府
ここは、第零式魔導艦隊が撃沈された世界に召喚された日本とは、また別の世界に存在する日本国。
その国の横須賀と呼ばれるこの地は、海軍の街として有名である。
幕末の黒船来航の地としても知られ、明治維新以降は国防の要所として大きく発展した。
昭和初期は大日本帝国海軍の一大拠点となり、戦後も米海軍と海上自衛隊が駐留するなど、軍港都市としての歴史は途絶えることなく続いており、それは現在でも変わらない。
だが、本来なら港の大半を占有しているはずの米海軍の軍艦や海上自衛隊の護衛艦などは数えきれる程度しか停泊していなかった。
訓練などで港を離れているわけではない。
約1年前、元々横須賀を定係港としていた艦船の大半が、暗い海の底から這い上がってきたと言われている”ある脅威”との大規模海戦で、ことごとく海の藻屑となったからである。
その脅威に唯一対抗可能なある存在が、米海軍や海自に代わってここ横須賀鎮守府を拠点として活動を始めたのは、ほんの2、3ヶ月前である。
本来なら他の大規模鎮守府と同様に早い段階で稼働する予定だったが、”ある脅威”が横須賀に対して大規模な空爆を実行。
それにより大きな被害を受けた横須賀は、復興にかなりの時間がかかってしまい、結果他の鎮守府より稼働が大幅に遅れてしまった。
他の沿岸都市が似たような攻撃を何度も受けている中、復興中に再び”ある脅威”から攻撃を受けなかったのは運が良かったと言えよう。
予定が大幅に遅れはしたが、その遅れを取り戻すかのごとく”彼女たち”は奮闘。
東京湾や相模湾、駿河湾から完全に”ある脅威”を駆逐、そして伊豆諸島御蔵島より北の周辺海域までの制海権、制空権を確保した。
今だに数が少ないにも関わらず、それだけのことをわずか1、2ヶ月でやってのけ、首都周辺の守りを固めることができた”彼女たち”はまさに精鋭と呼ばれるべき存在であった。
……だが”彼女たち”も予想できなかっただろう。
異世界から訪問者が現れたことなど…。
――――
横須賀鎮守府の建造ドックで、白い軍服を身に着けた一人の女性が何やら作業を行っていた。
肩の階級章を見ると階級は少将。
海軍の中でもかなり位の高い人物であることが分かり、彼女がおそらくこの鎮守府の最高責任者であろう。
その女性は「大型艦建造専用ドック」と書かれたプレートが付いた巨大な建造ドックのいたるところに、何やら巨大かつ奇妙な模様を白チョークで描いていた。
それを見た者は、誰もが「魔法陣」と判断するだろう。
実際彼女が描いていた奇妙な模様は、紛れもない魔法陣であった。
魔法陣はドック中央の巨大な機械仕掛けの箱を中心に描かれていた。
「~~~♪」
軍服姿の女性が口笛を吹きながら魔法陣を描いている様子は、なんともシュールな光景である。
そこに近づく人影が一つ。
「……アンタ何やってるのよ」
怪訝な顔で近づいてきた少女が女性に話しかけた。
声をかけられた女性は魔法陣を描く手を止めずに、少女の方に顔を向けた。
「?何って、見ればわかるでしょ?魔法陣よ、魔法陣」
「そんな事聞いているんじゃないわよ!」
「何言ってんのコイツ?」みたいな表情で返答してきた女性に、銀髪サイドテールの少女、駆逐艦「霞」はその返答と表情にイラッとしたのか、その勝ち気な目つきをさらにきつくし、声を荒げた。
「そんな怒鳴ることないじゃな~い。」
「ちゃんと質問に答えないからでしょ!?」
「も~、カルシウムを取らないから、そんなふうにすぐ怒っちゃうのよ。
……ほらカスミン、煮干し食べる?」
そう言って女性……提督は自分のすぐ横にある煮干しの入った袋を持ち、霞の前に出した。
「いらないわよ!あとカスミン言うな!」
霞は先ほどよりも語気を強くして言いながら、差し出された煮干し入りの袋を手ではたいた。
「素直じゃない子ね」そう言って提督は片手で袋に入った煮干しを1匹取り出して口にくわえながら、魔法陣を描き続ける。
霞はまた怒鳴りそうになるのを抑え、少し落ち着いてから再び口を開いた。
「あたしが聞いてるのは何のためにこんな大きくて変な模様を描いているのかってことよ」
「変なとは失敬な……大和ゲットのためよ」
「はぁ?」
提督の返答に意味が分からないと言うような表情になる霞に対し、提督はさらに詳しく説明する。
「大和とか武蔵とか、あと大鳳といった特定の艦娘は通常の建造では入手不可能ってのが分かったじゃない?」
「まあ…そうね。だから大型艦建造用ドックが作られたわけだし」
「で、その大型艦建造には資材を大量に消費する必要があるわけよ?」
「そう……ってちょっと待ちなさい!大和さんを建造するのにどれだけ資材をつぎ込んだの!?」
ドックの資材投入口の横にあるランプは赤から緑色に点灯しており、既に大量の資材が投入された後であることを示していた。
資材を大量に消費すると聞いた霞は、それを見て顔を青くしながら声を張り上げる。
そんな霞とは対照的に、提督は先ほどと変わらぬ様子で淡々と質問に答える。
「え~と、燃料4000、弾薬6000、鋼材6000、ボーキが3000…だったかな?」
「だったかな?じゃないわよ!このクズ!」
それを聞いて霞は再び怒りを露わにする。
「まだ、この鎮守府は稼働して数ヶ月しか経ってないから、所属艦娘が少ないのよ!大本営からの支給だって深海棲艦の影響で十分じゃないし、遠征に向かう娘も人数が少ないから資材はまだまだやりくりしていかなきゃいけないってのに!」
「だからこそ!今から私が行う魔法が必要ってわけよ、カスミン」
「だからカスミン言うな!とにかく、秘書艦として資材が大量に消費するような事は許すわけにはいかないわ!今回は諦めなさいよ!」
「嫌だ~~、大和ほしいんだもん!」
「我が儘言うな!」
「ね~お願いよカスミン。今この鎮守府で戦艦は金剛しかいないのよ~。彼女だけだとこれから先大変だろうし、せめてもう一隻、戦艦がいてくれれば助かるじゃない?そしてできれば大和のような強力な戦艦がいてくれれば尚いいと思うじゃない?」
「…っ。そ、それは…」
霞が言葉に詰まったところで、提督はさらに追撃する。
「それに、他の鎮守府で大和が出ちゃったら二度と出てこないんだよ?あなただって大和に会いたいでしょう?」
「そ…それはそうだけど…。絶対に大和さんが出るって保証もないでしょう?」
「確かにね。他の鎮守府でも成功率は限りなく低いって聞いたわ。だからこれからこの魔法を行いながら建造を行うのよ」
「…どんな魔法なのよ?」
「簡単に言えば特定の事象が起きる確率を大きく上げることができる魔法よ。具体的に説明すると日が暮れるから省くけど…」
「……本当にたった1回で成功するの?」
秘書艦としては資材に余裕のない状態での大型艦建造は避けたい。
だけど大和と再会したいという思いもまた、霞にはあった。
提督は人懐っこい笑顔を葛藤している彼女に向けて返答する。
「100%ではないけど、限りなくそれに近くなるわ」
「………」
「大丈夫よ。こう見えて私、優秀な魔導師だから!」
提督は片手を胸に当て、どや顔で言う。
霞は腕を組みたっぷり30秒ほど考え込んでから、ゆっくりと口を開いた。
「…はぁ…分かったわよ。ただし1回だけよ?」
「もちろん、ありがとね!」
「あと、もうひとつ!」
「?」
「終わったらちゃんと掃除して、模様はきれいに消しなさいよ!」
霞は自分と提督の周りの魔法陣を指さしながらそう言った。
「もちろん分かってるわよ、ちゃんと後片付けはするから」
こちらに背中を向けて空いた片手をひらひらさせながら答える提督に、霞はため息を吐いた。
「分かってるのかしら?はぁ~、こいつの自由奔放ぶりには付いていけないわよ…。これじゃ秘書艦なんてこいつの母親役みたいじゃない…。誰か変わってくれないかしら…?」
彼女のその言葉に答える者は誰もいなかった。
「あ!カスミンも手伝ってね!そこにチョークと図面があるから」
提督は彼女に顔を向け、チョークと魔法陣の完成図が描かれた図面の入った箱を指さしながら言った。
「ふざけんな!なんで私が「手伝ってくれたらご褒美あげるわよ?」…ほら、さっさと終わらせるわよ!どこやればいいの!?」
相変わらず口調自体はきついが、ご褒美と聞いて若干嬉しそうな雰囲気を纏って、霞は即座に箱に入っているチョークと図面を取る。
(まだまだ子供ね)
口に出すとまた怒鳴られるので、提督は頭の中でその様子を見た感想を漏らした後、作業に集中した。
――――
「よし、これで完成ね!」
数十分後、魔法陣を描き終えた提督は煮干し入りの袋とチョークを持って立ち上がる。
「そっちも終わったの?」
「ちょうど今ね。…みんなも手伝ってくれてありがとー!」
「…?……なっ!?あんた妖精たちにも手伝わせてたの!?」
提督がドック全体に響き渡るように大声でそう言うと、ドックのいたるところから数十人?の妖精たちが出てきて、提督と霞のところに集まってきた。
「さっきまでいなかったような気がするけど、いつの間に…」
「カスミンがやって来る前からずっといたわよ、この子たち?」
「存在を悟らせないとか、こいつら相変わらず不思議ね…。まぁ、人間から見れば私たち艦娘も摩訶不思議な存在でしょうけど…」
「わたしだって人間だけど魔導師だから、普通の人間よりは不思議な存在でしょうね~。……あぁ、ごめんごめん。ご褒美が欲しいんだよね?ちょっと待ってて~」
頑張ったんだからご褒美を早く頂戴とでも言うかのように、妖精たちは提督の周りをぴょんぴょんと飛び跳ねる。
魔法陣を描くのを手伝ったらご褒美をあげる、そう約束していた提督は右ポケットに入ったあるものを取り出し、彼女たちの前に差し出す。
「はい、煮干し!1人1匹ずつね!……ってあれ?みんなどうしたの、そんな可愛い顔を怖くしちゃって~?」
提督が取り出したのは煮干しだった。それも袋などに入っていないむき出しのものを妖精たちに差し出そうとしたのだ。
当然ながら妖精たちは怒り出し、一斉に提督に飛び掛かってその小さな手でポカポカと叩く。
「きゃあ!痛い痛い!ごめんってば!冗談よ、冗談!」
「この子たちにそんな冗談が通じるわけないでしょ?しかもまたポッケに食べ物突っ込んで……あれほどやめなさいと言ったのに、毎回洗濯するあたしの身にもなりなさいよね」
その様子を見て霞は呆れと怒りの混ざった声で言う。
「分かった分かった…ほらごめんって…こっちが本当のご褒美よ」
そう言って提督は左ポケットに入っていた券を取り出して1人1枚ずつ配り始めた。
その券には『居酒屋鳳翔無料券』と書かれている。
受け取った妖精たちは先ほどの怒りが嘘のようになくなり、飛び跳ねながら大喜びする。
「それ……滅多に手に入らないやつじゃない」
「そうよ。本当なら舞鶴鎮守府の間宮や、佐世保鎮守府の伊良湖が経営している店の無料券を手に入れたかったのだけど、入手が非常に困難でね。だからウチの鳳翔が経営している居酒屋の無料券を持っていたからあげるわ」
妖精たちに無料券を配り終えると、次に霞の方を向いて残り1枚の無料券を彼女に差し出した。
「ほら、カスミン。あなたの分よ」
「あ…ありがと」
霞は小さい声でお礼を言いながら無料券を受け取り、わぁっと声を上げ、顔を若干緩ませた。
「…ん?何よ?」
こちらを見て目を見開いている提督に気づき、霞は怪訝な表情を浮かべた。
「か……」
「か?」
「カスミンが私にお礼を言っただと!?」
「さっさと始めなさい!このクズ!」
わざとらしく驚きながらものすごく失礼な事を言ってきた提督に、霞は目を吊り上げて怒鳴った。
――――
「じゃあ、カスミンは離れて見ててね。妖精さん達ー!準備してー!」
提督の掛け声とともに妖精たちは一斉に散らばり、各々配置についた。
提督は魔法陣の端に移動し、しゃがんで手のひらを付ける。
数人の妖精がドックに備え付けられた操作パネルの前に立ち、必要な情報を入力していく。
ドック中央の重厚な扉が付いた巨大な箱のような機械に投入した資材が送り込まれる。
他の妖精たちは高速建造材をその機械に向けて構える。
パネルを操作していた妖精の一人が、提督に準備完了の合図を送る。
「よし!始めて!」
それを見た提督の指示を受け、妖精が操作パネルの『建造開始』と書かれたボタンを押した。
同時に提督が何やら詠唱らしきものを唱え始め、自身の体内にある魔力を魔法陣に送る。
すると魔法陣全体が光り出し、ドック全体を幻想的な青で染めていく。
「わぁっ……」
離れたところからその様子を見守っていた霞は、その幻想的な光景に感動する。
普段はだらしのない提督だが、この時の彼女はとても神秘的に映った。目視可能な光となった魔力が背中から溢れ、さながら天使の翼を生やした様にも見えた。
詠唱を終わらせた提督は、青色に光る魔法陣に手を当てたまま次の指示を出す。
「さあ、みんな!高速建造材を!」
その指示を受け、妖精たちが一斉に高速建造材を使用し、中央の機械はたちまち火に包まれた。
あとはこのまましばらく待つだけであった。
だが、あともう少しというところで、思いもよらぬ異変が起きた。
突如魔法陣の一部から、線を伝うように稲妻が走り、それは徐々に魔法陣全体に広がった。
魔法陣中央の空間に歪みが発生し、機械が全方向から力を加えられているかのように押し潰されていく。
「……へ?」
「……は?」
提督と霞が間の抜けた声を出した次の瞬間、魔法陣が青白い閃光に包まれ、爆発した。
爆発音と衝撃波が鎮守府全体に伝わる。
「きゃあ!!」
「な、何!?何なの!?」
「爆発!?」
「建造ドックから煙が!!」
鎮守府内の職員、憲兵、そして艦娘たちが、何事かと煙の上がるドックを見る。
突然の爆発に全員が一時的に混乱したが、憲兵や艦娘はすぐに冷静さを取り戻し、今だ混乱状態の事務員などを落ち着かせ、爆発の起きたドックへと跳んで行った。
建造ドック内部は爆発の影響でボロボロだった。
「いたた…?」
爆発の衝撃で床に倒れていた霞はゆっくりと目を開ける。
多少服が汚れていたものの、大した怪我はないようだった。
「…大丈夫?」
すると、すぐ傍から提督の声が聞こえてくる。
「え?」
ここで霞は気づいた。
自分や妖精たちが、提督に抱き着かれるように庇われていたことに。
「な!?あんた大丈夫なの!?あたしを庇って…!」
「お、それだけ大声出せるなら大丈夫そうね~。妖精さん達も無事みたいでよかったわ~」
「あたしは大丈夫だから、あんたはどうなのよ!…ちょっと、腕怪我してるじゃない!?」
霞の目が提督のすりむいた右腕に向く。
「あ~、とっさにカスミンや妖精さん達を庇ったから床で擦り切れちゃったか~。どうやら防御魔法はその直後に発動したみたいね~」
「こんな時まで何で気の抜けたような声出してるのよ!?とにかく、そのままにしておくわけにはいかないわ!誰か呼んでくるから!」
霞が提督から離れて人を呼びに行こうとしたところで、何人もの艦娘や憲兵がドックに入ってきた。
その中の一人、駆逐艦『清霜』が霞と提督を見つけて叫ぶ。
「あ!霞ちゃーん!!しれいかーん!!」
「清霜!みんな!ちょうどいいところに!」
「いったい何があったんや!?」
軽空母『龍驤』も心配した様子で霞と提督に話しかける。霞は彼らに爆発で滅茶苦茶になったドック内部を見せるようにしながら簡潔に説明する。
「このクズがまたバカなことやって、……それでこのざまってわけよ」
「えぇ!?クズとかバカとか、さっきから酷いことばっか言ってないカスミン!?」
「クズはクズでしょ、このクズ!あとカスミン言うな!」
霞と提督のやり取りを見て、龍驤たちは安堵の表情を浮かべる。
「……その様子ならあんま心配ないみたいやな」
「ほら、司令官さん。手当てしますから、腕の傷を見せてください。霞さんも、手に傷ができてますから手当てしますね」
「あ、はい…お願いします」
割烹着姿の軽空母『鳳翔』が、店から持ってきた救急箱を開く。
事情を知らない清霜たちは怪我の手当てを受けている提督や霞から、詳しい説明を聞く。
「え!?戦艦を造ろうとしてたの!?なんで清霜も呼んでくれなかったの!?」
「提督~、ワタシという戦艦がいながらどういう事デース!?」
清霜と戦艦『金剛』が頬を膨らませながら提督に迫るが、龍驤が二人をなだめて話を続けさせる。
「まぁ、このドックの様子からどう考えても…」
「失敗しました♪」
「あんたね……あれだけの資材がダメになったじゃない!」
「でもカスミンもいいよって言ってくれたじゃな~い!?」
「あんたがうまくいくって言ったからでしょ!?」
「まあまあ、落ち着き二人とも」
龍驤が提督と霞を落ち着かせようとした時、清霜が口を開いた。
「……失敗じゃないみたいだよ?」
『…え?』
全員が同時に疑問の声を上げる。
清霜が潰れかけた機械に近づく。
全員がその機械を見ると、『建造完了』を示すランプが光っているのが確認できる。
「ほらっ、『建造完了』のランプが光ってるよ!中に戦艦の人がいるんだよ!」
「あんたね、そんなに潰れた機械が正常に動いているわけないでしょ?ただの故障じゃないの?」
霞は単なる故障でランプが光っていると主張するが、清霜に続いて機械に近づいた工作艦『明石』が扉の隙間から機械の中を覗いた途端目を見開き、即座に否定する。
「いいえ!清霜さんの言う通りです!扉の隙間から艦娘らしき姿が…!」
『!!!』
全員が驚愕する。
清霜が興奮しながら明石に話しかける。
「も、もしかして大和さん!?」
清霜の質問に対し、明石は首を横に振る。
「いえ、確かに艤装の主砲は3連装ですが…全く見た事がない形状です。大和型はおろかどの戦艦とも該当しません。…とにかく扉が壊れているみたいなので、皆さん手を貸してください…!」
明石の言葉で全員が機械に集まり、壊れて動かなくなった扉を動かす。
完全に開いた扉の先には、中の壁に寄りかかったまま気を失っている艦娘らしき少女がいた。
髪は赤くポニーテールでまとめられ、頭には極めて先進的なデザインのマストを装着、刺繍の入ったヘアバンドを頭に巻いている。
異世界転生物の作品に登場しそうなイメージの服を纏い、艤装は主砲と思しき3連装砲が3基と、対空砲と思われる装備が複数付いていた。
「大丈夫ですか!?」
明石は金剛に支えられた赤髪の少女に話しかけるが、反応がない。
「とにかく金剛。その子の艤装を外して、急いで医務室に運んでちょうだい」
「了解デース!」
提督の指示を受け、金剛は少女の艤装を外して明石に渡すと、少女を背負って医務室へと走って行った。
霞や清霜、鳳翔も彼女に付き添うことになった。
「残った人たちもありがとね、来てくれて。とりあえずここは封鎖するから皆外に出て頂戴。憲兵さんたち、ここ誰も立ち入れないように封鎖しといてください」
「了解しました」
憲兵も艦娘も続々と建造ドックから出ていく。
最後に一人残った提督が、何かを思い出したのかボロボロのドック内部を見渡す。
その顔は見る見るうちに暗くなっていく。
「…わ、私の煮干しちゃんが……」
そう呟いてorz状態になる提督であった。
To be continued...